フツーな少年とぼっちな少女   作:ウロタクサン

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第一章『妖怪になったひとり』
1.ある雨の日の帰り道、オレ達は奇妙なヒトに出会った


 

 

───ここは妖怪のいる街、さくらニュータウン。この街に住む妖怪が見える少年、天野景太は、今日もいつも通りの学校生活を終え、自身に妖怪が見える腕時計である『妖怪ウォッチ』を与えた妖怪執事のウィスパーと、トラックに撥ねられた飼い猫の地縛霊であり、ケータの初めてにして一番のともだちであるジバニャンと共に、雨の降る家路を歩んでいるところであった。

 

「いやーしかしケータきゅん、今日もまたこっぴどく妖怪に取り憑かれたおかげで、周囲の方々から白い目で見られまくってましたねえ。特に先生に指名されて教壇に立った瞬間忘れん帽に取り憑かれたときなんて…」

「あーもう!ウィスパーったら、人がせっかく一生懸命忘れようとしてることを思い出させないでよ!…こういう時こそ取り憑いてくれれば良いのに、どうしてこうあんな取り憑いて欲しくない場面でばっか取り憑いてくるんだろ…」

「みんな、最近ケータに中々呼び出してもらってニャいから少しでもケータに構って欲しいニャンよ」

「ええ…そんな子どもじゃあるまいし…」

 

ケータはこう言うが、数多の妖怪達を受け入れてきた彼のその「フツー」の優しさに心を惹かれ、強い好意を持っている妖怪は多い。かく言うジバニャンも、そして話題を持ちかけたウィスパーもその内の一人であった。

 

 

 

───と、その時。ケータ達の眼に、髪の毛の色もジャージの色も真っピンクというズキュキュン太もビックリなカラーリングを持ち、ただならぬ雰囲気と途方に暮れた表情を浮かべながら雨の降る路地に座り込む少女が映り込んだ。年齢は高校生程だろうか。遠目からでも彼女が何かしら深い絶望を感じているであろうことが見て取れる。

 

「なななんで急に皆私のこと見えなくなっちゃったんだろ。…ショックのあまり行く宛もないのにふらついてたらいつの間にか知らない場所に来ちゃったし…。どどどどうしようこのままじゃ私この見知らぬ土地で誰にも見つけてもらえないまま人生が終わっちゃう…!せっかく文化祭が終わって新しいギターも買って結束バンドの活動もこれからってところだったのに…!お父さんお母さん、不出来な娘でごめんなさい。私はここまでだったけど、せめてふたりのことは幸せにしてあげてください…!」

 

…少女の呪詛のような独り言を耳にし、声をかけようかと迷っていたケータは一瞬怖気づき、普段は知ったかぶりばかりしているがこういう場面では誰よりも頼りになる己の執事に相談を持ちかけた。

 

(ね、ねぇウィスパー、あれって話しかけた方が良いのかな、放っておいた方が良いのかな…。オレとしては、すごく困ってそうだし助けてあげたいけど…)

(な、何やら困ってそうなのは確実ですし、手を差し伸べてあげても良いかとは思いますが…)

(でもあの女の子からはなんかヤバげな雰囲気を感じるニャン…。下手したら呪われそうニャン…!)

 

ウィスパーとジバニャンは、少女への心配よりもケータの身を案じる気持ちが強く、得体の知れない少女を手助けしようというケータの考えを肯定しきることができなかった。

───でも。

 

(…でも、なんだか本当に困ってそうで放っておけないな。…よし、オレ、あの人に話しかけてみるよ)

(…ケータ君…!)

(ケータ…!)

 

天野景太は、ごくフツーの少年だ。相手が人間でも妖怪でも、そのどちらでもなくても、相手が困っていたら、迷わずにその手を差し伸べることができる。

───全ての存在に「フツーの優しさ」を与えることが出来る、そんな少年なのだ。

 

ケータはその少女に近付き、彼女の持つ問題を解決するために、彼女の口から事情を聞き出そうとする。

 

「───あの!オレ、天野景太って言います!何か困ってることがあるなら言ってみてください!力になれるかもしれません!」

 

少女は自分を認識できる人が現れ、その人に突然話しかけられたことに驚きつつも、自分を見つけてくれたその人が優しそうな子どもであったことと、この最悪な状況を打破する足掛かりが見つかったことに強く安堵した様子だった。

 

「……えっ!?!?け、ケータ、くん?き、君は、わ、私のことが、み、見える…の…ですか?」

「は、はい。」

「…ほぉ〜〜っ……。…わ、私の名前は後藤ひとりだよ…です。

三日くらい前から急に、私の身の周りの人達が私に声をかけてくれなくなっちゃって。で、でも私の影の薄さならそんなことも全然あり得るかなって思ってたら、お母さんとお父さんまで私に声をかけてくれなくなったどころか、目の前にいるはずの私を探し出すようになっちゃって…」

 

───後藤ひとりという名の少女が事の顛末を語った際、ケータとジバニャンの中で彼女が見舞われたこの現象の原因についての一つの仮説が立った。

 

(ケータ、これってもしかして、ジミーかカゲローかカイムの仕業ニャン?)

(そうだね…。妖怪ウォッチでひとりさんの周りを照らしてみようか)

 

ケータは、妖怪ウォッチのサーチライトをひとりの周囲に当てた。

 

(…って、アレ?)

 

───しかし、ひとりの周りには、妖怪が取り憑いているような反応はなく、代わりにひとり自身にウォッチが反応しているようだった。

 

(コレ、もしかして…)

 

ケータは、いつぞや、自分がエンマ大王の企みによって死に至り、妖怪フウ2となった時のことを思い返した。しかし、思い至ったその結論は即座に直前のひとりの発言によって否定に追い込まれた。

 

(いやいやいや…ひとりさんは『三日くらい前から急に周りの人から自分が見えなくなった』って言ってたし、ひとりさんが死んで妖怪になってるなんてそんなこと…。

…いやでも、確かオロチも、レッドJに家族や故郷を奪われた怒りで生きた人間のまま妖怪になったんだっけ。

じゃあ、もしかするとひとりさんも、オロチと同じように───生きたまま妖怪になったのかもしれない)

 

ひとまず一番納得のいく結論を見つけたケータは、さてこれからどうしようかと思案する。不安そうな表情を浮かべた女の人を雨が降る中で置いて家に帰るなど、ごくフツーの感性を持つ男子小学生であるケータにできるはずもなかった。そして、次にケータの頭に浮かび上がったのは自分の部屋のクローゼットに住んでいるとあるともだち妖怪の姿。寝コロンブスやじごくミミズクの一件でも力になってくれた彼女ならば、今回もまた力になってくれるかもしれない。

そう思ったケータは、ある一つの提案をひとりに持ち出した。

 

「…あの、ひとりさん!」

「ど、どうしたの?」

「住める場所がないのはとっても心細いと思うし、ひとりさんの身に何が起こったのかが分かって、ひとりさんが元の生活に戻れるようになるまでの間───オレの家に住まない?」

 

 

「……エッ!?!?!?!?」

「「………ぇ゙ーっっっ!?!?!?!?」」

 

…突然の提案に脳のキャパシティを越えたひとりが奇声を上げた後、アホ2匹が親友の唐突な爆弾発言に顔を赤くしながら絶叫した。

 

 

 

 

原作タグ、どっちにした方が良い?

  • 妖怪ウォッチ
  • ぼっち・ざ・ろっく!
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