「……議長、ここに書かれている事が本当に起こるとお思いなのですか?」
地球連邦政府本部、とある一室にてゴップ地球連邦議会議長によって極秘裏に集められた政治家や官僚、軍の高官達が渡された資料を確認していた。
「非常に残念な事だがね。我々が介入しなければほぼ確実にそうなるだろう」
「し、しかし議長、これはいくらなんでも荒唐無稽過ぎます」
資料には
「受け入れられない気持ちはわかるよ。でも君達も私と一緒にあの機関を訪れて彼女達の力を知り、あの未来を視ただろう?彼女達の予言の精度は正確無比だ。予言によって月の女帝が権勢を強め、ラプラスの箱を完全に手中に収めたのは諸君らも知っているはずだ」
「ですが、これは……こんな馬鹿げた出来事が本当に起こるとは」
「私だって信じたくない。だが残念な事に現状は予言の通りに進んでいるのだ」
「「「「「……………………」」」」」
「彼女達が予言した内容は今のところ外れた事はない。株価の流動やテロリストの潜伏先、自然災害発生の詳細な日時等で我々政府が予言に助けられたのは一度や二度ではない」
受け入れられない人間もいたがニコ達の未来視によって政府が恩恵を受けている事実を知る面子は沈黙していた。
「諸君らも既に理解しているだろうが、今後地球連邦政府を待ち受けているのは地球圏規模の厄災だ。宇宙戦国時代については最悪の場合コロニーの好きにさせればいいかもしれんが、木星帝国とザンスカール帝国を座視する事はできない。我々も他人事ではいられないのだ……たった数十年で地球や人類の危機が何度も起こるとは不謹慎だが笑ってしまうな」
「月の女帝が木星への大規模支援を決めたのも未来を変える為だと?」
「うむ、商人である彼女が採算度外視で支援しようとする理由がそれだ。地球を死の星にされたら、たとえ月のアナハイムが無事でも商売どころではないからね」
「「「「「……………………」」」」」
碌でもない未来に集められた人達は頭を抱え込む。
「まあ幸いな事に我々には数十年の猶予がある。それだけ時間があれば未来を変える事は難しくはない。未来について詳細な予言もあるから対策も容易だ。諸君らもそう悲観しなくていい」
「……それもそうですな」
気を取り直したメンバーは地球圏の今後について話し合う事にするのであった。
「ブッホ・コンツェルンは月の女帝の介入によって大人しくなったのでこれ以上の介入は必要ないという事ですが……」
「しかしコスモ貴族主義なる時代錯誤の主張をする私兵集団のクロスボーン・バンガードを放置する事は不味いのでは?」
「だがアナハイムの支援がない以上、彼等も大した事はできません。ほぼ無力化できたクロスボーン・バンガードより遥かに脅威となる存在があるのですからそちらを優先しましょう」
「木星帝国ですが、現状アナハイムが行う大規模支援で様子見としましょう」
「それで大人しくなればいいが、駄目だった場合はどうする?いっその事クラックス・ドゥガチを暗殺すればいいのでは?」
「しかし木星船団を纏められるのは彼だけです。彼がいなくなれば混乱を招くでしょう。それに彼の後継者達が遺志を継いで地球圏に侵攻する可能性が高いです。実際に未来ではそうなりました」
「ああ、あの神の雷計画とかいう……まったく死んだ後も厄介だな!」
「まあ彼が大人しくなれば神の雷計画等についても存在しなくなるでしょう。我々は木星船団に対して融和政策を取るべきです」
「ふぅ、安くはないが、地球を死の星にされるよりはマシか」
「ザンスカール帝国は、まあこれは対処は楽ですね。マリア主義を事前に潰しておけばいい話です」
「うむ、マリア主義の象徴となる女性が何時何処で誕生するか把握してあるから、生まれたら連邦政府が理由をつけて保護すればいい。黒幕であるフォンセ・カガチはどうする?」
「彼の現在の所在は把握済みです」
「そうか、ならば…………地球圏に住む人類の安寧の為に彼には退場してもらおうか」
