美少女ダンジョン管理人と最強ダンジョンライフ!   作:鏡銀鉢

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うちのダンジョンでいくらでも手に入りますよ?

「換金って……」

 

 突然の提案に、俺は戸惑い、オウム返ししてしまう。

 

「ポーションやエーテルはマスターが使うならいいけど、武器や防具は一人で何百個も持っていても使いきれないでしょ? 将来的にマスター専用の最強装備を作るための素材にするには低品質だし、換金すれば?」

 

 もとより、冒険者はダンジョンで手にした素材やアイテムを換金して生計を立てる職業だ。

 コハクの提案は至極当然なのだが、俺はちょっと引っかかった。

 

「コハク、なんでそんなこと知っているんだ?」

「スマホで見たよ」

 

 彼女が突き出してきたスマホ画面に表示された検索履歴は、冒険者業界に関することでいっぱいだった。

 

 てっきり下世話な動画を視聴しまくっていると思っていたので、ちょっと以上に意外だった。

 

「でも俺、冒険者免許なんてとっくに失効しているし、ていうかこのダンジョンの素材て換金できるのか?」

 

 ダンジョンは各企業の持ち物で、換金所は各ダンジョンの一階部分に併設されている。

 

 素材やアイテムは、採取したダンジョンの企業で換金するのが常識だ。

 

「他社のダンジョンで採取した素材を持ち込むのは違法じゃないし、このダンジョンのオーナーはマスターでしょ? マスターがいいならいいじゃないか」

 

 当然とばかりにへらっと答えるコハク。

 言われてみればそれもそうなのだが、何かおかしなことにならないかなんとなく不安で、俺は腕を組み悩んだ。

 

   ◆

 

 翌日の土曜日。

 俺は家から一番近くで、学校の通学途中にあるダンジョンを訪ねた。

 

 広い公園の中央にそびえる、石造りの仰々しい塔を見上げて、俺は嫌な記憶を思い出す。

 

 ――二年前、俺はここで……。

 

 やめようと、頭を振って、俺は踵を返した。

 今日、用があるのはダンジョンじゃない。

 

 ダンジョンの入り口、その右手に併設された銀行のような建物へ入ると、俺は奥のカウンターへ向かった。

 

「すいません、買取をお願いしたいんですけど」

「はい、では身分証を提示してください」

 

 カウンターのお姉さんに声をかけると、笑顔で応対してくれた。

 俺は、中学の学生証を提示した。

 お姉さんは何度かまばたきをしてから、顔を上げた。

 

「恐れ入りますが冒険者証はお持ちではないですか?」

「すいません、俺持っていないんですけど、だめですか?」

 

「いえ、資格が無くても入れるダンジョンはありますし、他社ダンジョンで採取した素材やアイテムを持ち込んでいただいても問題ありませんよ。では、素材を見せてください」

 

「はい、それと、たくさんあるんですけど」

 

 問題ないことに安堵しつつ、俺は素材とアイテムの量に声を濁らせた。

 

「かしこまりました、では奥へどうぞ」

 

 お姉さんに導かれるまま、俺は奥の倉庫へと通された。

 体育館のように広いそこでは、他の冒険者が大型モンスターの死体を提出していた。

 

「では、お願いします」

「はい」

 

 笑顔のお姉さんに返事をしてから、俺はストレージから素材とアイテムを選んだ。

 

 空間に白い穴が次々開いて、そこから零れ落ちるようにして素材やアイテムが転がり落ちてくる。

 

 ある穴からは金属のインゴットが、ある穴からはモンスターの死体が、ある穴からは武器防具が。

 

 その量は山のようにうずたかく積み上がり、お姉さんの笑顔が徐々に強張り、引きつっていく。

 

「え、あの、ちょ、えぇ!?」

 

 お姉さんが素っ頓狂な声を上げて愕然とする。

 俺もストレージで量は知っていたけど、実物を見て圧倒される。

 

 ――俺、二日間でこんなに倒していたのか?

