完結した後も番外編を幾つか投稿する予定です。
「へぇ、ここがフォン・ブラウンなのね」
宇宙世紀152年、地球連邦政府の首都であるフォン・ブラウン市内にとある10代後半の美少女が観光に来ていた。
「父さん達の言っていた通りだわ。首都なだけあって凄く賑やかね。ウーイッグは自然豊かでいい所だけど、ここに住むのも悪くないかも」
年相応に目を輝かせている美少女は正式に地球に住む事が許されている特権階級のアースノイドであった。今回フォン・ブラウンに来たのは観光目的であるが、来年から首都の大学へ入学する事が決まり一人暮らしをする事になったので、その下調べも兼ねていた。
「ええと、観光スポットはこことここで……来年から通う大学はあそこね。父さん達が用意してくれた住居はここにあって……」
「……うん、今日はこんなところかしら。ちょっと疲れたわね」
観光スポットをある程度見終わった美少女はカフェにて休憩していた。
「流石地球連邦の首都ねぇ。見たい場所が幾つもあって一日で見終わるのは到底無理だわ……でもまだ観光は始まったばかりだし、来年からここに住むのだから急ぐ必要もないわね」
来年から始まる大学生活を想像して明るい表情を浮かべている美少女は大変美しく、周囲の男性の目を引いていた。美少女は今回一人で観光に来ていたが、フォン・ブラウン市内は非常に治安がいいため女性の一人旅でも安心して観光できた。
「おっ、大丈夫か大丈夫か?」
「えっ?」
大学生活を想像していた美少女の前にヒタヒタ……と中年女性がやって来て目の前の席に座った。
「お嬢さん一人か?フォン・ブラウン市内は治安がいいとはいえ何が起こるかわからないし油断するなよ~?もしお嬢さんに何かあったら親御さんが心配するからな」
「あ、はい、気を付けます……えっと、貴方は?」
「私か?通りすがりの占い師の婆だよ」
外見は50代に見える中年女性はケラケラ笑いつつも美少女の事をじっと見つめていた。
「お嬢さんアースノイドだろう?それも正式に居住が認められている特権階級の娘さんだ」
「え?な、何でわかるんですか?」
「占い師だからね、お嬢さんの素性もはっきりわかんだね」
「は、はぁ」
「親御さんとは仲がいいのか?」
「は、はい。両親は私の事を可愛がってくれています。二人の仲も良くて、見てて鬱陶しくなる時もありますが、自慢の両親だと思います」
「そうかそうか、そりゃあよかった。両親が仲睦まじい夫婦でよかったな」
「今の自分の境遇に満足しているか?」
「…………自分が恵まれているのは自覚しています。でも時折退屈に感じる時があるんです。もっと刺激のある人生を送りたいとほんの少しだけ思う時もあります」
「あ、ふーーーん……」
ふと気がつけば美少女は目の前の中年女性に色々と話し込んでいた。自分でも何故そうしたのかわからないが中年女性と目があってから自分の想いを話す事に抵抗がなかった。
「お嬢さんも色々思うところがあるんだねぇ……よし!じゃあ特別サービスで刺激的な人生を送ったお嬢さんの世界を視せてやるよ」
「えっ?」
「あ、お代はタダだから安心しろ。私が勝手にやるだけだからお金は取らないよ」
「えっ?」
「ではお嬢さんのパラレルワールドを視にイクゾー!……ほらいくどー」
「えっ?」
何が何だかわからぬままにアースノイドの美少女……カテジナ・ルースはNT空間へ連れて行かれるのであった。
「で、どうだったよ?刺激的な人生を送ったお嬢さんの未来を視た感想は?」
「……………」
NT空間から帰ってきた中年女性は感想を聞くが、カテジナは顔を蒼白にして沈黙していた。
「スッゲェ刺激的だったろう?……ちょっと刺激的過ぎたかもしれんけど」
「……………」
「まあこの世界ではあんな事にならないから安心しろ。お前はちょっと退屈かもしれんが平穏で幸せな人生を送れるだろうさ」
「……………きゅ、急用を思い出したのでホテルに戻ります!失礼しましたッ!」
