<株式会社リビング・デッド>
「社長、こちらダリルです。本日分のノルマを達成しました」
「おう、お疲れさんダリル。今日はもういいから戻ってこい」
「了解しました」
宇宙世紀0081年、一年戦争が終わって一年が経過していた。ジオン共和国のとある解体・回収会社「株式会社リビング・デッド」で働いているダリル・ローレンツ元曹長は本日分の仕事を終えて一息ついていた。
「相変わらず仕事が早いなダリル。フィッシャーにも見習ってほしいぜ」
「ありがとうございますフーバー少、じゃなくて社長」
乗っていた作業用旧ザクを操作し、会社の船であるドライドフィッシュⅡに帰還したダリルは株式会社リビング・デッドの社長であるフーバー元少尉と会話していた。
「お前やショーン達が頑張ってくれるおかげでウチの会社経営は順調だ。次のボーナスに色付けておくから楽しみにしておけよ」
「わかりました。期待してます」
雑談する中でダリルはふと疑問に思っていたことを尋ねる。
「前から思ってましたけど、社長はどうしてこの会社を設立したんですか?」
「なんでって、そりゃあ生きていく為に仕事をする必要があるからだろうが。軍人年金は端金でそれだけじゃとても生活できないし、手足が欠けた傷痍軍人の俺達じゃ碌な仕事につく事もできないんだ。じゃあ自分で飯の種を作るしかないだろ?んで仕事にあぶれて困っているお前らをスカウトして会社を設立したわけだ」
「なるほど」
フーバー社長の言い分にダリルは納得していた。一年戦争で連邦軍の捕虜になったダリル達は戦後解放されサイド3に帰還していた。帰還したダリル達であったが、傷痍軍人というハンデがある身で再就職先が見つからず困っていたところをフーバー社長にスカウトされたのであった。
「でもよく銀行の融資受けられましたね?」
「これでも一応元少尉で、士官学校を出てるんだ。社会的信用はそれなりにあるんだよ……まあそれと政府が元軍人の社会復帰を大々的に支援してるお陰もあるけどな」
フーバー社長の言う通りジオン共和国政府は元軍人達の社会復帰などを支援していた。壊滅した各サイドや、コロニー落としがあった地球に比べればサイド3に余裕があるのは確かだったが、それでも人を遊ばせておく余裕などなかったのだ。
「なんせ一年戦争で大量の戦死者と……ほら、その、サイド3に戻らず暗礁宙域や地球に残って頑張ってる連中とかがいるから人手不足なんだよ。傷痍軍人でも働く気概があるならって融資を受けられたんだ」
「社長、言葉を濁さないで素直に政府に従わないテロリスト達って言えばいいじゃないですか。政府もテロリストと認定してるんですから」
「あー、それなんだが、ウチの会社では連中についてはテロリストと呼ばずに言葉をぼかす事にしたから。お前や他の奴等もそうしろ、社長命令だ」
「えぇ?」
フーバー社長の言葉にダリルは怪訝な表情を浮かべる。
「連中は政府からはテロリスト扱いされてるけど、たとえテロリストだったとしても連中の帰りを待っている家族とかがさ、大勢いるんだよ。そういう人達に配慮しろって事だ」
「まあ、わかりました、そう言う事なら」
戦後になって少なくない数のジオン軍が武装解除に応じず潜伏しており、ジオン軍残党と呼ばれるようになった彼らは共和国政府に従わず、共和国政府の事を売国奴と唾棄していた。
「連中サイド3で勧誘したりしてるらしいぞ。サイド3の住民にも連中と通じてる奴等がいると言う噂だ」
「勧誘ですか。俺達の周囲じゃ聞いたこともないですが」
「そりゃそうだ、連中は連邦と戦う勇士が欲しいのであって、俺達のような義足野郎で傷痍軍人だなんて連中もお呼びじゃないさ。少し考えればわかるだろダリル」
「あっ」
ジオン残党の勧誘など聞いた事がないと不思議そうな表情を浮かべていたダリルであったが、フーバー社長から指摘され納得する。
「まあ連中は俺達の事なんて眼中にないだろうけど、念の為一応気を付けておけよ」
「わかりました」
その後もダリルはフーバー社長と雑談しつつショーンやフィッシャー達の帰りを待っていた。
「お疲れ撃墜王、いや今は解体王か」
「仕事が早いよなぁダリルは」
船に帰還したフィッシャー達はダリル達と合流する。
「アテンションプリーズ!これからドライドフィッシュⅡはサイド3に帰還します!」
「子供1枚で」
「ダリル、前から思ってたけどそのネタつまんないぞ」
「えっ」
「うん、気に入ってるみたいだけど社長の言う通りだぞダリル」
「まあ、ねぇ」
お気に入りのネタをダメ出しされてダリルはショックを受けたりしたが、船内は和やかな雰囲気のままサイド3に帰還するのであった。
「よしお前ら!本日の作業は終わったが今日はこれからが本番だ!お前達、この後何があるか覚えてるか!」
「確か合コンだったっけ」
「そうだぜダリル、社長がわざわざセッティングしてくれた合コンだ!」
「フィッシャー……必死だなぁ」
