現代の影   作:ただの片栗粉

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再会

オフィスの空調が静かに動き、微かに書類をめくる音が響く。

 

俺はデスクに座りながら、パソコンの画面を眺めていた。配信のスケジュール管理、企画の調整、タレントのサポート。やるべきことは山ほどある。

 

いろは「天津殿、一昨日の配信、なかなか盛り上がったでごさるな!」

 

隣の席でいろはさんが笑顔で話しかけてくる。俺は軽く頷いた。

 

「まぁ、影の能力を見せることになるとは思いませんでしたけどね。」

 

いろは「影の力……やっぱり普通の人間には持ち得ない能力でごさるよな。」

 

俺は少しだけ表情を引き締める。いろはさんは俺の能力に疑問を抱きつつも、それ以上詮索しないようにしてくれているのがわかる。でも、確実に俺の正体に近づこうとしている。

 

そんな時、オフィスの扉がノックされ、のどかさんが顔を覗かせた。

 

のどか「天津さん、今お時間よろしいですか?」

 

「どうかしましたか?」

 

のどか「応接室に、お会いしたいという方がいらしています。」

 

「俺に……?」

 

オフィスで誰かが俺に直接会いに来ることなんて滅多にない。俺は一瞬戸惑ったが、のどかさんの表情が真剣だったので、立ち上がることにした。

 

「いろはさん、ちょっと行ってきます。」

 

いろは「うむ、気をつけるでごさるよ。」

 

俺はのどかさんと共に廊下を歩き、応接室へと向かう。

 


 

扉を開けると、そこには見覚えのない男が座っていた。

 

黒いスーツに身を包み、落ち着いた様子で俺を待っている。

 

男の視線が俺に向くと、ゆっくりと微笑んだ。

 

???「……懐かしいですね。」

 

「……?」

 

俺は眉をひそめる。

 

どこかで会ったことがあるような、しかし思い出せない。いや、そもそもこの男の顔にはまったく見覚えがない。

 

だが――胸の奥がざわついた。

 

男は俺が対面に座るのを待ち、ゆっくりと言葉を続ける。

 

???「驚きましたよ。まさか、あなたが今もこの世界にいるとは。」

 

「……何の話ですか?」

 

男の視線は深く、鋭い。まるで俺の内側を見透かすようだった。

 

???「高田影道。」

 

その名前を聞いた瞬間、全身が凍りついた。

 

「っ……!」

 

息を呑む。

 

この男は――俺の"前世"を知っている。

 

「……お前、何者だ。」

 

男は静かに目を細めた。

 

正「私は天川正。あなたの弟子だった者です。」

 

弟子。

 

その単語が、過去の記憶を引きずり出す。

 

影を使う俺の元に集った者たち。その中で、特に優秀だった男のひとり――天川正。

 

だが、彼とは決別した。俺の信念とは違う道を進み、やがて敵として刃を交えた。

 

「……お前、生まれ変わったのか。」

 

正「ええ。そして、あなたも同じく転生している。」

 

俺は無意識のうちに拳を握りしめていた。

 

正「一昨日見かけた配信はびっくりしましたよ、嫌な貴方が生きてる事を知るのは。」

 

敵だった男が、今こうして目の前にいる。

 

「何の目的でここに?」

 

天川正は微笑みながら、懐から一枚の札を取り出した。

 

正「ただの挨拶ですよ。そして、再会の証を。」

 

次の瞬間、その札が俺に向かって飛んできた。

 

正「――呪言『封』。」

 

ピシャッ!!

