ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
さて、無果落耀の古城骸にやって来た訳だけど、どの武器から試していこうか。
一番付き合いが長く、能力もシンプルで分かりやすい【憧焉傑刀『画竜点睛』】?
大剣として生まれ変わり、何やら物騒な側面も得た【アモルパレント・リバイバル】?
黒炎を宿す刃を持つ【炎斬『熔命』】?
初の合体を必要とせず、素のままで遠距離攻撃武器として使える【
「………………!!」
「おっと、悩んでる暇は無いか……なら、まずはお前からだ『画竜点睛』!」
考えている内に、モンスターの襲撃に遭う。このエリアだとよく見かける奴、直線の速さを活かした突進が危険なハードラッグ・ライノだ。
急に襲われて選ぶ暇も無かったので、咄嗟で一番指に近い選択肢だった【憧焉傑刀『画竜点睛』】を装備し抜刀。スキル「居合術『神ノ御力』」を発動して突進を迎撃する。
「…………!!?」
「はは、こりゃあ良いや!真正面から受け止めてもビクともしない!」
最後にコイツと戦ったのは、確かパーフェクト戦の前だったか。あの頃は受け止めるのではなく受け流すことでしか対処できなかったが、今の私は一切ノックバックを受けること無く、真正面から奴の突進を堰き止めることに成功していた。
当時はレベルもまだ二桁で、月天霊装どころか擊竜蜂装も無ければ『擊竜』も『無貌』の頃。こうして思い返してみると、随分と遠くまで来てしまったというものよ……
──武器がと言うより、ステータスが強くなったからこその結果だろって?
「それは……言わない、お約束よッ!」
「…………!!」
セルフツッコミを入れつつ、同時に突進野郎の脳天へ「秘剣『八幡力』」を叩き込む。刀での攻撃時にSTRを大きく強化するという、単純にしてそれ故に強力なスキルだ。刀を使ってる時は迷ったらコレを擦れば良いというレベルである。
その一撃がクリーンヒットしたことで、クリティカルが発生しハードラッグ・ライノの命は潰えた。中々の威力に満足して鼻を鳴らす……が、その背後に更なる敵が迫っていることには気付いてるぞ!
「しゃらくせえ、見えてんだよ!」
「…………!!?」
上空から私を狙っていたストーム・ワイバーンの不意打ちにカウンターを入れ、地に叩き伏せる。普段なら刻傷に怯えて出てこないだろうに、他の奴と戦ってる今なら大丈夫だとでも思ったか?
墜落したストーム・ワイバーンだが、そのまま死亡し消滅した。
「画竜点睛はこのくらいで良いかな」
一応、まだ【竜魂解禁】した時の効果を確かめてはいないが……テキストの書き方的にアモルパレントのジャストガードと同じものだろう。ボーナスがブレイクゲージの上昇か、『
それに、【竜魂解禁】は結構装備の耐久値の消耗が大きいのだ。普段は出さない力を出させているということは、つまりその状態の時は負担が大きいということだからね。次の武器を試そう、今度はどれにしようか……よし、決めた。
「次はコイツだ、【
私の身の丈程もある巨大な特殊銃、今度はこれを使ってみることにする。どうやらグリップの先が刃になっていて、これを引き抜くと刀モードに移行できるようだ。小さい頃に見てた特撮ヒーローの武器を思い出すギミックだなぁ。
エネルギーのチャージは、と……成る程グリップを握ってMPを送るだけか。思ってたよりも操作が分かり易くて助かる、やることが複雑な武器ってそれだけで使い難いもんね。あとはやりたいことに合わせて引き金を引くだけ、せっかくだし飛んでる奴ら相手に試してみよう。
ちょうど良く、このエリアには空を飛べるタイプのモンスターが沢山居る。
二桁も倒す頃には、この武器の扱いにもだいぶ慣れていることだろう。やり過ぎはカルマ値が上がっちゃうので良くないから、あくまで『虐殺』ではなく『狩り』の範囲に抑えて。
……
…………
………………
「おら、くたばれ!」
「………………!!」
これで、武器を変えてから10匹目のストーム・ワイバーンを葬った。途中から複数体集まって来たせいで思ってたよりも苦戦したけど、その甲斐あって【
