俺の家がセーブポイントにされてるんだけど!?   作:新月

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第16話 女勇者、またやって来た

「……よし、大丈夫かユウカ?」

「う、うん……大丈夫、もう落ち着いたよ。……グスッ」

「あ、まだ落ち着けてねえなこれ」

 

 メタルマンをようやく返した直後、そのまま入れ替わるようにやってきたユウカに対して俺は間違って暴言を吐いてしまっていた。

 メタルマンと勘違いしていたとはいえ、ユウカに対してクリティカルヒットするような内容だったため、お昼ご飯を含めてなだめるのに必死になっていた。

 しかし、この分だとまだ収まり切っていないようだ。微妙に涙がちょいちょい出ている。

 

「まあ、文字通り自分の命を一度落としたシチュエーションを、乗り越えて戻ってきたのよ。嬉しさと達成感でいっぱいだっただろうに、あの言葉じゃねえ……いつでもやってきて良いよって言ったのは、どこのカイトさんかしら〜?」

「ちっくしょう、めっちゃ煽ってくるメスガキなんだけど、今回に関しては全面的に俺が悪いから何も言えねえ。とりあえずユウカ、本気ですまなかった……この通り」

「う、うん。良いよ……君が“ワタシ”に対して言ったわけじゃないって事が分かったから……」

 

 そう涙を拭いながら、許してくれたユウカだった。

 ひとしきり泣いて落ち着いたのか、ユウカは俺に対して質問してくる。

 

「……ところで、一体何があったんだい? カイト、君があそこまで声を荒げるなんて……いや、割とあったか……あ、ソラ様が何かしたのかい?」

「え!? 酷いユウカちゃん!? なんで私が何かやったって決めつけるの!? え、私あなたに対して何かした!?」

「えっあっ! いや! 何というか、ボクに対してというより、カイトにとても迷惑掛けてる印象が強いなーって思ってしまって……つい」

「それ言い訳しているように見えて、全然言い訳になってなくない!? むしろ肯定してない!?」

 

 目をそらしながらポリポリ頬を掻いているユウカに対して、ソラは驚きの表情でそう迫っていた。

 おい、テーブルの上に乗るなロリ女神。

 いや妥当な評価だろ、寧ろ他人の目から見ても迷惑かけてる様に見えてる事を自覚しろやこのクソ幼女。

 

 テーブルの上から幼女女神を猫の様に持ち上げて降ろし、俺は改めてユウカに状況を説明する。

 

「いやまあ、なんつーか……ユウカと同じ様なセーブポイント利用者が現れたんだよ」

「セーブポイント利用者……? という事は、ボクみたいにセーブクリスタルに触って記録した人がいるって事かい?」

 

 そうそう、と俺は肯定する。

 それをへー、という表情とともに聞いたユウカは、何かに気づいたのか表情を変えて……

 

「……ということは、もしかしてその人も……“死んだのかい?”」

「……まあ、な。さっきまでその対応してたんだよ」

「そっか……それは、まあ、大変だっただろうね……ボクの時でさえ、あんなに混乱してたのに……」

 

 ユウカも死に戻り経験者だからか、あった事のないメタルマンに対して同情的な表情をしていた。

 それはそうと、とユウカが切り出し。

 

「……それで。ボクの時と同じ様に、その人の事も元気付けていたのかい? お菓子を沢山買ったり、ご飯を食べたりとか? 君の事だから、想像は簡単につくよ。目に浮かぶような……」

「いやー、まあ……なんというか、めっちゃ文句言われまくった記憶が強いな。なんかパーツが必要だから道具を買えだとか、騒音に対して俺達に配慮する必要はないだろ、とか……」

「は?」

 

 ……それを聞いた瞬間、ユウカは表情を変えて、目を見開いていた。

 するとだんだん、口をまっすぐ横にした様な無表情に変わっていっており……

 

「……それは、その。一応聞くけど、カイトかソラ様が、その人に対して何か致命的な事をしたのかい? だから不機嫌だったとか……?」

「いやー、元から疑い深いやつだったな。それでこっちのセーブポイントの話も信じず、ずっと不機嫌のままだったよ。結局あっちも人の命掛かってるから手助けはしてやったけど、めっちゃ大変だった……」

「……そっか」

 