 

札が俺の手に張り付いた瞬間、全身が重くなった。

 

「っ……!」

 

影が、動かない。

 

「……何をした?」

 

正「私の能力、『呪言』。この札には"封"の呪いを込めてあります。」

 

天川正は立ち上がり、ゆっくりと俺を見下ろした。

 

正「しばらくの間、あなたの影の能力は使えません。」

 

「っ……くそっ……!」

 

札は手の甲の中に入って模様が浮かんできた。

 

天川正は満足げに微笑むと、一歩後ずさった。

 

正「では、また会いましょう。」

 

その言葉を残し、天川正の姿はふっと消えた。

 

「……っ!」

 

俺は立ち尽くし、手の甲に出来た模様を睨みつけるしかなかった。

 

敵が現れた。

 

応接室からの帰り道、俺の足取りは重かった。

 

天川正――俺のかつての弟子、そして敵。

 

転生者として再び現れた彼は、"呪言"の能力を持ち、俺の影を封じた。

 

今、俺の能力は完全に使えない。

 

不安と焦燥が胸を締めつける。影がない俺は、ただの人間に過ぎないのだから。

 

だが、考え込んでいる暇はない。とにかく状況を整理し、どうにか対策を考えなければならない。

 

オフィスに戻ると、のどかさんといろはさんが俺の様子を見て顔を上げた。

 

のどか「天津さん、どうでしたか?」

 

いろは「なんだか顔色が悪いでごさるが、大丈夫でごさるか?」

 

俺は軽く頷き、椅子に腰を下ろした。

 

「……少し厄介なことになりました。」

 

のどか「何があったんですか?」

 

「応接室にいた男は、俺のことをよく知っている相手でした。そして……俺の能力を封じられました。」

 

いろは「封じられた……!? どういうことでごさるか!?」

 

のどか「まさか……相手も何か特別な力を持っていたんですか?」

 

俺は少し考えた後、慎重に言葉を選ぶ。

 

「……そういうことになります。彼は"呪言"の能力を持っていて、俺の体に呪いの札を貼りつけて、貼り付けた場所札を埋め込み模様だけ浮かび上がらせて、影の能力を封じました。」

 

俺は手の甲を見せて模様を見せる。

 

のどか「これが……呪いの札の効果……?」

 

いろは「まるで陰陽術の封印みたいでごさるな……!」

 

「影もまったく動かない。」

 

のどか「それって……つまり天津さんは今、戦えないってことですか?」

 

「……そうなります。」

 

のどかさんは顔を曇らせ、いろはさんも腕を組んで考え込む。

 

いろは「うーむ……何か解除する方法はないでごさるか?」

 

「それを探さないといけない。だけど、呪言について俺はほとんど知らないし、手がかりもない。」

 

のどか「となると……誰かに相談するしかないですね。」

 

いろは「陰陽術に詳しい人とかなら、何かわかるかもしれないでごさるな……。」

 

「……でも、そんな人に心当たりはない。」

 

のどか「それに、天津さんの能力が封じられていることをあまり広めたくないですよね。」

 

「そうですね。下手に騒ぎを大きくすると、相手にこちらの情報を与えることになりかねない。」

 

俺は腕を組み、ため息をつく。

 

影を封じられた今、俺は自分の身を守る術を失ったも同然だ。

 

「……とにかく、情報を集めよう。」

 

のどか「わかりました。私も調べてみます。」

 

いろは「自分も手伝うでごさる!」

 

「お願いします。」

 

あいつの能力が俺が1番分かってた。そのはずなのに隙を見せてしまった。

 

のどか「もう一度方法を考えてみましょう。」

 

「可能性があるなら、この封印の仕組みを解析する、呪言に対抗出来る能力者を探す、呪言の能力者本人の弱点を探す、それか本人を真っ向から倒す、後は俺自身がどうにかするからですね。」

 

巫も呪言の1種の能力者だから能力の反発で封印を消す事は出来るかもしれないが能力自体を封印されると元も子もない。

 

いろは「うーん...解析と言ったらうちのこよちゃんがいるでござるよ?」

 

のどか「でも実験で成功してたことありましたか...?」

 

「それは候補のひとつに入れましょう。後はここに対抗出来る人が居るかどうか。」

 

のどかさん「うーん...シオンさんの魔法でどうにかできませんかね?」

 

「使える魔法によっては呪言には対抗できそうですね...」

 

