フツーな少年とぼっちな少女   作:ウロタクサン

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 大変投稿が遅れてしまいました。投稿が開いたこの期間中、妖怪ウォッチとぼっちざろっくの間に新しく「モンストとのコラボ」という共通点ができましたね。「ストライクショット」っていうセリフはジバニャンもぼっちちゃんも言ってるの、こんな小説を書いている身としてはなんだか不思議な感慨深さがあります。ぼっちちゃんが明らかに無法な強さだったので、やはり彼女は公式人外キャラ…!


26.思わぬお誘い

 

 新学期が始まってしばらくした頃の土曜日。結束バンド及びケータたち御一行は、もはや恒常化した路上ライブをいつものように終え、帰路に着いていた。

 虹夏が達成感の滲んだ笑顔を浮かべながら口を開いた。

 

「今日のライブも良かったよ〜!じゃ、ご飯食べて解散しよっか!」

「良いね。ケータは何食べたい?」

 

 リョウは虹夏のその言葉に賛同しつつ、ケータに向けて優しい声で尋ねた。

 ケータはその言葉に、申し訳なさそうに口を開いた。

 

「あ、あの。オレたち、いつもみんなに奢ってもらっちゃってるんですけど、本当に大丈夫なんですか…?」

「良いに決まってるじゃないそんなの!遠慮なんてしないで!」

「そーそー!ケータくんは新生活で疲れてる筈なのに私たちの為に時間を使ってくれてるんだから、ここはほんのお礼ってことでお姉さんたちに奢られてなさいな!」

 

 郁代と虹夏が軽い調子でそう返し、ひとりもリョウもケータを見遣りながら、その言葉にうんうん頷いた。

 ケータが照れくさそうに頬を掻いていると、ふと虹夏が続けて口を開いた。

 

「そう言えば、もう結構路上ライブにも慣れてきたよね」

「何回やってもドキドキしますけどね〜」

「今日も結構客入った」

 

 リョウがそう言うと、虹夏はふとケータにしがみ付くひとりの方を見遣り苦笑いを浮かべながら言った。

 

「ぼっちちゃんも前ほど人前であがらなくなってきたね!……相変わらずライブが終わったらコアラみたいにケータくんに引っ付き出すけど」

「はは…」

「毎度毎度引っ付く力が強すぎて私じゃ引き剝がせない。……ぼっちめ。私だってケータに甘えたいのに」

 

 虹夏のその言葉に郁代が続けて苦笑いを浮かべて、リョウが不満げな表情を浮かべながらそう呟いていると、ケータがふと困ったように眉を下げながらひとりに向けて口を開いた。

 

「ひ、ひとりさん。周りの人も見てるし、オレもそろそろ恥ずかしいからちょっと離れ……」

「あっそ、そうだよね。ごめんね。今みんなに見られなくするから……」

 

 ひとりはそう言いながら、自身の魂の形を人間のものから妖怪のものへと変えた。……ケータの背中にしがみ付く手の力は少したりとも緩めないまま。

 

「…離れようとは意地でもしないんですね」

「相変わらず半端ない独占欲ニャン…」

 

 ウィスパーとジバニャンが呆れたように囁き合っていると、ケータはふと恥ずかしそうに顔を赤らめながらひとりに向けて小さく声を上げた。

 

「あ、あの、ひとりさん。なんかちょっと背中に何か当たってる気がして落ち着かないんだけど……」

「んふ~っ。お背中がどうしちゃったのかなあ、けいく~ん?」

「うひゃっ!?旋毛の臭い嗅がないでぇっ…!」

 

 ひとりがいたずらな笑みを浮かべて抱き着く力を強めながら徐ろにケータの旋毛の臭いを嗅ぎ出すと、リョウは据わった目でひとりを睨みつけ始め、郁代は呆れつつもどこか羨ましげにひとりの方を見遣り、ウィスパーとジバニャンは頭に手を当てながら天を仰いでいた。

 流石に見兼ねた虹夏が力尽くでひとりをケータから引っぺがしにかかると、ひとりはケータが痛みを感じない範囲での力加減で抵抗した。

 

「いたいけな男子中学生に変態ムーブかますのはやめなさいっ!!」

「な、何するんですか虹夏ちゃん。私のオアシスを奪わないでください」

「奪ってねーしケータ君困ってんでしょーがっ!!分かったならとっとと離れなさいっ!!!」

「嫌です無理です絶対に!!むむむむむむむむむッ!!!!!」

「だーーーッしゃらくせえ!!良いからとっとと離れんかい!!!!!」

「むむむむむむぎゅっ!?!?」

 

 ひとりがあえなくケータから引きはがされると、郁代とリョウ―――いや、ウィスパーとジバニャンでさえ、気持ち引いた表情で虹夏の方を見遣った。

 

「……えっ、みんなどうしたの?」

 

 虹夏が困惑を隠しきれない面持ちで四人に向けてそう尋ねかけると、リョウが若干震えながら口を開いた。

 

