私の名はジョン・スミス(仮名)偶然が重なった結果今でこそ地球圏で高い知名度を誇っているが、昔は何処にでもいる平凡な男だった。そんな私が紆余曲折あれど成功し現在の地位を築く事ができたのは自分の努力もあるが、何よりも周囲が支えてくれたからだろう。その幸運に感謝しつつ私は自分の奇妙な半生を振り返る事にしよう。
まず私ジョン・スミス(仮名)は宇宙世紀0059年に生まれたスペースノイドであり、サイド3出身であった……といっても私が物心つく前に両親がサイド3からサイド4のムーアに移り住んだのでサイド3での記憶は殆どないのだが。両親は運送業を営んでいたがザビ家が支配するサイド3に危機感を覚え亡命したという事だ。
その後サイド4で両親が事業を再開し経営は順調。私も何不自由なく育てられた……しかし一年戦争が勃発しジオンの襲撃によって故郷のサイド4は壊滅。私はその時小さい頃から親しかったお隣さんのグラハム一家を幸運にも救出する事ができたが、両親は残念ながら救えなかった。
生き残った私はこの戦争を一刻も早く終わらせたいと地球連邦軍に志願した。生まれがサイド3出身という事で同僚から偏見や差別があったりしたが、誠実に対応した結果誤解を解いて貰えた。幸いにもMSへの適性があった私はRGM-79ジムに乗りソロモン、ア・バオア・クーの激戦に参加した。ビーム兵器を持つジムはジオンのMSに対して圧倒的なアドバンテージがあり、幸運もあって私はエースパイロットの一員となる事ができた。
エースパイロットとして評価された私だが、自惚れる事は一度もなかった。ソロモン攻略戦でのジオンの大型MAの襲撃、その後の追撃戦にてソロモンの悪夢との遭遇、そしてア・バオア・クーでのアムロ・レイとシャア・アズナブルの激闘を見た私は決して超えられない壁があると自覚していた。少しでも身の丈に合わない振る舞いをしていたら私は一年戦争を生き延びる事はできなかっただろう。
その後戦争が終わり戦う理由を失った私は軍を除隊し、月のフォン・ブラウン市内にて一人暮らしを始めた。両親の遺産があったので生活には問題なかったが、目的もなくダラダラと過ごしていた私はすっかり堕落し、自堕落な生活を続けた結果体は肥えていた。
「おい、そこの兄ちゃん!ちょっと肥えてるがいい身体してるねぇ~昔軍人だったのか?じゃあ体力には問題ないか……兄ちゃん暇ならAV男優でもやってみないか!」
そしてたまたま街を散策していた際に、AV制作会社「ブラザーフッド」の社長兼撮影監督に声を掛けられた私は気紛れにAV男優業を始める事にしたのであった。
戯れで始めたAV男優業であったが、どうやら私は適性があったらしく社長や撮影スタッフからの評価も高く、私自身も楽しくなってAV男優業に真剣に取り組んでいた。
「AV撮影、ですか。それも普通のAVではなくコスプレAVと」
「おう!」
そして宇宙世紀0084年、デラーズ紛争などの騒動が一段落した頃、私は社長から提案されとあるコスプレAVの撮影を担当する事になった。
「題材は……赤い彗星ですか?」
「ああ、地球連邦軍の現役女性パイロットちゃん達がAV撮影に協力してくれる事になってな、ただのAVじゃ勿体ないから赤い彗星を題材としたコスプレAVにする事にした」
「それは構いませんが、彼女達は何故AVに出演することにしたのですか?」
「ホストに貢ぐ金が足りなくなったとか、ギャンブルのせいで生活資金が足りないから出演するんだとよ。まあよく聞く話だな!」
「えぇ……」
それでいいのか地球連邦軍と色々と思うところはあったが、私はAV撮影の為準備を始める事にした。しかし自堕落な生活を続けていた私は赤い彗星のコスプレをしても全く似合っていなかった。
「……プッ、ブハハハハッ!ぜ、全然似てないなオイ!あぁ腹が痛い!」
「いやこれは、他の男優に交代すべきでは?」
「いいっていいって!お前の迫真の演技で誤魔化せばいいさ!」
そしてAV撮影は問題なく進み、編集されたのちに後世に残る作品……【ベッドの上の赤い彗星】シリーズが誕生したのであった。
「え、ファンレターが?」
「お前の迫真の演技が好評だったようでな。「ゲラゲラ笑わせてもらい元気が出ました!ケツアゴシャアさんの今後の活躍を期待しています!」だとよ。よかったな!」
