フツーな少年とぼっちな少女   作:ウロタクサン

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2.「フツー」の優しさ

 

 

「そそそそんな…!…い、居候なんて、と、とてもケータくんに申し訳ない…よ」

 

一頻り叫んだ後落ち着きを取り戻したひとりは、ケータの切り出した提案に対して、自分の住居を心配して家に住まわせてくれようとするケータの優しさに対する深い感謝と、自分なんかがそんな優しい男の子の優しさに甘えてのうのうとその男の子の家で居候をすることに対する深い罪悪感に包まれていた。

 

「そんなことないです。全然大丈夫ですよ!オレの家のクローゼットには()()()()()()()()()()()()()()()()()()から、きっとひとりさんの力になってくれると思いますよ!」

 

ケータが屈託のない笑顔でそう言うと、ひとりはケータの今の言葉が彼の本心からの言葉であることを感じ取り、安心したような、人の優しさに触れた喜びから少し泣き出しそうな笑みを浮かべた。ただ、その直後、今のケータの発言の()()()()()に少し引っかかりを覚えた。そういえば、先ほど彼が着けている腕時計から変な光が出て、自分の周りを照らしていたような気がする。その腕時計は一体何なのだろうか。光が出てスリットが付いている腕時計なんて見たこともないし、少年の声に応えることに必死で気が付かなかったけど、そういえば少年の周りに赤い猫と白いおばけのような姿をした生き物?がうっすらと見えるような気がする。少年が自分に見せた優しさが本当のものであると知っているひとりには、少年を疑う気持ちは殆どないが、少し気がかりだったので、勇気を出して質問をひり出した。

 

「…あ、あのっ!クローゼットにともだちが住んでいるって、どういうこと…?あ、あと…さっき私の周りを、その時計から出た光で照らしてたような気がするし、ケータくんの周りから、2匹くらいの生き物みたいなのがうっすら見えるし…」

 

その問いを聞いたケータは、うっかり忘れ物をしたときのような、やっちゃった!という表情を浮かべて言った。

 

「ごめんなさい、大事なことなのに言うのがすっかり遅くなっちゃいました。───実はオレ、()()が見えるんです。この、()()()()()()のおかげで」

 

その発言を聞いたひとりは、大変驚きつつもどこか納得のいったような気持ちになった。妖怪、と言われて彼女が真っ先にイメージしたのは、百鬼夜行絵巻に出てくるような河童などだ。

 

「…よ、妖怪!?…も、もしかして…ケータくんに私のことが見えたのも、それで…!?」

「…はい。きっとそうだと思います。でも、普段は隠れてる妖怪は光を当てないと見えないのに、ひとりさんのことは何故か光を当てずとも見えてました」

「───恐らくひとりさんは、生きたまま妖怪になってまだ日が浅いために、妖怪と関わりを持つようになってからそこそこ長い時間が経ってウォッチ無しでもある程度なら妖怪とコミュニケーションを取ることが出来るようになったケータ君の目にはフツーに映ってしまうようでうぃすね」

「え、オレにひとりさんが見えたのってそんな理由だったんだ!」

(…今、ケータくんの方からちょっと声が聞こえたような?…もしかして、さっきうっすら見えた生き物みたいなものの声?)

 

先程からジバニャンと共に2人のやり取りを見守っていたウィスパーが、口を挟んだ。そして。

 

「あ、そうだ!改めて紹介しますね。オレの執事のウィスパーと、ともだちのジバニャンです。この妖怪ウォッチの光を当てれば、はっきりと二人の姿が見えるようになると思います」

「う、うん…」

 

ケータはそう言うと、徐ろにひとりにウォッチを持たせ、ボタンを押して辺りを照らす。───すると、白い幽霊のような姿に、青い唇を持った生き物と、赤い猫のような姿に、腹巻きと欠けた右耳と二つに分かれた尻尾をもった生き物が、ひとりの視界に現れた。

 

「私の名はウィスパー。以後お見知り置きを」

「オレっちはジバニャンニャン。よろしくニャン!」

 

ウィスパーの恭しい挨拶と、ジバニャンのフレンドリーな挨拶を受けて、改めてひとりの中で天野景太という少年に対する信頼度が上がった。

 

(こんな私に挨拶してくれる妖怪さん達がともだちだし、何より初対面の私を一生懸命助けようとしてくれたし、ケータくんはきっとすごく優しい子なんだよね…!この子になら家に住まわせてもらうことをお願いしても大丈夫かも…!)

 

そして。ひとりの中に、ケータに対しての信頼とはまた違った感情が浮かび上がってきた。

 

(それに…私、なんだかこの子のことをもっと傍で見守ってたいな。私にこんなに優しくしてくれて、妖怪さん達のことも、本当に大切に思ってるんだろうなってことが見ていて分かるから)

 

ケータくんはどこか虹夏ちゃんと似ているところがあるな、とひとりは思った。こんな陰キャでぼっちでろくに人の目を見て話すことができない自分に手を差し伸べてくれて、居場所を作ってくれて、心地よい「フツー」の優しさを与えてくれる。

ただ、この子は虹夏とは違って、まだ小学生だ。永い時を生きてきた妖怪達の心を開き、彼らを受け入れるほどの強く大きな優しさを持っているが、同時に高校生の自分よりも世間を知らないが故の危うさがある。いくら心が優しくても、この子はごくフツーの小学生だ。世間が思っていたよりも醜い姿をしていることをこの子はまだ知らない。

どこか自分の知らない所で、この子が人から心無いことを言われて傷ついている姿。どこの誰とも知らない人間にこの子の優しさが踏みにじられ、この子が心を暗黒に閉ざす姿。そんな彼の姿を想像するだけで、ひとりの心は鋭い爪でえぐられたような強い痛みに襲われた。

年の離れた妹を持つ姉として、そして人の心の窮地を救うヒーローとしての本能だろうか。ひとりはどこか、この少年のことを───放ってはおけなかった。

 

 

「あ、あのっ!ケータくん!」

「ひとりさん、どうしたんですか?」

 

後藤ひとりは、唾を飲み込んでから、思い切って言った。

 

「私を……ケータくんの家に、住まわせてください!」

 

その言葉を聞いたケータ達は、少し驚いたような表情を浮かべた後。

 

「はい、もちろん!」

「これからよろしくお願いしますね、ひとりさん!」

「またウチが賑やかになるニャンねえ!」

 

───満開の笑みを浮かべながら、口々にひとりを歓迎した。

 

 

 

原作タグ、どっちにした方が良い?

  • 妖怪ウォッチ
  • ぼっち・ざ・ろっく!
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