「はい、ではそのように」
「……とりあえずここまでにしようか。今回決めた行動が上手く進めば、地球圏は少なくとも今後数十年は安定するだろう」
ゴップ議長が会議を終了させる頃にはメンバー達も明るい表情を見せていた。地球連邦を待ち受ける問題についてある程度対応できたのだから当然だろう。
少しリラックスした彼らは、予言を齎した少女について雑談をする。
「しかし彼女の異能は恐ろしいですな。まさか本当に未来が視えるとは」
「ええ、軍事利用されているニュータイプよりも遥かに希少かつ有用です。未来を視る事ができるというアドバンテージは圧倒的だ。上手く運用すれば今回のように戦う前から決着をつけられるのですから」
「ネオ・ジオンがニュータイプを戦場で戦わせる事しか考えていない連中で助かりました。もし彼女の異能が敵になったら厄介極まりない」
機嫌良く会話する彼等はニコの今後について話し合う。
「彼女の首輪となる存在はビスト財団が身内として取り込んだようです。彼女がアナハイムと地球連邦政府を裏切る心配はないでしょう」
「ああ、もう一人のプルシリーズの生き残りか。得体のしれないクローン兵士の生き残りを身内にするとは財団も思い切った決断をする。でもあの異能を自分達の物にできるならそれぐらいやるか」
「現在育成機関で行われている指導で、彼女が上手く導けば後進たちもいずれ未来視が可能になるとか」
「それはいい。なら地球連邦政府は今後も彼女を保護しようではありませんか。よろしいですね議長?」
「うむ、それでいいだろう」
ニコが知らない所で彼女の今後についても決まったのであった。
一方でニコは何をしているかというと……
「うっ、うううっ、うぅ〜〜うううぅ〜〜ッ」
「なあ、泣きながら笑ってるけどアイツ大丈夫なのかよ?」
「あ、大丈夫ですゾルタンさん。師匠はマリーお姉ちゃんから生まれてくる子供の名前を決めてほしいと言われて、嬉し泣きしながら名前を考えているだけですから」
「ああ、そういう事かい……あの様子じゃ滅茶苦茶溺愛して甘やかすだろうな。ニュータイプじゃなくてもわかるぜ」
自分の今後が決まった事を知らないニコは、生まれてくる甥の名前を考える事で頭が一杯となり少なくとも今日は修行どころではなかったのであった。
<人物紹介>
●プルツー(ニコ)
→甥っ子が生まれると聞いて感極まる。マリーから名前を決めてほしいと頼まれ滅茶苦茶悩んでいる。
地球連邦政府からは予言者だのノルンだのモイライだの好き勝手に呼ばれているがニコ本人は知らない。
●ゴップ議長
→信頼できる人間を集めて、地球連邦政府を待ち受けるクソみたいな未来について話し合った。とりあえずある程度対応できたのでホッとする。
●地球連邦政府
→いつもの連邦政府らしくなく爆速で対応し未来をある程度変える事に成功する。別に彼等が正義の味方になったわけではない。自分達を滅ぼす事ができる存在が将来誕生すると聞いて危機感を持ち、自分達の今後の為に対応しただけである。予算確保の為にクソザコテロリストを放置したり、裏からクソザコテロリスト達を支援したりするのは変わらない模様。
●木星帝国
→アナハイムと連邦政府が支援したお陰でドゥガチがハジケる可能性はほとんどなくなった。ドゥガチは態度を急変した地球圏を怪しみつつも支援については素直に喜んだ。これなら木星帝国は誕生しないだろう。
●ザンスカール帝国
→(将来地球圏規模の集団自殺を企む黒幕を生かしておく理由は)ないです。フォンセ・カガチは犠牲になったのだ……地球連邦政府の官僚と軍高官達が安心する為の犠牲にな……
木星の統治に必要なドゥガチと違ってこの時代のフォンセ・カガチはただの若者でしかなく別に死んでもいいと政府からGOサインがでた。死因について周囲からはよくある事故の一つだと思われ怪しまれなかった模様。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。