 

 けれど次々出てくるモンスターを片っ端から一撃KOだったことを考えれば、矛盾はない。

 

 毎分一体倒せば一時間で60体、10時間で600体、プラス、そのドロップアイテムなのだから。

 

「嘘ッ!? モンスターもだけど、このインゴット、ウーツ鋼にアンオブタニウムにアダマント!? 全部スーパーレアメタルじゃない!」

「スーパーレアメタルって、ダンジョンでしか手に入らない金属ですよね? それって普通に採取できるんじゃ……」

 

 テレビとか動画とか、ダンジョン系の話ではよく聞く素材だ。

 

「いやいやいや、有名だからよく聞くだけで超希少素材ですよ。ダイヤモンドはみんな知っているけど高価ですよね?」

「あー」

 

 まくしたててくるお姉さんの説明に、俺は納得した。

 

「これだけの実力がありながら本当に知らないんですか……?」

 

 お姉さんは心配そうな顔で肩を落とした。

 

「わかりました。奥井さんが悪徳業者にだまされないよう、説明させてもらいます」

 

 お姉さんは表情をあらためると、先生口調で姿勢をただした。

 

「いいですか、まず、通常のレアメタルは、工業的利用価値が極めて高いにもかかわらず埋蔵量が少なく生成が難しい金属の総称です。タングステン、クロム、ニッケル、リジウム、モリブデン、リチウムなどがそうですね」

 

 どれも、聞いたことのある金属だし、バトル作品で目にする単語だ。

 

「これらは単体で利用することはもちろん、鉄や銅といった一般的なベースメタルに少量混ぜるだけでも金属の特性を変えられることから、産業のビタミンとも言われています。産出国は、それだけで莫大な国益を得られます」

 

 お姉さんは語気を強めて熱弁してくる。

 

 ――そういえば、中国やロシア、アメリカはそれで儲けているって聞いたな。

 

 ここで、お姉さんはやや興奮気味に、俺が取り出したインゴットを一瞥した。

 

「そして、これらレアメタルよりも遥かに高い効果を持つのが、ダンジョンの中でしか採取できない金属、スーパーレアメタルなのです! おまけに採取できるのはダンジョン上層階のごく一部。我々ラビリエント社が誇るAランク冒険者でも、採取できるのはわずかです。何せドロップするモンスターが軒並みレアですから……」

 

 最後はちょっと残念そうに、息を吐くお姉さん。

 一方で、俺はいまいちピンと来ていなかった。

 

 ――火山洞窟ダンジョンに金属ゴーレムうじゃうじゃ出ますけど?

 

 あらためて、コハクの自宅ダンジョンは規格外なのだと思い知らされた。

 

「なのにそれがこんなに……これ、ウチの月間産出量くらいありますよ? これだけの素材をどこで?」

 

 ぎくりと肩を跳ね上げて、俺は視線を逸らした。

 

「それは、企業秘密で……」

「う~ん残念ですが、狩場は独占したいですよね。わかりました、では査定に入りますので、待合室でお待ちください」

「はい、よろしくお願いします」

 

 追及を避けられたことに胸を撫でおろして、俺は待合室に戻った。

 ダンジョンには、いわゆる穴場スポットや隠し通路が存在する。

 

 そうした情報を積極的に開示する冒険者もいるけれど、情報を独占する冒険者も少なくない。

 

 以前、テレビで経験者が、他の冒険者に見つかるまでの間は本当に稼がせてもらったと笑いながら、あのまま独占できていたら小金持ちじゃなくて億万長者だったのにと残念そうに語っていた。

 

 そして待合室で名前を呼ばれると、俺は再びカウンターへ。

 それから、お姉さんが提示した買取金額に俺は目を丸くした。

 

「…………億!?」

 

 後日、銀行から何か事件性がないか確認の電話が来た。

 

★本作はカクヨムで41話まで【自宅に現れたダンジョンが全力で俺を接待してくれます】というタイトルで先行配信しております。

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