『オグタマ散歩』姫路城下町(前後編)   作:ゴケット

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『オグタマ散歩』姫路城下町(後編)

 ポスターの主催者に電話でアポをとったリュメールが声を弾ませる。

「許可、取れました」

「お、よかったなー。で、中央で活躍したちゅうんは誰なん?」

「あ、それは行ってからのお楽しみで…」

 リュメールはチラッとオグリを見た。

「ん、どうしたんだ?」

「いや、なんでもないです」

 心の底から疑問の表情をするオグリに、リュメールは愛想笑いをしてごまかした。それを見てタマはいろいろ察して、ぐっと声を落とした。

「あれか、オグリのリアクションが欲しいんやな」

 リュメールも声を落として話す。

「はい、別にタマ先輩だけでしたら、話してもいいのですが…」

「演技できへんからな、オグリは…」

「さっきのシーンのポスター発見の件も棒読みでしたしねぇ…」

 ウマ娘同士、姿勢を入れ替えながら頭の上に話しかける奇妙な内緒話が目の前で繰り広げられているのだが、オグリの視線は公道を走る「城下町どっく」のキッチンカーに気を取られている。

 タマとリュメールは、オグリをそのままに、いくつかの打ち合わせをした。

 

 

 

シーンXX:(公園の遊歩道を歩くオグリとタマ。木漏れ日が心地よい午後。)

 

タマ:(のんきな様子で)

「あー、なんかええ天気やなぁ。ターフの芝も育ちそうや」

 

オグリ:

「タマ。姫路競バ場はダートコースだぞ」

 

タマ:

「わかっとるわ!たとえの話や!」

 

(遠くから子供たちの賑やかな声と、それに混じって大きな声が聞こえてくる。)

 

上品な声:

「もっと大きく腕を振ってー!」

 

タマ:

「ん?なんか騒がしいなぁ」

 

オグリ:

「ん、あれじゃないか、レース教室」

 

タマ:

「おー、ほんまや。結構な数がいるやないか」

 

ガラの悪い声:

「いいかー!地面を蹴るんだ!蹴りまくるんだ!お前らの魂を地面に刻み込むんだー!!」

 

上品な声:

「ああ、もう、あなたはまたそうやって!!力任せな指導を!」

 

上品な声:

「皆さん、力強く地面を蹴るのも大切ですが、足首を痛めないように、踏み込みの角度とリズムを忘れずにはしりましょうね。」

 

(トラックでは、ガラの悪いウマ娘が拡声器を手に、子供たちを追いかけ回しながら走り方を指導している。隣では、上品なウマ娘が優しく子供たちに堅実なアドバイスを送っている。)

 

オグリ:

「ん、あれ、マックイーンじゃないか」

 

タマ:

「え、マックイーンって、メジロ家のメジロマックイーン?」

 

オグリ:

「そうだ。おーい、マックイーン!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

(それほど大きな声を出したわけではないが、さすがにウマ娘。一度耳をパタつかせた後、上品なウマ娘、メジロマックイーンが振り向いた)

 

マックイーン:(突然の再会に驚く)

「え…?オグリさん!?それに…タマモクロスさん!?どうしてここに…?」

 

(子供たちに休憩を宣言すると、マックイーンは驚いた表情で駆け寄ってくる。)

 

マックイーン:

「こんなところで会うなんて…びっくりしましたわ!お二人とも、お元気でしたか?」

 

タマ:

「元気元気!あんたこそ、こんなとこで何してるん?先生みたいになって!」

 

マックイーン:

「実は、ここで子供たちに走りを教えてるんです。メジロ家としての活動の一環です…」

 

オグリ:

「マックイーンなら、堅実な教え方ができそうだな…」

 

マックイーン:「さて、どうでしょう。私は子供たちにとっては少し退屈な講師のようでして…」

 

ガラの悪いウマ娘:

「そーれ!もっと!もっとだ!魂込めて走れー!!」

 

(聞こえてきた声に額に指先をあて、困ったようなため息をつきながらマックイーンが続ける)

 

マックイーン:

「あの方のように、スピードと瞬発力重視の走りのほうが人気があるようですわ」

 

(ガラの悪いウマ娘が話し込んでいるマックイーンを見つけると、拡声器で子供たちに言う)

 

ガラの悪いウマ娘:

「あ、マックちゃんがサボってるー。いっけないんだー」

 

マックイーン:(拡声器に負けない声で)

「サボってなどいません!休憩中です!そちらも一息入れるタイミングなのでは!」

 

