先生がフィジカルモンスターなヒト型邪龍系女先生だった世界線   作:ジンオウガを飼いたい

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フィジカルモンスター・ティーチャー

 彼女は 同性にしては あまりにも大きすぎた

 

 大きく 豊満で 艶やかで そして 竜過ぎた

 

 それは まさに 破滅だった

 

「もっと火力のある火器を用意しないと私の皮膚は貫けないぞ?」

 

 

 キヴォトスの外から来たという女性。弾丸を1発でも受けてしまえば致命傷になり得る程に脆弱な肉体を持つ…そう聞いていた私 早瀬ユウカは目の前の光景を受け入れられずにいた。

 

「ぜっ、全然効いてないぞ!? なんで!?」

 

 失踪した連邦生徒会長が立ち上げた超法規的機関 特務捜査部シャーレ。そこを奪還することが出来ればサンクトゥムタワーの制御権を取り戻せる。

 だが近辺では戦闘が勃発しており私たちは先生と共に進行していたのだが……先生一人でどうにかなってしまいそうな勢いだった。

 

 だって、弾丸が効いていないのだから。

 着用している背中と胸元がばっくりと開いているコートが防弾仕様なのだとして、弾丸を受け止めることは出来たとしてもその衝撃は先生にとって相当なダメージになるはず。

 

 しかも胸元なんて開けっぴろげで豊満な胸が零れ落ちるか否かの瀬戸際といった状態で、何にも守られていない。

 

「私の鱗……じゃなかった、私の肌は鋼よりも頑丈なんだよ。そんじょそこらのアサルトライフルやらサブマシンガンやらで貫けるものか」

 

 そんなむき出しの素肌に弾丸を食らっても、聞こえてくるのはカンッという甲高い音。人体に着弾したものとは思えない異音。

 間違いなく銃弾は浴びている。キヴォトスの外から来た人物が弾丸を浴びてなお、一切の傷を負わずに私たちの前にいる。

 

 

「悪い事するならなぁ……これくらいド派手にやらないと私は認めないぞぉ!」

 

「「くるまああああああぁぁぁぁあああ!?!?」」

 

 雨あられの如く降り注ぐ弾丸を真正面から受けながら路肩の軽自動車を軽々と持ち上げる人物の、一体どこが脆弱な肉体の持ち主なのだろうか。

 

 見た目は私が所属するミレニアムサイエンススクールの生徒会長を務める調月リオ会長に似ている。

 会長を白髪にしてポニーテールに結い、背を高くして明るい性格にしたような感じ と身近な人で例えられる容姿をしているから初対面感は薄い……のだが、それにしてもはっちゃけ過ぎており、デタラメが過ぎていた。

 

「私たち……必要ですかね?」

 

「……さぁ?」

 

 トリニティ総合学園の生徒 羽川ハスミさんの感想はごもっともであり、それに対するゲヘナ学園 火宮チナツさんの困惑した様子での曖昧気味な返事も無理のないものだった。

 

「せぇぇのぉっ、そおおぉぉぉい!」

 

 右腕だけで持ち上げられた軽自動車が大して力む様子もなく放り投げられ、暴徒達の目の前に落下。声だけは力んだ風を装っているものの、まだまだ余裕といった様子。

 

「さぁ、悪い事のお手本は見せたぞ? 今のを参考に自分なりの悪事を考え、私に実践してみせたまえ! 全部真っ向から受け止めて上げるからさぁ!」

 

 後ろ姿しか見えないが、先生の目がキラキラしているのだろうなという予想は楽しげな口調から容易に想像することが出来た。

 

 ダンっ、と先生が足元の道路を踏みしめると戦闘によってボロボロになった路面に亀裂が走り、踏み付けた勢いで捲れ上がる。

 これも大して力んだ様子はない。先生からすればなんてことの無いアピールだったのだろうけど、それが暴徒達には相当な効果を齎していた。

 

