ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
「オルスロット、私がタンクやるから火力は君に出して貰うよ。何、事前にそれなりに削ってあるから余り心配することは無いさ」
「本当に、そうだと良いがな……!守りはアンタに任せるぞ、ロンミン!」
"
オルスロットの装備は、見た目的には騎士らしい甲冑と両手剣。恐らく王認騎士になった時に支給でもされた最低限の物だろう、強い装備って見た目からして
とは言え、腐っても元PKクランの首魁でレベル三桁越えの廃プレイヤー。装備の質の低さも培ってきた本体性能とプレイヤースキルがあれば、いくらでも誤魔化せる範囲だ。
PKなら対人が主だろうけど、それでも対モンスターでもそれなりのものはあるはず。オルスロットの真価を見せて貰おうじゃないか。
「………………!!」
「当てさせんよ……さ、やっちまいな!」
「ああ!食らえ、「断撃『破城斬』」!」
翼膜を壊された"威風堂々"は、飛行を選択肢から外し空気弾で突撃するオルスロットを迎撃する。大量の弾幕が彼を襲うが、そこは私がアモルパレントで弾いて守る。障害無く"威風堂々"の喉元へ辿り着けるよう、集中力は切らさない。
そして、溜まったブレイクゲージを消費して『金炎の護り』を発動し事故を予防する。テキストには特に書かれて無かったけど、炎を纏ってるんだし火力強化があることを期待しよう……テキスト外でも色々仕様があることも多いし、あり得るよね?
「…………!!」
「クッ、浅い……か!」
──うーん、やっぱ無さそうかな?
私が空気弾を防ぎ、その隙に接近したオルスロットが「断撃『破城斬』」を命中させる。しかし風の鎧に刃が押し返されたことで入りが浅く、あまり有効打にはならなかった。
金炎の護りも、やっぱりプレイヤーの命を保護するだけで火力強化には繋がらなさそうだ。あんな激しい風に触れれば、攻撃性能があるなら巻き上げられて一緒に燃えそうなもんだからね。
「だが、今ので感覚は掴んだ……!クリーンヒットにはもう一段深く踏み込む、ハアッ!」
「………………!!」
「おっと、させんよ」
攻撃が浅く、有効打にはならなかったのを受けてオルスロットは更に深く踏み込んでいく。
勿論、"
「助かる……今度こそ、食らえ!」
「…………!!」
別のスキルを乗せた攻撃……エフェクトの色的にアレは「ストロングスラッシュ」かな?さっきよりも一歩深く踏み込んだことで、今度は風に押し負けること無くクリーンヒットする。強烈な一撃が"威風堂々"の胴を薙ぎ払った。
ドデカい悲鳴が響くが、これでもまだ殺し切れたという訳ではない。辛うじて命の緒が繋がったままの"威風堂々"が次に取った行動は……勝てないと判断した上での逃走であった。
「クソ、逃がすか……ッ!」
「…………!!」
逃げると決めるや、"
しかし、風操作を得意とするだけあって逃げ足がめちゃくちゃ速いな……「
「…………!!」
「クソが、意地でも逃げるつもりか!」
「いや、寧ろ好都合だよ!」
こちらが追ってこれないようにと、"威風堂々"は空気弾を乱射して足止めを試みている。防ぐのは簡単だけどその度に足は止まるし、無視して突っ切るのも風圧によるノックバックが強くて難しい。普通なら有効な手段だよね、普通ならね。
でも、私にはコイツがある。ただ防ぐだけでもアモルパレントのように完全無効化するでもない、受けた魔法を
「自分の魔法を受ける気分はどうだ?まぁ、答えを聞くつもりは無いけどなぁ!」
「…………!!?」
足止めのために放ったはずの魔法が己に牙を剥くことに、受けたダメージ以上の混乱を見せた"威風堂々"の逃げ足が鈍る。
そして、私が促す必要も無くオルスロットは加速スキルを連打して"
──流石、チャンスと見るや動きが速いね。
PKと一口に言っても、有名になる程やり難くなるだろうし、進行度の高いプレイヤー相手だと警戒度も実力も高く難しいだろう。それをやり続けてこられたということは、つまりチャンスを逃さない嗅覚とセンスがあるということ。
自分ではそういう楽しみ方はできないし、巻き込まれればクソッタレがと思うだろうけど……無関係な分にはフラットに評価できる。オルスロットは実力のあるプレイヤーであると。
「堕ちろ、トカゲ……「剛剣『地衝斬』」!」
「………………!!」
オルスロットの剣が"威風堂々"の背を穿つ。斬撃の勢いそのままに地に叩きつけられた巨体が地面を波打つ程に揺らし、爆風が吹き荒ぶ。
"威風堂々"はまだ死にたくない、とばかりに翼を揺らし口をパクパクと開くが……やがて力尽き、ポリゴンの欠片となって霧散するのだった。
【モンスター
【討伐対象:ストーム・ワイバーン"
【エクゾーディナリーモンスターが撃破されました】
【称号『爆風墜裂』を獲得しました】
【称号『ストームライダー』を獲得しました】
【
「お疲れ様ー」
「ああ……お疲れ様……でした……?」
──言い慣れて無いのが丸分かりだねぇ。
ずっとトップとして人を使ってたからかな?それともまだ学生だからか……終わったら取り敢えずでもお疲れ様は言っといた方が無難だぜ。
それはそれとして、「偉風導動」の性能は……成る程成る程?攻撃時に風を纏う、単純だけどそれ故に強力って感じの効果だ。ヘルパーT細胞も同じスキルを使ってたから分かる。
「そういえばさ、戦力を整えるならスキルより装備を強くした方が確実なんじゃないの?」
