タロと学園ラブコメするだけ   作:私利私欲

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林間学校
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 時刻は午後9時。

 林間学校の旅程は、まずブルーベリー学園のエントランスで集合することからはじまる。

 そこから地下鉄を乗りついで空港へ向かう予定となっているわけだが――

 

「――あたしとスグはいいわよ。実家に帰るんだから、そりゃ自分たちで帰れって話よね。けれどヴェーラとタロは違うじゃない。今回は林間学校っていう学園のイベントで来るんだから、引率の先生ぐらいつけるべきなのよ。そうでしょヴェーラ!?」

 

「そうですね……」

 

 エントランスで待ち受けていたのは、怒り心頭のゼイユさんでした。

 引率の先生が居ないことがよほど気に食わないらしく、かれこれ5分は怒りつづけている。

 

「ね、ねーちゃん? ヴェーラに怒っても仕方ないべ?」

「ええ、そうね。でも、あたしはよ? ブルーベリー学園の教師のくせに、何故かパルデア組の引率に行ったブライア先生に怒っているわけであって、ヴェーラに怒っているわけじゃないけど、でも話は聞いてほしいの。だってムカつくじゃない。もし移動中に何かあったらどうするわけ? 責任取れんのかって訊いてんのよヴェーラ!」

 

「責任は取れないですね……」

 

 どうしてぼくが噛みつかれているのか、これが解せない。

 まだ集合時間には15分もあるけれど、早く来てくれタロさん……

 

「――すみません! 遅くなってしまって!」

 

 するとぼくの願いが通じたのか、ガラガラとキャリーケースを引いてタロさんがやってきた。

 

「ああ、ちょうどいいところに来たわねタロ。ブライア先生がね――」

「それはもういいから! ちょっと早いけど、もう出発するべ!」

「あ、ちょっと!」

 

 スグリが強引にゼイユさんを押していってくれたおかげで、なんとか説教地獄からの脱出に成功する。

 しばらく地下鉄に向かって歩いていると、タロさんが耳元に顔を近づけてきた。

 

「ヒソヒソ……?(あの、大丈夫ですかヴェーラくん?)」

 

 突然、"みわくのボイス"で話しかけられ、思わず身体が震えてしまう。

 

「ヒソ……(は、はい……体力が半分ほど持っていかれてしまいましたけど)」

「ヒソッヒ!(それは大変です!)」

 

 ゼイユさんは人間なのに”いかりのまえば”が使えるのだから驚きだ。

 

「ヒソヒソ?(ふふっ、きずぐすりはご入用ですか?)」

「ヒソヒ(いいですね、ちょうど喉が渇いていたんです)」

「ヒソヒソっ!?(絶対飲んじゃダメですからね!?)」

 

「ちょっとそこ! ふたりだけでコソコソ話すの禁止!」

 

 あたしたちにも聞かせなさいよ! と憤慨するゼイユさん。

 

 たしかに、これから旅行へ向かうときにふたりだけで盛り上がるのはよくなかった。

 ぼくとタロさんは距離をとると、普通の声量で話しはじめる。

 

「——そういえばタロさん、フレグランス変えました?」

「あ、わかっちゃいますか?」

 

 ヒソヒソ話ができるほど近づいたのだ、いつもとにおいが違うことはすぐにわかった。

 その種類まではわからないけれど、どこかで嗅いだことのあるような"あまいかおり"がする。

 

「せっかくの旅行なので、新しく買ったコロンをつけてきたんですっ!」

 

 モモンのみの香りなんですよ! と言って手首を差し出してくるタロさん。

 さすがに直接嗅ぐのは恥ずかしかったので、十分ここでも香ってきてますよ、とやんわり断っておいた。

 

「……あんたら、それ以上イチャイチャしたら殺すわよ」

「ご、ごめんな? ねーちゃん、ちょっとテンション上がってて……」

「テンション上がってないわよ!」

 

 話を聞かせろと言ってきたのはゼイユさんであって、ぼくたちが怒られる筋合いはない。

 

 とはいえ、これ以上彼女の不興を買うのは勘弁したいところ。

 ここはしばらく静かにしておくとしよう。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ブルーベリー学園から地下鉄を乗り継ぎ、空港から飛行機で半日、新幹線で数時間、バスを乗り継いで1時間。