(言われてガラの悪いウマ娘は、腕時計で時間を確認する)

 

ガラの悪いウマ娘:

「おし、おまえら、15分休憩。汗ふいて、水分取って、あの葦毛どもをいじってこい」

 

(言った本人は近くのベンチでゴロリと横になる。まるで『日曜日』に自堕落な生活を送っている中年のような仕草である)

 

マックイーン:(憤然として)

「いじるって何ですか!いじるって!」

 

(ガラの悪いウマ娘を睨みつけるマックイーン。しかし、ガラの悪いウマ娘は『沈黙』で返した)

(まだ幼いウマ娘たちがマイボトルを片手に集まってきて、オグリとタマを不思議そうに見ている。)

 

子ウマ娘A:

「しってるよ!オグリキャップでしょ!お父さんがファンだったって言ってたよ」

 

タマ:

「お、オグリ。さすがの知名度やな。ウチのことは知っとるか」

 

子ウマ娘B・C:

「タマねぇさん」「タマねぇ」

 

タマ:

「おお、知っとったか!」

 

マックイーン:

「お二人の戦績を考えれば当然でしょうに…」

 

子ウマ娘B・C:

「タマねぇさんの戦績って何?」「なにー?」

 

マックイーン:

「えっ!ですからレースの…」

 

子ウマ娘B・C:

「ええっ!タマねぇさん、レースに出とったん!!」

 

タマ:

「どこで覚えよった!このジャリ仔マども!」

 

子ウマ娘A・B・C:

「ウマトック」「ウマチューブ」「バスコ・ダ・ガツン 」

 

タマ:

「無断アップロードは禁止や。あとハチミツとキャンターのタケシは後でしばく」

 

子ウマ娘B:

「でも、先生が葦毛さん達をいじって来いっていったから~」

 

マックイーン:

「あの方のそういうところは真似なくていいんです!まったくも~、あの人ときたら…」

 

オグリ:

「そういえば、彼女は誰なんだ?トレセン学園では見たことのないウマ娘だ」

 

マックイーン:

「彼女も私とおなじく講師をしている方ですわ。アメリカの複数のG1で勝利している方なのですが…、見ての通りつかみどころのない方でして…」

 

オグリ:

「彼女とは長いのか?」

 

マックイーン:

「ええ、この活動をしてからすぐに…。どういうわけか行く先々で一緒に活動することが重なりまして…」

 

オグリ:

「そこで仲良くなったのか」

 

マックイーン:

「とんでもありませんわ。あの人ときたら三拍子そろってますわ。この間も…」

 

(不機嫌な顔で愚痴を言い始めたマックイーンをオグリがなだめる隙に、タマが子供たちを静かに誘導してマックイーンから遠ざける)

 

タマ:

「ええか、お前ら。マックイーン先生には少し優しくするんやで」

 

子ウマ娘A・B・C:

「「「はーい」」」

 

 

 

「たまっていたんだな、マックイーン。サブトレーナーにも、話を聞いてもらった方がいいぞ」

 オグリのいうサブトレーナーとは、かつて、オグリやマックイーンが所属していたチームシリウスの二代目トレーナーのことである。オグリがシリウスに所属していたころ彼はまだ駆け出しトレーナーで、マックイーンの担当のサブトレーナーとして修行をしていた。そのころの習慣なのかオグリは彼をサブトレーナーと呼んでしまうことがある。

 鼻息を荒く愚痴を吐いたマックイーンに、オグリが気を使うようにいったのだ。が…、少し間を置いてから、静かに、でもどこか諦めを含んだ声で答える。

「あの方は…、今はダービーで忙しいのですわ」

「そうか…」

 マックイーンにはまだ肌寒さが残る季節だったらしい。

「とはいえ、確かに皐月賞は『衝撃』的だったからな…」

「ええ、走っていると言うより飛んでいるよう。ですからね。ああいう走りが、今の主流になるのでしょう…」

「マックイーン?」

 切なさをにじませるマックイーンの横顔に、オグリは心配した。

「…現在、ウマ娘レース競技者としてのメジロ家は低迷しております。シニア級で天皇賞を目指すという我が家のこだわりが時代に合わなくなっているのかもしれません」

「…」

 マックイーンはベンチで横になるガラの悪いウマ娘に視線を投げてから、

「あの方や、『英雄』と讃えられるウマ娘のスピード重視の走りが、今の主流であることも間違いはありません」

 マックイーンは微笑み、オグリを見返す。

「しかし、その先は?彼女達のスピードが当たり前になったレースでは、いったい何が勝負を決めるのでしょう?それまでは、我々メジロ家の走りを伝えていかなければなりません」