「ファンレターは嬉しいですな。しかしコスプレAVは笑う為に見るものではないはずですが……」
「まあいいんじゃねえの?AVを好きなように見るのは本人の自由だろ」
当初【ベッドの上の赤い彗星】は知る人ぞ知る作品であった。ファンレターが来る事もあったが地球圏を賑わせるような力はなく、いずれ幾多のAVに埋没するだろうと私は考えていた……あのスキャンダルが起きるまでは。
―……はい、ええ、これは○○少尉ですね。あっ、彼女は□□□軍曹で……えっ?△△△中尉まで?な、なんだこれは……たまげたなぁ―
「社長、テレビのニュースで報道されているのですが」
「おう、今更になって報道されるだなんてなぁ」
第一次ネオ・ジオン紛争が終結し地球圏に平穏が戻った頃、テレビにて地球連邦軍の現役軍人がAV出演していた一件が地球圏に報道され、スキャンダルとしてお茶の間を賑わせていた。
―現役パイロットがAV出演だなんて……軍規はどうなっているのですか!―
―ええ、実に嘆かわしいですよ!―
「いやあ大変な事になったなぁ!モザイクで隠しているけど作品を特定されたせいで、ひっきりなしに電話がかかってきてヤバいぞ!」
「いや笑いごとではありませんよ」
「大丈夫大丈夫!悪いのは軍の方だしお前は気にせずいつも通り迫真の演技をしてくれ」
テレビの報道を見てもアッハッハ!と笑う社長は大物だったが、今後の影響を考えた私は思わず溜息をついていた。そしてネットにて迫真の演技が評価された私はネットのオモチャになったのである。
「こんな形で有名になるとは複雑な気分ですな」
「おや、怒ってないんだな」
「演技が評価されているのでAV男優としては喜ぶべきでしょう。デジタルタトゥーが残りましたが、そんな事を気にしてはAV男優をやっていられません」
「おお、その意気だぜ!テレビで報道されネットで有名になったおかげで【ベッドの上の赤い彗星】が大ヒット!続編を作る事になったからお前も気合入れて頑張ってくれ!」
「えぇ、わかりました」
その時はまだ一時的な流行だと考えていた私は、いずれブームも去って落ち着くだろうと呑気に考えていた。
「あ、不名誉除隊になった元軍人パイロット達はウチで雇う事にしたぞ」
「そうですか。しかし不名誉除隊とは彼女達は大丈夫なのでしょうか?」
「ああ、全然堪えてなさそうだったぞ。自分達が悪いし気持ちを切り替えて頑張るつもりらしい」
「……逞しいですな」
「まあ厚かましくて逞しくなければ遊ぶ金目当てでAV出演なんてしないからな!」
その後シリーズ化した【ベッドの上の赤い彗星】の撮影には様々なドラマがあり、私は非常に充実した日々を送っていた。
「随分とセットが豪華になりましたね。服装についても前のチープな衣装から大幅にグレードアップしていますな」
「大ヒットのお陰で金については余裕ができた!クオリティを上げて二作目も大ヒットを狙うぞ!」
「汚れたらマズイですし、行為中は衣装を脱ぐべきですか?」
「いや、予備があるから気にしなくていいぞ!」
「地球での撮影!?本当に許可が降りたのですか!?」
「おう!ダメ元で申請したら何故か許可が降りたんだわ!アッハッハ!」
「正気なのですか地球連邦政府は……?」
「そういうわけだから地球に降りる準備をしてくれ!」
「これが、地球ですか。不思議な感覚ですな」
「お前初めての地球に緊張してるのか。まあ俺も初めてなんだが」
「ハジメマシテー、今回ノ撮影デハヨロシクオネガイシマスネー」
「ああ、貴方が今回のお相手なのですか。宜しくお願いします……エキゾチックでお美しい人ですな」
「ウフフ、アリガトウゴザイマス」
「よし!三作目も大ウケしたしウチの会社も大儲けで万々歳だ!今回は初心に帰ってドラマより本番を重視するぞ!」
「というと?」
「女性パイロット10人抜きだぁ!ウチの社員と元軍人パイロットを出演させるぞ!やれるか!?」
「ハハハ、社長は無理を仰る……私とてAV男優の意地があります。やってみせましょう」
「最高だぜお前!よぅしスタッフ、お前達も気合入れろよ!」
「……安請け合いはするものではありませんな。流石に限界です。リテイクは無理です」
「おう、お疲れさん。やらせておいてなんだが本当に出来るとはお前スゴイな……男として尊敬するわ」