まず【銃モード】、これは基本的に通常弾だけで事足りる。誘導弾は誘導性能が強いのは良いんだけど威力も速度も射程も通常弾より下がるし、性能が良過ぎて逆に避けられることもある。立体機動で弾の動きを揃えてギリギリで避けるとか、シャンフロAIってホント頭良いよね。
炸裂弾も爆発して広範囲を一気に攻撃できるのは良いんだけど、着弾しないと爆発が発生しないしやはり通常弾と比べて弾自体の攻撃性能が低く、硬い相手には有効打たり得ないだろう。威力・弾速・射程揃った通常弾が、一番使い易くて一番強いという結論に至った。
──後は、チャージのし過ぎにも注意だね。
どれだけチャージできるのか、消費電力によって弾の威力は変わるのかを確かめるために、大量のMPを食わせてやったのだが……3万程食わせたところでオーバーヒートを起こし自爆しやがった。やり過ぎは禁物と身を以て思い知ったよ。
まぁ新武器を使う以上これも勉強だ。弾の威力はモードによって常に一定ということが分かったし、『
剣モードの方は……基本的にはデバフ用って感じで火力は高くない。接近された時のお守りとか硬い部位を壊したい時位しか使い時は無さそうだ。恐らく威力のほぼ全てを『
その分、『大伐刀』はとても強かった。自爆しやがった時に見極めた限界ギリギリのチャージを使ってまた出逢った"
──連発が出来ないのが玉に瑕……いや、もしかしたらできるかも?
アステヴァルなどのような、壊れてもロストしない武器を『
「試してみるか……ぐえッ」
早速自爆させてみたのだが、そのせいで結構痛いダメージを食らった。同じ壊すにしても地面に叩きつけるとかで良かったな……いや、それだとかなり時間掛かるしこれが手っ取り早いか。
そして、破損状態になった【
「………………!!」
「……っと、危ないなこの野郎!」
自爆で削れたHPを回復しようとすると、それを阻むかのように空から攻撃が降ってくる。すぐに気付いて回避したが回復には失敗してしまった。
下手人はストーム・ワイバーン……だが、さっきまで戦ってた奴らより二回りくらい大きい。黎桜の配信で戦ってた不世出の個体だろう、群れの仲間を殺された怒りからか叫び声にかなりの圧がある。
【モンスター
【討伐対象:ストーム・ワイバーン"
【参加人数:1人】
【エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されました】
エクゾーディナリーモンスターの登場を知らせるテキストの表示と同時に、"
空気弾は射出と同時に八方に分かれ、多角的に私を狙ってくる。それを誘導弾で半分撃ち落とし、残りを剣モードに切り替えて迎撃。全てを凌ぐとそれを見た"
「………………!!」
「ハッ、空中戦をお望みかい!?」
高い所から一方的に攻撃、なんて狡い真似などさせる訳が無い。私は
「……………!!」
「弾幕勝負なら負けないぜ!」
空中で、互いに弾幕を放ち避け相手を撃ち落とさんとする射撃戦が幕を開ける。圧縮された雷と風がぶつかり火花を散らし、暗い夜空を彩った。
弾幕の厚みでは向こうが上、しかし私の方が機動力と命中精度で優っているため"威風堂々"の弾幕に対処しつつ削りを入れられている。このまま翼を傷付けて奴の機動力を殺せば、後は大伐刀を叩き込んで私の勝ちだが……ま、そう上手くはいかないだろうなというのは直感で分かる。
──ほーら、来た!
射撃戦では不利と悟ったか、"威風堂々"は翼に風を纏っての接近戦に切り替えてきた。竜巻に弾かれた通常弾が"威風堂々"の斜め上で弾け、虚しく霧散するのが見える。
接近戦をするのなら、剣モードだと素の火力が低い冥雷輝炎刃ではやり難い。竜を屠る刀である画竜点睛に持ち替えて迎撃する──ワイバーンって、竜特効の効果あるのかなぁ?
「竜魂解禁──【パーフェクト】!」
風を纏った翼をブレードのように使い、滞空しながら器用に振り回す"威風堂々"。それを一つ一つ丁寧に、画竜点睛のジャストガード『
攻撃そのものを受け止めても、風の余波がかまいたちのように私を裂くが気にしない。この程度のダメージなら回復に頼るまでも無い、無視してジャスガを決め『
──あと4、5回ってところかな……!
