俺の家がセーブポイントにされてるんだけど!?   作:新月

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第11話 お外にお出かけ(ヒーロー)

「おーい、メタルマン。ちゃんと付いてきてるか?」

『くどい。ずっと君の真後ろを歩いている』

「へーへー、そうですかっと……」

 

 俺とソラ、そして透明のメタルマンは外を歩いていた。

 目的地はホームセンター。そこである程度の道具と資材を買い込むつもりだった。

 

「けど凄いわねー。こうして後ろを歩かれているらしいけど、声以外本当に見えない」

「あんま喋んない方がいいかもな。変な独り言言ってる奴に見られるかも……」

『それだと私の指示が出せないだろう? ……仕方ない。おい、何かデバイスか何か持ってないか?』

「あ? スマホなら持ってるけど……」

 

 そう言って、俺はスマホを取り出した。

 ……すると直後、それが空中に“浮く”。

 

「うおっと!? びっくりしたー、アンタが持ったのか……って、おい! 何するつもりだ……!?」

『単純な仕組みだな。ほら、これでいいだろう』

「あっとっと!?」

 

 そうして、一瞬浮いていたスマホが俺の手元の上で落下する。

 それを慌てて受け止めて、画面を確認してみると……通話状態? 

 

『あー、アー。どうだ?』

「おお! スマホから直接声が聞こえる!」

『これなら無から声が聞こえているわけではないから誤魔化せるだろう。問題無いな?』

 

 なるほど、確かにこれならスマホから声が聞こえているだけで、それほどおかしくはないだろう。

 懸念点としては、街中でスピーカー状態にして通話してる変な男と見られるくらいだろうが……まあ、この際そこは目を瞑ろう。

 

「無い無い。スッゲーな、繋がるなんて。もしかして、あんたの世界にもスマホあったのか?」

『ふん。構造が単純過ぎて簡単に調節出来ただけだ。そんなものよりもっと発達したデバイスはいくらでもあった。この世界が遅れている』

「へーへー、そうですかーっと……」

 

 ちょっと感心したら、すぐ馬鹿にしてくる。

 もうコイツ放置して帰ろうかな、とちょっと思っていると……いつの間にか、交通網の多い交差点にたどり着いていた。

 目の前を、自動車がブロロロロっと行き来し合っている。

 

『……これは』

「なんだ? 自動車が珍しいのか? いや、そうだな……ははーん、言う事分かったぞ。“こんなロートルな物体が走ってるなんて、思っていなかったー”、だ」

『……その通りだ。良く分かったな』

「やったねカイト! 大正解よ!」

「なんだろう。当てたのに全然嬉しくねえ」

 

 ったく、まあ予想は出来たけどさあ。

 スマホを遅れてる、というからには、メタルマンの世界は科学技術が全般的に進んでいるんだろう。

 ユウカの時とは逆に、メタルマンにとっては時代遅れの世界と言っても過言では無いと。

 

 ……まあ、気持ちは分かったけど、だからと言って俺の世界をここまで馬鹿にされ続けるのもなあ。

 正直、助ける気持ちが無くなるっていうか……ユウカと違って、そこまで助けたい気持ちが湧かないというか……

 でもなあー、普通に人命掛かってそうなんだよなあ、それを聞くとなあ……

 

『…………』

「ん。どうした? そこまで古い事にショック受けてんのかアンタは」

『いや……』

 

 急に黙り出したメタルマンに対して、そう問いかけると……

 

『──“人が、多いな”』

 

 そんなことを、ポツリと溢していた。

 

「あ? そうか? 今日はそんなに多くは無いと思ってたけど……」

『街中を出歩く人が多い。……それに、自然も多い』

「まあ、子供連れの人が多いわね。後、自然って街路樹の事? それくらいしか見える自然は無いけど?」

『……そう、なのか』

 

 俺とソラがそう返していくと、口数がだんだん少なくなっていくメタルマンだった。

 ……? 一体どうしたんだ? 

 

 ふと、ソラがああ、っと納得したように声を出し始めた。

 

「なるほど、そっか。彼の世界って、“人口が大幅に少ないから”」

「ん? そうなのか?」

「そう。それに確か“空中要塞”で、機械だらけだから緑もほとんど無いわ。酸素は作ってるから問題ないらしいけど」

『……良くそこまで知っているな。私の世界を異世界と呼ぶ割には』

「へへー。言ったでしょ、女神はなんでも知ってるって」

 

 自慢げにメタルマンの世界を説明していたソラは、得意げな顔で振り返っていた。

 しっかし、空中要塞ねえ……響きだけだったら、男のロマンのように聞こえるんだけど……

 ……まあ、メタルマンが様子がおかしい件からすると、それなりの苦労はあるんだろうな。侵略者がいるって話だし。

 

「……あ! そうだ! おい、ここから先信号渡るから、透明なアンタは気を付けろよ! 絶対だぞ!?」

「あー。そういえば見えないから、間違って信号で轢かれちゃいそうねー」

「割と洒落抜きで笑い事じゃねえからな!? 分かったな!?」

『……ああ』

 

 いや、本当に分かってるんだろうか……返事が上の空っぽいんだけど。

 まあいいや。俺はとりあえず深く考えずに、そのまま目的のホームセンターに進んでいく事にした……

 

 ☆★☆

 

 ──何とも呑気な風景だ。あくびが出そうだ。

 

 私は、ここまでの道のりを歩いて来てそう思った。

 異世界という話など、最初は信じていなかったが……ここまで文明レベルが違うと、逆に納得出来る話だ。そう思っていた。

 はっきり言って、私の世界に比べて文明レベルは低い。低すぎる。

 