「もう一度やれと言われたら絶対無理です」
「えっ、五作目の評判が芳しくないと?」
「あー、いや、お前の迫真の演技については相変わらず評判がいいんだが……お前が痩せた事に違和感を覚えるファンが多くてな」
「痩せたお陰で本物の赤い彗星にかなり似せる事ができたのですが……」
「どうもファンには今までの姿がケツアゴシャアとして定着してるみたいでなぁ。それに政h、スポンサーからも元に戻すように言われてるんだわ。悪いな」
「ううむ、複雑な気分ですがファンの要求に応えるのが男優の役目です。頑張ってリバウンドするとしましょう」
「………………社長、このブームは何時になったら終わるのでしょうか?」
「さあな?俺もここまでブームが続くとは正直言って思わなかった」
第六作目である【ベッドの上の赤い彗星〜暗礁宙イキからの刺客〜】の撮影を終えた私は社長に疑問をぶつけていた。
「動画サイトでは私のMAD動画が精力的に製作されランキングの常連になっています。何がネットの住民達の琴線に触れたのでしょうか?しかしジオン共和国から会社宛に抗議文が送られ、ジオン残党からは私に殺害予告が来るとは……」
「馬鹿だよな〜アイツら。下手に反応すると世間から余計に注目されるってのがわからないのかね?」
「そうですな」
社長の意見に同意しつつ社長やスタッフ達が被害に遭わないか心配したが、社長達は特に気にした様子はなかった。
「社長はいつも通りですが大丈夫なのですか?」
「なんだよ心配してくれてるのか?全然気にしてないから安心しろ!パロディAVを撮ったくらいでムキになる奴等なんて怖くねーよ。というかお前こそ名指しで殺害予告だされたけど大丈夫か?」
「ご心配なく。私も元軍人です。一年戦争でソロモンの悪夢に遭遇したり、ア・バオア・クーで最前線で戦った自負があります。アレに比べたら残党の殺害予告等恐ろしくありませんな」
「言うねぇ〜流石元軍人でエースパイロット様だぜ!じゃあ今後も引き続き撮影続行だ!」
肝が座った社長達に苦笑しつつ、私は引き続きケツアゴシャアとしての活動を続けるのであった。
「年は取りたくないものですな。私も複数人相手は厳しくなってきました」
「だよなぁ、お前も30代後半だもんなぁ」
そして宇宙世紀0090年代後半となって体力の限界を悟った私はAV男優業の引退を視野に入れるようになった。
「社長、流石に限界です。そろそろ引退したいのですが」
「おう、わかったぜ。スポンサー……いや、もうバレてるから隠す必要もないか。政府の連中に話を通しておくぜ」
「よろしくお願いします。しかし一介のAV男優を政府が支援するとは奇妙な話ですな」
「連邦政府としても赤い彗星の名を貶めるのにケツアゴシャアを利用したかったのさ。まあここまで有名になるとは連中も想定してなかっただろうけどな」
「ハハハ、道化ですな私は」
「ああそうさ。だがただの道化じゃないぞ。お前は地球圏を手玉に取って踊ったスーパースターだ。自信を持って胸を張りな」
「ええ、そうする事にします」
そうして私は宇宙世紀100年をもってAV男優業を引退する事を地球圏に表明したのであった。
「一介のAV男優の為に物々しい警備ですな」
「それだけお前は地球圏の連中から注目されてるのさ。ハッハッハ、マジでスーパースターの扱いだなオイ!」
宇宙世紀100年、フォン・ブラウン市内で行われた引退式は地球連邦軍の警護を受けつつ開かれた。会場にはアースノイドやサイド3出身のスペースノイド等多種多様な人間が人々が私の引退を祝う為に集まってくれていた。
「しかしこうしてスペースノイドやアースノイドを問わずファンの皆さんが集まってくれるとは……AV男優として感無量です」
「おお、エロにスペースノイドもアースノイドも関係ねぇ。エロは地球を救うのさ!俺は本気でそう思っているぜ!」
「ええ、本当にそうかもしれませんな」
社長の言葉に同意した私はその後引退式で涙を見せるなど情けない姿を晒してしまったが、ファンの方々は暖かい声援を送ってくれて素晴らしい引退式であった。私はあの引退式を輝かしい思い出として脳裏に刻んだのであった。
「失礼、こちらのディスクにサインをお願いしたい」
「はい、わかりました」
