ただ一つのシャングリラ〜縛りゲーマー、一度きりの人生に挑まんとす〜 作:ナナシノ
「何々、『隣り合う想い』ね……」
成仏したヨハンナが遺していった指輪型のアイテムを見つめながら呟く。
説明文を読む限り、アクセサリーではないようなのでそのまま使えそうだ。既に試せる状態だし早速だけど試してみよう。
──えーと……【
左手の薬指……つまりこれ、結婚指輪ってことなんだよな?別に誰とも結婚した訳じゃないけど着けても良いんだろうか……ま、ゲームだしこんなのいちいち気にすることじゃないか。
指輪を説明文の通りに嵌めてみると、刻まれた紋様が光を放ちインベントリにしまってあるはずの剥命の惨鎌が飛び出してくる。宙に放り出されたそれをキャッチすると、今度は黒のような青のような色の糸が無数に飛び出し私を覆った。
三つの装備が一つのアイテムによって交わり、新たな一つの装備となる。
墨塗りのような黒尽くめの喪服風ドレスから、見た目は然程変わらないものの満天の夜空の如き明るさを持った黒尽くめのドレスへ。色味が変わるだけで、服が持つその意味も180度変わる。
そして、手には一振りの片刃の大剣。
細身の刀身は黒と白に別れており、二つが交わる箇所はまるでヴィンセントとヨハンナが互いの手を握っているかのよう。側面には白百合の意匠が盛り込まれ、柄頭には歪んだ時計が黄金の短針と漆黒の長針で6:01を指した状態で止まっている。また二つの針は重なるという暗喩なのだろう。
剣、ドレス、指輪。
三つを合わせて、一式装備──【
────────────────────
【
[カテゴリ]
・大剣
・防具
[使用方法]
・【
・『隣り合う想い』は使用者の左手薬指に嵌めてから刻まれた紋様をなぞることで起動できる
・【
[効果]
【共通】
・この装備は、あなたのHPと耐久値を共有する
・この装備は、あなたのHPが0になると同時に破壊され、それまで装備していた時間の3倍の秒数分リキャストタイムが課せられる
・あなたはアイテムによってHPを回復できない
【武器】
・アンデット特効
・この武器は実態を持たない相手にも攻撃できる
・『死者の手』:この武器の攻撃がヒットした時、相手は『あなたのレベル-相手のレベル』%の確率で即死する 他のプレイヤー・mobを撃破する毎に、この武器の体感重量は減少する。
・『
【防具】
・VIT+30000 他のプレイヤー・mobを撃破する毎に、VIT補正は30ずつ加算される
・状態異常無効
・即死無効
・『
・『
────────────────────
──ふむふむ……成る程?
端的に言えば、『倒せる相手が多い程に強みが輝く
元からそんな気はあったけど、合体したことでより顕著になったって感じ。月天霊装との重ね着ができないのはちょっと残念だけど、この装備を使いたいって状況なら多分、月天霊装よりも強くなるだろうしまぁ大丈夫かな。
「うわ、結構時間経ってる……そろそろ戻らんと」
そう言えば、と時間を確認してみると出発してからそろそろ三時間が経とうとしていた。
元々、試し斬りついでに晴天流スキルを取るだけのはずだったのにな……流石に二人とも待ちくたびれてるだろうし、さっしとフィフティシアに戻らないとだな。戻る時は
「ん……
起晶転結を発動しようと追憶結晶を取り出した手にフクロウが止まる。嘴に咥えられている手紙からそれが伝書鳥であることは分かったが、いったい誰が放った鳥なんだろうか。
普通に考えたら、シュトーレンかアクアリエのどちらかからの『早よ戻って来い』って手紙なんだろうけど……開けてみたら、実際はそのどちらでもなくオルスロットからであった。
『ロンミンへ
急にユニークが発動したようだが、無事にクリアできているだろうか。
俺の方は自殺してリスポーンしたから、既に街に帰還できているので安心して欲しい。
今日はありがとう。アンタのおかげでスキルをかなり増強することができた。
急な別れになったのでフレンド登録はできなかったけれど、また会う機会があったらその時はフレンド登録をしよう。そして、また何かしら一緒にモンスターを狩りに行こう。
俺は今日はもうログアウトするけど、改めて感謝を伝えておくよ。
ありがとう。
オルスロットより
追伸:返信は不要だ』
──あっ……ごめんね、君のことすっかり頭から抜けてたよ。
そう言えば、ユニークに夢中でオルスロットのことがすっかり抜け落ちてたな……無事に脱出できたようで何よりだけど、いや本当にごめん。君のこと完全に頭から抜けてたや……
それにしても、このタイミングで来たってことは待ってたのかな?ユニークシナリオが終わって私が手紙を受け取れるようになるのを。ただの小鳥かと思ってたけど中々やるじゃない。
「あれ、でも
返信は不要とのことだけど、一応お礼と詫びを書いた手紙を送っておく。
また、機会があれば一緒に遊ぼうぜ!