 気が遠くなるような時間をかけて、ぼくたちは『キタカミの里』へ到着した。

 

「わあ……! すっごく綺麗なところですね!」

「ふふん、でしょう?」

 

 飛行機で寝たからか、もしくは無事にたどり着くことができたからか。

 ようやっとゼイユさんの機嫌が収まってくれたようだ。

 

「それじゃ、一度荷物を置いてきましょうか」

 

 スグリとゼイユさんは実家へ。

 ぼくとタロさんは宿泊する公民館へ。

 それぞれ荷物を置くと、公民館の前で集合することに。

 

「――それで、これからわたしたちはどうすれば?」

「パルデア組のバスを待つことになるわね」

 

 林間学校には、ブルーベリー学園の姉妹校である『アップルアカデミー』からも生徒が来ることになっている。

 引率のプライア先生はそちらへ同行しているため、彼らが来ないことには動きようがない。

 

「……で、そのバスっていつ来るんですか?」

「2時間後ね」

 

 2時間……と消え入りそうな声でつぶやくタロさん。

 

「あの、何か娯楽施設みたいなのって」

「ないわよ」

「……カフェとかは?」

「喫茶店ならあるけど、じーちゃんばーちゃんで満席よ」

 

 あのね、と続けるゼイユさん。

 

「タロが思ってる以上に田舎ってなんにもないの! あたしだってこの里のことは好きだけど、本当に何にもないの! イッシュ地方から帰ってくるたびに絶望するの! そういうもんなの! 文句があるならよそ者は今すぐ出てってくれる!?」

「ご、ごめんなさい……」

 

 あーあ、またゼイユさんの"いかりのつぼ"を押してしまったようだ。

 

「ごめんな……ねーちゃん、テンション上がってて」

「だからテンション上がってないってば!」

 

 ――結局、ぼくたちは次のバスが来るまで、ポケモンしりとりをして時間を潰すことにした。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ポケモンしりとりが1周し、オリジナルポケモンの使用が許可されてからしばらく。

 

「――えーっと、ウルトラカワイイビッパ……あ、バスが来たみたいですよ!」

 

 エンジンの駆動音がこんなに待ち遠しいこともそうそうないだろう。

 そんなことを考えていると、バスから数人降りてくるのが見えた。

 

「せっかくですし迎えにいきませんか?」

「嫌よ。ここはどっしりと構えて、よそ者たちに誰が一番偉いのかわからせないと」

 

 林間学校で誰が一番偉いかと言われたら、おそらく引率のブライア先生だ。少なくともゼイユさんではない。

 

「1、2……生徒は3人居んのかあ」

 

 スグリが数えているのを聞いて、ぼくもあらためてパルデア組を観察する。

 髪の長い男子が1人、逆に短い女子が1人、そして背の高い女子が――

 

 ……ん?

 

「は……いや、待って、なんで……?」

「どうかしましたかヴェーラくん?」

 

 アップルアカデミーからも生徒が来ると聞いた時点で、可能性は考慮していた。

 けれどそれが実現してしまうとは微塵も思っていなかったわけで。

 

「……」

 

 彼らが近づいてくるにつれて、背中に嫌な汗がにじんでいく。

 だって、ぼくは、()()()のせいで——

 

「――っ、ヴェーラっ!!」

 

 目が、合った。

 そしてその瞬間、女子生徒はぼくに向かって一目散に駆けだし——

 

「は!? 待て馬鹿、止ま――」

「ずっと会いたかった!!」

 

 ——ミルタンクに”たいあたり”されたら、多分こんな感じになるのだろう。

 

「ぶえっ!?」

 

 身体にものすごい衝撃を受けたと思いきや、今度は柔らかい何かに包まれ――要するに、ぼくは抱きしめられた。

 

「もうっ、急に転校なんかするんだから、わたし……!」

 

「むーっ!! むーーーーっ!!」

 

 い、息ができない……!