その後サイン会が行われ、膨大な数のファンからサインを求められた私は手を抜く事なく対応していた。そしてある程度捌けたところでとあるファンからサインを求められた。
「おお……!素晴らしいコスプレですな!声もそっくりですし、まるで本物の赤い彗星だ!」
「フッ、貴方から賞賛されるとは嬉しいものだ」
そこにいたのはケツアゴシャアよりも遥かに完成度が高い赤い彗星のコスプレをしたファンであり、周囲の人々も彼の完成されたコスプレを見て感嘆の声を上げていた。
「ああすみません、早くサインをしなくては……なんと書けばよろしいですか?」
「そうだな、この一枚にはエドワウ、そしてもう一枚にはニコと書いてもらえるだろうか」
「お安い御用ですよ」
ファンのリクエストに対してサインを書いた私は、ふと気になる事があり彼に質問をした。
「失礼ですが、何処かで会ったことはありませんか?例えばあのア・バオア・クーで…………いやいや、何を言ってるんだ私は。すみません、忘れてください」
「ハハハ、別にいいさ。そうだな、最後に貴方に会えた記念にツーショットを撮りたいのだが構わないだろうか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
我ながら訳のわからない事を喋ったと謝罪したが、彼は気にすることなくツーショットを所望したので私は快く応じたのであった。
「ありがとう、ニコにいい土産ができた。貴方は今後俳優に転職するそうだが、貴方が俳優として成功する事をファンとして祈るとしよう」
「ありがとうございます。貴方にも幸があらん事を」
……そしてAV男優を引退した私は俳優に転職した。AV男優とは色々と勝手が違い困惑する事があったが、今までの経験を活かし俳優業を頑張っている。AV男優の頃からいるファン達から応援され俳優業は順調と言ってもいいだろう。
一部の人々からは運が良いだけの男と厳しい評価を受けているが、自分でも幸運だったと自覚はある。彼等に認められるよう私は今後も自分を磨き上げる事を誓うのであった。
<人物紹介>
●ケツアゴ男優
→結構重い過去があったが他の人達だってそうだし、いつまでも腐っていては両親に顔向けできないと前を向いて生きる人間の鑑。MSパイロットとしての技量は0.7シャアといったところである。慢心すること無く戦い抜きエースパイロットとして名を上げたが戦争終結後に除隊。当時はケツアゴながらもイケメンで女性のファンもそこそこいた模様。
AV男優として活動を始めた彼は元軍人の体力と迫真の演技が評価され社長からの覚えもよかった。ケツアゴシャアとして有名になった後も自惚れる事なく誠実な態度を取っていたので他のAV男優達から悪く言われる事は一度もなかった。
AV男優を引退後は俳優に転職し精力的に活動している。この調子なら俳優としても歴史に名を残せるだろう。
●AV制作会社の社長
→小規模な制作会社の社長で撮影監督も兼ねているお爺さん。人を見る目がありケツアゴ男優を見て熱心に勧誘した。昔別のAV制作会社で働いていた頃仲のよかった同僚がいたが、今彼女は何をしているのだろうかと時折考えている。
【ベッドの上の赤い彗星】の大ヒットで色々と圧力があったが本人は特に気にしてないロックなお爺さんである。ケツアゴ男優が俳優として成功した事を聞いて自分の事のように喜んでいた。
●現役女性パイロット達
→不名誉除隊された後AV女優に再就職し、その後いい男を捕まえて結婚した心のつえぇ女達である。結婚して子供が生まれてからは落ち着いたようだ。
●エドワウ(シャア)
→ケツアゴ男優の引退式に赤い彗星のコスプレをして参加し、何も知らない人達から完成度の高いコスプレだと賞賛されていた。
●プルツー(ニコ)
→今回は出番なし。本当は引退式に参加したかったが子供達もいるしダメだよなと冷静になり、ケツアゴ男優のサインをもらう為エドワウに依頼していた。サインをゲットして満足だったがケツアゴ男優とエドワウのツーショットを見て爆笑した。
次はセシリーの番外編を書く予定です。
完結となりましたがこの後も幾つか番外編を投稿する予定です。今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。