「……に、虹夏、私じゃびくともしなかったぼっちをああもあっさりと…」

「伊地知先輩、とんでもないパワーだわ…」

「この人絶対マジ切れさせちゃダメなタイプですね…」

「虹夏ちゃん、可愛い顔してだるまっちょやブリー隊長も惚れ惚れするレベルの筋力ニャンね…」

 

 ケータだけはなにがなんだか分かっていない様子できょろきょろしていたが、自分の背後にあったひとりの気配が消えたことを感じ取ると、ぎょっとして虹夏の方を見遣った。

 虹夏は困ったように笑いながら、五人に向けて腕を見せながら言った。

 

「最近ぼっちちゃんがライブ終わったらすーぐにケータくんに引っ付いて離れなくなるせいで、引きはがしてるあたしの筋肉もこんなんになっちゃってさー」

「ひぃぃぃっっっ!!!!」

「雑コラみたいな筋肉!!」

「いやいやそれどーいう仕組みですか!?」

 

 虹夏の隆々な腕を見たウィスパーが怯え、郁代とケータが口々にツッコミを入れると、虹夏は乾いた笑いを浮かべながら続けて言った。

 

「ほらあたしってなんか地味だし、パートも目立たないし、ライブの時だって喜多ちゃんで隠れちゃってるから、なんか属性つけないとなって…」

「だからって筋肉キャラはマニアックすぎるでしょ!?」

 

 ウィスパーのツッコミに同調するように、郁代が口を開いた。

 

「ウィスパーさんの言う通りですよ先輩!それに先輩はそんなことしなくても個性ありますって!」

「例えば?」

「えっ……絵がうまい…」

「地味!!」

 

 虹夏と郁代がそう言い合っていると、ふとケータが虹夏に向けて、優しい声で言った。

 

「…虹夏さん。虹夏さんの悩みは、オレにも痛いくらいよくわかります。…でも結束バンドのみんなも、オレも、虹夏さんのこととても頼りにしてますよ。ここまでみんながやってこれたのだって、きっと虹夏さんがみんなをまとめてくれていたおかげですよ」

「ケ、ケータくん…」

 

 虹夏が感極まったように呟くと、後ろで話を聞いていた三人もうんうんと頷いた。…ケータからの純粋な誉め言葉を受けた虹夏に対して、別途羨望の眼差しも向けながら。

 ケータは続けて、声のトーンを若干落としながら乾いた笑みを浮かべて自虐気味に口を開いた。

 

「…それに、虹夏さんに個性がないって言うなら、虹夏さんみたいな夢も秀でた特技もないオレなんて一体とうなっちゃうんですか。特技も取り柄も特にないオレと比べちゃったら、勉強もドラムもできて結束バンドのみんなをまとめ上げるリーダーシップもある虹夏さんの方がよっぽど個性的ですよ。オレなんかにこんなこと言われたって嬉しくないかもしれませんけどね。ははっ…」

「ケ、ケータくん!?」

「…この話題はケータ君のコンプレックスも深く刺激してしまう話題だったようでうぃすね」

「ケータ、最近たまーにひとりちゃんに負けず劣らず卑屈ニャンね…」

 

 ケータがそう言いながら膝を抱え出すと、すかさずひとりとリョウが駆け寄ってその背中を撫で始めた。

 

「…私はけいくんの良いところをいっぱい知ってる。君はあの時、雨に濡れて途方に暮れていた私に手を差し伸べてくれた。一緒にいさせてくれた。家族や結束バンドのみんなとまた会わせてくれた。だから私は今ここにいることができるんだよ。今ここにいる人たちはみんな、そんな優しい君のことが大好きだし、この場にいる誰よりも、私は君のことが大好きだから。だから、自分なんか、って気持ちになっちゃったときは、私に言って。けいくんのその悲しみが晴れるまで……晴れた後だって、ずっとずっと傍にいるから」

「ケータはあの時、私が納得するまで傍にいてくれたよね。自分の事情も考えないでさ。…ケータはいつだってそう。自分のことよりも他人のこと第一なんだもん。お金を騙し取られかけても、殺されても、自分がどんなことをされても、最後は笑って許しちゃう。とんだ人妖タラシだ。周りのヤツらがなんて言おうと、私はそんなケータのことが大好きだから。…それだけは絶対に覚えてて」

 

 延べ数百年数千年もの間あらゆる人間たちを見てきたであろう妖怪の心さえも動かす天野景太の優しさに灼かれた二人の哀れな女子高生バンドマンがケータの耳元で愛を囁いている中、ふと虹夏のスマホから、メールの着信音が鳴った。ちなみに一瞬ケータを慰めに行こうか悩んでいたウィスパーとジバニャンは、ひとりとリョウが落ち込むケータの方に駆け出した瞬間から既に虹夏の方に顔を向けていた。

 虹夏はケータの方を心配の表情で見遣りつつも、恐る恐るそのメールを開いた。

 ───そこには。

 

