フツーな少年とぼっちな少女   作:ウロタクサン

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ぼざろアニメ2期決定おめでとうございます!
…ぼざろアニメ2期決定初回にお出しする話がガチガチに妖ウォ回とは、イカがなものかと。




幕間④:姉の悩みと、初召喚

 

それは、クリスマスイブまで残り一週間ほどとなった頃の土曜日の朝のこと。ケータたちがいつものように、下北沢STARRYに行くまでの休息を満喫していると、突然家のインターホンが鳴り出した。

その音を聴いたウィスパーが、不思議そうに口を開いた。

 

「おや、こんな早くから誰か来るなんて珍しいでうぃすね」

「だね。オレ、ちょっと出てくるよ」

「行ってらっしゃいニャ〜ン」

 

ケータはそう言って玄関まで向かうと、家の扉を開いた。

───すると、そこには。

 

「ケータさん、こんな朝早くからどうもすみません。実は少し相談したいことがございまして…」

 

自分と同じように妖怪ウォッチを持つ少女『未空イナホ』が、どこか申し訳なさそうな表情を浮かべながら立っていた。

 

「イナホさん!何かあったの?…立ち話も何だから、オレの部屋に来なよ」

「あざーっす!お邪魔させていただきまーす!」

 

ケータがそう言うと、イナホは玄関に上がり込み、ケータの案内のもと部屋へと向かった。

 

 

 

 

「───で、今日はどうしたの?」

 

イナホを自室へと上げ、カーペットに座り込んだケータは、イナホにそう尋ねた。

イナホは少し思い悩む素振りを見せると、いつになく深刻そうな様子で口を開いた。

 

「…実は、最近ウチの弟のリクが、私の奇行のせいで友達にアレコレ言われることが増えてしまったようで…」

 

イナホのその言葉を聞いたウィスパーが、口を開いた。

 

「…なるほど。兄弟のいる家庭でウォッチを持ってしまったが故のお悩みですね」

 

イナホは続けて、眉を下げながら言った。

 

「そのせいで、最近はよく悲しそうな顔をしながら帰って来て、その顔を見る度にとても申し訳なくなるんですけど…。かと言って、ウォッチを手放す訳にも行かなくて、困ってるんです」

「そっか…。…大変だね」

 

ケータはそう言うと、ばっと立ち上がって言った。

 

「…よしっ!オレも、リクくんがまた楽しく友達と遊べるようになる為に、協力するよ!」

 

ケータがそう言うと、イナホは顔をぱあっと明るくして言った。

 

「ありがとうございます、ケータさん!早速今日の午前に、リクがその友達と遊ぶ約束をしているみたいで。この後すぐひょうたん池公園まで来てくだされば、きっとその友達も一緒にいると思います!」

「うん、わかった!じゃあ今すぐ一緒に行ってみよう!」

 

ケータがそう言うと、ジバニャンは何かを悟ったような表情を浮かべながら言った。

 

「オレっちは、今日は留守番してるニャン。…なんだか今日は、オレっちの出る幕がなさそうな予感がするからニャ」

 

ケータとウィスパーはジバニャンのその意味深長な発言に首を傾げつつも、イナホに続いてひょうたん池公園へと向かった。

 

 

 

 

そしてケータはイナホの案内のもと、ひょうたん池公園に向かった。

そこには、小学1年生ほどの子ども達が数人で一緒になって遊んでおり、少し気弱そうな男の子が、どこか後ろめたそうにしながらその遊びに混じっていた。

 

「あの子がリクくんか…」

 

ケータがそう呟くと、ウィスパーは子ども達の方に視線を遣りながら言った。

 

「何かしらトラブルが起こっているようには見えませんね。もう少し様子を見てみましょうか」

「うん、わかった」

「ラジャです」

 

ウィスパーがそう言うと、ケータとイナホは頷いて、リク達の方により深く注意を払った。

───そうしているうちに、ふと、リクの友達の一人がリクに向かって、からかうように言った。

 

『なあなあ、リクのねーちゃんってよく独り言言ったりヘンな声上げながら走り回ったりしてるよな〜!』

『ッ!』

 

その言葉を聞いた瞬間、リクは悲しそうな表情になった。

しかし、そんなリクの様子を慮ることなく、別の一人が続けて言った。

 

『オレも何回か廊下でリクのねーちゃん見かけたことあったけど、ありゃヤバかったな!面白い通り越してちょっと怖かったし!』

 

子どもの好奇心とは実に残酷なもので、唇を噛みながら口を閉ざし続けるリクを見たその子ども達は、寄って集ってリクを質問攻めにした。

 