「無理無理無理無理無理! あいつ一体なんなのよ!?」

「弾丸効かない! 痒そうにもしない! 車は投げる! ド派手に悪事をやれなんて突然めちゃくちゃは言い出す! かと思ったら真っ向から受け止めるなんて言い始める! 挙句路面は引っくり返す! あいつ人間なの!?」

 

「……大パニック状態ですね」

 

 守月スズミさんも警戒を解いて銃を下ろしてしまうくらいには、暴徒達のメンタルはボロボロにやられている。

 あっちへウロウロ、こっちへウロウロ、右往左往する暴徒同士でぶつかり合って転倒、転倒の拍子に引き金を引いてしまい暴発……それはもう目の当てられない惨状と化していた。

 

「なんか、見ているだけでも哀れに思えてくるわね…」

 

 立場も忘れて慰めに行きたくなるくらいには、暴徒達は手酷くやられている。

 先生が直接攻撃をした訳では無いから肉体的には無傷だが、精神的にはそれはもう手酷くやられている。

 

 蜘蛛の子を散らすようとはまさにこの場面にこそ相応しいと思うような、ギクシャクとした覚束無い足取りで一人また一人と逃走する。

 

「先生、追撃は」

 

「うんにゃ、要らんでしょうよ。あの子達には悪いけど結構しっかりめにメンタル抉っといたからね、当分は悪さをする度に私の顔を思い出しちゃうだろうねぇ」

 

 ハスミさんの言葉に否定の言葉を返しながら先生は振り返った。

 

 腕や足といった各部位ごとに見れば不自然な程に巨大かつ逞しいパーツ構成をしているのに、195cm前後と自己申告された高身長がそれ等を『引き締まっている』や『美しいプロポーション』と表現出来るほど自然に纏め上げている。

 そんな先生の口の中には、肉食生物を思わせるギザギザとした歯が並んでいた。

 

「悪い事をするのは大変結構。やんちゃするのも若いうちの特権だからさ、止めろとは言わないよ。でも、中途半端は許せないんだよねぇ」

 

 にいぃっ……

 

 先生は笑った。タレ目の三白眼が細められてギザ歯が剥き出しにされたのと同時に、私は心臓を見えない手にギュッと握りしめられたかのような感覚と寒気に襲われる。

 

 恐怖を感じたのは否定しない。あれだけの大暴れを見せ付けられては恐ろしいと感じるのも無理からぬこと。

 

 同時に、大人という存在の逞しさのようなものを感じた気がした。

 普段関わりがある先輩方に感じる逞しさや頼りがいに酷似しつつもそれとはまた別ベクトルの、筆舌に尽くし難いもの。

 

「私は()()()()だからさ。悪さをするなら徹底的にやれって教えることにしているんだよ。勿論、悪さをしないならそれはそれでOK! 良い子は良い子で可愛いからねぇ♪」

 

 明るい口調で話しているが、私たちの表情は引きつっていたことだろう。

 引き攣るな、と仮に言われたとしても困る。

 

 ヘイローもないのに弾丸を真っ向から受け入れて無傷であり、片腕で軽自動車を持ち上げたり放り投げるなんて芸当はキヴォトスで生まれ育った生徒達でも簡単に出来るものでは無い。

 

 実際に見た訳では無いのだが……ロケットランチャーやバズーカを2丁持ちして乱射したり、軽自動車を持ち上げるどころか引き裂いたり出来てしまいそうな気がした。

 

「リンちゃんやリンちゃんや。シャーレオフィスはこのまま道なりに直進で良いのかえ?」

 

『え、あっ…えぇ、そうね』

 

 連邦生徒会長が不在の今、代行を務めている連邦生徒会所属 七神リンさんは私たち同様に聞いていた話と全く違う大暴っぷりを見せ付けられ放心気味になっていた。

 そこにいきなり話を振られたせいで受け答えが妙にしどろもどろになっている。

 

