タロと学園ラブコメするだけ   作:私利私欲

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遅くなってしまってすみません!
後半へ向かうにつれて話が複雑になっていくので投稿頻度が落ちると思います、ご了承ください


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 次の日。

 

 スグリのおじいさんによると、オーガポンのお面を修理するには『てらす池』の底にある結晶のかけらが必要となるとのこと。

 

 オリエンテーリングは昨日のうちに終わっているため、みんな手は空いている。

 しかし全員で行っても動きにくいので、今回はぼくたち男子グループが採取しにいくこととなった。

 ちなみに女子グループはネモたっての希望で、強いポケモンを求めてキタカミの里を回ることにしたようだ。

 

 というわけで、ぼくたちは山の頂上にあるてらす池へやってきた。

 

「なんつうか、エリアゼロみてえな場所だな」

「エリアゼロ?」

 

 スグリが訊きかえすと、何でもないと言ってペパーは誤魔化した。

 

 エリアゼロ——パルデア地方の中央に存在する大穴のことか。

 許可なく立ち入るのは禁止されているため、ぼくも入ったことがない。

 しかしこの様子だと、ペパーは入ったことがありそうだ。目に見えてそわそわしているし。

 

「……これはすごい」

 

 池を覗きこむと、透き通った水の向こうに巨大な結晶塊が見えた。

 見間違えでなければ、これはテラスタルオーブに使われている結晶ではないだろうか。

 となると、パルデア地方にしか存在しないはずの結晶がどうしてこんなところに……?

 

「で、どうやって採んだよこれ」

「スグリって泳げる?」

「おれに潜って採ってこいって……?」

 

 泳ぐのと潜水するのとでは難易度が違う。

 一応、トンカチは用意してきたものの、これを片手に潜って採取、というのはさすがに厳しいだろう。

 

「どこか地面に落ちているかもしれないし、別れて探そうか」

「そうするしかねえな」

 

 三手に別れると、ぼくたちはそれぞれ別の場所を探しはじめた。

 

 するとすぐに、あるポケモンがぼくの目に留まる。

 

「キラフロル……チャンピオンのポケモン、か」

 

 空中をふよふよと漂っている青色のポケモン、『キラフロル』。

 こうして見るのはチャンピオン——オモダカさんと戦ったとき以来初めてのことだ。

 結局、ぼくは()()()()()()()()()()()()()()()()わけだが……ああ、キラフロルのせいで嫌なことを思い出した。

 

「外来種、だよね?」

 

 ぼくの記憶が正しければ、こいつはパルデア地方固有のポケモンであったはず。

 パルデア地方にしか存在しないはずの結晶があるのだから、ここにキラフロルが居てもおかしくはないが……

 

「一応捕まえておこう」

 

 彼らのせいでキタカミの生態系が乱れるのは忍びない。

 ぼくは手持ちポケモンを繰り出すと、手早くキラフロルをゲットした。

 因縁のポケモンを持っておくのはいい気分ではないけれど、最悪ネモに預けてしまえばいいか。

 

 キラフロルのモンスターボールをリュックへしまい、結晶の探索を再開する。

 

「――看板?」

 

 すると、てらす池について書かれている看板を見つけた。

 

「池の光を見ていると、亡くなった人に会える……」

 

 あくまで言い伝えだそうだが、とするとこの池には幻覚を見せるような効果があるのかもしれない。

 キタカミの里ではこの水を飲用水としているようだけれど、本当に大丈夫なのだろうか。

 

 ……お腹が痛くなってきた気がする。

 

「あれ?」

 

 てらす水に戦々恐々としていると、いつの間にか周囲が深い霧に包まれていることに気づいた。

 一寸先も見えないような、深い霧だ。

 

「おーい!! スグリー!! ペパー!!」

 

 ふたりの名前を呼んでみるも、返事は帰ってこない。

 

「もしかして本当に幻覚を見てるのか……?」

 