『なあなあ、リクのねーちゃん普段から家でもあんなんなの?』

『なんでいっつも独り言ばっか言ってんの?教えてくれよ〜。オレら友達だろ〜?』

『……うぅ…』

 

その様子を見ていたケータたちは、今にも泣き出しそうな顔で俯いたリクを見て、その子ども達を止めようと考えていた。

 

「あれは流石に酷いよ。今すぐにでも止めなきゃ…!」

「そ、それはそうですけど、止めるったって私たちが出て行っても怪しまれて、リクが余計からかわれるようになるだけですし…」

 

ケータが感情的になりながらそう言うと、イナホは自分が原因で弟の窮地を招いてしまった罪悪感と、姉として弟を助けてやれない悔しさに歯噛みしながら言った。

 

「…あの子達に、人を傷つける発言をさせないようにできれば良いんだけど…」

 

ケータはそう言うと、静かに思考を巡らせた。

 

(人を傷つける発言をしない…つまり、人の気持ちを考えられる…。────あれ?)

 

そしてケータは、ふと思い出した。

 

(───いるじゃん。オレが最近出会った、人の気持ちをちゃんと考えられる、考えすぎなまでに考えてしまう、そんな()()が)

 

ケータが思い浮かべたのは、もう一ヶ月以上も前に出会った、人間から突然妖怪となったあの心優しきピンクのギタリスト少女───後藤ひとりの、姿だった。

 

(それに、ひとりさんはオレに「いつでも呼んで良い」って言ってくれた。なら、今こそ───ひとりさんの力を、借りる時なんじゃないかな?)

 

そう思ったケータは、ウィスパーに大辞典を取り出してもらって、そこから後藤ひとりの妖怪メダルを取り出した。

 

「…ケータ君、貴方もしや…」

「…?」

 

ケータのその考えを察したウィスパーは、小さく呟いた。イナホだけは、何がなんだか分かっていないような様子で、小さく首を傾げた。

そしてケータは、ひとりの妖怪メダルを手に持つと、いつもの詠唱を唱えた。

 

「───オレのともだち!出てこいひとりさん!妖怪メダル、セットオン!」

 

ケータがそう言いながら時計のスリットにメダルを差し込むと、時計からピンク色の経文のような無数の光の束が飛び出し、そこから人一人ほどの大きさの影が現れた。そのシルエットは徐々に鮮明になっていき、全身にピンクのジャージを纏った、ハネッ毛が特徴的なピンク髪の少女───後藤ひとりが、姿を現した。

 

「───やっと私のことを呼び出してくれたね、けいくん。……けいくんにメダルを渡してから、私ずっと、けいくんが頼ってくれるのを待ってたんだよ?…それなのに、今までずっと呼んでくれなかったじゃない」

 

ひとりは心底嬉しそうに、でもどこか拗ねたように言った。

 

「ごめんね、ひとりさん。…早速だけど、お願いしたいことがあるんだ。あそこにいる子達に、俯いてる男の子への質問攻めを辞めさせて欲しいんだ」

 

ケータのその言葉を受けたひとりは、ケータが向ける視線の先に顔を動かした。そして状況を理解すると、ケータに笑いかけながら言った。

 

「うん、わかったよ。…私に任せててね」

 

ひとりはそう言うと、子ども達の方へと飛んで行った。イナホは安心したような笑みを浮かべながらひとりの方を眺めるケータを見て、言いたいことが湯水の如く溢れ出てきた。

 

「ちょちょちょケータさん、今のお方は一体どなたですか!?お姿とお名前が明らかに人間のものでしたし、何よりケータさんのこと『けいくん』って呼んでましたけど!?」

 

イナホのその質問を受けたケータは、困ったように笑いながら言った。

 

「うーん…。話せばそこそこ長くなるんだけど…」

「…そんじゃ、また今度の機会にでも教えてください」

「うん!」

 

ケータは笑顔で、イナホのその言葉に返事を返した。

 

 

───そして、ひとりは現在、取り憑くことなく子ども達を改心させる方法を模索している最中であった。

 

(取り憑いて陰キャにさせるんじゃ、私が離れた時点でこの子達は元通りになって、またこの男の子を質問攻めにしちゃうよね…)

 

ひとりが考えを巡らせ続けていると、いつぞや妖気の塊を星歌ときくりに向かって放った時のように、ふとナゾの歌詞が彼女の頭の中に現れてきた。そしてひとりは、一つの発想に辿り着いた。

 

(…歌で暗示を掛けるとか?いやいや、そんな手段で人をどうこうできる訳が…)

 

しかしひとりはすぐに正気に戻って、その発想を捨て置こうと───したが、ひとりにはどうにもその発想が間違いのようには思えなかった。

 