 連邦生徒会長不在に伴う様々なゴタゴタに対する弁明でこんなしどろもどろな対応をされたら怒ってしまいそうだが、今回は原因が原因だから心の中で『ドンマイ』と声をかけてあげるくらいしか出来ない。

 

「よぉし。なら少し急ごうかねえ。誰か、車運転出来る子いる?」

 

「あの、私なら運転出来ますけど……」

 

 いきなり車の運転がどうのと言い出した先生。個人で車を保有しているのだろうか。

 一応免許証を持っている私が名乗り出ると先生は嬉しそうに頷くと歩き出す。巨体故に歩きにくいのか体を左右に揺らす独特な歩き方でのそのそと歩く様は、恐怖を感じさせた相手と同一人物だとは思えない可愛らしさを感じさせられた。

 

 放り投げたものとは別の車に向かって歩いていく。

 今時の車とは違う古いながらも味のある車の運転席側のドアに手をかけて引っ張るが当然開かない。

 

 一度だけ引っ張って開かない事を確認した先生は、今度は力づくでドアを引っ張り破壊してしまった。

 

「たしか映画だとこんな感じで……」

 

 何やらガチャガチャと弄り倒して数分後、車のエンジンがかかる。銃声とはまた異なる大きな音が鳴り響き、しゃがみ込んでいる先生の体と車体が小刻みに震え出した。

 

「よぉしできたぁ! ほら、皆乗って乗って! ユウカちゃんは運転お願い!」

 

「あの、先生は?」

 

 先生の勢いに押されて私たちは車に乗り込んだが、車は4人乗りであり先生が乗り込む余地がない。

 そもそも身長的に乗り込んでもキツキツだろうけども、かといって私たちだけ先行するのも……

 

「へーきへーき。横併走するから」

 

「へっ、へいそう? 車と並走…並走!?」

 

 ひょっとしてそれはギャグで言っているのか。

 

 無茶苦茶な内容過ぎて並走という単語が一瞬だがピンと来なかった。

 ギャグにしては笑えない内容のギャグだが、先生の目は冗談を言っている人の目ではない。本気の目だ。

 それに先程までの大暴れを加味してしまうと、この人なら車との並走も可能に思えてしまう。

 

「ほらほらぁ。ちんたらしていると車も止まっちゃうだろうし、シャーレの建物占拠されちゃうかもよぉ?」

 

「……ああもう! 考えるのナシ! ぶっとばしますから遅れないでくださいよ!」

 

 状況的にもここで問答を繰り返して時間を浪費するのはあまりにも無駄だ。先生のデタラメぶりにも一々付き合っている暇はない。

 

 シートベルトを掛け、クラッチペダルに左足を乗せる。

 マニュアル車の免許証を取得しておいて良かったと過去の私を褒めている横で、先生は軽く準備運動をしている。

 

 屈伸をし、アキレス腱伸ばしをこなし、上半身を左右へ捻る。

 

ばるんっ…ばるんっ……

 

 その度に、豊満な胸が上下左右へ揺れている。

 

「「「「…………」」」」

 

 全員が、その胸に釘付けになった。

 

「……スケベ」

 

 先生の微笑ましそうな笑顔と、それに見合わない発言に顔を逸らしたタイミングも私たち4人は完璧にシンクロしていた。

 

「終わったら皆でお風呂でも入るかい? そうすれば見放題だよぉ?」

 

「「「「勘弁してください!」」」」

 

 声もシンクロした。

 

「よぉし! シャーレ目指してレッツゴー! 私の第二の棲み家(グニタヘイズ)が待ってるぞぉ!」

 

 第二の棲み家と言ったはずなのに、変なルビが振られているような気がした。

 

 私たちと失踪した連邦生徒会長が指名した人物 先生こと庵治窟(あじくつ) ヤマタさんのファーストコンタクトは、かなり異質なものだった。

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