今、俺はあるタレントと外に居る。彼女は宝鐘マリン。ホロライブ3期生として様々な所で活躍している。何故、一緒に居るかというと数時間前に遡る。
フブキ「いやぁ〜今日はトラブル続きで大変でしたね...」
「ちょっと慣れてないトラブルだったので少し困らせてしまいましたね。」
フブキ「いやいや!凄い早い対応で助かりました!」
「それなら良かったです。」
フブキさんのスタジオ収録の際、システムトラブルで少し収録が先延ばしになったが、何とか収録を終わらせる事が出来て幸いだった。
マリン「天津さぁん!!!」
フブキ「マ、マリン?」
「どうかしましたか?」
足早に来たマリンさんが、話しかけてきた。どうやら外へご飯に行きたいがマネージャーがスタンピードの前兆の件で控えて欲しいと言われた。その際に俺が居たら大丈夫だと思い、探していたそう。
マリン「お願いします!この可愛いマリンちゃんの顔で!」
「は、はぁ...自分は全然良いですけどマネージャーさんが控えて欲しいって言ってると少し...」
フブキ「あぁ!なら天津さんの影移動で目的の場所にすぐ行けるんじゃない?」
マリン「やだ!仮にも男の人とだし、デートの趣もないじゃん!」
「いや、別にデートってわけじゃなく、単純に移動手段の話では……」
マリン「ダメ!外を歩くのも含めてお出かけなんだよ!」
マリンさんは腕を組みながら、ぷくっと頬を膨らませる。まるで駄々をこねる子供のようだが、こういうところがファンに愛されているのだろう。
「……はぁ、仕方ないですね。ですが、長居はしないようにしましょう。」
マリン「やったー!さすが天津さん、話がわかる男だ!」
こうして俺はマリンさんと二人で事務所を出ることになった。目的地は、彼女が前から行きたかったという人気の海鮮料理店らしい。確かに、最近のニュースでスタンピードの前兆が報じられ、外ロケが制限されている状況ではあるが……俺がいれば、多少の危険は回避できるだろう。
店に着くまでの道中、マリンさんは楽しそうに話していた。
マリン「天津さんって、普段何食べてるの?」
「わりと適当ですね。コンビニだったり、外で簡単に済ませたり……。」
マリン「えー!? もったいない! せっかく美味しいものがいっぱいあるのに!」
「食にそこまでこだわりがないだけですよ。」
マリン「うーん、天津さんってなんかこう、生活感が薄いんだよねぇ。」
「そうですか?」
マリン「なんか、戦うのが本業って感じ? 普段の天津さんって、仕事してるか戦ってるかのどっちかじゃん。」
「……まぁ、仕事の比率が高いのは否定しません。」
マリン「たまにはこうやって、のんびりするのも大事だよ?」
「そうですね。そういう時間も大切にしないといけませんね。」
マリンさんは何気なく言ったのかもしれないが、俺には少し刺さる言葉だった。現代に来てからも、結局は仕事と戦いの繰り返し。そういう生き方しかしてこなかった。
目的の海鮮料理店に到着し、二人で席についた。店内は程よく賑わっており、雰囲気も良い。
マリン「いやー、ようやく来れた! ここの海鮮丼、ずっと食べたかったんだよね~!」
「そんなに人気なんですか?」
マリン「めっちゃ人気! 前にぺこらと来ようと思ったんだけど、予定合わなくて行けなくてさ。」
「それで俺を誘ったと……。」
マリン「まぁまぁ、そんな細かいことは気にしない気にしない!」
注文を済ませ、料理が運ばれてくるのを待つ。
マリン「そういえば天津さん、昨日のエリートオークの件、ネットニュースになってたよね?」
「えぇ、まあ……目立ちすぎましたかね。」
マリン「ホロメンの間でも噂になってたよ! 『天津さん、実はヒーロー説』とか、『影の能力、チートすぎる』とかね。」
「そんな大げさな……。」
マリンさんはニヤニヤしながら話してくるが、俺としてはあまり騒がれたくはない。しかし、こうして話題になってしまった以上、仕方がないかもしれない。
料理が運ばれてきた。
マリン「おぉ~! めっちゃ美味しそう!」
「確かに、見た目も鮮やかですね。」
マリン「いただきまーす!」
マリンさんは幸せそうに海鮮丼を頬張る。その様子を見ていると、こちらまで和やかな気分になってくる。
マリン「……なんか天津さんって、こういうの慣れてなさそうだよね。」
「どういう意味ですか?」
マリン「誰かとご飯行くのとか、こうやってのんびりするのとか。」
「……まぁ、そうですね。」
昔の俺は、戦いと日常の境目が曖昧な生活を送っていた。現代に来てからも、仕事と戦闘の合間にこうして普通の時間を過ごすことは、ほとんどなかった気がする。
マリン「せっかくだから、こういう時間も大事にしなよ?」
「……そうしてみます。」
マリンさんは冗談めかして言っているが、俺の心には妙に響いた。
食事を終え、店を出る。
マリン「いやー、満足満足! やっぱり天津さんを誘って正解だったわ!」
「楽しめたなら良かったです。」
マリン「今度はぺこらも一緒に来ようかなー。」
「……俺は二人きりの方が助かります。」
マリン「えっ、えっ、それってどういう意味!?!?!?」
「いや、単純に人数が増えると目立ちますし……。」
マリン「......この仕事バカ!!」
マリンさんが顔を赤くしながら、何か呟いていたが、俺はあえて気にせず歩き出した。
こうして、短いながらも穏やかな時間が過ぎていった。
その後解散してマリンさんのマネージャーさんから直接『迷惑をかけて申し訳ない』と謝罪を受けたが、自分にとってはいい経験にはなった。
帰宅時間になり、帰路に付いて自宅に入ると俺は第1にソファーに座って一息ついた。そして俺はふと思い出した事がある。
「あぁ、スタンピード対策あるじゃん。」
それは影分身した際、各タレントの影に忍び込み、自分が影分身の所へ高速移動して守る対策だ。魔法のワープみたく、一瞬という訳にはいかないが、少しは対策になるだろう。
「それとあれだ、昔使ってた召喚でもしてみるか。」
死ぬ前に試していた、召喚の義を覚えてるだけ再現してみようと思った。
「月隠れ、影の帳が降りる刻
秘められし祈り、今ここに解かれん
その言霊にて、全てを封じよ!
——顕現せよ、『影縛ノ巫』*1!」
俺の影が伸び、そこから黒い着物を纏った神秘的な巫女を召喚した。
こいつは影の呪符を用いて敵を封じ、足元の影を操って動きを封じて、囁くような声で詠唱を唱え、敵の意識を揺さぶる力を持っている。
影縛ノ巫「我が主...例え姿が変わろうと私はその影の圧で分かります...」
「そ、そうか、何年ぶりと言ったら良いのか...」
影縛ノ巫「この嫌な感じは一体...?」
「久しぶりのモンスタースタンピードだ。」
影縛ノ巫「モンスタースタンピード...?」
「そうか、昔の呼び方だと百鬼夜行か、それが始まるかもしれない。」
影縛ノ巫「あら、私しか呼ばれてないという事は...原因を探せと?」
「出来ればそうして欲しい、召喚に関しては色々思い出してからやるつもりだ。それと調査と同時進行で次の召喚が出来るまである場所を守って欲しい。」
影縛ノ巫「その場所は?」
「俺が今転生して働いてるところだ。」