いつものひとりにとってはこの上なく憂鬱なはずの、月曜日の朝。
「…ふふっ」
だが、今日のひとりは朝目が覚めて少し机を見遣ると、何か大きな目標が叶ったかのような、喜びと感慨深さに満ちた笑みを浮かべながら、リビングへと向かった。
「…お姉ちゃん、なんか昨日までと雰囲気違う気がする。なんか、前までのお姉ちゃんに戻ったみたい」
リビングに着くなり、ふたりに顔をまじまじと見つめられながらそんなことを言われたひとりは、我が妹の感の鋭さに驚きつつも、リビングで朝食を摂っている両親に昨日自分に起こったことを伝えるべく、その口を開いた。
「…あの、お父さん、お母さん」
ひとりに呼ばれた直樹と美智代は、ひとりの方へと振り向いた。
「どうしたんだい、ひとり」
直樹がひとりにそう発言を促すと、ひとりは大きく息を吸ってから、思い切って言い出した。
「私───もしかして、人間に戻ったかもしれない」
ひとりがそう言うと、直樹も美智代も、まるでそのことを言われる前から分かっていたかのように、笑いながら言った。
「…そうだろうなって思ってた。だってひとり、昨日とはなんだか顔つきも纏ってる空気も違うから」
「ひとりちゃん、今日は嫌いなはずの月曜日の朝なのに、随分と晴れやかな顔でリビングに来たから、何かすごく嬉しいことでもあったのかなって思ってたのよ〜」
どうやら自分の家族は、思っているよりも自分のことをよく見てくれているらしい。ひとりは、いとも容易く自分のことを見透かしてくる両親と妹を眺めながら、そう強く思ったのだった。
───そして、ひとりは自分の両親の顔を見遣ると、強い決意を込めながら、言った。
「あ、あのっ!私、今日…学校に、行ってみようと思うんだ。
ほ、ほらっ!せっかく人間に戻れたんだし!クラスのみんな…が心配してくれてるかどうか、そもそも私のことを覚えてるかどうかも分からないけど、でもっ…!」
ひとりのその言葉を聞くと、直樹も美智代も、優しい笑顔を浮かべながら言った。
「警察の人達には、ひとりが行方不明になって捜索されていたことは内密にしておくようにお願いしておいた。ひとりがウチに帰って来たすぐ後に、ひとりが何かしら非行に走って消えた訳じゃないってことも説明しておいたよ。
…警察側の人に、ちょうど幽霊とか妖怪の類が見える人がいたみたいでね。その人にちゃんと事情を説明したら分かってもらえて、学校の人達にも上手いこと伝えてくれてるみたいだから、安心しなさい」
「ひとりちゃんが戻って来たときいつでも学校に戻って来れるように、先生方には予め話は通しておいてあるわ。あんまり騒ぎ立てないように学校のみんなにも伝えてくれてるはずだから、きっと大丈夫のはずよ。…行ってらっしゃい」
全て分かっていたかのように自分の行動を先回りしてサポートしてくれる両親の姿を見て、ひとりは改めて、両親には敵わないと思った。
「ふ、二人とも…ありがとうっ!」
ひとりはそう言うと、晴れやかな顔で学校へと向かった───!
まる二週間振りに学校にやってきたひとりは、もうずっと見ていなかった景色を前に感慨深い気持ちになりながらも、周囲の人々からの好奇や安堵などが入り混じった視線に耐えかねていた。
(ねえ、あのピンク髪の子って一時期行方不明説が出ていた…)
(あの子、文化祭の時かっこよかったなあ…。事情はよく分からないけど、無事に戻ってきてくれて良かった)
(思い出したあ…!これが元々私が感じていた感覚なんだった…!)
