フツーな少年とぼっちな少女   作:ウロタクサン

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※この回を読む前に、アニメ妖怪ウォッチ第102話に収録されている「妖怪 寝コロンブス」を観ておくことをおすすめします。(YouTubeで公式配信されてます)
原作タグをぼざろにしておいて妖怪ウォッチのアニメを観てないと訳がわからなくなるようなネタを引っ張ってくるとはこれ如何に。


3.今、私が一番したいことは

 

いつもの二人に加え、ひとりを連れて自宅の玄関に辿り着いたケータは、雨で少し濡れた靴を玄関に置き、母親に帰りの挨拶をしてから自室へと向かった。

 

「ここがオレの部屋です!」

「何の変哲もないフツーで退屈な部屋でうぃすが、どうぞ」

「面白いものは何もないニャンけど、まあゆっくりしていってニャン」

「そこ二人、うるさいよ」

「…ふふっ」

「ひとりさん、少し待っていてくださいね」

「あっうん」

(…なんかちょっと嬉しそうだけど、どうしたのかな、ひとりさん。)

 

ケータは、どこか微笑ましそうな顔をしたひとりにそう言うと、クローゼットに優しくノックをした。

 

「ヒキコウモリ、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど、大丈夫かな?」

 

ケータがノックをしつつそう言うと、クローゼットの扉がそっと開かれた。

 

「はい、いかがなさいましたか?ケータさん」

 

ヒキコウモリがそう言うと、ケータはひとりに小さく手招きをする。ひとりがケータの隣に来ると、ケータはひとりの肩に手を置きながらヒキコウモリに言った。

 

「この後藤ひとりさんって人、数日前は人間だったんだけど生きてるまま妖怪になっちゃったみたいで。周りの人達に見えなくなっちゃって困ってたから、元の生活に戻れる目処が立つまでひとまずオレの家に住まわせておこうと思ったんだけど、ヒキコウモリ、ひとりさんのお部屋、お願いできる?」

「はい、お安い御用です!」

 

ヒキコウモリは少し嬉しそうにそう言うと、クローゼットの中にケータとひとりを招き入れた。

───すると。

 

「…えっ!?えっ!?」

「びっくりしますよね〜。今のヒキコウモリって妖怪の世界でも有数の資産家らしくて。オレの部屋のクローゼットの地下にこんなの作れちゃうんですよ」

 

エレベーターのように地下に向かって動き出したクローゼットに大きく驚いたひとりに声を掛けたケータは、目の前の光景に指を指す。

そこには、宙に浮かぶ無数のクローゼットと、さながら高級マンションの一室のような豪華な部屋があった。ひとりは目の前の光景に対するあまりの衝撃に、思わず腰を抜かした。

 

「…えっ、ま、まさか…この豪華なお部屋を、私なんかに?」

 

ひとりはおそるおそるといった様子でヒキコウモリにそう尋ねると、ヒキコウモリは満面の笑みで答えた。

 

「はい、もちろんです!ひとりさんからはなんだかお仲間のニオイがします。元の生活に戻れる目処が立つまでは、私達と一緒に楽しく暮らしましょう!」

 

ヒキコウモリのその返答を聞いたケータは、未だに衝撃と躊躇が抜けていないひとりに向かってこう言った。

 

「ひとりさん、ヒキコウモリもこう言ってますし、遠慮なんてしなくて大丈夫です。きっとその方がヒキコウモリだって嬉しいと思いますよ」

「う、うん…ケータくんがそう言うなら…」

 

ひとりはそう言うと、ヒキコウモリに向かってお礼を言った。

 

「あっあの!本当にありがとうございます、ヒキコウモリさん!しばらくの間お世話になります!」

「いえいえ、どういたしまして。インターネット回線も繋がっておりますので、是非充実した引きこもりライフをお送りください」

 

ヒキコウモリは笑顔でひとりのお礼に返事をすると、ケータに向き直り言った。

 

「お役に立てて良かったです、ケータさん!ひとりさんとは良いお友達になれそうです!」

「ありがとう、ヒキコウモリ!二人が仲良くなれたら、オレも嬉しいよ!」

 