 

 必死に背中をばしばしと叩いてみるも、一向に離れる気配がない。

 それどころかより強く抱きしめられてしまい、状況は悪化した。

 人間というよりかは、キテルグマを相手しているような気分だ。

 その場合、ぼくは背骨を折られて死んでしまうわけだが。

 

「ネモ……多分、そのままだと人が死ぬ」

「あ、ご、ごめん!」

 

 誰かが指摘すると、『ネモ』はようやくぼくの身柄を解放してくれた。

 彼女から離れると、思わずその場で尻もちをついてしまう。

 

「げほっ、ごほっ……お、おまえっ、無駄にデカいんだからハグするのはやめろ……!」

「ふふん、ヴェーラは相変わらずちっちゃいままだね!」

 

 何を得意げにしているのかは知らないが、こちらは危うく死ぬところだったんだぞ。体格差を考えろ体格差を。

 

 内心キレていると、おずおずとタロさんがこちらに寄ってきた。

 ぼくの身体を引き上げつつ、ネモに向かって口を開く。

 

「ね、ネモさん? どうしてここに……?」

「おー、久しぶりだねタロ! 前にパーティーで会ったとき以来かな?」

 

 ネモの口ぶりからして、社交界か何かで出会ったのだろう。

 ふたりともお嬢様だし、親のつながりで面識があってもおかしくない。

 

「い、一体何がどうなってるんだべ?」

「よそ者同士ではしゃいでんじゃないわよ……」

 

「――そういうことなら、まずは自己紹介からはじめようか」

 

 ぼくたちが困惑しているのを察してか、あとからやってきたブライア先生が助け船を出してくれた。

 

「知っている者も多いだろうけど——私はブライア。ブルーベリー学園で教師、そして研究者をしている。今回は君たちの引率を任されているため、何かと顔を合わせることも多いだろう。よろしく頼むよ」

 

 先陣を切って自己紹介してくれたプライア先生。

 みんな彼女に拍手をしているけれど、ゼイユさんだけはフンと鼻を鳴らしている。

 引率と言いながらパルデアの方へ行ってしまったことをまだ根に持っているのだろう。

 

 さて、次は誰が自己紹介するか——お互いに探り合っていると、ネモがぴょんと前に出た。

 

「はいっ! わたし、アップルアカデミーから来ました、生徒会長のネモと申します! そっちのヴェーラとは小さいころからの付き合いで、幼なじみです!」

 

「「「幼なじみ!?」」」

 

「そんなに驚くことでもないですよ……」

 

 何故か仰天しているブルーベリー組は置いておいて、ぼくはネモに向きなおる。

 

「幼なじみって、ただ家が近所同士だっただけだろう?」

「ただのご近所さんじゃないよ! 昔から一緒に勉強教えてもらってたし、よくヴェーラが捕まえてきてくれたポケモンでバトルしたりしたよね!」

 

 まあ、そういうこともあったかもしれないが。

 

「あと、1ヶ月だけだけど一緒にアカデミーに通って『宝探し』にも行ったし、あ! あと将来はお婿さんに来てくれるって――」

「それは親が勝手に言っていただけだ!」

 

 くそ、要らないことをべらべらと……!

 

「なあ……その、ヴェーラ?」

「あんた、許嫁が居ながら、その……」

 

「ヴェーラくん……?」

 

 頼むからそんな目で見ないでくれブルーベリー学園のみんな……

 

 ぼくがかつてない窮地に陥っていると、次はパルデア組の男子が一歩前へ出た。

 それも、ものすごく大きな一歩で。

 

「……ふん、幼なじみってのはそんなに偉いちゃんなのかよ?」

 

 自己紹介、というよりかは、ぼくに一言物申したいらしい。

 

「ペパー」

「わかってるボタン。でも、オレにはどうしてもコイツに言わなきゃなんねえことがある」

 

『ペパー』と呼ばれた男子はこちらまで来ると、ぼくのことを思いきりにらみつけてきた。

 

「アンタ、ネモのこと置いてブルーベリー学園に逃げたんだってな?」

「……そうだね」

 

 およそ3ヶ月前——ぼくが転校したことについては、誰がどう見ても()()()ということになるのだろう。

 自分でもそう思うのだ、否定できるわけもない。

 

「ネモ、オマエが居なくなって寂しいって泣いてた」

 