ひとりが久方ぶりに感じる他人からの視線に、悶えながら苦しんでいたその時───
「…ひ、ひとりちゃん!?」
「…き、喜多ちゃん!?」
隣のクラスのバンドメンバーとのまさかの対面に、驚きのあまり口から魂が飛び出そうになった。
───それから昼休みになって、それぞれ食事を終えたひとりと郁代は、ひとりが普段昼食を摂っている謎スペースで会話を交わしていた。
「…なるほど、それでひとりちゃんは人間に戻れたのね」
郁代が納得したようにそう呟くと、ひとりは少し困ったように眉を下げながら言った。
「い、いえ…。戻れた、っていうのはちょっと違います」
ひとりのその言葉を聞くと、郁代は意外そうにしながら尋ねた。
「そうなの?…戻れた訳じゃないのなら、どうしてひとりちゃんは、今ちゃんと周りの人にも見えているのかしら」
郁代がそう言うと、ひとりは改めて、事情を説明した。
「私が今人間であることは間違いないんですけど…。わ、私がなりたいって思うと、そう思った方に自由に変われるみたいなんです。例えば今、私が本心から妖怪になりたいって思えば、妖怪になれるみたいです」
ひとりのその説明を受けて、郁代は感心しつつも驚いて言った。
「さ、流石はひとりちゃんの身体ね…。相変わらず便利な構造してるわ…」
郁代の発言に、ひとりは苦笑しながら返事を返した。
「そ、そうですかね…」
その日、ひとりは、両親が警察や学校の先生に上手いこと話を通しておいてくれたこともあり、思ったよりもあっさりと学校での一日を終えることができた。
そして、その日の放課後。ひとりはSTARRYへ着くと、虹夏たちにも郁代に説明をした時と同じように、自分が今人間であること。そして、人間と妖怪、なりたいと思った方に、いつでもなれることを伝えた。
その話を聞くと虹夏たちは驚いたが、すぐに思い直したように口々に言った。
「…まあ、ぼっちちゃんの身体って元からどっかおかしかったし、今更何が起こってもフシギじゃないか」
「その通り。もう私は、実はぼっちが世界を滅ぼすほどの力を秘めた大妖怪って言われても驚かない」
「…流石にそりゃないとは思うが、正味アタシもぼっちちゃんの体質にゃもう慣れっこだな」
「みなさん中々言いますね〜。…まあ、かく言う私もそんなに驚きませんでしたが」
口々にそんなことを言われたひとりは、受け入れてくれたこと自体はとても嬉しく思ったが、それはそれとしてかなり複雑な気持ちになった。
(みんな、私のことなんだと思ってるんだろ…)
そんなことを思いながらも、今日もいつも通りに掃除をして、いつも通りに接客業に勤しみ、いつも通りに帰り際にスタジオで練習をした。
…だが、ひとりは決して忘れない。そのいつも通りがあるのは、とある少年とそのともだちの、深い深い優しさがあったおかげであることを。
そして、ひとりは決めていた。今週の土曜日に、その少年に逢いに行くことを。人間になった自分の姿を、その少年に見せに行くことを。
───そうして、その土曜日が訪れた。ひとりは早朝に目覚めると、顔を洗い、歯を磨き、軽い食事を済ませてから、スマホと交通ICを持って、駅へと向かった。両親には昨日予め話を通してあり、このことを伝えた時は「向こうのご両親にお会いすることがあったら、好印象を持たれるように手土産を渡してご挨拶するんだよ」と、ノリノリで手土産用の代金を渡そうとしてきた。ひとりは一瞬、手土産を買う為にそのお金を受け取ろうとしたが、別にその少年の両親に会う為に遠出する訳ではないと思い直して、その提案を丁重に断った。ひとりが会いに行くのは、少年の両親ではなく───その少年自身なのだ。
(…ケータくんのご両親への手土産は、また今度遊びに行った時にでもお渡しすれば良いよねっ!)
