キスはするのに恋愛感情は無い幼馴染み同士の話   作:としぞう

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第37話 エスカレート

 しばらく唇を重ね、互いの舌をじゃれつかせ合った。

 ただ、キスってのはしているとどうしても喉が渇く。唾液じゃ水分補給はできないということなのか、何十分も続けたらもうカラッカラだ。

 というわけで、さすがの俺たちも合間合間に水分補給を挟まずにはいられず、今もお互いソファに脱力しながら、それぞれ水を煽っていた。

 

「そういえばさ、しょーちゃん」

「んー」

「あたしたちももう高校生なんだからさ、そろそろ唇以外へのキスしてもいいんじゃないかなぁ」

「なにが高校生なんだからか分からないけど……まあ、したいならしてもいいんじゃないの」

「えっ」

 

 驚いたようにいちかが俺を見てくる。そんなに驚かれるようなことを言っただろうか。

 確かに、俺たちが交わすキスは殆ど唇対唇のもの。口の周りに触れることはあっても、頬へのキスなどは殆ど、まったくと言っていいほどしない。

 結局唇同士が一番楽しいってのがあるけれど……まあ、結局の所、どこまでがキスでどこからが別物かが分からないっていうのもある。

 

 例えば頬からさらに離れて、耳や、首筋……さらには首より下、胸や四肢などにキスをすれば、それはキスではなく、もはや愛撫――ペッティングと呼ばれるそれに該当する気がする。

 俺たちは性に目覚める前からキスを交わし合った習慣があって、それを今日まで引きずってしまっている。

 

 けれど不幸中の幸いというべきか、それで満足して、互いの体を触ったり、胸を揉んだり股に手を伸ばしたり……そんな、キスよりさらに先の行為には及ばなかった。

 それを知ったのは、同時にそれが恋人同士がする行為であると知るのと同時だったから、そういう関係じゃない俺たちは当たり前に手を出さなかった。それが普通ってもんだ。キスは続けたけど。

 

「……ていうか、そういうのは無しって言ってたの、いちかの方だろ。俺も納得はしてたけど」

「えっ、先に言ったのしょーちゃんでしょ!」

「えぇ……?」

 

 俺はいちかに言われたと思ったけどな。

 ただ、雑談の中で交わした口約束だ。一言一句、当時の状況が思い出せるわけじゃない。

 

「どっちが言ったかはともかくさ……なんで今になって『やってもいい』って思ったんだよ」

「別に今になってでもないし。ただ、不自然かなっていうかさ」

「まあ、そもそも今の関係が自然からは離れてるけどな」

「キスしてたらさ、『あ、なんか今、しょーちゃんの耳たぶ舐めたいな』とかならん? あたしはたまになるんだが!」

「それは分からなくもない」

 

 いちかは形の良い福耳をしている。触ると非情に柔らかくて、目を引かれるものがある。

 彼女も女子だしいつかはイヤリングをつけたり、ピアスを空けたり、そんなオシャレに手を出すだろう。それはそれとして否定するつもりはないけれど、やっぱり一切手の付けられていないフロンティアを開拓したいという冒険者精神が男の子にはあるのである。

 

「あと……しょーちゃんの胸筋とか、上腕二頭筋とか、脇腹の筋肉とか……」

「筋肉、好きだな。俺あまり鍛えてなくてごめん……」

「いや、ムキムキだと逆に引いちゃうし、しょーちゃんの自然についた普通の感じがいいの」

「でも、胸とかはよくないだろ。さすがに」

「でもでも、男の人でも気持ちいいらしいよ」

 

 なんで食い下がるんだ、こいつ。

 お前が胸にキスしていいってことは、即ち俺もしていいってことになるんだぞ……いや、なるのか? 分からん。誰かルールブック持ってきて!

 

「……とりあえず、首から上って感じで解禁するのがいいんじゃねぇの」

「そうだね……そうかも!」

 

 いちかはそう納得して頷くと――早速俺をソファに押し倒してきた。

 そして俺の上に覆い被さり、さっそく頬に軽くキスをした。

 

「ほら、しょーちゃんもして」

「お、おう」

 

 唇でいちかの頬に触れる。

 指では何度か触れたことがあったけれど……実に触り心地がよく、ほどよいぷにぷに加減だ。

 

「なんか、くすぐったいね」

「変な感じだな……」

 

 唇同士のキスと違って、唇を外すキスは攻守交代制。お互い同時にキスすることは難しい。

 自分からするのはともかく、一方的にしてもらうのは、どういう感じに受け止めれば良いのか、俺はまだ理解できていなかった。

 

「そういえばさ、耳の後ろってフェロモンが出るって聞いたことない?」

「そうなのか?」

「うん、そうなんだって」

 

 いちかが豆知識を披露しつつ、早速実践するように俺の耳の後ろに顔を近づけた。

 

「すんすん……ちょっと汗のにおい。でも嫌いじゃないよ」

 

 くすぐったい。耳の後ろを嗅がれるなんて想定して人生やってないし……いぃ!?

 

「れろぉ……」

「ひうっ!?」

「あはっ、しょーちゃん変な声」

「いや、だって、いきなり舐めるから!」

 

 いちかが何の断りもなく、耳の後ろを舐めてきた。

 しかも最初から、ねっとりと、思い切り味わうように!

 

「ここ、気持ちいーんだ。れろれろ……」

「き、もちいい、とか、じゃなくて、くすぐっ、たいん、だよっ!?」

 

 舐められる度に、全身がぞわぞわする。

 キスとは違う、全く未知の感覚に、思考がゴリゴリ削られていく。

 

「れろ……はむっ♪」

「んぐっ!?」

 

 そんな俺の反応を楽しみながら、いちかはさらに俺の耳たぶを咥えてきた。

 これはこれで、さらにヤバい。

 全身がビリビリして、呼吸さえままならないくらい、ヤバい。

 これが本当にくすぐったいのか、気持ちいいのか、分からなくなる。

 

「う、ぐっ……!?」

 

 感覚を逃がそうと、腕に、足に力を込める。それもしょせんささやか程度の抵抗でしか無いけれど――。

 

「ひぅんっ!?」

 

 突然、いちかの舌が止まり、彼女の体がびくんと跳ねた。

 

(あ……!?)

 

 その原因に気がつく。

 逃げ場を求め、彷徨っていた俺の右手が……あろうことか、いちかの胸を掴んでいた!

 

「びっ、くりしたぁ……もお、しょーちゃんのえっち」

「い、いや! これは違くて!」

「……別に良いよ。しょーちゃんが触りたいなら……覚悟なんて、もうとっくに決まってるから」

 

 いちかはそう顔を赤らめつつ、余裕ぶってにやっと笑うと……俺の右手に自分の左手を重ね、あろうことかそのまま胸を揉ませにきた……!

 

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