 それは、そうだろう。

 そんなことはわかっていたけれど、その上でぼくは転校することに決めた。

 

「オマエが何を思って転校したのかは知らねえけどよ、それはダチ泣かせてまですることだったのかよ。あぁ?」

「うん、そう思うよ」

「っ!」

 

 ぼくの返事が気に入らなかったらしく、ペパーさんに胸倉を掴まれる。

 彼がネモの友だちだとすれば、ぼくは殴られても仕方ない、か。

 

「ペパー!!」

「わかってる!! でも、でもよぉ……っ!!」

 

 ぼくに向かって拳を振り上げるペパーさんと、それを止めようとするネモ。

 そんなふたりをよそに、ぼくはゆっくりと語りはじめる。

 

「ネモは……ぼくに依存している節があった」

 

 当たり前だが、何の理由もなく転校を決めたわけではない。

 

「それを断ち切った上で……きみのような友だちができたのだとすれば、やっぱりぼくは……転校してよかったと思うよ」

「このっ――!」

 

「――はい、そこまで」

 

 いよいよぼくが殴られそうになったところで、ブライア先生が止めに入ってくれた。

 

「君たちには時間が要るように見えるが……自己紹介はあとにした方がいいかな?」

「……」

 

 先生に言われて頭が冷えたのだろう。

 ペパーさんは胸倉から手を離すと、ぼくの肩あたりを軽く押した。

 

「……オレはペパー。ネモの『一番の親友(ダチ)』だ!」

 

 どうやら彼にとって、ネモの親友という部分はかなり重要らしい。

 

 ……そこまで言ってもらえるネモは、少し羨ましいな。

 

「あ……ボタン。一応、うちも親友ってことで」

 

 パルデア組から挨拶する流れだと察してか、最後はボタンさんが締めくくった。

 3人の中でまともなのは彼女だけ、か。

 どこかスグリと似たようなものを感じるし、彼女であれば仲良くできそうだ。

 

「——アップルアカデミーは以上です!」

 

 そう言うと、ネモがぼくたちにむかって一礼する。

 ペパーさんは腕を組んだまま直立不動、ボタンさんは申し訳程度にふいっと頭を下げた。

 

「では次、ブルーベリー学園の君たちに自己紹介してもらおうかな?」

 

 ここはぼくが先陣を切るべきだろう。

 襟を正し、スカーフを締めなおすと、あらためてパルデア組の前に立った。

 

「……」

 

 ……今さらだけど、ぼくは何を言えばいいのだろう?

 生徒会長やチャンピオンのように名乗れる肩書きはないし、特筆して言うべきこともない。

 これまでにも自己紹介する機会はあったはずなのに、一体どうやって乗り越えてきたのやら。

 

「ぼくはヴェーラ。……人間です」

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

 

 さすがに今のはまずかったのか、タロさんNGが入った。

 

「宇宙人と交信してるんじゃないんですから!」

「でも、ぼく、自分が何者なのかわからなくて……」

「趣味とか、好きなこととか、そういうのでいいんです!」

 

 なるほど?

 

「ええと、趣味は食べること……で、辛いもの以外は好き、です」

「趣味がプリミティブすぎます……」

 

「ぷっ、くく……ヴェーラってば、口下手なのは変わんないね!」

 

 ぼくたちの会話がおかしかったのか、ネモだけがお腹を抱えて笑っている。

 逆に他のみんなは静まり返っているわけで。

 

 この空気を払拭すべく、今度はタロさんが前に出た。

 

「わたしはタロです。一応、そちらのネモさんとは面識があります。あとはかわいいものが大好きで、そのぉ……」

 

 タロさんの視線の先には――ボタンさん。

 

「な、なに……?」

「そのイーブイのリュックって、どこに売ってるんですか……!?」

 

 どうやら彼女が背負っているリュックサックに興味を惹かれたようだ。

 

「あ、あー……あとで教える」

 

 わかるよボタンさん。いきなりタロみたいなキラキラ女子に話しかけられるとびっくりするよな

 

「はあ……あたしゼイユ。こっちは弟で、あたし姉。よろしく」

 

 色々と起こりすぎて面倒になってしまったのだろう。ゼイユさんの自己紹介はものすごく簡素に終わった。

 

「えっと、おれはスグリ……ヴェーラの、一番の親友、です!」

 

 そう言うと、スグリはぼくを見てにへらと笑った。

 

 スグリ、抱きしめてもいいか?