 それを聞くと、ユウカは分かりづらいがよく見るとムッとした表情に変わっており……

 

「……事情は詳しく知らないから、ボクが口出しすべきじゃないとは思うんだけどさ。……随分と、君たちに対して失礼な人がやって来てたんだね」

 

 っと、細い目つきでそう呟いていた。

 すると、口元に手を当てて何かに気づいたように。

 

「……そうか、よく考えたら“異世界人同士が互いにすぐ信頼出来るとは限らない”のか。君たちに対して、危害を加える可能性のある人も来る可能性が……? だとしたら危なかったね。君たちが無事で良かった……」

「あー、そこは一応大丈夫。この家に来れる人って、“私の本体が選んだ人しか来ない”はずだから。選別はしっかりしてるわ」

「そうなのかい? ……けれど、君たちに迷惑がかかっていたのは事実でしょ? あまりその人と、関わらない方がいいんじゃないかな……?」

 

 そう言って、俺たちに心配してくるような目線を向けてくるユウカ。

 やっべ。ちょっとあしき様に言いすぎたか? 

 まあ、メタルマンに凄く迷惑かけられたのは事実だけどさ。……まあ、一応庇ってはおくか。そこまで目の敵にする必要のあるやつじゃないし。

 

「いやまあ、良いところもあったんだぞ? 子供死にそうな所助けたりとかしてくれたし。悪いやつでは無さそうだったよ」

「そうなのかい? ……すまない、ボクにとっての恩人達が迷惑を受けたと聞いて、ちょっと冷静になれていなかったよ」

 

 そう言って、かぶりを振って目を瞑るユウカ。

 熱くなりすぎたと反省しているようだ。

 

「……一応聞くけど、他にも何か迷惑かけてられてないかい? 何か失礼な事を言われたりとか……」

「そうそう!! そう言えばあいつ、女神である私のいう事全然信じてなかったのよ!? 言う事聞かせるまでどれだけ掛かった事か……!! 全く、人に迷惑掛けるなんて最低よね!」

 

 あー大変だった、とソラが愚痴りながら足をぶらぶら上げ下げしている。

 ……それを見て、俺とユウカは静かに目を合わせていた。

 

 ──どの口が言ってんだこの迷惑筆頭幼女が。

 

「あー、まあ。それはそれとして、だ……ユウカ、よく戻ってきたな。改めて、オークの討伐おめでとう」

 

 とりあえずまあ、俺は話を逸らすために話題を変える事にした。

 ユウカが死に戻りの原因となった相手を無事討伐出来たことは、午前中に聞いていた。

 その事を、改めて褒めてあげようと思ったからだ。

 

「あ、うん。ありがとう……君たちのおかげだよ。そのおかげで、ボクはもう一度立ち向かう気力を貰えたんだから」

「それでもだ。立ち向かったのはユウカ自身だろ? 俺には戦いなんてよく分からないけどさ、それでもユウカが凄く頑張ったのはなんとなく分かるよ。お疲れ様」

「──ああ、ありがとう。その言葉が、すごく嬉しい」

 

 そう言うと、ユウカは目を瞑ってとても嬉しそうな表情をしていた。

 すると、何かを思い出したかのよう雰囲気に変わる。

 

「あ、そうだ。君たちにお礼の品があったんだ」

「お礼の品?」

「はいこれ。“依頼の報酬で貰った鉱石”と、“子供達から貰ったボクの世界のお菓子”」

 

 そうしてユウカが取り出したのは、二つの袋だった。

 それをテーブルの上にごとりと並べられる。

 

「へー、お菓子はともかく……鉱石?」

「なんでも、ボクが倒したオークが占領していた洞窟って鉱山だったんだって。それでお礼の品として、依頼報酬とは別に沢山貰っちゃって。カイトにもあげるよ」

「へー……つっても、宝石ならともかく、俺普通の石だとそんなに価値わかんねー……」

 

 そう呟きながら、俺は石の入ってそうな袋を開けてみる。

 ……おお、なんか思ったより綺麗な石、と言うか鉄? みたいになってるな。

 なんでも既に洗練されていて、ここから剣とか武器に加工できるらしい。

 それを見てソラが、へー、と感心したような声を漏らす。

 