…両親の助言そのものは、ありがたく受け取っていたようだが。
そうして。金沢八景駅から2時間ほど電車に揺られて、ひとりは今日の目的としていた場所───妖怪のいる街、さくらニュータウンへとやってきた。
「…改めて来てみると、そこら中からフシギな気配を感じる場所だな」
ひとりがやってきたのは、さくら中央シティ。今日ひとりが逢いに来たその少年───天野景太の家は、ここさくら中央シティ駅から、ほんの十数分ほどだ。
街を歩いていると、そこかしこから気配と一緒に声が聞こえてくる。
「なあコマじろう。もしかすっとあの子が、ケータの話してた女の子ズラか?オラ、ちょっとあの子とお話してみたいズラ〜」
「兄つぁん、いきなり話しかけちまったら驚かせちゃうズラよ」
「ふぅん…あのコがケータのお気に入りのコか…。ちょっと可愛いじゃないの。このボクがキュンキュンさせてきちゃおっかな…?」
「やめておけ、キュウビ。あの娘からは、何やら強い妖力を感じる。…それに、どうやらあの娘は本気でケータのことを慕っているようだぞ」
「チックショー!ケータめぇ、あんな可愛い女の子に慕われやがって!…でも、あの子は素直で良い子だからなあ…そりゃあモテるよなあ…」
ケータに心を委ねてメダルを渡した彼のともだち妖怪たちが、ひとりの方を見ながら口々に言った。ひとりは、そんな彼らの好奇の目線を、不思議と、不快だとは思わなかった。
彼らの声を聞きながら歩いていくうちに、魚屋の交差点や美味しそうな匂いが漂ってくるパン屋を通り過ぎ───そして、ひとりにとっても思い出深い、赤い屋根の一軒家に辿り着いた。
「…っ」
人間として改めてこの家に訪れるとなると、緊張で身体が強張る。それでも、脳裏に浮かぶのは───この一週間ずっとずっと逢いたかった、あの少年の───ケータの、お日様のような笑顔。
その顔を心に浮かべると、ひとりは意を決して家のチャイムを押した───!
「はい、天野です。…どちら様かしら?」
家から出てきたのは、ケータの母親だった。ひとりは強張る喉をなんとか動かして、言葉を紡ぎ出した。
「あ、あの、け、け、ケータくんい、いらっしゃいますか」
その言葉を聞いたケータの母親は、玄関から大きな声を出してケータに呼びかけた。
「ケータ〜!あなたにお客さんよ〜!女の子の〜!」
「はーい!」
その声を聞いたケータは返事を返すと、大急ぎで階段を降りてきた。
ケータは玄関に顔を出すと、その意外な客人に大変驚き、大声を上げた。
「って───ひとりさん!?」
「えへへ、逢いに来たよ。…ケータくん」
ケータのその反応を見た母親は、大急ぎでひとりを家に招き入れた。
「あなたもしかして、ケータのおともだちなの!?…まあ、息子の女の子友達を玄関で待たせちゃうなんて、私ったらなんて失礼なことを!さあ、上がって上がって!」
「もう、お母さんったらよしてよ!…ひとりさん、どうぞ遠慮なくあがって」
「う、うんっ!」
ケータにそう促されると、ひとりは頷いて、ケータの家へと上がり込んだ───
「お茶です!どうぞゆっくりしていってね」
「あ、ありがとうございます…」
ケータの母親はそう言って、ひとりにお茶を出した。
ひとりが受け取ったお茶を遠慮がちに口に含む様子を見ると、ケータの母親は口を開いた。
「あなたのお名前、ひとりちゃんって言うのね。良いお名前ね!…ねえ、ひとりちゃん。ウチのケータとは、どのようなご関係なのかしら」
母親がそうひとりに尋ねるのを聞いたケータは、慌てて母親を止めた。
「もうやめてってば、お母さん!ひとりさん困っちゃってるじゃん!」
ケータの母親は少し申し訳なさそうにしながら、でも嬉しそうにして言った。
「ひとりちゃん、もしも困らせちゃってたのならごめんなさいね。…でも、この子、一年前の夏頃からずっとそうなんだけど、最近では特に、とっても楽しそうなの。まるで、かけがえのないともだちや、居場所ができたみたいに」
母親のその言葉を聞いたケータは、少し嬉しそうに呟いた。
「お母さん…」
ケータの母親は、続けて言った。
「…ひとりちゃん、あなたがケータとどんな風に知り合って、そして今、どんな関係でいるのか、私には分からないけど」