「『結束バンド様初めまして。音源聴かせていただきました』~…って、え!?これってもしかして!」

「えっ!先輩、それってライブのお誘いじゃないですか!?」

「おやおや、きくりさんあたりからのお誘いでしょうかねえ」

「いえ、全然知らない箱からです!!」

「ニャンと!?こりゃまたすごい展開ニャン!」

 

 虹夏と虹夏のスマホを後ろからのぞき込んでいる三人がやいのやいの言い合っていると、騒ぎを聞きつけたひとりとリョウが、調子を取り戻したケータの背中を優しく押さえながら四人の方へと近づいてきた。

 三人がすぐ近くまでやってくると、郁代は声高々に口を開いた。

 

「結束バンドの名前がどんどん広まってきたってことですよね!」

「いやちょっと待ってください。このメールなーんかちょいと文面が怪しいよーな…」

「確かに、『ハードロック』なんていう覚えのない誉め言葉まで書かれてるニャン」

「わっホントだ!このメールの送り主の人、送ってるときにゴジダツ爺にでも憑りつかれたのかな…」

 

 はしゃぐ虹夏と郁代を尻目にウィスパーとジバニャンが不審がり、同じように虹夏のスマホを覗き込んだケータも首をかしげる中、リョウが虹夏に向けて窘めるように口を開いた。

 

「虹夏、ちゃんと確認した方が良いんじゃない?」

「だいじょーぶだいじょーぶ!きっと打ち間違いか、ケータくんの言うように妖怪のせいでしょ!それにジャンルの定義だって人によって変わるし!とりあえず、出演の返事しておくね!」

「私告知しときますね!」

 

 虹夏がリョウの忠告をそこまで気に留めずに意気揚々と出演の返事を返す中、ケータは───ほんの少しばかりの()()()を覚えていた。

 知らない箱でのライブに少しだけ怯えていたひとりはケータの違和感に即座に感づくと、すかさず心配そうに声をかけた。

 

「…けいくん、大丈夫?」

「ひとりさん。…うん、ちょっと嫌な予感がしただけ。ひとりさんは、知らない場所での緊張とか、大丈夫?」

「うんっ…!ちょっと怖いけど、けいくんが見ててくれるなら平気だよ…!」

「…そっか」

 

 ケータがひとりに向けて返事を返すと、リョウはケータの服の袖を握りながら、静かに呟いた。

 

「ケータの予感は正しい。虹夏は昔から突っ走る癖があるからね。…でも、ケータを嫌な目には遭わせないから。どんな箱でライブすることになっても、ケータは私たちが…私が守るから。だから、どうか安心して見てて」

「ありがとうございます、リョウさん」

「ふふっ…」

 

 ケータの安心したような表情にリョウが満足げに微笑んでいると、高揚から未だに抜け出していない虹夏が高らかに声を上げた。

 

「このライブがうまくいけば、きっと結束バンドの新規のファンだっていっぱい増やせるはずだよ!ブッキングライブって方向性の近いバンド同士を組み合わせて相乗効果を狙ってくるものだし、ここが押してる人気バンドもたくさん出るみたいだし!」

「楽しみにしててちょうだいね、ケータくんっ!」

「は、はいっ!」

 

 胸騒ぎはするがそれはそれとして結束バンドのライブは楽しみなケータは、初対面時のウィスパーに負けず劣らずのうさん臭さを感じるこのブッキングライブへの心の準備と少々の覚悟を静かに済ませていた。

 有名バンドへの道が近づいたことへの高揚に脳が支配されている郁代は、途端にそわそわしながら口を開いた。

 

「ライブの日は美容室でセットしてもらった方が良いですかね。人気急上昇中のボーカルだし。あっタクシーで現地入りします?」

「急に天狗になっちゃった…」

「喜多ちゃん、この一瞬でアイタタタイムズにでも憑りつかれたニャンか…?」

「アイタタタイムズどころか、ウィスパーとジバニャンとひとりさん以外の妖怪はこの場のどこにもいなかったけどね…」

「やはりこのバンド、かの『魔の5年1組』とタメ張れるレベルの奇人変人が集っているのやもしれませんね…」

「あ、みんなー!今日は打ち上げして帰るよー!ケータくんたちもほらっ、こことかどう?」

 

 虹夏が指差した先にあった店は───高級焼き肉店である『JoJo苑』だった。

 

「コイツ一番浮かれてやがる!!!!」

 

 ウィスパーは思わず、今日一番の声量で虹夏にツッコんだ。

 

 

 

 

 

 ───その夜、伊地知家にて。未知の箱からのブッキングライブの誘いの文面を成長を喜んでほしい一心で意気揚々と星歌に見せたら思うような反応が返ってこなかった虹夏と、怪しい文面のメールを信じ切れずにいつもの口下手を発揮してしまった星歌との間でちょっとした姉妹喧嘩が起こったのは、また別の話である。

 

どっちだと思う?

  • ぼケー
  • ケーぼ
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