(…ものは試しだ。一回やってみよう)

 

ひとりは深く息を吸い込むと、おどろおどろしく歌い始めた───

 

『分〜かれ分かれ〜…』

「…ん?なんだこの歌声?」

「なんだ、お前も聴こえたのか?」

 

突如として聴こえてきた不気味な歌声に、リクを質問攻めにしていた子ども達が、ピタリとその動きを止めた。ひとりは続けて歌い出した。

 

『分〜かれ分かれ〜…』

「おい、なんかちょっと…怖くないか、この声」

「…みんな、どうしたの?」

「…リク、お前はこの声聴こえないのか!?」

「声?何も聴こえないけど…」

「は…!?」

 

特に何も聴こえていない様子のリクを見て、子ども達はより深く恐怖を覚えた。ひとりはとどめとばかりに、一際大きく歌声を張り上げながら歌った。

 

『分〜かれ分かれ〜… その子の痛みを分かってよ〜…!!』

「わああ、なんだなんだ!?」

「痛み…!?何のことだよ!オレら別にリクに暴力なんて振るってねーぞ!」

 

ひとりは、どこか自分の妹のことを思い出しながら、その子ども達を強い口調で叱りつけた。

 

『…暴力っていうのは、何も殴ったり、蹴ったりするだけのものじゃないんだよ。人が気にしていることを平然と言ったり、人が聞かれたくないことを質問攻めにしたりすることだって、心の暴力だよ。…キミ達がリクくんの友達だっていうなら、リクくんにちゃんと、言いたくないことを無理に聞き出そうとしたことを謝りなさい』

 

ひとりがそう言い終えると、見えない声に叱られたその子ども達は、自分達の行いを改めて反省して、シュンとした様子になりながら、口々にリクに謝った。

 

「…リク、ごめんな。お前のねーちゃんのこと、ヤバいなんて言っちゃって」

「…オレも、お前が言いたくないことを無理に聞き出そうとしちまった。…ごめん」

 

リクはあまりにも急に態度が変わった目の前の子達を見て困惑したが、すぐに気を持ち直して言った。

 

「…良いよ。ちゃんと謝ってくれたし。それに、ねーちゃんがヤバいのだって、その通りだし。…でも、ねーちゃんにはそれだけじゃなくて、優しいところも、ちゃんとあるんだよ」

 

その様子を見ていたケータたちは、涙目になりながら言った。

 

「無事に仲直りできて、良かったね…!」

「…リクったら、私のことをそんな風に思っててくれたんだね。これは姉として自分の行いを改め直さなければ…!」

「うんうん。大半の諍いはごめんの一言で後腐れなく終わる。コレくらいの年齢だからこそ許された、人間関係におけるトラブルの至極単純な解決手段でうぃすね」

 

リク達がまた元のように笑い合いながら遊ぶ様子を見ると、ケータたちは静かにその場を後にした。

 

 

 

 

そよ風ヒルズでイナホと別れた後、ケータはひとりに改めて礼を言った。

 

「ひとりさん、今日は本当にありがとう!おかげで助かったよ!」

「どういたしまして…!けいくんの力になれたみたいで、とっても嬉しいよ!…ところでさ、けいくん」

 

ひとりは嬉しそうにそう言うと、少し不機嫌そうになりながらケータに尋ねた。

 

「…あの眼鏡の女の子とは、結局どんな関係なの?」

「いや〜、ひょんなことで知り合った、ウォッチを持つ仲間っていうか…」

「…ふーん」

 

ケータが少し困ったようにそう答えると、ひとりは未だにむくれながら返事を返した。そしてひとりは気を取り直して、口を開いた。

 

「…でも、あの女の子の気持ちは、ちょっとわかるな。私も、自分の行動のせいでふたりになにか迷惑かけてたらって思うと…どうにも、不安で」

「ひとりさん…」

 

ケータはひとりの方を見遣ると、元気づけるように言った。

 

「ひとりさんは立派なお姉ちゃんだよ!だって、オレがふたりちゃんにひとりさんを会わせた時、ふたりちゃんとっても嬉しそうだったし!」

「…そ、そうかな…?」

「そうだよ!」

 

ケータは、続けてしみじみと言った。

 

「…それに、あのひとりさんを見た時、オレは初めてお姉ちゃんっていうものに憧れたんだよ」

 

ケータのその言葉を受けたひとりは、だらしない笑顔を浮かべながら、ケータに言った。

 

「そ、そっかあ…。じゃ、じゃあ、これからは私のこと『お姉ちゃん』って呼んでも…良いんだよ?」

「……こんなお姉ちゃんがいたら、きっと毎日幸せだろうな」

 

