「ん、あんっ……これ、なんか自分で触るより、気持ち、いい……!」
「ちょ、いちか、これはヤバいって!?」
「い、いじゃん……世界中、探せばさ……恋人同士、でなくても、おっぱい、揉んでる幼馴染み、とか、いるよ……きっ、とぉ……!」
体を跳ねさせながら、それでも俺の手を強く握って胸に押しつけてくるいちか。
それはもう、うっかり触れたとか、鼓動を感じるとか、そんな言い訳が効かないくらいはっきり感触が、余すことなく伝わってきてしまうほどだ。
そして、俺は理解した。
人類が、おっぱいに魅了される所以に。
形が良いとは思っていた、同世代に比べても十分大きめなその胸に、指が食い込み、吸い付く。
Tシャツの布越しではあるけれど、ほぼ有ってないようなものだ。だって、肝心のブラジャーをいちかはわざわざオミットしてきたのだから。
柔らかな胸……そしてその先の少し固い部分まで、薄い布越しに全て余すことなく味わえる。味わえてしまう。
おそらく、一生忘れられないであろう体験だ。
「あたしの、おっぱいを楽しむのも、いいケドぉ……」
「んぐっ……!?」
いちかも少し慣れたのか、再び俺の耳をいじり始める。
耳を舐めるという行為は、下手すりゃ中耳炎になったりもする……と聞いたことがある。こういう下ネタスレスレのゴシップは男子ネットワークにおいては高値で取引されているから。
けれど、ああ、これはどうだろう。
思考がじわじわと奪われていく中で、こんだけ気持ち良くて、頭にバチバチ電流が走る体験をしているんだ。
中耳炎くらい、なっても仕方ないんじゃないだろうか。それくらいのリスクは十分見合うんじゃないだろうか。
「ちゅる……」
唇を滑らせ、いちかが唇を耳から離す。
彼女は妙に潤んだ目で俺を見下ろし……口の、更に下、首元へと鼻を埋めた。
「しょーちゃん、首から上ってさ……首は、セーフ?」
いちかが熱の籠もった声で、ねだるように聞いてくる。
俺はもう、何も考えられなかった。耳にはいちかの唾液の跡がくっきり残っており、右手は未だ彼女の胸に吸い寄せられている。
「……わかんねぇ」
なんとか絞り出せた回答は、殆ど白旗と言ってもいいくらい、全てをいちかの裁量に委ねた言葉だった。
彼女が白と言えば白。黒と言えば黒。全て従うと。
そして――。
「じゃあ……セーフだねっ」
そうすれば、こう返ってくるのは分かっていた。
「ちゅぅ……」
「ん……っ」
すんすん、と首筋のにおいを嗅いだあと、いちかはまるで吸血鬼の如く、頬骨の下に吸い付いてきた。
そこにいったいどんな味が隠されているのかは分からない。
けれど、いちかはたっぷり味わいながら、全てこそげ落とす勢いで舐め取っていく。
「ちゅる、じゅる、ちゅうぅ……ふぇへ、しょーちゃん、気持ちいい……?」
「た、たぶん」
「じゃあ良かった」
何が良かったというのか、いちかは本当に嬉しそうに目を細める。
そして、鎖骨、喉仏と、たっぷりふやけるほどに舐めて、ようやく顔を離した。
「しょーちゃん、凄い顔になってるよ。ちゃんと涙目だし」
「うっさい……つーか、そんな楽しいもんなのかよ……」
「うん。しょーちゃんが喜んでるって分かったし、いっぱい喜んでほしいなって……はっ! もしかしてあたし、そういう才能あるのかも! 尽くしたい、みたいな? きゃーっ!」
変にテンションを上げて、両頬に手を当てつつくねくね腰を振るいちか。
その勢いに気圧されつつ、こいつが楽しいならそれでいいかと溜め息を吐く。
なんであれ波は去ったから――。
「ちょっと、しょーちゃん。なに、安心した顔してんの?」
「え?」
「次はしょーちゃんの番だよ?」
「…………え?」
そう、口以外へのキスは同時にできない。
攻守交代制なのだ。守備をこなしたのなら、次は攻撃が待っている。
いちかは無防備に、ソファに寝転がる。
そして俺を誘うように、手を広げた。
「あたしのことも、気持ち良くして。だ・ん・な・さ・まっ」
「っ……!」
どくん、と心臓が大きく跳ねた。
夫婦の芝居、今更続けるのかとか、おっぱいを揉んだのが対価だったんじゃないのかとか……そんな言葉が浮かんでは、声にならずに消えていく。
ああ、ひとつ断っておくと。
いちかの肌は、それもう、何でか分からないけれど、すごく甘く、これ以上ない舌触りだったとか、なんとか……。