「……ええ、道化はこちらの指示通りに動きました。地球に点在していた反地球連邦のテロリスト達を纏めましたので、後はロンド・ベルや地球連邦軍が煮るなり焼くなりご自由に」
「ふむ、では予定通りだな」
宇宙世紀103年、地球連邦政府では首相達が秘密の会合の為に集まっていた。目的は反地球連邦政府を主張するマフティーへの対処だが、集まったメンバーは実にリラックスした表情で話し合っていた。
「これで主だったテロリスト共は壊滅、地球圏は暫くの間平和を謳歌するだろう。ようやく地球圏の復興やインフラ整備等に金を回す事ができる……しかし君も悪い奴だな。自分が創設したマフティーを躊躇なく売るとは」
「御冗談を。私がマフティーを作ったのは地球にいるテロリスト共を一斉駆除する為です。害虫を駆除するのに躊躇などするわけがありません。それは皆さんもご存知のはずでしょうに」
「まあそうなのだがな」
マフティーの創設者であるクワック・サルヴァー……地球連邦政府の官僚の一人は笑いながらマフティーを売り飛ばしていた。つまり最初から地球連邦政府の出来レースだったのだ。
「テロリスト達の所持するMSはよくてグリプス戦役時代の機体、一年戦争時代の機体まで持ち出しているとは涙ぐましい努力だ。数はいるがロンド・ベルといった精鋭には逆立ちしても勝てんだろう」
「ええ、未来が視えない我々オールドタイプでもわかることですな」
「しかしテロリスト共は本気で勝てると思っているのでしょうか?博物館で展示されるような骨董品を持ち出して連邦軍に対抗できると?」
「それがわからないからマフティーの下に集まったのだ。多少頭が回るならそもそも参加しないさ」
テロリスト達の愚かさを笑いつつ首相達は今後について話し合っていた。
「モイライからの情報でテロリスト達の戦力と配置等も完全に把握した。私も確認したが、負ける要素が一つもなかった……クククッ、これでは訓練と変わらんな」
「相変わらず恐ろしいですなモイライは」
「そう恐れなくてもいい、私はモイライに会った事があるが力を持っているだけで野心もなく、実に扱いやすい女だ。家族の安全を保証しささやかな要求を満たしておけば、今後も地球連邦政府の為に忠実に働くだろう」
「そうですな。彼女には今後も地球連邦に貢献し続けてほしいものです」
モイライと呼ばれる
「ああそれと、この作戦が終わったらロンド・ベルの司令を退官させるという事ですが」
「うむ、別に構わんだろう。我々の邪魔をするわけでもないのは判明しているし、好きにさせてやればいい」
ロンド・ベルの司令であるブライト・ノア大佐はマフティー討伐後退官を表明していた。地球連邦政府も止める理由はなかったので退官は認められたのであった。
そして1ヶ月後、予定通りロンド・ベルと地球連邦軍の精鋭達がマフティーとテロリスト達を殲滅したのであった。
「…………………………」
「どうしたブライト、作戦は無事終了したというのに辛気臭い顔をして」
作戦が無事成功したというのに微妙な表情を浮かべるブライトを見かねて、アムロが話しかける。
「そんな顔をしていたら周囲が不安に思うぞ」
「ああすまん。顔に出ていたのか、情けないな私は。退官後について考えていたんだが」
「ああ、その件か。一体何が問題なんだ?」
ブライトから理由を聞いたアムロは不思議そうにする。
「確かレストランを開くと言っていたが」
「それがな、ミライやハサウェイ達に反対されているんだ。素人がいきなり飲食業を始めるなんて無謀だとな」
「あー……」
ブライトの少し悲しそうな表情を見つつ、アムロはミライ達の言い分にも納得していた。
「ミライさん達の言う通りだな。飲食業が過酷だというのはよく聞く話だ」
「それはわかっているんだがな……まずは経験を積むために下積みから始めるべきだろうか」
「それがいい。退官したら時間は幾らでもあるんだ、少しずつ前に進んでいけばいいさ」
そう言ってアムロはブライトを慰めていた。その後ブライトは数年程下積み修行や経営の勉強をした上で、家族の協力の下レストランを開きそこそこ繁盛する事になったのだがそれはまた別の話である。
「え、サナリィが?」
「ええ、MS開発から撤退すると発表したわ」
その頃ニコは月の女帝ことご主人様のマーサから月に呼び出されていた。
「なんでそんな事に……ああ、私達がやりすぎましたか」
「そうねぇ、やりすぎたわねぇ」
サナリィがMS開発事業から撤退すると聞いて、ニコは自分達が少しやりすぎた事を悟った。
「この前MSのコンペでウチの出した小型MSを見て、サナリィの技術者達の心が折れたみたいなのよ」
「ああ、ジェムズガンでしたっけ。コンペに間に合わせる為に呼び出されて未来視を多用したので覚えています」
「ええ、そのお陰で性能や量産性、整備性と拡張性を両立した機体となった。素人の私が見ても完成度の高い一品で、軍の高官達も満足して満場一致でジェムズガンの量産が決定したわ」