「……キルされた時に付いた借金がずっと残ってるんだ。返済し切るまでは、新王から支給されたこの装備以外は差押えられちまうんだよ」
「借金か。大変だねぇ……ならさ」
「何……?」
改めてパーティ結成の申請をし、この後にも付いて来てくれるよう要請する。
装備の拡充が期待できないなら、せめてスキルや魔法を充実させたいというのは納得だ。それなら私に着いて来れば、目論見が達成されればオルスロットにも『晴天流』を修得させてやれるはず。フラッシュメモリーは使い捨てではないはずだからね、使い捨てだったらベヒーモスで他人が先に取ったスキルは取れなくなってただろうし。
──それに……
「せっかく会えたんだ、手負いのモンスター1匹倒してハイさよならは勿体無いだろ?」
「……それなら、お言葉に甘えさせて貰おう」
申請が承諾され、オルスロットが私のパーティに加わった。戦力としては申し分無いし、廃人の情報量や発想力は助けになってくれるはずだ、色々と頼らせて貰うとしよう。
さぁ、あの日の約束を果たそう……デートの続きといこうじゃないか。いかんなぁ、気分がアガってるのが自分でもよく分かるや。
……
…………
………………
「ここが目的地か」
「そうそう、正確には古城の地下だけどね」
以前にサンラクから教えて貰った、『晴天流』のフラッシュメモリーを使える機械がある場所。ただし彼が使ったルートは塞がれているので、別のルートを探して辿り着くのが今回の目的だ。
ここの敵は、プレイヤーからは『線画の騎士』と呼ばれているモンスターのみ。無駄に強くて硬い癖にドロップも無く経験値もマズい、倒す旨みがまるで無いクソモンスだそうだが……しかもあまり長居すると大挙して押し寄せてくるとか、そこまで悪様に言われてると逆に気になってくるな。不世出の個体とか発生してないかな?
「さて、目的の場所は地下深くな訳だけど。そこに辿り着くにはどうすればいいと思う?」
「……話を聞く限り、地下にはかなり重要な施設があるらしいな。そんな場所を単に扉が開かないので入れません、とは世界観的にもゲーム的にもしないはずだ。考えられるのは何かしらの別ルートがあるとか、扉を開く正規の手段があるとかだな」
「ほう、どっちだと思う?」
「恐らく、後者だ。扉を開くためのシステムを管理している部屋があるとか、開けるためのキーアイテムをモンスターが持っているとか、そういう形である可能性が高い。地下にゴールを設定するならせっかく作ったマップだ、そこに辿り着くまでこの古城を右往左往させるはずだからな」
──成る程、メタ的に考えるとそうなるのね。
流石、考えが纏まるのが早いや。私なら同じ考えに辿り着くとしても、もっと色々彷徨ってからだっただろうね。
結論として、仮にキーアイテムや施設がある場合それは古城の最上階辺りだろうということになる。まずは上へ上へと進んで行こう。『線画の騎士』とやらはいつ出てくるのかな──
「とか、呑気に思ってたんだよなぁ!」
「入ってすぐ出て来たな……!」
「…………!!」
「…………!!」
「…………!!」
「…………!!」
──入って一歩でもう出て来たよ、早いって。
いきなり出て来られたが、それはもう仕方ないので【炎斬『熔命』】と【
4体も出て来たが、1体1体の動きは落ち着いて掛かれば対処できない程でもない。連携をする程の知能が無いのか、仲間意識が無いのか……どっちかは知らんが、おかげで多勢に無勢でも普通に対応できてるからありがたい。
「食らいな、「
「………………!!」
背景の透けて見える不思議な装甲、その薄い部分を「
1体が消滅してできた余裕で体勢を立て直し、勢いそのままに近くに居たもう1体の頭部へ「剛断剣『激震地衝斬』」を乗せて振り下ろす。頭部への攻撃でダメージボーナスが乗り、スキルのバフと耐性低下能力、そして火属性によって鎧の頭から股間の先までが溶け斬れる。これで中身が生き残れるはずも無く、2体目も消滅する。
「もう半分倒した、何て速さだ……!」
「驚いてないで、次もう来てるよ!」
2体を倒して半分に減らしたが、向かう先から更に多数の増援がやって来る。
キリが無い。倒す旨みも無いし、いちいち構うのではなく引き連れながら探索して、邪魔になったら間引くというのが良いかも知れないな。そうと決めたらさっさと決行、善は急げだ。
「ほらオルスロット、行くよ!」
「うおっ!?襟を掴むのはやめてくれぇ……ッ!」
オルスロットの襟首を捕まえ、
しかし、かなり高くまで登ってもそれらしい物を見つけることはできなかった。あんなハンコ絵みたいに同じ姿した奴らの中に隠してるってのは余りに性格が悪いし……ここまで来ると、一番上にそれがあるということは察せられる。
──さて、何があるか、それとも居るか……
「アレも線画の騎士……では、ないな。鎧の見た目が奴らとは違う」
「ボス級だね。どんな奴かな」
最上階、まだ調べていない最後の扉の前には見た目の違う輪郭の騎士が立ちはだかっていた。
どう考えても、扉を守護しているボス相当のモンスターだ。奴自身が地下へと続く扉の鍵を持っているのか、それともあの扉の先に地下へと繋げるための何かがあるのか……奴をぶちのめして、確かめさせて貰うとしようじゃないか。
【モンスター
【討伐対象:
【参加人数:2人】
【エクゾーディナリーモンスターとの戦闘が開始されました】
「さぁ、油断せずいこう!」
「……ああ、やるぞ!」
書くときはいつも原作読み返したりwikiを確認したりしてるんですけど、コントゥアル・ナイトはいつ見てもかなりの理不尽だと思う