現代の影   作:ただの片栗粉

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増える考え事

すいせい「んで?マリンとご飯行ったと?」

 

「は、はい...」

 

今俺は、すいせいさんに何故か正座させられている。一昨日すいせいさんはマリンさんとテトリスコラボをした際にマリンさんから俺とご飯に行ったと聞いたらしい。

 

すいせい「まぁ、百歩譲ってさっき言ってた、護衛で行くなら?だったら良いんだけどさ、一緒にご飯を食べたの???」

 

「まぁ、その場のノリと言いますか...。」

 

すいせい「というか天津さんそういうキャラだっけ...?」

 

「あの時はマリンさんに押されてそのまま行きましたよ。」

 

すいせい「ふーん...じゃあさ、私とも行ってくれる?」

 

「……え?」

 

すいせいさんは腕を組んで、じっと俺を見つめている。

 

すいせい「マリンとはご飯に行って、私はダメってこと?」

 

「いや、そういうわけでは……。」

 

すいせい「じゃあ、決まり! 今度一緒に行こ!」

 

「え、えぇ……。」

 

俺の返事を聞いたすいせいさんは満足げに頷いた。

 

すいせい「天津さん、結構こういうの断らないよね。」

 

「……断る理由がなかったので。」

 

すいせい「へぇ~。じゃあ、私が『デートしよ!』って言ったらどうするの?」

 

「……それは、また別の話ですね。」

 

すいせい「なんだ、つまんないの。」

 

すいせいさんは冗談めかして言いながら、俺の正座を解放してくれた。

 

すいせい「じゃ、決まりね! どこ行こっかな~。」

 

「……すいせいさんが行きたいところでいいですよ。」

 

すいせい「おっ、優しいじゃん。天津さん、意外と女子の扱い上手いんじゃない?」

 

「そんなことはないです。」

 

すいせい「ふふっ、じゃあ期待してるね。」

 

そう言って、すいせいさんは満足そうに去っていった。

 

俺は軽くため息をつきながら立ち上がる。

 

……気づけば、タレントとの関わりがどんどん増えている気がする。

 

フブキ「いや〜良いものを見させてもらいましたよ!」

 

ミオ「天津さん、大変そうだね?」

 

「いや...まぁ出会って即正座でしたから...」

 

ミオ「あはは...でも入社してきた頃より丸くなってる気がするからそのまま色んなホロメンと関わりなよ。」

 

「そんなに尖ってましたか...?」

 

フブキ「結構冷めたさありましたよ?」

 

「そんなつもりはなかったんですが……。」

 

フブキさんとミオさんは顔を見合わせて、クスクスと笑う。

 

ミオ「でもさ、最近はすいちゃんとかマリンちゃんとも仲良さそうだし、ホロメンとの距離が縮まってる感じするよ?」

 

フブキ「うんうん。最初はどこか壁を感じたけど、今はもう普通に馴染んでるよね。」

 

「……自分ではあまり意識してませんでしたが、そう見えるなら良かったです。」

 

そう言うと、フブキさんがニヤリと笑った。

 

フブキ「じゃあ、せっかくだし、今度みんなでご飯行こうよ! 天津さんも来るでしょ?」

 

「え? いや、自分なんかが行っても……。」

 

ミオ「もうそういう遠慮するのやめなよ。ホロメンの中でも天津さんのこと気に入ってる子多いし、私たちも普通に仲良くしたいんだからさ。」

 

「……そう言われると、断る理由はないですね。」

 

フブキ「おっ、いい返事! じゃあ企画しよっか!」

 

ミオ「楽しみだね~。」

 

二人はワクワクしながら話し合い始めた。

 

なんだかんだで、俺はホロライブの中にすっかり溶け込んでいるらしい。

 


 

デスクで作業していると俺の影から巫が現れてきた。

 

影縛ノ巫「我が主、ご報告が。」

 

「待った、その前に今の気持ち的に我が主と呼ばれるとむず痒いんだ...」

 

影縛ノ巫「では、天津様でよろしいでしょうか。」

 

「んー、まぁそれでいいよ。それで、報告とは?」

 