「それはよかったです。でもよく考えたらサナリィの人達が可哀想になってきました」
宇宙世紀103年の段階でアナハイムはニコの未来視を多用した結果、小型MSジェムズガンを開発していた。初期不良については事前に改善されており、安定した性能とコストを両立したジェムズガンは軍高官達から絶賛され量産が開始される事になった。
「ニコ、サナリィがMS開発から撤退した事による影響はどうなの?」
「んー…………特に問題ありません。地球圏は数十年は平和なのでこのままでも大丈夫です。MSのシェアはアナハイムが不動のトップですね」
「ああそう、ならいいわ。この後貴方はアルベルト達に会うらしいけど」
「はい!マリーが女の子を産んだので家族で見に行きます!私も負けられないのでカロッゾさんと頑張ろうと思います!」
「落ち着きなさい」
「あ、はい」
相変わらず家族の事になると目を輝かせてハイテンションになるニコにマーサは呆れるのであった。
「アウー」
「あぁ~〜〜ッ、ミリーちゃん可愛いなこんちくしょう!アルス君も可愛いしドレルもセシリーも可愛いなオイ!みんな違ってみんな可愛い!よーしお姉ちゃんもう一人追加で作っちゃ」
「ニコさん、落ち着いてください」
「あ、はい」
「マリー、君のお姉さん結婚して子供を産んでから随分と変わったねぇ……以前とは全然違うよ」
「アハハ、そうですね貴方。でも相変わらず優しくて自慢のお姉ちゃんです」
<人物紹介>
●マフティー・ナビーユ・エリン
→ロンド・ベルには勝てなかったよ……地球の主だったテロリスト達は殲滅され、当分の間地球は平和を謳歌するのであった。
●クワック・サルヴァー
→笑顔でマフティーを売った黒幕。そもそも最初から出来レースだったのだ。集められたテロリスト達はあの世で泣いているだろう。
●地球連邦政府首相
→モイライことニコについては細心の注意を払いつつ重用している。治安については一段落したので、今後は地球環境の再生や、インフラ整備に力を入れる方針である。
●ロンド・ベル
→精鋭部隊として地球連邦政府から重用されている。今後も地球圏の平和を守る為に頑張るだろう。
●アムロ
→Ξガンダムに乗ってテロリスト相手に無双した。流石連邦の白い悪魔である。もうすぐアラフォーなのでマフティー討伐後は第一線から下がり、教導隊に異動することになった。本人も家族と一緒にいられる時間が増えると満足気な様子を見せた。
教導隊では先行量産型のジェムズガンを渡され、新世代のMSの性能に感心したとか。
●Ξガンダム
→でかつよMS。強いがデカすぎて整備の手間や維持費用等がとてもかかるため、現場の整備班や軍上層部からは微妙な評価だった。マフティー討伐後は実戦に出る事はなかった。
まあ白い悪魔が乗った機体としてマスコミに宣伝され有名になったのでΞガンダムも本望だろう。
●ブライト
→地球連邦政府から退官を認められ、退官したらレストランを開くぞ!とウキウキ気分でいたら家族から冷静に諭されて少しションボリした。
ちょっと浮かれていたなと反省したブライトは数年程下積みや勉強等をしたうえでレストランを開いた。息子も偶にレストランを手伝っているらしい。
●プルツー(ニコ)
→妹のマリーが二人目を産んだ!私も嬉しいし負けられないぜ!と思っている。その後カロッゾに諭され落ち着いた。
●マーサ・ビスト・カーバイン
→アナハイムがやりすぎた結果サナリィがMS開発から撤退した事を受けて、今後の影響に問題はないか確認するためニコを呼び出した。問題なさそうなので今後も未来から技術をパクるのを続けさせる予定。
●ジェムズガン
→ニコの未来視によって本来の歴史より10年以上早く登場した。ヘビーガン?そんな物ウチの世界にはないよ……ヘビーガンをすっ飛ばしてジェムズガンが開発されたのだ。
量産機なのにガンダムF91並という非常に高性能でビームシールド搭載、生産維持コストも安くて信頼性と拡張性も抜群というチート機体であり、地球連邦政府も連邦軍も大満足な一品で量産が決定された。サナリィは泣いていい。
●サナリィ
→頑張った。物凄く頑張ったのだが未来視には勝てなかったよ……フォーミュラ計画は始まったばかりでコンペではガンダムF89を出したが、アナハイムは涼しい顔でジェムズガンを出してきて技術者達の心が折れ、上層部はMS開発から撤退する事を決めた。アナハイム脅威の技術力に技術者達は呆然としたが、もし事実を知れば憤死するだろう。
●プルトゥエルブ(マリー)とアルベルト
→今年娘のミリーが産まれた仲良し夫婦。アルスから弟も欲しいと言われたので頑張るつもりである。でもアルベルトもアラフォーなのであまり無理はしないよう気をつける事にした。
マリーから見て今のニコは親バカで騒がしいが相変わらず優しいお姉ちゃんだと思っている。でも週5でハッスルしてると聞いた時は真顔になって説教した。ニコは泣いた。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。