顔を青くしたカテジナは席を立つと早足でホテルに移動するのであった。
「あ、ちょっと怖がらせ過ぎたか……まあええやろ。よし、お嬢さんを誘導できたし後はあの子が上手くやれるかどうかだな」
「何よアレ……何なのよアレは」
ホテルへの道を早足で移動しながらカテジナはNT空間で視た並行世界の自分について思い返していた。
「滅茶苦茶だわ、どうやったらあんな……あんなっ、あんな酷いことになるのよ!そもそもザンスカール帝国って何よ!?聞いた事ないわよそんな国!というかマリア主義ってオカルトじゃない!この宇宙世紀でオカルト至上主義!?バカじゃないの!?」
幻覚だと思いたかったが、カテジナはアレはあり得た世界だったかもしれないと心のどこかで不思議と理解していた。だが到底納得はできず文句を言いながらホテルへ戻っていた。
「えっ?キャッ!?」
呆然としていたカテジナは足元への注意を怠り、躓いてバランスを崩しそうになる。このままだと顔から地面に激突するだろう。
「ッ!だ、大丈夫ですか!?」
だが転びそうになったカテジナを美青年が支えた事で助かったのであった。
「怪我はありませんか?」
「す、すみません。ありがとうございます」
美青年に支えられて立ち上がったカテジナは素直に感謝する。
「あの、もう大丈夫ですので」
「本当にそうですか?今の貴方は酷い顔をしています」
「い、いえ!ご心配には及びませんので!それでは!」
至近距離で美青年から心配そうに見つめられ、何故か胸がドキドキしたカテジナは顔を赤くしながら美青年に礼を言いつつホテルに戻るのであった。
「ああ恥ずかしい。あんなみっともない姿を男の人に見られるなんて……あの人結構かっこよかったわね」
「しゃあっ!よくやったぞクロノクル君!これでお嬢さんとクロノクル君に縁が出来た!」
ニュータイプの力で様子を確認していた中年女性……
「よーしよし!未来視で確認したが2人が無事結婚したのが視えた!2人はお似合いだってはっきりわかんだね!」
「マスターニコ」
「まあクロノクル君がお嬢さんの尻に敷かれてるけど幸せそうだしまあええやろ!」
「マスターニコ」
「お嬢さんも幸せそうでハッピーハッピーだな!いやーいい事したわー!若者の恋路を応援するのは気分がいいわー!」
「マスターニコ、気づいていない振りはやめてこちらを向いてください」
「あ、はい」
諦めて振り返ったニコは、目の前にいる自分の後継者であり未来視が出来る女性……マリア・ピァ・アーモニアが笑顔で怒っている事を悟った。
「ど、どうしたマリア。私は若者の恋路を応援しただけだぞ?」
「ええ、貴方が善意で行動した事はわかります。私も視ましたがクロノクルが幸せそうで安心しました。それについては姉として感謝します」
「お、おう」
「ですが貴方が勝手に行動した事については話は別です。貴方は組織の長なのですから軽挙妄動は慎んでください。貴方の行動で未来が大きく変わるかもしれないのですよ?」
「あ、はい」
マリアに説教されニコは少し悲しそうにするのであった。
「婆が善意で行動したらダメなのかよぉ……」
「行動する前に私に相談してください。マスタークェスやマリーさんからもそう言われているはずです」
「そんなに信用ないのか私は」
「いえ、そういうわけではありません。私も貴方の事は尊敬してますが、その、いい歳になってもノリと勢いで行動する部分はどうかと思います」
「グハァ」
<人物紹介>
●カテジナ
→この世界ではごく普通の美少女である。歴史改変の影響で両親は仲睦まじい夫婦で、両親から愛情を受けて育てられた。両親については少し鬱陶しくも自慢の両親だと思っている。ウッソ?誰なんですか?(困惑)
思春期の少女にありがちな刺激のある人生を送ってみたいなとぼんやり考えたりしたが、ニコが視せたザンスカール帝国でハジケた自分の姿を視て激しく動揺する。同じ自分のはずなのに全く理解できず、あんな事になるなら退屈なままでいいと強く思ったとか。