サイド3に帰還し一息ついたダリル達であったが、これから合コンをするという事で気合を入れていた。
「ダリル、お前もやる気出せよ!というかお前目当てで合コンに来る娘もいるらしいじゃないか!羨ましい野郎だぜ!」
「サンダーボルト宙域の撃墜王だからなダリルは。顔も悪くないしそりゃモテるよ」
「おだてないでくれショーン、俺はまだ結婚する気はないよ。母と妹を養う必要があるし、妹の学費の為に貯金するつもりだから暫くはいいかなって」
「妹さんもこんな兄ちゃんを持って幸せだな。まあでもとりあえず合コンには参加しろよ。お前目当ての娘さん達もいるからな」
「わかってますよ社長。社長も参加するんですか?」
まだ結婚するつもりはないダリルは苦笑しつつ社長も合コンに参加するのか尋ねる。
「えっ、いや俺は参加しないぞ…………そんな事したら嫁にボコボコにされるし!」
「そんなに奥さんの事が怖いんですか」
「お、俺が愛する妻の事が怖いわけないだろう!?真面目にしてれば優しくて気立てがいい嫁だし!」
「……まさか結婚したら恐妻家になるとはなぁ。プレイボーイ気取りよりは遥かにマシですけど」
「五月蠅いぞダリル!」
冷や汗をかくフーバー社長を見てダリル達は笑うのであった。
<カーラ教授のその後>
「ここがフォン・ブラウンか。まさかアナハイムにスカウトされるだなんて」
一年戦争が終わり解放されたカーラ教授は
「ああこちらですカーラ教授!」
一足先に到着していたセクストンと合流しカーラ教授達はアナハイム本社に向かう事にした。
「いやあしかしよかったですねぇ!ジオンが敗北した後はどうなるかと思いましたが、まさかアナハイムから直々にスカウトされるだなんて!東洋の諺で捨てる神あれば拾う神ありと言いますが本当だ!」
「……ええ、そうね」
上機嫌なセクストンの言葉を聞き流しつつカーラ教授は物思いに沈んでいた。
(今更
戦後になって父親の開放を求めていたカーラ教授であったが、共和国政府からは父親は既に処刑されていると無慈悲な通告を受けていた。父親の事を考えるとカーラ教授の心にどす黒い感情が湧き上がって来るが、カーラ教授はそれを理性で抑え付ける。
(やめましょう。父親の事を考えても憂鬱になるだけだわ。もうサイド3には居たくないしアナハイムからスカウトされたのは僥倖だったかもね。セクストンの言う通り研究を続けるとしましょうか)
カーラ教授はジオン、いやサイド3に反感を持ちつつも、それを表に出さず心の中にしまう事にした。これが実際に復讐の機会があれば嬉々として実行していただろうが、ただの技術者でしかない自分では復讐など無理だと理解していた。
「アナハイムなら最高の環境で
「ええ、それについては私もそう思うわ」
とりあえず命の危険にさらされるのがなくなった事に安心しつつ、カーラ教授はアナハイムにて
……その後サイコミュ技術の発展に伴い
<人物紹介>
●ダリル・ローレンツ
→一年戦争で捕虜になったが戦後になり解放されサイド3に帰還する。自分だけでなく母と妹を養う為に前を向いて仕事を頑張るいい男である。サイコ・ザク?なんですかそれ?(困惑)
腕利きのスナイパーで顔も悪くないので女の子達から評判がよくてモテる。だが今は家族を養うのと妹の学費の為に貯金する事を優先しており結婚する気はない。だがいずれいい女性を見つけて結婚し、子供を作り育てていくだろう。
●ダリルの仲間達
→フーバー少尉が一念発起し会社を設立しダリル達も付いて行った。フーバー社長は婚約者と結婚して尻に敷かれているが、子供ができてからは親馬鹿となり社員達を呆れさせている。
ショーンやフィッシャー達も心機一転して仕事を頑張っており、いずれ結婚して平凡ながらも幸せな人生を送るだろう。
●株式会社リビング・デッド
→フーバー社長が設立した極小規模な会社。銀行から融資を受けて設立した。解体・回収作業を生業にしているが一年戦争のせいで地球圏はデブリだらけなので仕事には困らず経営は順調である。今後もグリプス戦役や第一次ネオ・ジオン紛争に関わる事なく平穏に過ごしていくのであった。
会社のおやつでは社員の祖母が作ったリンゴタルトがよく出てくるらしい。
●カーラ教授
→父親が処刑されていたと聞いて呆然とする。その後アナハイムからスカウトを受け、もうサイド3にはいたくないと月のフォン・ブラウンに移住した。アナハイムにて
この世界ではサイコブッダが出てこないのでカーラ教授がハジケル事はなく、デスメタルに目覚める事もなくなった。あんな事しなくていいから(良心)
後1話後日談を書いてケツアゴのサンダーボルトを終わらせる予定です。予定としてはケツアゴの後日談となる予定です。
完結となりましたがこの後も幾つか番外編を投稿する予定です。今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。