影縛ノ巫「ここから南西に10キロ程の所にエリートオークとその他が現れたので、一部私が対処したのと、私の情報が正しければ天津様が管理しているタレント、2期生"紫咲シオン"が対応していました。」

 

「シオンさんが!?」

 

ホロライブのタレントで、2期生の一人として活動している紫咲シオンさん、あの人も能力持ちで魔法が使えるらしい。実際に使ってるのは見た事なかったが、エリートオーク達を倒す程の力がある事は知らなかった。

 

「......ありがとう、引き続きよろしく。」

 

影縛ノ巫「はい。では...」

 

そのまま巫は俺の影に潜り込んで行った。そして俺はシオンさんのマネージャーに確認を取り、実際に戦っていたのはシオンさんということが判明した。

 

スバル「あ、天津さん?」

 

「スバルさん、どうかしましたか?」

 

スバル「いや、なんか難しい顔してたからさー。悩み事でもある?」

 

「ああ、ちょっと確認したいことがあったので……。」

 

スバル「ふーん? なんか天津さんがそんな顔してると、また何か事件があったのかって勘ぐっちゃうんだけど?」

 

「……まぁ、大きな事件じゃないですけど、少し気になることがあって。」

 

スバル「気になること?」

 

スバルさんが俺の向かい側のデスクに腕を組んで座り、話を促してきた。

 

「シオンさんのことです。」

 

スバル「シオンの?」

 

「はい。彼女がエリートオークと戦っていたみたいなんです。」

 

スバル「えっ、マジで? あいつそんなヤバいのと戦えるほど強かったっけ……?」

 

「自分も初めて知りました。魔法が使えることは知っていましたが、エリートオーク相手に戦えるほどとは……。」

 

スバル「うーん……シオンってさ、あんまり自分のこと話さないし、そういう力があるってのも黙ってたんじゃね?」

 

「……確かに、それはありそうですね。」

 

シオンさんは普段ツンツンしているが、意外と負けず嫌いなところがある。自分から「戦えます!」と大っぴらに言うようなタイプではないだろう。

 

スバル「でもさ、シオンが戦えたんなら、逆に安心じゃね? 天津さんの手が回らないときに、ホロメンで対応できる人がいるってことでしょ?」

 

「……まあ、そうですね。とはいえ、あまりタレントに戦闘を任せるのは気が引けます。」

 

スバル「まー、それは天津さんの立場的にはそうかもな。でもシオン自身が『やる』って思って戦ったんなら、それを無理に止めるのも違うんじゃね?」

 

スバルさんの言葉に、俺は少し考える。

 

確かに、ホロメンの安全を守るのは俺の仕事だ。しかし、それぞれが持っている力を活かして、自らの意志で動くことを制限するのも違う気がする。

 

「……そうですね。シオンさんの意志も尊重しつつ、できるだけ安全に戦えるように考えます。」

 

スバル「おっ、珍しく天津さんが素直になった!」

 

「最初から素直ですよ。」

 

スバル「うそつけ、前より表情柔らかくなったし、ホロメンと関わるのにも慣れてきたでしょ?」

 

「……それは、まぁ……。」

 

スバル「いいことだと思うけどなー。」

 

スバルさんはそう言って立ち上がり、俺の肩を軽く叩いた。

 

スバル「じゃ、そろそろ収録行くわ。天津さんも、あんまり根詰めすぎんなよ?」

 

「ありがとうございます。行ってらっしゃい。」

 

スバルさんがスタジオへ向かうのを見送り、俺は少しだけ肩の力を抜いた。

 

シオンさんの戦闘力のこと、ホロメンとの関わり方のこと……考えることは尽きないが、少しずつでも前に進めていくしかない。

 

「……さて、俺も仕事に戻るか。」

 

そう呟きながら、俺は再びデスクに向き直った。

 

スバル「あ、後さっき見た黒い着物の人の事は何も言わない方がいい?」

 

「......今は言わないでください。」

 

スバル「りょうか〜い」

 

...やはり人目がある場所で呼ぶのはもうやめておこう。

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