 念のためモンスターボールを確認してみるも、ゾロアークのいたずらという線はなさそうだ。

 

「——ぐすっ、うぇ……ひっぐ……」

 

 どうしたものかと考えていると、近くから女性の泣き声が聞こえてきた。

 突然のホラー展開だけれど、あいにくそういった類のものは信じていない。

 非科学的な現象が起こったとしても、ほとんどはポケモンの仕業で説明がついてしまうからだ。

 

「一体何だって言うんだ……?」

 

 ポケモンが原因なら、倒すなり懐柔するなりすれば解決するはず。

 泣き声のする方へ歩いていくと——そこに居たのはネモだった。

 

「ネモ? どうしてここに?」

 

「——ヴェーラっ!!」

 

 目が合った瞬間、ネモはこちらに向かって飛びついた。

 

「うぅ……遠くの学校に行ったんじゃなかったのヴェーラ……?」

「行ったけど……?」

 

 今さら何を言っているんだこのネモは。

 

「大丈夫、ネモ? 今日は何月何日?」

「……5月27日?」

 

 いや、今は夏休み(8月)だぞ。

 本当に何を言っているんだおまえは……

 

 でも、なんとなく話が見えてきた。

 おそらくてらす池には幻覚を見せる効果があって、こいつはぼくの脳が作り出したネモ――ぼくがブルーベリー学園へ転校した直後のネモ、なのだろう。

 

 よりによってネモの幻覚を見るなんて、ぼくは一体どうしてしまったんだ……?

 

「ぐすっ……どこにもいかないでヴェーラぁ……」

「……」

 

 まるで子どものように泣きじゃくりながら、ぼくの身体にすがりついてくるネモ。

 ぼくの深層心理が()()()()との会話を求めているのだとすれば、いくらなんでも趣味が悪い。

 ネモの泣き顔なんか、ぼくは見たくないのに。

 

「……大丈夫だよ」

「ふぇ?」

 

 つとめて優しい声で言うと、ぼくはネモを抱きしめかえす。

 

「ぼくは、ネモのことを大切に想ってる」

「……でも、わたしのこと……置いてこうとした、じゃん」

「それは……きみのためだ。いつまでもぼくと居たら、友だちのひとりもできないだろう?」

 

 自分で言っていて反吐が出る。

 本当は自分のことばかり考えていて、ネモのためだなんて、二の次にしか考えていなかったくせに。

 でも、こう言うしかない。

 ネモとでは見られない世界を知りたかった、なんて言えるわけがないのだから。

 

「……それでもいいから、わたし、ヴェーラとずっと一緒がいいよ」

 

 ——依存すんのって、そんなに悪いことかよ。

 ——死ぬまで一緒に居られるなら、一生そのままでもよかったんじゃねえの?

 

 昨日、ペパーに言われたことが脳裏をよぎる。

 残念ながら、いまだその問いかけに対する答えは見つかっていない。

 けれど林間学校で再会したネモは、ぼくが居なくても問題なくやれていて。

 結果論だけれど、やはり彼女と距離をとったのは正しかったのだろう。

 

「ネモ、ぼくじゃないといけないなんてことはないよ」

「……」

「もっと周りに目を向けてみれば、友だちぐらいすぐに――」

 

「——わたしはヴェーラがいいの!!」

「っ!?」

 

 突然、涙まじりの声で叫ぶネモ。

 その気迫に驚いて、尻もちをつくと、そのまま彼女に押し倒されてしまう。

 

「わたしはっ!! ……わたしのためにポケモンを捕まえてきてくれたり、一緒に勉強したり、一緒にバトルしてくれるヴェーラがいいの!!」

 

 やめろ……

 

「他の人なんかいらない!!」

 

 やめてくれ……

 

「だからっ、他のだれよりも、わたしはヴェーラのことが——」

 

「やめてよっ!!」

 

 その先の言葉を聞きたくなくて、ネモの身体を強引に押しのける。

 

 ぼくがいい? 他の人なんか要らない?

