ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
「ああああああああああぁぁぁぁ……!」
「結構深いなぁ、地下何mあるんだコレ?」
地下深くへ一直線に飛び降りた私達、既に数分は自由落下しているが未だに果てが見えない。いったいどれだけ深くに施設を作れば、ここまでの自由落下を成せるのだろうか。落下中ずっと続いているオルスロットの悲鳴を聞きながら、そんな割とどうでも良いことを考えてみる。
そうして暇を潰している内に、漸くゴールが視認できるところまで降りてきた。流石にこの速度で床と激突したら死ぬので、ここからは
虹の極光を纏い、重力の縛りから外れ宙に浮かんでいくこの感覚。もう何度も使っているので慣れたものではあるが、それまでの自由落下状態からいきなり切り替わるのはやはり変な感じだ。
床や壁に激突しないように、慎重に速度を落としつつ降下。雑に抱えていたオルスロットもちゃんと姿勢を直してあげて、着地した時にすぐに下ろしてあげられるようにする。
「っと、無事着地成功だよ」
「……寿命が縮むような思いをしたぞ」
それは済まんかった。まぁ、無事に辿り着けたんだからノーカンということにして欲しい。
そんなことはさておき、辿り着いた地下室は見るも無惨な荒れ果て振りをしていた。かつては何らかの研究施設だったんだろうが……今はもうその時の機能を果たすことはもう無いのだろう。
「あったあった、これだね」
「フラッシュメモリーの読み口か」
晴天流奥義書をインベントリアから取り出して、嵌められそうな所を探しているとすぐにそれらしいものを見つけることができた。
早速試してみよう……良し、嵌った。後はちゃんと起動してくれるかどうかだけど……お、これは大丈夫そうかな?
「おお、凄いテキスト量だ」
「……俺には何も見えん」
「そう?なら、使用者にしか見えないのかもね」
晴天流奥義書を嵌めてしばらくすると、装置が起動し大量のテキストが宙に浮かぶ。しかしこれは起動した私にしか見えていないようで、オルスロットには変わらぬ景色が見えているらしい。
テキストから放たれる光の線が、私の眼に注がれ情報が焼き付けられる。それらが完了し全ての光が消えた時……私の脳内には、新たなる力の扱い方がしっかりと刻まれていた。
【晴天流『疾風』を修得しました】
【晴天流『雷鳴』を修得しました】
【晴天流『荒波』を修得しました】
──良し!
新たに三つのスキルを修得。"
「君も使ってみなよオルスロット、上手くいけばスキルが手に入るよ」
「……助かる。借りるぞ」
オルスロットに奥義書を投げ渡し、彼に試させてみる。ベヒーモスのフラッシュメモリーと同様なら再利用はできるはずだが、果たして……
「起動した……!これが、さっきロンミンに見えていたものなのか!」
「お、良かったちゃんと使えたね」
心配していたけど、どうやらオルスロットも晴天流スキルをしっかり修得できたようだ。何を修得したのか見せて貰ったけど、内容は私のと全く同じであった。入り口は皆一緒。
さて、これで古城に於ける用事は済んだ。フィフティシアに帰れば、そろそろシュトーレンが装備の手入れを終えている頃だろう。あまり待たせ過ぎるのも悪いし、流石にそろそろ帰還すべきだな。追憶結晶を使えばすぐに戻れるけど……
「用も済んだしそろそろ帰ろうか。行きは飛び降りるだけで良かったけど、帰りはコレを登らないといけないから大変だねぇ」
「……何か、そういう魔法とかは無いのか?これだけ色々とスキルや装備を揃えてるなら、そういう魔法も修得してそうなものだが」
「ご期待に添えなくて悪いけど、私は魔法に関しては何一つ修得してないんだよねぇ。スクロールなら何個かあるけど、今はどうでも良いのばっかだし」
「……そう、なのか。すまん」
オルスロットの質問をはぐらかして、地道に来た道を戻るように流れを誘導する。せっかく会えたんだし、いきなりサヨナラは寂しいじゃん?もう少しくらい一緒に居てもバチは当たらないと思うんだ、こんな所に置いて行く訳にもいかないし……
それに、ちょっと心苦しいところはあるけど別に嘘を吐いてる訳では無い。追憶結晶はアイテムだから魔法とは違うし、私が魔法を修得してないのは本当のことだからね。「
「この通り、装備やスキルなら色々と充実させられてるんだけどね。魔法に関してはマジで縁が無いんだよね……」
「完全に物理特化型なのか……ん?」
追憶結晶……というか、アイテムやスキルによるショートカットという可能性から目を逸らさせるために色々と武器を出して見せたのだが。どうやらそれによって、ユニークシナリオのフラグの引き金を引いてしまったらしい。
エクゾーディナリーモンスター『黒死の天霊"禍刃剥命"』の討伐報酬【
【ユニークシナリオ『
──強制開始シナリオ!?ちょっ待っ……
何て、通じる訳も無く。私は強制力によってシナリオの舞台へと転移させられてしまう。言葉を発する暇も無い一瞬のことであった。
「お……俺に、どうしろと言うんだ……?」
地下に独り取り残されたオルスロットは、困惑しそんな呟きをすることしかできなかった。
……
…………
………………
…………
……
「ぷげっ」
──投げ出された。ここは……見た目的に『奥古来魂の渓谷』のどこかかな?