最適化が進行する程、画竜点睛は相手の耐性や防御を無視し易くなる。今は纏った風がバリアのように刃を弾いているが、もう少しジャストガードを成功させれば貫けるようになるはずだ。
「………………!!」
──1回……
「ほっ……とお!」
──2回……
「………………!!」
──3回……次、いくぞ!
「おら、落ちろ蚊トンボ!」
「………………!!?」
4回目のジャストガードに、スキル「秘剣『水鏡ノ構エ』」を載せて反撃を付与する。『桜花ノ構エ』と対を成す、こちらは受け流しからの反撃に重きを置いたスキルだ。立て直しに重きを置いた後者よりかなり攻撃的な防御スキルである……因みに、刀スキルの割に武器を選ばない桜花ノ構エと違って、刀でないと使えないので注意だ。
翼撃を受け流し、返す刀で"
「…………!!」
「よっしゃトドメ、食らえ
「おおおおおぉぉォ!」
──はあああぁァ!?せっかくの決め処だったのに完璧にスカされたんだが!?
トドメの
──んん?あのPN、もしかして……
心の中でめちゃくちゃ文句が湧いてきたが、相手のPNを見て気付く。『オルスロット』……前に久遠君とお出掛けした時に教えて貰った、彼のPNと同じ名前だということに。
「……久遠君?」
「何で本名……『ロンミン』?まさか……アンタが龍洞さん、なのか?虹色に光ってる……」
──合ってた!
やはり、久遠君で間違い無い。
今度一緒に遊ぼうと約束したは良いが、具体的に予定を決めてはいなかったのでこうして偶発的に会えたことは嬉しい……が、それはそれとして恨み節の一つくらいは言わせて貰おうか。
「まったくもう、余計なことしてくれちゃって。トドメのつもりが無駄撃ちになったよ」
「ス、スマン。エクゾーディナリー相手に、貴重なチャンスだとつい飛び付いてしまった……」
話を聞くに、双王決戦に向けての戦力増強に勤しんでいたらしい……普段は仲間が一緒だそうだが、今回は都合が付かずソロで。
元PK、既に成敗され多額の借金を背負いそれまで集めたアイテムも全て失った。『王認騎士』になったことで恩赦を受け、街への出入り禁止などの措置は消えたものの、依然として借金は残ったままだし装備も有り合わせの貧弱なもの。
だから、決戦前に少しでも戦力を整えなければならない……そんな時に丁度、エクゾーディナリーを見つけて飛び付いてしまったということだそう。
それまで戦っていた私のことは、上空に居たことと視野が狭くなっていたことから、そもそも見落としていたらしい……ま、そういう事情ならあまり詰めてやるのも可哀想かな?私も他人の戦いに横入りしてご相伴に預かったことはあるし……言い過ぎるとブーメラン返ってくるからね。
「………………!!」
「ほら来るよ、構えて構えて」
「……良いのか?俺は」
「PKだったんでしょ?今更他人の迷惑気にしてどうすんの、やっちまったことはしょうがないんだからしっかり貢献して挽回しなよ」
「ッ……!ありがとう……!」
久遠君……オルスロットにパーティ申請を送り、体勢を立て直した"
別に一人でもどうにかなるけど……せっかくの偶然の出会いだ。オンラインゲームならこういうのもあり得るハプニングの内、それも含めて楽しんでやろうじゃあないか。
「さぁ来るよ、しまっていこう!」
「……ああ!」
【憧焉傑刀『画竜点睛』】
覇憧傑刀『擊竜』がロンミンの歴戦値が上がったことで強化可能になり、
通常の場合、武器の真化には『その武器で』特定の相手を倒すことで強化が可能になるが……この武器は素材となったクアッドビートル"
効果は【竜魂解禁】しなければ変わりは無い。せいぜい基礎火力と耐久力が上がった程度。
竜魂解禁時は『最適化』した相手からの被ダメを軽減する効果がジャストガード及び時間経過による行動面のバフに変わっている。どちらにも一長一短あるが、それでも順当に強くなっていると言えるだろう……完成の時は近い。
ロンミンは現在、
その果てに、未完を意味する諺を名に持つこの刀は竜の器として真に完成し、神化するだろう。そうなれば、その名はーー【■■■■『■■■』】