美少女ダンジョン管理人と最強ダンジョンライフ!   作:鏡銀鉢

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オークションにかけたら、え?

 ポーション、それは飲む、あるいはかけるだけであらゆる傷や病を治す、ダンジョン素材由来の液体薬だ。

 けれど、ポーションにもランクがある。

 

 

 体力と皮膚の傷を回復する通常のポーション。

 

 脂肪層と筋肉の傷も回復するハイポーション。

 骨折と内臓の損傷も回復するエルダーポーション。

 

 そして、アークポーションは古い傷跡や後遺症、神経も回復するし、認知症を含むあらゆる病、万病が治る。

 

 

 その存在は半ば伝説で、ダンジョンが出現して以来この30年の間に、世界でも5本しか確認されていない。

 

 いずれも、一流の冒険者たちがオールスターチームを組んで、ダンジョン上層階を攻略して手にしたものだ。

 

 それを作れるなんてなれば、世界中が大騒動だ。

 

「あの、これ、作っちゃまずいと思うんだけど?」

 

「なんで? ボクはまっさきに作って欲しいな。だってこんなこと言いたくないけど、マスターだっていつどうなるかわからないんだし、自分用に何本か持っておかなきゃダメだよ。それとも、ボクをまた独りにするつもり?」

 

 ジト目とは思えない程に綺麗なジト目を送りながら、コハクは白い指先で俺の胸板を突っついてきた。

 

 コハクに触れられるだけで胸が幸せになってしまうのは、中学男子のチョロイさがである。

 

 ――でも。

 

「そっか、自分用、か。いや、コハク用にも、うん、それならいいぞ」

 

 俺が頷くと、コハクは子供みたいに「ヤター」と喜び、肩をはずませた。

 これだけのセクシークールビューティーなのに、言動はまるで子供のソレだ。

 そのくせして、時折、悪魔的なからかい方をしてくるから気が抜けない。

 

 ――ん? 待てよ。『ボクをまた独りに』って。

 

 俺が彼女の小さな背中に視線を注ぐと、コハクは亜麻色の髪を翻し、笑顔で声をはずませた。

 

「じゃ、アークポーションの材料を手に入れるために、30階層へごあんなーい♪」

 

 テンションを上げながら、コハクはエレベーターのスイッチを押した。

 

   ◆

 

 次の土曜日の夜。

 

 俺はエルダースパイダーの糸から作り出した最高級3ピーススーツに身を包み、都内のとあるホテル最上階のパーティーホールに佇んでいた。

 

 あっちもこっちも豪奢なドレスで着飾ったご婦人や、威厳漂う紳士ばかりで、俺は針のむしろの上に座らされていると言っても過言ではないほど気後れしていた。

 

 ――なんで俺、ここにいるんだろう?

 

 理由は明白、コハクに言われたからだ。

 あれはさかのぼること二日前。

 

 

 連日、30階層で苔むした竜、フォレストドラゴンや、癒しの妖精ヒーリングピクシー、そして再生樹、レピオスマーカスを倒し続けた俺は、順調にアークポーションの配合に成功していた。

 

「はい、これでアークポーション10本目。これだけあるなら、半分はお金にしてもいいんじゃない?」

 

「そんなことしたら世界中大混乱……」

 

 衝撃はあると思うけど、ちょっと考えた。

 いまでも、世界中には難病や後遺症に苦しむ人はたくさんいる。

 そんな人を一人でも減らせるなら、そっちのほうがいいのではないか。

 

 そんな風に思う。

 万病薬を持っているのにタンスの肥やしにしているのは、なんだか悪い気がする。

 

「そうだな。じゃあ明日、ラビリエント社の換金所に行ってくるよ」

「いや、それよりオークションのほうがいいよ。二日後に都内で開かれるから。今からでも出品は間に合うし」

 

「オークションか。確かに俺じゃ相場とかわからないし、ラビリエント社には悪いけど、あとで買取金額の倍額で取引されたとか聞いたら嫌だしな。じゃあ任せていいか?」

 

「オッケー♪」

 

 

 そして今に至る。

 会場に設営されたステージでは、見目麗しいオクーショニアが裁判官のように小さな木製ハンマーを手に、観客を煽り続けている。

 

「さぁ、他にいらっしゃいませんか!? こちらのロングソード、剣身はハイドラゴンの牙から削り出した一級品! そのうえ柄頭にはハイクリスタルが埋め込まれ、魔術攻撃力上昇! 魔術ダメージ軽減の効果を持った至高の品でございます! 前回の出品は半年前! これを逃したら次はもうありませんよ!?」

 

「8000万!」

「8800万だ!」

 

「出ました8800万! 他にはいませんか? よろしいですか? ラストチャンスですよ!? ……ハイ! こちらハイドラゴソード、8800万円で落札です!」

 

 オークショニアが力強くハンマーを鳴らすと、落札した紳士は勝利のガッツポーズをよろしく、笑顔でワイングラスを突き上げた。

 

 それから一気にワインを呷り、実に満足げだ。

 

「さて、次は二日前に緊急出品された特級品! 皆様も緊急告知で驚かれたことでしょう。しかしこちら現実でございます!」

 

 オークショニアが焦らすように告げると、会場はざわめき、ところどころに「嘘だろ」「あり得ない」と、感嘆とも疑問とも取れる言葉が混ざる。

 

 しかし、それすらも場を盛り上げるアクセントとばかりにオークショニアは受け止める。

 

 背後の扉が開き、王級で使われていそうな、金細工を施された台車が運ばれてきた。

 

 その上にはまるで国宝を扱うように、五つの化粧箱が並び、その中で金色の薬瓶がやわらかい布地にうやうやしく包まれている。

 

 懐疑的な言葉を口にしていた人々も、いざ実物を前にすると誰もが口を閉ざし、息を呑んだ。

 

「こちらの品! 今を遡ること6年前、史上五本目のアークポーションが発見された時、鑑定を務めた伝説的鑑定士、クリス氏による鑑定で、全て本物であることが証明されております! 氏も、この世に神はいたと感激されておりました!」

 

 鑑定済みという事実に、会場は大きくどよめき、一部の参加者は鬼気迫る表情で歯を食いしばった。

 

「さぁ、それでは万病を癒し、ケガの後遺症すらも治癒させる伝説的秘薬、アークポーション! 鑑定書付き! まずは10億から!」

 

 ――10億!?

 

 15年間の人生で聞いたこともないような額から始まり、俺は持っていたドリンクをこぼしかけた。

 

 思わず変な声が出そうになったけど、逆に驚きすぎて悲鳴ではなく絶句してしまう。

 

「11億!」

 ――え?

 

「13億!」

 ――ちょっ?

 

「20億!」

 ――おい!

 

「30億!」

 ――待った!

 

「50億円でどうだ!」

 ――えぇえええええええええええ!?

 

 その後も、アークポーションの値段は釣り上がり、熾烈な価格競争の果てに、ついに、オークショニアがハンマーを打ち鳴らした。

 

「ハイ! ではアークポーション一本目は112億円での落札となりました! では続いて、二本目! こちらは30億円からのスタートです!」

 

 ――ひゃく、じゅうに、おく……。

 

 あまりに途方もない額に、俺は頭が真っ白になった。

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