その後少し頼りない美青年と恋に落ちて数年程交際を続けた後結婚。孫に会いたくて頻繁にやって来る両親に少し辟易したり、真面目で優しいが少し頼りない夫に溜息をついたりしたが、何だかんだで幸せな人生を送る事ができたのであった。
●マリア・ピァ・アーモニア
→クソつよサイキッカー。生まれてすぐ連邦政府に保護されニコの下で修業し、未来視が出来るようになるまで成長した。ニコ亡き後○ェダイ(仮)の指導者になる事が決まっている。
連邦政府に保護された後に両親から生まれた弟については今まで直接会った事はなかったものの、姉として心配していた。未来視で嫁の尻に敷かれながらも幸せそうなクロノクルを視て安心する。
ニコの事は自分を導いてくれたマスターであり、あの暗黒の未来を変えてくれた恩人として尊敬しているが、ノリと勢いで行動するのはちょっとやめてほしいと思っている。
宇宙世152年時点で独身だが恋人はいる。いずれシャクティ(仮)が生まれるだろう。
●○ェダイ(仮)
→結局正式名称がつく事はなかった。第三者から好き勝手に呼ばれている。NTの素養がある人間はひとまずここに連れてこられて修行に励む事になっている。
ニコとクェスの後継者としてマリアが未来視を使えるようになったので地球連邦政府とアナハイムも一安心した。
●地球連邦政府
→アナハイムと金!暴力!権力!なタッグを組んで地球圏に君臨している。少々腐敗しつつもやる事はしっかりやってるので民衆から支持を受けており支配体制は盤石である。
●アナハイム
→相変わらず超巨大企業として君臨している。未来視によるチートのおかげで技術力が他より隔絶しているが大丈夫だ、問題ない。宇宙世紀に独占禁止法はないのか心配になるが大丈夫だ。問題ない。
●地球連邦軍
→宇宙世紀150年代では地球圏が平和を謳歌しているので暇を持て余している。それとジェムズガンはいい機体だが古すぎるとして新型機の登場を待ち望んでおり、連邦政府もそろそろ機体更新するつもりである。
●ジュドー・アーシタ
→この世界では木星じいさんにはならなかった。嫁と子供達の為に地球で暮らし、地球で生涯を終えた。最後は孫と曾孫に囲まれ満足そうに虹の彼方に行き、嫁やリィナ達と一緒に見守る事にした。
●ブライト
→軍を退官し数年修行した後開いたレストランがそこそこ繁盛し満足する。息子夫婦が連れてくる孫達が可愛くて仕方なく、よく甘やかしてしまい妻や息子夫婦に怒られていたのであった。
●クソ婆
→堅気として慎ましく暮らし生涯を終える。
●ジンネマン
→ニコに協力してもらいグローブビデオの根絶に成功する。思い残す事が無くなった彼はザビ家の遺児に生涯仕えるのであった。エドワウについては数回殴った後許す事にした。
●ミネバ・ザビ
→ザビ家の名を捨てオードリー・バーンとして生涯を過ごす。ビスト家のとある少年と恋に落ちて結婚。可愛い子供達に囲まれて満足気な様子を見せた。子供達はジンネマンの事を「じぃや」と呼んで懐いていた。
●エドワウ(シャア)
→その後もちょい悪おもしろオジサンとして生涯を過ごす。子供達からは大人気であった。ダイクンの血とか厄ネタだし残すのもマズいなと考え生涯独身のままだった。
死後虹の彼方に行きララァに甘えながらもこの世界を見守る事にした。でも偶に平行世界を覗いて「うわ……平行世界の自分傍迷惑過ぎ……?」とドン引きしたりするとか。
●ララァ
→コズミック悪霊であり姉御でもある。こういう世界も悪くないと考えエドワウと一緒に見守っている。
●カミーユ
→医者として成功する。ファと結婚して1男3女。結婚式の時にはエドワウがクワトロ大尉のモノマネをして場を盛り上げ、カミーユは爆笑しファは宇宙猫になっていた。
●セイラさん
→エドワウと同じく独身。世話のかかるニコ達が子供達を作り幸せそうにしているのを視て満足気であった。
●カイ・シデン
→敏腕ジャーナリストとして名を馳せる。ミノフスキードライブのおかげで地球圏外への取材も楽になったと喜んでいたとか。
