キスはするのに恋愛感情は無い幼馴染み同士の話   作:としぞう

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第38話 色んなところ

「ん、あんっ……これ、なんか自分で触るより、気持ち、いい……!」

「ちょ、いちか、これはヤバいって!?」

「い、いじゃん……世界中、探せばさ……恋人同士、でなくても、おっぱい、揉んでる幼馴染み、とか、いるよ……きっ、とぉ……!」

 

 体を跳ねさせながら、それでも俺の手を強く握って胸に押しつけてくるいちか。

 それはもう、うっかり触れたとか、鼓動を感じるとか、そんな言い訳が効かないくらいはっきり感触が、余すことなく伝わってきてしまうほどだ。

 

 そして、俺は理解した。

 人類が、おっぱいに魅了される所以に。

 形が良いとは思っていた、同世代に比べても十分大きめなその胸に、指が食い込み、吸い付く。

 

 Tシャツの布越しではあるけれど、ほぼ有ってないようなものだ。だって、肝心のブラジャーをいちかはわざわざオミットしてきたのだから。

 柔らかな胸……そしてその先の少し固い部分まで、薄い布越しに全て余すことなく味わえる。味わえてしまう。

 

 おそらく、一生忘れられないであろう体験だ。

 

「あたしの、おっぱいを楽しむのも、いいケドぉ……」

「んぐっ……!?」

 

 いちかも少し慣れたのか、再び俺の耳をいじり始める。

 耳を舐めるという行為は、下手すりゃ中耳炎になったりもする……と聞いたことがある。こういう下ネタスレスレのゴシップは男子ネットワークにおいては高値で取引されているから。

 

 けれど、ああ、これはどうだろう。

 思考がじわじわと奪われていく中で、こんだけ気持ち良くて、頭にバチバチ電流が走る体験をしているんだ。

 中耳炎くらい、なっても仕方ないんじゃないだろうか。それくらいのリスクは十分見合うんじゃないだろうか。

 

「ちゅる……」

 

 唇を滑らせ、いちかが唇を耳から離す。

 彼女は妙に潤んだ目で俺を見下ろし……口の、更に下、首元へと鼻を埋めた。

 

「しょーちゃん、首から上ってさ……首は、セーフ?」

 

 いちかが熱の籠もった声で、ねだるように聞いてくる。

 俺はもう、何も考えられなかった。耳にはいちかの唾液の跡がくっきり残っており、右手は未だ彼女の胸に吸い寄せられている。

 

「……わかんねぇ」

 

 なんとか絞り出せた回答は、殆ど白旗と言ってもいいくらい、全てをいちかの裁量に委ねた言葉だった。

 彼女が白と言えば白。黒と言えば黒。全て従うと。

 そして――。

 

「じゃあ……セーフだねっ」

 

 そうすれば、こう返ってくるのは分かっていた。

 

「ちゅぅ……」

「ん……っ」

 

 すんすん、と首筋のにおいを嗅いだあと、いちかはまるで吸血鬼の如く、頬骨の下に吸い付いてきた。

 そこにいったいどんな味が隠されているのかは分からない。

 けれど、いちかはたっぷり味わいながら、全てこそげ落とす勢いで舐め取っていく。

 

「ちゅる、じゅる、ちゅうぅ……ふぇへ、しょーちゃん、気持ちいい……?」

「た、たぶん」

「じゃあ良かった」

 

 何が良かったというのか、いちかは本当に嬉しそうに目を細める。

 そして、鎖骨、喉仏と、たっぷりふやけるほどに舐めて、ようやく顔を離した。

 

「しょーちゃん、凄い顔になってるよ。ちゃんと涙目だし」

「うっさい……つーか、そんな楽しいもんなのかよ……」

「うん。しょーちゃんが喜んでるって分かったし、いっぱい喜んでほしいなって……はっ! もしかしてあたし、そういう才能あるのかも! 尽くしたい、みたいな? きゃーっ!」

 

 変にテンションを上げて、両頬に手を当てつつくねくね腰を振るいちか。

 その勢いに気圧されつつ、こいつが楽しいならそれでいいかと溜め息を吐く。

 なんであれ波は去ったから――。

 

「ちょっと、しょーちゃん。なに、安心した顔してんの?」

「え?」

「次はしょーちゃんの番だよ?」

「…………え?」

 

 そう、口以外へのキスは同時にできない。

 攻守交代制なのだ。守備をこなしたのなら、次は攻撃が待っている。

 いちかは無防備に、ソファに寝転がる。

 そして俺を誘うように、手を広げた。

 

「あたしのことも、気持ち良くして。だ・ん・な・さ・まっ」

「っ……!」

 

 どくん、と心臓が大きく跳ねた。

 

 夫婦の芝居、今更続けるのかとか、おっぱいを揉んだのが対価だったんじゃないのかとか……そんな言葉が浮かんでは、声にならずに消えていく。

 

 ああ、ひとつ断っておくと。

 

 いちかの肌は、それもう、何でか分からないけれど、すごく甘く、これ以上ない舌触りだったとか、なんとか……。

 

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