『……よし、戻るか』
これでもう、特にやることは無くなったはず。
追憶結晶を起動してフィフティシアに戻ると、転移先に待ち構えていた二人に速攻で捕まるのだった。
「言い訳は?」
「いや、あの、シュトーレンをどれだけ待てばいいかなんて離れてたら分からないしその」
「言い訳は?」
「……オマタセシテスンマセンシッタ」
──うぅ、圧が強えよぉ……
……
…………
………………
「ま、待たせてたのは私もそうだからこのくらいにしておくわ。流石に可哀想だしね」
「そう思うなら、最初から詰めないでやんなよ」
──ホントだよ、さっきの時間まるまる無駄だったんじゃないかよぉ……
口に出したらまた面倒臭くなりそうなので、喉の奥に秘めておく。
文句よりも、シュトーレンが戻ってきているということはつまり、行なっていた装備の手直し作業が終わっているということだ。アクアリエのアクセサリーと併せて真価を発揮する防具と聞いてるけど、果たしてどんなものか……
「気になる?なら刮目しなさい、陸・海・空の強者を素材として作った月天霊装以上の最高傑作!その名を【
────────────────────
【
[カテゴリ]
・防具
・アクセサリー
[内訳]
・三界王の頭巾(VIT+25000)
・三界王の法衣(VIT+25000)
・三界王の袴(VIT+25000)
・三界王の草履(VIT+25000)
・三界王の森晶宝剣
・三界王の神薫宝玉
・三界王の冥雷宝鏡
[効果]
・この装備は、一式全てを同時に装備することで初めてその効果を発揮する
・あなたは陸海空を自由に行動できる
・あなたは好悪問わず環境の影響を受けない
・あなたは非戦闘中、ボスなど一部を除く凡ゆるモンスターから敵対されない
【王威解放:
・戦闘開始から15分が経過する、または累計20000ダメージを受けることであなたは【王威解放】状態になれる
・あなたのMPを消費して、敵対している相手への特効を持つ魔法生物を召喚する 召喚時間は消費したMP1につき60秒となり、相手との戦闘時間が長い程その性能は上がる
・あなたのMPを消費して、『(あなたのレベル-相手のレベル)×2』%の確率で対象を
・あなたのMPを消費して、『
[特殊状態『
・この状態の対象は行動に『
・この状態の対象は接触した相手に継続ダメージを与え、属性耐性を低下させる
・この状態の対象は『
────────────────────
「えっぐ……」
渡された新装備【
何でも、元々は"
私がエレクトロン戦の副産物としてカムイ達の素材を持って帰ってきたことで、陸・海・空の強者の素材が揃ってしまった。真の三位一体の防具を作れるようになってしまったのだ。
よって、急遽予定を変更してベースはそのままに
早速装備してみたい……ところだが。それをするには一つ問題がある。
この装備は、アクセサリーまで含めた一式装備なので、装備枠だけでなく追加でアクセサリースロットが3枠必要になる。
今の私には、スロットが7枠……しかし、その内5枠は刻傷によって3分……魔眼装備中は2分でアクセサリーが壊れる制限がある。
壊れることを前提とした使い捨てアクセサリーと違い、この三種は壊れることなくセットで揃えていなければならない。8枠目のスロットが無い今の私に、この装備は装備できない……!
「……スロット、増やせば良いじゃないの。確か、もう少しで140レベ超えるでしょう?」
「あ」
──そうじゃん。
言われてみれば、確かにそうだ。
今の私のレベルは137……言う程簡単ではないけど現実的に上げられる範囲だ。
「ちょっとレベル上げて来る」
「いってらっしゃーい」
「すぐ戻って来なさいよ」
「……なる早で戻って来るよ」
という訳で、さっさとレベリングを終わらせるために水晶巣崖へ。蠍共とレベル140に上がるまで戯れて、スロットを空けてすぐに帰還した。
これで、刻傷の影響に無いアクセサリースロットが3つ確保できた。早速今着けている
「どうかな?」
「とってもカッコいいよ」
「……一緒に持つなら、アステヴァルはあんまり似合わないわね。別の武器に変えてみて」
「えーと……こう?」
アステヴァルは似合わないとのことなので武器を色々と変えてみたが、その結果見た目的に一番似合うのはディアナとアルテミスの二刀流ということになった。袖の長さで柄を握る手が隠れて刀身だけが見えるのがカッコいいらしい……鏡で見てみると、成る程確かにと思える姿が写っていた。
──うーん、私カッコいい!
「それじゃあ、渡す物は渡したから私達はもうログアウトするわね」
「あんまり夜更かししちゃダメだよ」
「ありがとう、二人とも。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
鏡に写った自分の姿に満足して、何度もポーズを取っていたらもうそんな時間になっていた。まぁ、大学生なら講義があるし夜更かしはできんか。
ログアウトする二人を見送ると、私にも眠気が来たようで大きな欠伸が出る。もうだいぶ遅い時間だから当然と言えば当然のことだが、ゲームしてる間は眠気とか忘れがちになっちゃうよね。
今日はもう寝よう、明日も仕事はあるし……そう決めて、私もログアウトボタンを押すのだった。