 

「……ふふっ、ヴェーラにいい友だちができたみたいでよかった!」

「ネモこそ、頼もしい()()が居るみたいで羨ましいよ」

「でしょー?」

 

 みんな最高の宝物なんだ——皮肉で言ったつもりだったけれど、そんな笑顔で返されてしまってはぼくの負けだ。

 

「——では、お世話になる公民館の方に挨拶しようか」

 

 ブライア先生の指示で、ぼくたちは移動をはじめる。

 公民館の管理人さんから施設について説明を受けると、ここは一度解散することとなった。

 というのもオリエンテーションは明日からはじまるらしく、今日は自由に過ごしていいとのこと。

 

「――じゃあ、みんなでバトルしよっか!!」

 

 となれば、いつもの()()()()鹿()がはしゃぎだしてしまうわけで。

 パルデアの人たちも慣れっこらしく、やれやれといった感じで首を振っている。

 

「あらいいじゃない。さっきから息苦しくてストレス溜まってたのよねあたし」

「なら、まずはわたしと戦ろっかゼイユ!」

 

 ……強く生きろよゼイユさん。

 

「じゃあ、さっきの続きを聞かせてもらってもいいですかボタンさん?」

「う、うん。わかった」

「ありがとうございます! あ、でもその前に飲み物を買いに行きたくて——」

 

 よほどイーブイのリュックが気になるのか、タロさんはボタンと話しながら歩いていってしまった。

 

「……」

「……」

「……」

 

 そして取り残された男三羽アオガラス。

 

 ちなみに全員、コミュ力は低い。多分。

 

「はあ……」

 

 このままでは埒があかないと判断したのだろう。

 ペパーさんはため息を吐くと、ぼくに向かって頭を下げた。

 

「……さっきは悪かった。ちょっと頭に血がのぼりすぎてたぜ」

 

 意外だ。

 まさかこんなにも素直に謝られるとは思っていなかった。

 同じことを感じたのか、スグリも少し驚いているらしい。

 

「ペパーさんが怒るのは当たり前だよ。ぼくも……少しカッとなって、嫌な言い方をしてしまったから」

 

 だから、ごめんなさい——そう言ってこちらも頭を下げる。

 

 今でも転校したことは間違っていないと思っている。

 けれど、嫌味な言い方をしてしまったのは、ぼくの至らぬところだったとも思う。

 

「ペパーでいい」

「え?」

「これから何日か一緒に食って寝てってするんだからよ、オレから言うのもなんだけど、仲良くしてほしい。ヴェーラと、あとスグリも」

 

 そう言ってもう一度頭を下げるペパー。

 

 なんというか、大人だ。

 これから林間学校が終わるまで一緒に過ごすということを、ぼくは完全に忘れてしまっていた。

 どうやらぼくは、まだまだ子どもっぽいままらしい。

 

 まあ、最初に喧嘩を吹っかけてきたのはペパーだけれど。

 

「うん……よろしくな、ペパー!」

「ぼくの方こそ、よろしく」

 

「……っへへ。なんだよ、話してみれば案外わかるちゃんじゃねえかふたりとも!」

 

「のわっ!?」「いっ!?」

 

 バシン! と背中を叩かれ、思わずよろめくぼくとスグリ。

 ぼくが言うのもなんだが、パルデアの人間は肉体言語が好きすぎではないだろうか。ネモもすごい勢いで抱きついてくるし。

 この数分だけでめちゃくちゃダメージ受けたんですけど? 肉体的にも、ついでに精神的にも。

 

「なあ、オマエら腹減ってねえか? 今から調理室借りて、みんなの昼メシ作ろうと思うんだけど……」

「なら、ぼくも手伝うよ」

「お、おれも!」

 

 ——3人で作ったサンドウィッチはすごく美味しくて、女性陣からも好評だった。

 

 ただ、どうして高いところからパンを落とすのかとスグリに訊かれても、答えることができなかったのだけは心残りだ。

 

 

 

 

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