ケータの母親は、そこで一拍置くと、また言葉を紡ぎ出した。
「───この子と、どうかこれからも、仲良くしてあげて。この子、最近ちょっとクラスのみんなからおかしな目で見られちゃうことが増えたみたいで、少し悲しそうにしてたから」
ひとりは、そんなケータの母親の、息子を思いやる真摯な言葉を受けて、力強く頷きながら言った。
「…はい。任せてください。…ケータくんがとっても優しい男の子だってことを、私は知っています。だから、ケータくんがこれから先、どんな目に遭おうと───私は、ケータくんの味方で、居場所であり続けたい」
ひとりのそんな言葉を受けたケータの母親は、涙声で言った。
「そんな嬉しいことを言ってくれる子が、まさか現れるなんて。…ひとりちゃん、息子の…ケータのこと、これからもどうか、よろしくね」
ひとりは満面の笑みを浮かべると、ケータの母親の方へと力強く頷き返した。
「…はいっ!」
ひとりがケータの案内のもと部屋に入ると、下の階で三人が会話している最中、ずっとケータの部屋で空気を読んで待機していたウィスパーとジバニャンが、口々にひとりに挨拶をした。
「おお、ひとりさん!人間になってからは初めてお会いしますね。いらっしゃい!」
「ひとりちゃん、ひとまずは人間の身体に戻れたみたいで良かったニャンねえ!これからもいつでもウチに遊びに来ると良いニャン!」
ひとりは、そんな二人に笑って挨拶を返した。
「ウィスパーさん、ジバニャンさん。…あの時はどうも、お世話になりました」
そしてひとりは、クローゼットの方に歩み寄って優しくノックをすると、その中にいるヒキコウモリにも挨拶をした。
「ヒキコウモリさんも、ありがとうございました」
ヒキコウモリは笑顔でひとりに返事を返した。
「いえいえ、ひとりさん。またこうしてお会いできて、嬉しいです!」
ヒキコウモリはそこで言葉を区切ると、ウィスパーとジバニャン、そしてひとりとケータの方を見遣って、口を開いた。
「…さて、私たちはどうやら、そろそろ空気を読んだ方が良さそうです。ウィスパーさん、ジバニャンさん。地下の私のコレクションで、一緒に遊んでいましょう」
ヒキコウモリのその発言の意図を察したウィスパーとジバニャンが、クローゼットの方へと近づいていった。
「良いですねえ何で勝負します?ま、どんなボードゲームでもエリート執事であるこの私が負けるはずござあせんけど」
「ウィスパー、そう言ってこの前ヒキコウモリにボロボロに負かされてたニャン。そしてその後オレっちにも負けてたニャン」
「テメコラジバ野郎、人の負の歴史を掘り返すんじゃねえ!…そんなに言うならやってやりますとも!てめーらまとめてかかってこいやァ!」
騒がしく言い合うウィスパーとジバニャンを連れてヒキコウモリが地下室へと向かう。ひとりはそんな様子を見ながら、三人に静かに礼を言った。
「ウィスパーさん、ジバニャンさん、ヒキコウモリさん。…ありがとう」
そして、カーペットに座るケータの隣に移動すると、自分もゆっくりと座り込んだ。
そしてケータは、そんなひとりを見遣ると、嬉しそうにしながらゆっくりと口を開いた。
「…ひとりさん、さっきはありがとね。ひとりさんがさっきお母さんに言ってくれた言葉、オレも傍で聞いてて、すっごく嬉しかった」
ケータのそんな言葉を耳にしたひとりは、慈愛に満ちた眼差しでケータを見つめて言った。
「ううん、ケータくんは、とっても優しい子だよ。…だって、君のおともだちはみんな、君のことがとっても好きそうだったもん。それに、私がこうしてみんなとまた会えて、人間になれたのも。…全部全部、君のその優しさのおかげなんだから」
ケータは、ひとりの言葉を聞き終えると、ゆっくりと口を開いた。
「───オレさ。もうすぐ小学校を卒業して、中学生になるんだ」
ケータはそこで言葉を区切ると、一呼吸置いて、悲しそうな顔をしながら言葉を紡ぎ出した。
「…でも、中学生にもなると、きっと周りの目とかも気になってきちゃってさ。同級生の目を気にするあまり、ウィスパーやジバニャン、ヒキコウモリ…妖怪のみんなのことをぞんざいに扱っちゃいそうで───怖いんだ」