 

 そんなの、冗談じゃない!!

 

「ぼくは……ぼくは、ネモが嫌いだ!!」

「っ」

 

 ――ずっと思っていたけど言えなかった、言いたくなかった言葉。

 

「いつもそうだ!! きみは自分のことばかりで、ぼくの気持ちなんかわかろうともしない!!」

「そんな、ことは」

 

 だってきみは、ぼくが()()()()()()()()()()()()()()ことを知らない。

 それでもきみに喜んでほしくて、ずっと楽しくない努力を続けていたことを知らない。

 きみに置いていかれたくない——いつしかそんな恐怖に追い詰められるようになったことを、きみは知らない。

 

「わかるわけ、ないよね……ずっと誰かの後ろについて走り続ける苦しみが!! それでもきみについていきたくて、必死に努力して……やっと追いついたと思ったら、すぐに離されていくんだ!! ぼくは、それが辛くて仕方がなかった!!」

 

「そんなの……ヴェーラは言ってくれなかった」

 

 当たり前だ。

 だってぼくは、きみに笑っていてほしかった。

 だから、弱音や文句なんかひとつもこぼしたことがなかった。

 それをわかってくれだなんて、無理を言っているのはわかっている。

 

 だから、たったひとつ、きみにお願いがある。

 

「いっそ何もわかってくれなくていい……ただ、ぼくを自由にしてほしい」

「っ、嫌だ!!」

 

 身体がきしむほど、強く抱きしめてくるネモ。

 その力はすごく強くて、とても振りほどくことはできない。

 だからぼくにできるのは、ただお願いすることだけ。

 

「何も二度と会わないってわけじゃない」

「嫌だ!!」

「少し距離をとってくれればそれでいいんだ」

「嫌だ嫌だっ!!」

「バトルだってたまに付き合うから、四六時中一緒に居ようとするのはやめないか」

「嫌だ嫌だ嫌だーっ!!」

 

 ここまで駄々をこねるネモを見たのは何年ぶりだろう。

 懐かしくて、微笑ましくも思うけれど――今は何より、憎い。

 

「わ、わたしにできることなら何でもするから!! だから……ずっと一緒に居てよ!!」

 

「――じゃあ、ポケモンバトル、やめてよ」

 

 一瞬、誰の声だかわからなかった。

 そして、それがぼくの声だと気づいたとき、ぼくは心底自分を軽蔑した。

 ネモからポケモンバトルを奪おうだなんて、それは、もはや死ねと言っているようなもので――

 

「わかった」

 

 ぼくから離れると、勢いよくボディバッグを脱ぎ捨てるネモ。

 そしてそれを、ぼくに向けて突き出した。

 

「やめる」

「は……?」

「すごく辛いけど……ヴェーラが言うなら、やめる」

 

 カラカラと音を立てて、ぼくの胸元に押しつけられるボディバッグ。

 中には、今までにネモが出会ってきた——たくさんのモンスターボー(ポケモンたち)ルが入っているのだろう。

 

「ほら、あなたが受け取ってよ……わたしの()()()!!」

 

 すべてという言葉に、きっと嘘偽りはない。

 ネモはそれだけ長くの時間をかけて、ポケモンと向き合ってきた。

 ぼくもそれを知っているからこそ、彼女の決意を痛いほど感じている。

 

「……」

 

 ゆっくりと、手を伸ばす。

 そしてぼくは――ボディバッグではなく、ネモの胸倉をつかんだ。

 

「――ふざけるなよ」

「何が?」

「ネモにとってポケモンは、誰かに言われて諦められる程度のことだったのか!?」

 

 小さいころからポケモンのことばかりで。

 ポケモンについてを話しているときは、目がキラキラと輝いていて。

 

 ぼくは、そんなネモが好きだった。

 ぼくもそんな風になりたいと憧れた。

 