●アムロ
→20年程教導隊に所属した後引退を表明。引退の際はかつて指導した教え子達やミリタリーマニアが大勢集まって大変賑やかな様子だった。その後孫の顔を見て満足する。
●ロンド・ベル
→未だに存続している。エリート部隊として地球連邦軍の憧れの的である。
●ジェムズガン
→名機を超えた名機。大ベストセラー機だが流石に古すぎるとして宇宙世紀160年頃に後継機であるVガンダムが登場した。しかし軍縮の影響で機体更新が進んでおらずその後もまだまだ現役である。
●ゾルタン
→一般女性と結婚した。今までの態度が嘘のように大人しくなり家庭仲は良好。嫁や子供達から慕われてまんざらでもない様子である。ネットのオモチャになった成功作を見て失敗作でよかった……いやマジで本当に良かったと思ったとか。
●ヨナ・リタ・ミシェル
→3人で前を向いて頑張っている。その後孫の顔を見る事ができたリタは号泣し、ヨナとミシェルはリタを優しく抱きしめるのであった。
●ケツアゴ男優
→AV男優の知名度を活かし俳優業としても成功する。一年戦争を題材にした映画でまさかの赤い彗星役を演じる事になり驚愕するが、臆する事無く迫真の演技を行い、その年の男優賞を受賞したのであった。
●マーサ・ビスト・カーバイン
→この世界では勝ち組となった。後継者に引継ぎをした後は引退し余生を過ごす。偶にニコの奇行で頭を抱えたりしたらしい。
●アルベルト
→男の中の男。マーサから引き継いだ仕事をこなし影の権力者として君臨するも謙虚なままであった。妻のマリーとは2男3女。おしどり夫婦として世間から高い評判を受けていた。
●プルトゥエルブ(マリー)
→夫が大好きで子供達も大好きな良妻賢母。夫の死後から一年後、後を追うように老衰で死去。死ぬ間際は姉や子供達、孫や曾孫達に囲まれ満足気に笑っていた。虹の彼方で夫と再会、子孫達を見守る事にしたのであった。
●クェス
→宇宙世紀150年代になっても見た目は30代の若さを保っているが、最近美容目的で修行に励む弟子達が多くてちょっと困っている。年下の夫とは2男1女。彼女の話は番外編でまた書く予定。
●カロッゾ
→嫁が中身ホモガキでも愛する人間の鑑。技術者としても優秀で多くの結果を残し、嫁と多くの子供も作った。
宇宙世紀150年代では孫や曾孫達に囲まれて満足気な様子を見せている。
●プルツー(ニコ)
→この作品の主人公。カロッゾとはラブラブバカップル。カロッゾとは3男11女。これでもカロッゾが抑えたのである。初孫を見て感動したニコはこれで最後だから!と女の子を作ったりした模様。孫や曾孫達を溺愛している。修行のおかげか宇宙世紀150年代でも50代の若さを保っており、マスターニコと呼ばれるようになっても相変わらずノリと勢いで行動する。
宇宙世紀180年代に老衰で死去。虹の彼方で先に旅立っていた夫や妹夫婦と再会し、この世界を見守る事にしたのであった。
これで本編は以上となります。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
初めてTS主人公を扱いましたが、知らなかったとはいえ不快な思いをさせてしまった事もあり大変失礼いたしました。
今回TS主人公にした理由は
「プルシリーズ可哀想だな、転生者に憑依させて救済しようかな。でも原作知識あってもどうしようもないよな……いっそ突き抜けてしまえばいいか。中身ホモガキにしよう……あ、でもホモガキだと前世が男になるのか。じゃあTS主人公になるな」
という感じでした。こんな下らない思い付きで書き始めた本作ですが、皆様から予想以上に高評価だったので驚きました。本当にありがとうございました。
完結となりましたがこの後も幾つか番外編を投稿する予定です。今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。