ケータはそう言うと、自室の部屋のクローゼットに乗り、ひとりに挨拶をした。

 

「ひとりさん、もし良かったらヒキコウモリと仲良くしてあげてください。じゃあ、また晩ごはんができたら持ってきますね!」

「う、うん!」

 

ひとりは、ケータとヒキコウモリを乗せたクローゼットが上昇していくのを静かに見ていた。

 

───それから、しばらくして。「インターネット回線」というヒキコウモリの言葉から、最近まったく投稿できていない自身のoh!tubeアカウントであるギターヒーローのことを思い出した。

 

「…そ、そういえば文化祭くらいの頃からずっと、ギターヒーローのカバー動画投稿できてないや…。」

 

自分の日常の象徴であったギターヒーローのことを思い返していくうちに、最近全く顔を見ることができていない家族やSTARRYのみんなの顔も頭に浮かび上がっていき、ひとりの中にある寂しさと不安も強まっていく。

 

「そ、そもそも、家族とも、結束バンドのみんなともしばらく会えてないし…。…みんな、心配してるかな…。…してくれてるといいな…」

 

文化祭ライブを終えて夢に向かう真っ最中である結束バンドのこと。最近全く高校に出席できていないこと。一度日常を思い返してしまったひとりの頭脳は、ひとりの意思に反して連想ゲームを続けてしまう。

 

「あ…、あ…!どうしよう…!このままじゃ…!」

 

ひとりの頭の中が不安に支配されかけたその時、突然、見ず知らずの自分を助けてくれたあの少年の

───ケータの笑顔が、脳裏に浮かんだ。

 

「…!」

 

ひとりは連想ゲームをようやく辞めてくれた己の頭脳をフル回転させて、改めて自身の置かれている状況を俯瞰した。

 

「でっ、でも、ケータくん達が私を助けてくれなかったら、今頃もっと酷いことになってただろうし…。それに、私がいるってことをみんなに知らせることができてたら、今頃こんなことにはなってない訳だし…」

 

───少し考えた末、彼女が出した結論は。

 

「い、今まず大事なことは、元の生活に戻れるようにすることだもんね!バンド活動や学校のことは日常生活に戻れるようになってから考えれば良いし!

───それに」

 

と、ひとりがそう言いかけた時、ドアの方から軽いノックの音が響いた。

 

『ひとりさーん!晩ごはん持ってきましたよー!今日の晩ごはんはオレのお母さんが作ってくれた唐揚げですっ!オレも結構手伝ったから、ひとりさんの口に合うと良いな!』

「あっケッケータくん!?い、今開けるからちょっと待ってて!」

 

ひとりは慌ててドアを開け、ケータから中に唐揚げとレタスとトマトが入ったタッパーと、ご飯が入ったタッパーと、箸を受け取った。

 

「…こ、これ、私に?」

「はい!お腹空いてるかなって思って!」

 

ひとりは受け取ったタッパーを机に置くと、少し涙の滲んだ笑みででケータの方を見た。

 

「…ありがとう…!大事に食べるね…!」

「喜んでもらえて良かったです!じゃあ、オレはもう行きますね」

 

ケータはひとりに手を振り、自室へと戻ろうとする。

───その時。

 

「あっちょっちょっと待って!」

 

ひとりから、ケータを引き留める大きな声が響いた。ひとりの思わぬ声に驚いたケータは、足を止めてひとりの方向に向き直った。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

ひとりは、少し恥ずかしそうにしながら言った。

 

「ケ、ケータくんは、どうして会ったばかりの私に、こんなに優しくしてくれるの?…ご、ごめんね?どうしても、聞いてみたくなっちゃって…」

「───うーん…」

 

ひとりのその疑問を聞いたケータは、顎に手を当て、少し考える素振りを見せた後、言った。

 

「オレ、目の前に困っている人がいたら、それが人間でも妖怪でも、そのどっちでもなくても、つい助けたくなっちゃうんです。…そのせいで厄介なことに巻き込まれたことも、少なくはありませんけど」