 だからそれを踏みにじられるのは——許せない。

 

「やめろって言ったのはヴェーラじゃん」

「……まさかポケモンより、ぼくなんかを優先するとは思っていなかったよ」

 

 ネモなら、ぼくではなくポケモンを選ぶはずだった。

 

 ――じゃあ、ポケモンバトル、やめてよ。

 

 口をついて出てしまったことだけれど、彼女なら否定してくれるだろうと、心のどこかで信じていた。

 

「――()()()()()、じゃない!!」

 

 ネモはボディバッ(ポケモン)グを持った手とは反対の手で、ぼくの腕――彼女の胸倉をつかみあげている――をつかむ。

 

「ヴェーラこそわたしのこと、なんにもわかってない!!」

 

 それは、そうだ。

 凡人には天才の考えていることなど、わからない。

 ……その逆もしかり、なのだろうけど。

 

「ポケモンのことは大好き!! でも、それは、ヴェーラが居たから好きになったんだよ!?」

 

「……ぼくが居なくても、きみはポケモンと出会っていたよ」

 

 ネモのもとへポケモンをつれてきたのはぼくだ。

 けれど、その前からポケモンバトルを観るのが彼女は好きだった。

 ぼくはちょっとした機会を作っただけであって、それ以上でもそれ以下でもない。

 ましてやぼくがきっかけだなんて、思うことすらおこがましい。

 

「でも……相手が居ないと、バトルはできないから」

「……」

 

 ネモとふたりで『宝探し』をしていたとき。

 彼女はよく、誰もバトルしてくれないのだとぼやいていた。

 

 なんせネモは強かった。

 それで片っ端からバトルをしかけていくものだから、みんな相手をしてはいけないと学習したのだろう。

 旅が進むにつれて、彼女と戦ってくれる人は少なくなっていって。

 そしてパルデア地方の頂点に昇りつめたとき、やがて彼女はひとりとなった。

 

 そんなネモにとっては——きっとぼくだけが、唯一対等に戦ってくれる存在だったのだろう。

 

「わたしと初めて戦ってくれた……ずっと戦い続けてくれたヴェーラは、わたしにとって最高のライバルで、一番大切な宝物なの!!」

 

「——それだけはちゃんとわかってて!!」

 

 ネモはぼくの腕を引きはがすと、胸元をトンと押して、軽く突き放した。

 目が合うと、彼女はどこか寂しげに、薄い笑みを浮かべる。

 

「わたしは……ヴェーラのこと、ちゃんと理解しようと思う」

「何だよ、急に」

「だってわたしたち、お互いのこと、まったくわかってなかったじゃん?」

 

 ネモは、ぼくの苦しみを。

 ぼくは、ネモの大切なものを。

 

 きっとこうなのだろうと決めつけて、都合のいいように思いこんで。

 そうやって理想を押しつけあったから、衝突してしまった。

 ずっと一緒に居たはずなのに、ぼくたちは何もわかっていなかった。

 

「それでもね……わたし、ひとつわかったことがあるんだ」

「何?」

「ヴェーラがチャンピオンに()()()()()()理由」

 

 その言葉を聞いて、ぼくは心臓を直接つかまれたかのような錯覚を覚えた。

 

 ()()()()()()ではなく、()()()()()()

 

 ネモにだけは気づかれたくなかった、真実。

 

「……まるでぼくがわざと負けたような言い方じゃないか」

「だって、あのときのヴェーラならトップに負けるわけないしね」

 

 ――今でも、あのときのことは鮮明に思い出すことができる。

 

 ポケモンリーグ、最終試験にて。

 ぼくとオモダカさんの手持ちは残り1体ずつ。

 相手のキラフロルに対して、ぼくは相性が有利なガブリアス。

 いくらチャンピオンが相手といえど、これなら負けるわけがない。

 そんな状況から負けた理由があるとすれば——ぼくが()()()()()()()()()()だ。

 