 穏やかだが決意を感じる目をしている。おそらくだがこれからメジロ家はレースから撤退していくことになるのだろう。それでもメジロ家がレースの世界に築いたものはきっと残る。地方レースから中央レースの移籍のごたごたでクラシックレースに出走できなかったオグリだが、その騒動自体がウマ娘レースのルールを大きく変えたように、マックイーン達の走りが再びレースの主流を変える時が来る。

「…そうか。私も手伝えることがあったら手伝うよ」

 オグリがそう返すと、マックイーンは待ってましたとばかりに笑う。

「まあ、それはありがたいですわ。それなら、早速…」

 

 

 

マックイーン:(オグリ、子供たちと戯れるタマを見ながら)

「皆さん、せっかくなので、ここでチーム対抗リレーをしませんか?」

 

子供たち:(大喜びで)

「リレー!リレー!やりたい!」

 

タマ:(乗り気で)

「リレーか!ええやん!やったろやないの!」

 

オグリ:(真剣な表情で)

「わかった。やろう!」

 

(マックイーンが駆けていき。ガラの悪いウマ娘を起こそうとするが、マックイーンが近づいたとたんガラの悪いウマ娘が跳ね起きる)

(驚くマックイーンを笑った後、睨みつけられ逃げるように子供たちの処にやってくる)

 

ガラの悪いウマ娘:

「よーし、お前ら休憩は終わりだ」

 

(子供たちから「一番休んでたのは先生じゃん」と、ヤジが飛んだが無視をするガラの悪いウマ娘)

 

マックイーン:(チーム分けを提案する)

「そうですね。では、オグリさん、タマさん、あなたは、それぞれチームリーダーになってください。子供たちをチームに分けますわ」

 

(子供たちはそれぞれ、オグリ、タマ、ガラの悪いウマ娘の周りに集まる)

(チーム分けが終わり、各チームが整列する)

 

タマ:(各々自分のチームに向かって)

「お前ら!負けたらあかんで!気合い入れていくで!

 

オグリ:

「皆、無理せず、楽しく走ろう」

 

ガラの悪いウマ娘:

「へへへ、勝つぞー!負けたらジュースおごりな!」

 

マックイーン:(各チームを見渡して)

「では、リレーの説明をします。各チーム、バトン代わりにタスキを使います、グラウンドを一周したあと、次の人に渡してください。タスキを落とした場合は、拾ってから走り直してください。よろしいですか?」

 

子供たち:(元気よく)

「はい!」

 

マックイーン:

「アンカーはタマモさん、オグリさん、と、(ガラの悪いウマ娘を指し)あなたです」

 

ガラの悪いウマ娘:

「えー、先頭がいい~」

 

マックイーン:

「子供と競ってどうするのですか。それに番組的にもラストにタマモさんとオグリさんが走らなくては画にならないでしょうに」

 

D(画面外で手を合わせる):

「ありがとうごさいます」

 

(マックイーン、スタート位置を示す)

 

マックイーン:

スタート位置はこちらです。第一走者は、このラインからスタートしてください。

 

(各チームの第一走者がスタートラインに並ぶ)

 

マックイーン:(各チームリーダーに向かって)

オグリさん、タマさん、あなたもよろしいですか?

 

オグリ:(完全にG1ウマ娘の顔をしている)

ああ…。

 

タマ:(やる気満々で)

いつでもOKや!

 

ガラの悪いウマ娘:(余裕の表情で)

任せとけ。

 

マック:(子供たちと各チームリーダーを見渡して)

それでは、位置について…よーい…

 

(マックが手を振り下ろす)

 

マック:

ドン!

 

(各チームの第一走者が一斉に走り出す)

 




前作、トレセン学園新聞部「蹄鉄の裏側」の感想欄いて、メインストーリーメンバーのその後はどうなっているのでしょう。という感想をいただき妄想を爆発させた結果であります。
解釈違いだー。という方はご容赦ください。
1代目シリウストレーナーの最後のウマ娘、オグリキャップと、2代目トレーナーの最初のウマ娘、メジロマックイーンのその後の物語いかがだったでしょうか?

面白かった、つまらなかった、正直な気持ちでもちろん大丈夫です。
感想、評価、お気に入り登録を頂けましたら、励みになります。
何卒よろしくお願い申し上げます。
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