「あら、“ミスリル”じゃない。結構レアな素材よそれ」

「あー、聞いた事あるな。なんかゲームとかで有名や奴」

「そうよー。武器にしてももちろん、防具や、“魔道具”と呼ばれるものの構成パーツになってたりと、結構使い道がある素材よ」

 

 なるほどなー、ますますゲームっぽい。

 俺は目の前の素材に対して、感心したような感情になっていた。

 

「それじゃあ、これはありがたく貰っておくか。記念品だな記念品」

「記念品? いや、別に加工して、何か作っても別に良いんだよ? どこか鍛冶屋にでも頼んで……」

「いやー、俺そんな知り合いの鍛冶屋なんていないし。仮に売るにしてもどこに売れば良いのか……」

 

 と言うか、こんなこっちの世界で存在しないだろう素材、仮に売ったとしても色々大丈夫なのか? 

 入手経路とか質問されるかもしれないし、異世界からですとか到底言えねえぞ。

 

 それを聞いたユウカは、たらりと汗を流し……

 

「……ひょっとして、迷惑だったかい? それ、もしかしていらない……?」

「ああ、いや!? 名前自体は聞いた事あるような有名な奴だったし、これ自体だけでも記念に十分だって! それにほら、こっちのお菓子もあるんだろ?」

 

 そう気を悪くしないように、俺はもう一つの袋の中身を取り出してみる。

 中からお菓子、クッキーに近いようなそれを一つ取り出し、ありがたく口の中に含んでみる。

 

 ガリっと噛んだそれは……

 

「……………………」

「か、カイト……?」

「……………………ま、まあ。気持ちはありがたいぜ!」

「どれどれ、パクリ。……あー、これ、不味くはないんだけど、カイトの世界のお菓子に慣れてるとどうしても見劣りするって言うか……」

 

 ソラがズバッと俺の言いにくい事を言ってしまっていた。

 ユウカがハッと気づいた表情で、彼女も一つ食べてみると、少し悔しそうな表情になっていた。

 ああ、やっぱり前回食べたやつと比べちゃったんだな……

 

「そっか……これ、子供達からお礼の品だったんだけどな……ごめんよ、ボク一人で食べるべきだった……一緒に分かち合いたいと思ったんだけど……」

 

 ヤッベ、さらに地雷踏んだ感。

 またちょっと涙目になってやがる。

 どうしよう、と悩んだ所……

 

「んー……でもこれ、甘さが控えめなところが問題な感じだから、これなら砂糖を振りかけてみるとちょうど良いかも。カイトー、ちょっと取って来てー」

「お前なー……まあ良い、ちょっと待ってろ」

 

 人に取りに行かせようとするソラに呆れたが、ある意味助け舟になったそれにありがたく乗る事にした。

 俺は言う通りに砂糖を持って来て、それをスプーンでパラパラと振りかけていく。

 その状態で改めて食べてみると、さっきとは段違いの味になっている。

 

「あ、めっちゃちょうど良い。美味え」

「本当だ、ここまで変わるなんて……!?」

「砂糖もそっちの世界だと貴重だしね。調味料全般ちょっと掛けるだけで大きく変わるわよー」

 

 そうして俺たちは、パクパクとお菓子を食べていき、あっという間になくなっていた。

 あー、食った食った。

 

「ほら、ちょうどよかっただろ? これくれただけでも十分だって」

「……でも結局、これも君たちのおかげで美味しく食べられたようなものだし、お礼の品としては……」

 

 そう言って、ユウカはまた落ち込んだ様子になってしまった。

 結果的に空回っていたことが、よっぽど響いたらしい。

 あちゃー……

 

「いや、もう、本当気にすんなって。正直お前が無事に戻ってこれただけでも、俺は十分なんだからさ」

「けど、ボクとしても勇者のお礼がこんな形に終わってしまうのも……けれど通貨は渡してもこの世界だと使えないし……そうだ」

 

 すると、急にパッと顔を上げて、懐から何かゴソゴソと取り出していた。

 そうしてユウカの手に握られたのは……“ナイフ?”