 トレーナーにとっては、侮辱にも等しい行為。

 オモダカさんには心底軽蔑されてしまったけれど、それでもぼくは楽になりたかった。

 

わたしと同じ(チャンピオン)になったら、また頑張らないといけなくなる、もんね」

 

 そう言うと、ネモはふたたびぼくの身体を抱きしめる。

 今度は優しく、痛くないように。

 振り払うこともできただろうけれど、不思議とそうしようとは思わなかった。

 

「ごめんね……わたし、ヴェーラが苦しんでること、何もわかってあげられなかった」

「……」

 

 ぼくはなんて情けないんだ。

 ただ一言、もう頑張りたくないと言えば、ネモだって受け入れてくれたかもしれないのに。

 失望されたくなくて、意地を張って、彼女を傷つけるとわかっていながら強引に距離を取ろうとして。

 結局、こうしてネモに慰められてしまっている。

 

 本当に……情けない。

 

「……ぼくも、ネモがこんなにもぼくを大切にしてくれているなんて思ってなかった」

「自分を大切にしないから、そうなっちゃうんだよ?」

 

 何も言い返すことができない。

 思えば、ぼくは自己肯定感が低いし、自分を蔑ろにするような努力ばかりしてきた。

 自分を愛していないから、誰かに愛されていることに気づけなかった。

 

「ヴェーラは昔っからそう! ぼくの分はいいから〜とか言っていつもご飯分けてくれるし、そんなんだから背が伸びないんだね!」

「うるさい」

 

 最近はたくさん食べてるし、身長だって、の、伸び……夏休み明けには大きくなってるから!

 

 冗談はともかく。

 ぼくはネモから離れると、深く頭を下げた。

 

「……ひどいことを言って、ごめんなさい」

「わたしの方こそ、自分勝手でごめんなさい」

 

 謝らないと、とはお互いに思っていたのだろう。

 慣れない謝罪を交わすと、それがなんだかおかしくて、ぼくたちは小さく笑った。

 

 ネモと喧嘩したのはこれが初めて。

 だからぼくたちは初めて仲直りしたことになるのだが……これがすごくむず痒い。

 二度とやりたくないな、なんて思っていると、突然ネモがキョロキョロとせわしなく動きはじめた。

 

「——そういえば、ヴェーラは転校したはずなのにどうして……っていうかここどこ!? 池!? というか霧で何にも見えないし!」

 

 今さら気づいたのか。

 まあ、気づいたといっても、彼女はぼくの脳が作り出した幻覚なわけで。

 

 ……いや、ここまできてそんなことを言うのは無粋というものだろう。

 

「あの、さ……ぼくは今、ブルーベリー学園ってところに通ってるんだけど」

 

 もし彼女が本物の、過去のネモだったとしたら、いくつか伝えておきたいことがある。

 

「ブルーベリー学園……たしかアカデミーの姉妹校だったよね」

「ネモさえよかったら、転校してみるのもいいと思う。ポケモンバトルに力を入れている学校で、きみなら絶対好きになると思うから」

「何それ面白そう!」

 

 あ、でも……と続けるネモ。

 

「やっぱり遠慮しておこうかな。お母さまたちが心配するし、ヴェーラが帰ってこられる場所を守っておきたいから」

 

 ……本当、こいつには敵わないな。

 

「なら、林間学校ぐらいは行った方がいい。多分そっちでもぼくと会えると思う。ああ、あとペパーとボタンって名前の生徒は気にかけておいてやってほしい。きっと色々困っているだろうから」

「じょ、情報が多い……よくわからないけど、わかった!」

 

 少なくとも、()()()()()()はなんとかしてみせた。要点だけ伝えておけばなんとかなるだろう。

 

「じゃあ、また未来で」

「うん……え、未来!? あ、あれ、そういえばわたしってどこに帰るんだろう!?」

 

 ぼくがまばたきすると、いつの間にかネモの姿は見えなくなってしまっていた。

 

