キスはするのに恋愛感情は無い幼馴染み同士の話   作:としぞう

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第14話 (ようやく)勉強開始

 着替えのTシャツを持ってトイレを済ませ、部屋に戻ると……いちかはなぜか、俺のTシャツ(しかも俺が選んだのの色違い)を着て待っていた。

 

「なんで俺の着てるんだよ」

「だって、ブラウスは汗でべちゃべちゃなんだもん」

「まあ、そっか」

 

 部屋には冷房を効かせているのでこれ以上汗を掻くことはないが、逆に汗がついた服は冷たくなって確かに着るのはしんどいかもしれない。

 こればかりは、見逃してやるとしよう。

 

「じゃあ早速勉強を始めよう」

「キスからじゃないの?」

「さっき散々やっただろ」

「えー、あたし的にはさっきも今も、いつでもやりたい心地なのですが」

「それじゃあ意味ないだろ……とりあえずテストが終わるまでは、さっきの感じでやってみようぜ」

「うー……りょーかい。あたしも、またキス断とか言われたら困るし」

 

 というわけで早速スマホで、ポモドーロタイマーのアプリをダウンロードしてみる。

 作業時間と休憩時間を打ち込み、さらに大休憩の頻度を設定。それぞれアラーム音を設定して……これでよし。

 

「さっき言ったとおり、勉強25分、休憩5分、大休憩は5ループごとに30分で」

「ほーい」

 

 というわけで、さっそくそれぞれ――俺は数学、いちかは英語のテキストをテーブルに並べ、タイマーをスタートする。

 珍しい沈黙がしばらく流れ、何問か問題を解き終わった後――不意にいちかがため息を吐いた。

 

「あんさぁ」

「ん」

「作業時間って、雑談とかも駄目?」

「んー……駄目じゃないか、やっぱり。休憩時間があるんだし」

「だよねー。でもなんか、しょーちゃんと一緒にいるのにずっと黙ってるっていうのも変な感じがするっていうかさ」

「気持ちは分からんでもないけど、勉強っておしゃべりしながらするもんでもないだろうしな」

「んー、そっか」

 

 再び、お互いの勉強に戻る。

 思えば、互いに怠けないか監視するという名目で宿題とかを一緒にやることは多かったけれど、こうやってそれぞれ自習に集中する機会というのは少なかったかもしれない。

 

 ただ、それが全然集中できないかと言えば別だ。

 俺たちは幼馴染みで、互いにふんわりとだけれど、こいつには負けたくないという気持ちを持っている。

 

 こと勉強においては性別の差なんてあまりないわけだし……いちかが真面目に勉強している姿を前にすれば、俺も身が入るというものだ。

 

――ピピピッ。

 

「おっ、一回目の……」

 

――ガバッ!!

 

「んーっ!!」

 

 アラームが鳴ると同時、ダッシュスタートを切ったいちかが思い切りキスしてきた。

 

「おまっ、歯、当たるっ」

「ちゅむ……は? 当たらないし。何年キスしてると思ってんのさ。ていうか、五分しかないんだから、集中。ほら、ツバいっぱいつくって」

 

 バシバシ肩を叩かれつつ、言われるがまま舌を絡める。

 そんなたった25分じゃフラストレーションが溜まるほどではないだろうに、いちかはなぜこんなにも求めてくるのか……。

 

「なんかさ、面白くない?」

「なにが」

「25分、勉強頑張ったご褒美って感じで。なんか興奮する」

「いや、分からんけど……俺は普通にちょっと休憩したい」

「んじゃあ、休んでていーよ。あたしは勝手にやらせてもらうから。んふふ、しょーちゃんのベロ舐め舐めするの、意外と楽しいって分かったし♪」

 

 キスしてたら当然休める筈も無いのだけど……まぁ、ものは試しか。

 俺はベッドを背もたれにだらっと脱力してみる。そんな俺にキスを続けるいちか。

 

(呼吸しづれぇ……喉も渇くし……)

 

 結局、予想通りと言うべきか、一度目の休憩は全く休まることはなかった。

 

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