 

「ボクの持ってる武器の一つ。護身用も兼ねてカイト達に譲るよ」

「ちょっとあなた、それ……!?」

 

 それを見たソラが、驚いたような表情に変わっていた。

 

「なんだ、一体どうした急に?」

「だってそれ、“勇者としての装備の一つよ!?” 剣ほどじゃないにしても、魔法力を保持する能力を持つ奴!?」

「はあ!? めっちゃレアな装備って事か!?」

「さすがソラ様、よく知ってますね。ちなみにこれは、軽く念じて振ると……」

 

 そう言って、ユウカが実際にナイフを振ると──“光の長剣”が現れた。

 

「何それ、スッゲエ?!」

「驚いたかい? ボクの魔力を溜め込んで、それを使って光の剣を出してくれるんだ。切れ味は十分だし、とても便利だよ。まあボクは、普段果物とかを切るくらいに使ってたんだけどね」

「えっ、それ、俺も光の剣出せる……?」

「うん、ボクが譲渡した相手なら使えるよ。魔力が無くなったら、ボクが補充してあげるからいつでも言って」

 

 はい、とユウカにそれを手渡される。

 俺はそれをうやうやしく受け取り、実際に念じて振ってみた。

 ──ヤッベえ、本当に光の剣が出た。何これ凄い興奮する。リアルライトセイバーみてえ。

 

 俺はつい、キラキラした目でそのナイフを見つめていた。

 それを見てユウカはうんうんとうなづいている。

 

「気に入っていただけたようで何よりだ。これでやっと本当にお礼が言えたよ」

「ああ、ありがとうな! こんな良い物くれて! いやーめっちゃ嬉しいぜ!!」

「カイト、ちょっとちょっと……」

 

 そう肩をちょんちょんと叩いて、ソラが俺に呼びかけて来た。

 あ、なんだ? 

 すると、耳ととに口を近づけて、コソコソと……

 

「──それ、“向こうの世界で豪邸立つくらい価値ある奴”。量産可能だけど、めっちゃお高いわよ」

「……何いっ!?」

 

 俺は驚いて危うくナイフを取り落としそうになった。ヤッベヤッベえ!? 

 え、マジで? これ豪邸建つの? そう言えば勇者の装備って言ってたよな、そりゃあそれくらいするよなあ!? 

 

「ゆ、ユウカ。これ……」

「いやー、嬉しいよカイト! やっと君たちにちゃんとしたお礼を返せて!」

「価値の差が大きすぎじゃないですかね!? ちょっとこれ差がデカくなりすぎね?! 俺そんなに高い物上げてねえよ!?」

「え、でも……ボクセーブポイント無かったら死んだままだったし、カイトに世話になってなかったら戦いに行けなかったらから、どの道武器いらなかったし……そう考えると、本来意味がなくなる物だったと思うと、譲っても特に問題ない装備だから」

 

 ボク実戦でそれ使ったことないですし、剣の方で事足りるので。そう言って、俺達に上げる意思は変わらないと言う。

 ヤッベえ、一気にこのナイフの重さが増した気がする……値段的にも、気持ちの重さ的にも。

 

 あー……、と言いながら、ソラがこっちを向いて。

 

「……良かったじゃないカイト。貧乏から脱却出来たわよ」

 

 いろんな意味でおもてえよ……!? 

 俺はついそうツッコミたくなっていた。

 だってこれ、軽々しく使えないだろ!? 売っても絶対ダメな奴だし、気軽に持ち歩けねえよ!? 

 そっとユウカの方を見ると……ダメだ、めっちゃ良い笑顔になってやがる。返品不可そう……

 

 まあ、ナイフのギミック自体は本当に俺気に入ったから、逆にそれが辛いんだけどさ……俺は手元のそれを見つめながら、そう思った。

 

「……まあ、ありがたく受け取っておくよ。いや、マジで」

「ああ、大切にしてくれると嬉しい」

「ああ、マジでそうする……」

「どうすんのよカイト。釣り合い取れるの?」

 

 そうなんだよなー、逆に俺の方がもらい過ぎになっちゃった気がするんだよなー。

 となると、あれか……

 

「よっしゃ。じゃあまた3人で買い物行くか!」

「買い物かい? またコンビニってところに行くのかい? 良いね」

「いや、今回はコンビニじゃないな」

「へ? というと……」

 

 首を傾げたユウカに向かって……

 

「──今度はショッピングセンターに向かうぞ!」

 

 どうせならユウカのオーク討伐祝いも兼ねて、盛大にハメ外してやらあ!! 

 俺はそう意気込んで、二人に出かける準備をするよう言い出した……

 

 




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