 それと同時に、周囲の霧が晴れていく。

 

「——おーい!! ヴェーラー!!」

 

 遠くからスグリが呼んでいるのが見える。

 隣にはペパーも居るし、いつの間にか合流していたのだろう。

 急いでふたりのもとへ向かうと、スグリの手には大きな結晶の塊が。

 

「それ、どうやって?」

「さっき急にミロカロスに襲われたんだけど、倒したらこれ置いて逃げちまったんだ」

「そいつがめちゃくちゃ強いちゃんでよう……」

 

 どうやらぼくが過去のネモと話しているうちに、ふたりが頑張ってくれたようだ。

 

「つうか、オレらが戦ってる間オマエはどこ行ってたんだよ!?」

「何だろう、自分自身と対話していたっていうか」

「わけわかんねえこと言ってんなよ……」

 

 自分でもよくわからないことが起こったのだから、上手く説明できなくて当然だ。

 

 というか、説明するつもりがない。

 このことはぼくと、あのネモとふたりだけの秘密にしておこうと思う。

 

 ……感情任せにあれこれとわめいてしまったことは、誰にも知られたくないからな。黒歴史というやつだ。

 

「——なんと美しい結晶なのだろう!!」

 

「のわっ!?」「うおっ!?」「わやっ!?」

 

 突然、ぼくたちの背後から現れる影。

 振り返ると、それは引率のブライア先生であった。

 

「ああ、驚かせてしまってすまない。……君たちさえよければ、その結晶を見せてはくれないだろうか!?」

「い、いいけど……」

 

 おずおずと結晶塊を差し出すスグリ。

 それを受け取ると、プライア先生はまるで子どものように目を輝かせる。

 

「これがテラスタルエネルギーの源流……!」

「やっぱりテラスタルと関係があるんですか?」

 

 だとすれば、ぼくたちが飲んでいたのはテラスタル水ということになってしまう。ちょっと、いやかなり嫌だな。

 

「てらす池の水は、テラスタルエネルギーと同じ波長を持っている……関係があると言わざるを得ないだろう」

「そう、ですか」

「その理由を突きとめられれば、いずれはパルデア以外の場所でもテラスタル現象を再現できるかもしれない」

 

「マジかよ! それって超すげーじゃんブライアせんせ!」

「テラスタル……?」

 

 テラスタルについて知っているペパーと、ぴんと来ていない様子のスグリ。

 

 そんなぼくたちをよそに、何やら考えこんでいるブライア先生。

 

「……きみたちさえよければ、この結晶を譲ってはもらえないだろうか?」

 

「だ、ダメ! これは鬼さまのためのもんだから!」

 

 そう言ってスグリが結晶を取り上げると、プライア先生は、そうか……と心底残念そうにつぶやいた。

 

「悪いことを言ったね。そういうことなら、私はここで調査を続けるとするよ」

 

 邪魔をしたね、と言い残すと、プライア先生は駆け足で去っていってしまった。

 

 ……自分の言いたいことだけ言って、本当に自由な人だ。

 

「ブライア先生って、あんな感じだったべ?」

「さあ」

 

 普段から関わることはないし、ぼくにはわかりかねる。

 

「そんじゃ、さっそくスグリの爺ちゃんに渡しに行こうぜ!」

「んだな!」

 

 そうしてスグリの実家へ戻ろうと歩きはじめた瞬間、ぼくのスマホロトムに着信が入る。

 

「タロさんからだ……はい、こちらヴェーラです」

『す、すみませんヴェーラくん!! 大変なことになりました!!』

 

 どうやら緊急事態らしい。

 はやる鼓動を抑えつつ、ふたりにも聞こえるようスピーカーモードへ設定する。

 

「大変って、どうしたんですかタロさん!?」

『その、何を言っているかわからないかもしれませんが……『ともっこ』らしき3匹のポケモンが蘇りました!!』

 

 

 

 

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