ケータは静かにそう呟くと、どこかいたずらな笑みを浮かべながら言った。

 

「…今日の午後も、みんなと頑張ろうね!お姉ちゃんっ!」

「…ヴェッ!?!?」

 

ひとりは、ケータからの『お姉ちゃん』呼びのあまりの衝撃に思わず顔を赤らめながら奇声を上げると、ケータは頬を膨らませて言った。

 

「も〜。ひとりさんが呼んで良いって言ったのに何その反応〜」

「ご、ごめんね、けいくん。あまりにも嬉しすぎて…」

「あははっ、なにそれ〜」

 

ひとりが頭を掻きながらそう言うと、ケータは笑って返した。そしてひとりは、ケータの方を優しげな眼差しで見ると、気を取り直して言った。

 

「…帰ろっか!」

「うんっ!」

 

ケータがそう頷くと、そんな二人を静かに見守っていたウィスパーが心の中で呟いた。

 

(こ、コイツら…。バカップル度合いが上がってやがる…)

 

 

 

 

 

所変わって、ここは未空家。

 

「イナホ、今日は一体どこに行ってたんダニ?」

 

USAピョンがイナホにそう尋ねると、イナホは少し悩む素振りを見せてから言った。

 

「ケータさんにお悩みを相談してたの。最近リクが私のせいでみんなから変なことを言われるのが増えてきちゃったって」

「…そうだったんダニか」

 

イナホがそう言うと、USAピョンは申し訳なさそうにしょんぼりした。

 

「USAピョンたちが負い目を感じることじゃないし、このことはもう解決したから!…だから、気にしないで良いよ」

 

イナホが励ますようにそう言うと、USAピョンは少し元気を取り戻した。

 

「…そう言ってもらえると、ありがたいダニ」

 

そんなUSAピョンの様子を見遣ると、イナホはふと思い出したように口を開いた。

 

「…そういえば、私らももうすぐ中学生になるし、私は特に弟のこともあるから、妖怪との関わり方もそろそろ考えるべき時かもしれませぬなあ」

 

イナホのその発言を聞いたUSAピョンは、焦ったように言った。

 

「ダニ…!?イ、イナホ、まさかウォッチを手放す気じゃないダニ!?」

 

USAピョンがそう言うと、イナホは呆れながら言った。

 

「そんな訳ないでしょ。もちろん私は、USAピョンたちとも関わり続けるし、探偵業も続けるつもりだよ。…『関わり方を考える』って言ってんの」

「関わり方…ダニか?」

 

イナホがそう言うと、USAピョンは不思議そうに呟いた。イナホは頷いて言った。

 

「そ、関わり方。…ウォッチを学校に持って行くなんてことはなるべくしないで、日常生活はあくまでもフツーの人間で過ごすの。…私としてはどれだけ変な目で見られても別に良いんだけど、リクに迷惑をかける訳にはいかないからね」

「ダ、ダニ!?じゃあ、学校生活の中で妖怪と遭遇したらどうするダニか!?」

 

USAピョンが驚いてそう言うと、イナホはあっけらかんとして言った。

 

「どうもしないよ。だって見えてなかった頃だってどうにかなってたんだし。…それに、いざとなったらUSAピョンがなんとかしてくれるんでしょ?」

「イナホ…!」

 

USAピョンは感極まったようにイナホの名前を呼ぶと、不敵な笑みを浮かべながら言った。

 

「あったりまえダニ!ミーに任せとけダニ!」

「頼りにしてるぜ!相棒!」

 

イナホがそう言いながらUSAピョンに拳を突き出すと、USAピョンもそれに応えて拳を合わせた。二人はそうして顔を見合わせると、静かに笑い合った。

 

 

 




おまけ:ぼっちちゃんがケータくんに召喚された瞬間


土曜日。朝食を食べ終えて、いつものように部屋でギターの練習をしていた時のことだった。

『───オレのともだち、出てこい、ひとりさん!』
「…ッ!」

急に頭の上から、けいくんが私を呼ぶ声が聞こえた気がして、私は思わず手に持っていたギターを床に置くと、即座に天井に顔を向けた。
───すると、天井にはピンクの経文が書かれた光の帯が発生していた。
その光の帯を見た瞬間、私は思わず、こう呟いていた。

「…けいくん、やっと私を頼ってくれたんだね」

私は確信した。この光の向こうには、けいくんがいると。けいくんが自分の意志で、私を頼ってくれていると。

「待っててね、けいくん。私が今すぐ、助けてあげるから」

───そして次の瞬間、私はその光の帯に、躊躇いもなく飛び込んでいた。

どっちだと思う?

  • ぼケー
  • ケーぼ
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