 

ケータは、少し苦い思い出を振り返るように、でも、少し楽しそうに。

 

「でも、少なくとも、人を助けて後悔したことは今までに一度もありません。いつだって、オレの傍にはジバニャンが、ヒキコウモリが、ウィスパーが…。ともだちが、いてくれた。苦い思い出だって、皆がいれば素敵な思い出です。

───それに…」

 

ケータは、ひとりの方を見て、少し切なそうに笑いかけた。

 

「ひとりさんからは、ずっと、寂しい思いをしているような、友達が欲しかったような、そんな雰囲気を感じます」

 

ひとりは、はっと息を呑んだ。

 

「それに、オレ、初めてひとりさんを見た時、心のどこかで感じたんです。この人は、きっととっても優しい人だって」

 

ケータは、少し眉を下げて、悲しそうにしながら、それでもはっきりと言い切った。

 

「そんな人を、あんな雨の降る中でひとりぼっちにするなんて───オレにはとても、できないよ」

 

ケータの言葉を聞き終えたひとりは、今にも泣き出しそうな顔になり、涙を堪えながら声をひり出した。

 

「…わ、私、高校生になるまで、友達なんて一人もいなくてさ。高校生になってから、私を見つけてくれた女の子が、私を自分のバンドに誘ってくれて。そのバンドのメンバーの人達とも友達になれて、もうひとりぼっちじゃなくなったんだけど…

───そんなみんなも、私のお母さんとお父さんと妹も、私のことが見えなくなっちゃって、もう今度こそひとりぼっちになっちゃったかと思ってたんだ」

 

ケータは、ただ静かにひとりの言葉を聞いていた。

 

「…でもっ…!ぞんなどぎにっ…!げーだぐんがわだじをみづげでぐれでっ…!」

 

ひとりは、とうとう堪えきれずに泣き出しながら言った。

ケータは、涙で顔がぐちゃぐちゃになったひとりに、優しげな笑顔で笑いかけながら言った。

 

「ひとりさん。もし、オレで───オレたちで良かったら、ともだちになりませんか?」

 

ひとりはその言葉を聞いた瞬間、眼の前から、陽だまりのような優しい光が差したような気がした。

 

「……へ…?」

 

ケータから発された言葉へのあまりの衝撃に、ひとりの頭は理解が追いつかなくなったが───心は、その言葉を、どこまでも強く抱きしめていた。

 

「ともだちになろう、ひとりさん。ひとりさんが元の生活に戻れるようになるまででいい。ひとりさんが感じてるその苦しみを、少しオレたちにも分けてよ」

 

ケータは、どこまでも優しい笑みで、ひとりに向かって笑いかけた。その彼の笑顔で、一体今までどれほどの妖怪達が、彼に心を預けるようになったのだろう。

それは分からないが、一つ。たった一つだけ、確実に分かることがある。

 

「うん…うんっ!なるっ…!私、ケータくんのともだちに…!

…でも、ケータくんに助けられるだけじゃなくて、私もケータくんの力になりたいな…!」

 

───その人数は、この瞬間に、ひとり分足されることになる、ということだ。

 

 

 

 

 

涙を拭ったひとりは、改めて自室へと戻っていくケータを見送った。彼が入ったクローゼットが見えなくなるまで、手を振りながら。

そうしてケータを見送り終わった頃に、ひとりはふと、ケータがこの部屋に来る前の自分は、あの時何を言いかけていたのだろうと思い返す。

そして、その答えを見つけると、ひとりの表情は、深い慈愛と、強い決意に満ちた笑みに変わった。

 

「───それに、今、私が一番したいことは、ケータくんをすぐ傍で見守ることだから」

 

ひとりは自分の想いを証明するように、高らかな声でそう呟いた。

そして、ケータがテーブルの上に置いてくれていた二つのタッパーを開け、時間が経ってすっかり冷め切ったその中身を、それはそれは美味しそうに、大事に頬張った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作タグ、どっちにした方が良い?

  • 妖怪ウォッチ
  • ぼっち・ざ・ろっく!
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