 車など、自動運転になっていない。

 信号機など、ロートルすぎるデザインだ。

 空中の輸送用ドローンなど、全然飛んでいない。

 セキュリティ装置など、一切設置されておらず。

 

 はっきり言って、私の世界の方が何世代もの突き進んでいる。

 そう。

 

 ──“戦うため(インベーダー対策)の技術として、何世代も”

 

 ……私の場所は空中要塞だ/地上には住めなくなっているから

 ……私の場所は自然が少ない/侵略者対策の武装を設置する必要があるから

 ……私の場所は人はほとんど歩かない/外を出歩くのは危険だから

 

 だから、そう。

 “あくびが出るくらい、平和な世界だ”。

 私の、一番に思った感想はそれだった。

 

 ……この世界には、インベーダーはいないらしい。

 だからこそ、こののんびりぐあい。

 だからこそ、この気楽さ。

 ……だからこそ、この平和だと。

 

「……おい、大丈夫か? メタルマン。さっきから黙ってることが多いぞ」

『……問題ない。別に気にすることではない』

 

 ああ、そうだ。気にすることでは無い。

 ただ私が勝手にそう思っているだけ。私が勝手に感傷しているだけ。

 

 私が、ただ“この世界が羨ましい”と、思っているなど。

 

 ……その感情を押し込み、ただ私は彼らについて行く。

 余計なことを考えるな。私はただ、武装を強化しに来ただけだ。

 この世界の事など、考える必要などない。そう思い、ただただ歩いていると……

 

「カイトっ?!」

「──っ?! 危ねえ!?」

 

 急に、ソラとカイトとやらが叫びだす。

 その方角には、子供と……“止まらない自動車”。どうやら信号無視とかいう奴らしい。

 カイトは咄嗟に子供を庇おうと走り出そうとしており……

 

 ──それより早く、私が子供にたどり着いた。

 

 ☆★☆

 

 ……それは、一瞬の出来事だった。

 

 信号を渡っている子供に向かって、止まりそうも無いスピードで走っている車を見つけた時。

 俺は咄嗟に、子供を庇おうとして走り出した。

 今思うと、全然間に合うはずなかったんだけど。

 

 けれど……俺が追いつくより前に、“子供がふわりと浮いた”。

 

「──っ?!」

 

 それは、一瞬の浮遊で。気づいた時には、子供は信号を渡り切った場所に立っていた。

 一瞬過ぎて、子供がワープしたのかと見間違うほど。

 先ほどまで子供がいた場所に、猛スピードの車がそのまま走り去って行くのが見えた。

 

 信号前に立っている子供は、何が起こったのか良く分からずに、キョロキョロと顔を動かしている。

 

「──!? ボク君!! 大丈夫だった!?」

 

 すると、その子の保護者らしき人が、急いでその子供に向かって走っていった。

 保護者の方も一体何が起こったのか良く分からなさそうだったが、子供が危険な目にあって、無事で済んだ、ということは分かったらしい。

 泣きそうな顔で、良かった……! っと、子供を抱きしめていた。

 

「……お前か?」

 

 俺は、つながっているスマホに向かってそう問いかけた。

 

『……ああ』

 

 返事は、一言。しかし、確かな肯定。

 

『……全く。だからロートルは嫌なんだ。あの車、自動停止機能が付いていないのか? 私の世界の運搬は全自動で、あんな事故など起こらないというのに……』

 

 そうぐちぐちと、言葉をこぼし始めるメタルマン。

 それに対して、俺は……

 

「ありがとう」

 

 ただ一言、お礼を言った。

 

『……予想外だな。勝手な行動をするなと怒られるかと思ったが』

「人助けに、怒るも何もねえだろ。人命優先だ。お前こそどうなんだよ、逆になんでこっちの世界の子供を助けてくれた?」

 

 ……その俺の問いに対して、しばらく黙った後。

 

『……別に。この世界で、わざわざ血を見るのも嫌だっただけさ』

 

 そう、大した事ないように、そう言った。

 

「……そっか。それでも、ありがとう」

『ふんっ……』

 

 まるで何かを誤魔化すかのようなその鼻息に、俺はちょっとクスリと笑ってしまっていた。

 

「あー、びっくりしたわ……ちょっともう、止めてよー。目の前でスプラッタなんて女神でもたまったもんじゃないわ……」

「へえ? お前、あっさり人に“死んだんだ”っていうのに、目の前で死なれるのは嫌なんだな?」

「当たり前でしょう? そんな光景見せつけられるのは普通に嫌よ、もう……」

 

 ぷんぷん、とソラは怒りながらそう言ってる。

 さて、と声を上げて……

 

「それじゃあ、さっさとホームセンターに行きましょ? もう直ぐそこでしょ」

「あ、そうだな。よし、行くか。アンタもちゃんとついてこいよー」

『ふん、言われずとも』

 

 そうして、俺たちはホームセンターに向かってゆっくり歩き出した。

 思ったよりも、人情味がありそうなメタルマンと一緒に……

 

 

 ☆★☆

 

 そして、ホームセンターでは。

 

『おい、正気か? この程度の品揃えしかないのかこの店は? 子供の工作用レベルか?』

『待て貴様、それを買うつもりか? どう見ても性能が低いだろう、そんなことも見て分からないのか?』

『おい、半導体は無いのか? 何、店が違う? なら後で行くぞ。高くて買えない? たわけめ、そこで妥協してどうする!』

 

 やっぱコイツ、嫌いかもしれねえ。

 俺はそう思った。




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