急に始まったユニークシナリオによって、強制転移させられてしまった私が最初に見たのは、今や見慣れてしまった禍々しい谷底。上の方には何度も足を運んでいるが、ここそのものが目的地になるのはかなり久しぶりな気がする……いや初めてか?
ともかく、まずは確認からだ。強制的に装備させられた【
「んで、何すれば良いんだ……?」
ユニークシナリオは始まったものの、何をどうすればクリア扱いになるのかが分からない。地下に置いて来てしまったオルスロットが心配だし、できればさっさとクリアして帰りたいが……そう簡単にいくようなシナリオではないだろう。
恐らくヒントとなるのは、黒死の天霊と喪失骸将それぞれの通常種のドロップ装備を集めることで始まるというユニークシナリオだ。今回のユニークは両方のエクゾーディナリーのドロップ装備を同時に装備したことを切っ掛けに始まった……ならば、シナリオの進行も近しい流れを辿るはずだ。
サンラクから通常版の情報は貰っている、そっちを思い出してみよう……確か、『黒死の天霊と喪失骸将を巡り合わせて、亡国の悪姫霊が持っている喪失骸将の頭を返す』だったか。そうすることで二体が同時に成仏し、シナリオクリア……感謝の証であるクリア報酬を貰えると。
だが、この流れを同じように辿るには問題点がいくつかある。全く同じようにとは、少なくともそうは、いかないのは確実だ。
まず、喪失骸将"綺憶喪失"は失った首を自前の炎で補ってしまっているということ。既に自分で代わりを用意しているのに、わざわざ前の首を必要とはしないだろう。
次に、悪姫霊の存在。奴は既に"禍刃剥命"の手で開きにされているし、首もバッチリ取り返されている。もし通常版のようにいけるとするなら、"禍刃剥命"が首を返せばそれで済む。そんなものをわざわざユニークシナリオにはしないだろう。
最後に、理由が違うとは言え成仏する気無く現世に留まり続けてる奴らを、どうやって正気に戻して成仏させてやるかという問題。外的要因でそうなっている"禍刃剥命"はともかく、"綺憶喪失"の方はどうすりゃ良いんだ……?私の
「……まずは、探すか」
考えるだけでは状況は好転しない。一先ず目的となるだろう二体を探そう。
まずは正気に戻す方法を知ってる"
「さーて、何処にいるかね」
渓谷を走り回って"禍刃剥命"を探すが、こんな時に限って中々見つからない。一応通常種の時点でレアモンスターだし、そのエクゾーディナリーなのだから相当レアなのは分かってるのだが……私は通常種の方こそ出会ったことが無いので、全然"禍刃剥命"がレアって気がしないんだよなぁ。
流石に、ユニークを発現させておいて確定エンカウントはありませんはキレて良いと思う。だから何処かに必ず居るはずだが……目的の二体どころか他のアンデットすら見つからない。刻傷と対アンデット性能の高いこの身体が悪さしてるのだろうか……マジで何も何処にも居ねえ!
「………………!!」
「お前か……悪いが、お前の方は後回しだ!」
虐殺でも起こせば"禍刃剥命"を釣れたかも知れないが、何も居ないのではできない。仕方無いので引き続き走り回っていると、背後から物凄い速度で何かが近付いて来る音がした。この音は……馬の足音に金属の擦れる音。つまり……目的の片割れの1体"
こっちが先に見つかったか……それ自体は良いけどコイツをどう対処すべきかが分からない今、下手に触るのは得策ではない。勢い余って殺してしまわないようにしつつ、穏便に追跡を振り切らなければならないが……イケるか?
「ま、やるしかないか」
取り敢えず【炎斬『熔命』】を装備。シナリオ最初の戦闘の火蓋が切って落とされた。
【
『発動条件』:
条件を満たすことで
この時装備される
『クリア条件』:喪失骸将"
どちらでもクリア扱いにはなるが、固有のクリア報酬は成仏時にしか貰えない
撃破によるクリアでは『二度と別離たれず』が手に入る
『クリア報酬』:【???】→
「???」→クリア時に自動修得するスキル。