ケータは、この時初めて───ともだちにすら言えていなかった自身の内にある葛藤を、ひとりに向かって吐き出した。ひとりはそんなケータの言葉を、ただ静かに、それでいて確かに聞いていた。
ケータは泣き出しながら、続く言葉を紡ぎ出す。
「怖いんだよ…。オレがいつか、みんなの心を深く傷つけちゃうんじゃないかって思うとさ。オレなんて、ともだちのみんなとウォッチがなければ…ただのフツーの、何の面白みもないヤツなのに」
ひとりはケータのそんな言葉を聞くと、ケータのことを思いっきり抱きしめた。
「よしよし、ケータくん。そんなことを思える時点で、君は本当に優しい子だよ。…でもさ」
ひとりはそう言うと、少し怒ったように声を低くした。
「ケータくんが自分で自分のことをそういう風に言っちゃうとさ、君のことが好きなみんなは、君に酷いことを言われた時なんかよりもよっぽど傷ついちゃうと思うな」
「…!」
ケータは、ひとりのそんな言葉にはっと息を呑んだ。
ひとりは、少し気まずそうに笑いながら言った。
「…って、普段から散々自分のことを責めてる私が言っても、きっと説得力ないんだろうな」
ひとりは少し息を吸ってから、話題を変えた。
「…ところでさ。私の妖怪メダルなんだけど。ケータくんなら、いつでも使っていいよ」
ケータは、そんなひとりの言葉に意表を突かれたようにして言った。
「え、いつでも、って…」
ひとりはケータのその反応に、真剣な表情で頷いて言った。
「うん。いつでも」
ひとりは、その表情を崩すことなく続けて口を開いた。
「学校にいる時でも、家にいる時でも、ご飯を食べている時でも、バイトをしている時でも、ライブをしている時でも…。もしもケータくんに召喚されたら、私は例えその時どんなことをしていようとも、ケータくんの元に駆けつける」
ひとりはまた、続けて言った。
「それがどんな用事でも、ケータくんが私を頼りたいと思ってくれたなら、私はその気持ちに、何を犠牲にしてでも応えたいから」
ケータはとても申し訳なさそうに、でもどこか嬉しそうにして、ひとりのその言葉に答えた。
「…そんなの、ひとりさんに悪いよ」
ひとりは首を振って、ケータの手を握りながら言った。その手からは、ギターを弾き続けて硬くなった皮の、ゴワゴワしていて、でもどこかとても温かみのある感触が感じられた。
「ううん。悪くなんてない。だって私が、そうしたいんだから」
ひとりはそう言うと少し躊躇ってから、勇気を出して口を開いた。
「…で、でも、もしそれでもまだケータくんが申し訳なく思うのなら、私からのお願いも、聞いてくれるかな…?」
ケータは、笑顔になって答えた。
「うん!なんでも言ってよ!」
ひとりは、照れながら口を開いた。
「じゃ、じゃあ…。ケータくんのこと、これから『けいくん』って呼んでも…良いかな?」
ケータは、驚いたように言った。
「…良いけど、ひとりさんはそんなことで良いの?」
ひとりはその言葉を聞いて、心底満足そうにして言った。
「…良いんだよ。もう私、けいくんには、たくさんのものをもらってるから」
ひとりに改めて『けいくん』と呼ばれたケータは、その照れくささとむず痒さから、見る見るうちに顔が真っ赤になった。
「あ、あはは!オレ、人からあんま崩した呼び方で呼ばれないから、こういうの慣れないや!」
そんなケータの照れた顔を見たひとりは、自分の行動を改めて客観視すると、こちらもまた見る見るうちにもらい照れしながら顔を真っ赤にして───
「…ひ、ひとりさん?どうしたの?」
「あわわわ…私は金沢八景のツチノコです。ノコノコ。ノコノコ。キュピピーン!」
「…う、うわあああ!ひとりさんがおかしくなっちゃった!
ウィスパー、ジバニャーン、ヒキコウモリー!助けてー!!!」
───この日、初めてケータに対して、奇行を晒した。
ここまでのご愛読ありがとうございました!
これにて「フツーな少年とぼっちな少女」…の第一章が、完結となります!
次次回からは第二章が始まります。次回は幕間の予定です。
それでは、張り切ってまいりましょー!(ブチニャン)
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ぼっち・ざ・ろっく!