いろは「思ったでござる、今モンスタースタンピードも近い中強い天津さんの能力が封印されるとなると不味いのでは...?」

 

「それはそうですね、今すぐ対応しないと大変なことになりますが、最悪能力持ちのタレントが前線に出ないといけないです。」

 

のどか「.......天津さんは今どうしたいですか?」

 

「話せる人には話しておきたいです。それと俺を狙ってる訳で、上と話したいです。」

 

のどか「分かりました。私が上に報告してくるので天津さんは今やりたいことをやってください。」

 

のどかさんがオフィスを出ていき、俺は椅子の背にもたれながら、机の上に手を組んで考え込む。

 

天川正が俺の前に現れた理由。

奴は俺の影能力を封じた上で、何かを企んでいるのは明らかだった。

 

封印されてから、影を操る感覚が完全に消えたわけではない。

だが、まるで鍵のかかった箱の中に閉じ込められているような感覚だ。

封印を解かない限り、俺はただの人間として戦わなければならない。

 

「......とにかく、話せる人には話しておくか。」

 

椅子から立ち上がると、いろはさんが少し不安そうに俺を見上げた。

 

いろは「天津殿、本当に大丈夫でござるか?」

 

「まぁ、大丈夫ではないですけど、動かないわけにはいきませんから。」

 

軽く笑ってみせるが、いろはの表情は晴れない。

 

いろは「何かあったらすぐに言ってください。風真もできることを探してみるでござる。」

 

「助かります。」

 

いろはさんに軽く頭を下げ、俺は社内のタレントが集まりそうな場所を探して歩き始めた。

 

社内のリラックススペースに足を運ぶと、フブキさんがソファに座り、スマホをいじっていた。

俺の姿を見るなり、パタリと画面を伏せ、明るい声で話しかけてくる。

 

フブキ「おや、天津さん!何かお困りですか?」

 

「フブキさん、少しお時間よろしいですか?」

 

フブキ「お、真面目な顔してるじゃん。いいよー、聞かせて?」

 

俺は軽く周囲を見回してから、椅子に腰掛け、小声で話し始めた。

 

「実は、少し厄介なことになりまして……」

 

簡単に封印のことを説明すると、フブキさんは真剣な表情で頷いた。

 

フブキ「え...?封印された...?」

 

「はい。正直、厳しい状況です。」

 

フブキ「解除方法は考えてるの?」

 

「何人かに相談しましたが、まだ決定的な方法は見つかっていません。」

 

フブキさんは腕を組み、しばらく考え込んだ後、ポンと手を叩いた。

 

フブキ「シオンちゃんに聞いてみるのはアリかもね!」

 

「のどかさんも言っていました。」

 

フブキ「うん、シオンちゃんの魔法なら、呪言みたいなものを解除できる可能性はあるかも。」

 

「となると、まずはシオンさんと話すべきですね。」

 

フブキ「そうなるね!じゃ、白上が連絡しておくよ!」

 

フブキさんはスマホを取り出し、シオンさんにメッセージを送る。

 

「ありがたいです。」

 

フブキ「まぁまぁ、お礼は封印解けた後に聞くよ!」

 

フブキさんはニヤリと笑い、俺は小さく息をつく。

 


フブキさんの連絡を受けたシオンさんは、オフィスの会議室に俺を呼び出した。

ドアを開けると、シオンさんが腕を組みながら待っていた。

 

シオン「有名人のアンタが封印されるなんて、ほんとに間抜けじゃん。」

 

「……返す言葉もありません。」

 

シオンさんはため息をつきながら、俺の腕をじっと見つめる。

 

シオン「なるほど、確かに封印が施されてるわね。これはただの魔法じゃなくて、"呪い"に近いかも。」

 

「呪言……ですよね。」

 

シオン「呪言……ねぇ。そもそも、それを扱う相手ってどんなヤツなの?」

 

「俺の……因縁のある相手です。」

 

シオン「ふーん……」

 

シオンさんは少し考え込むと、ポケットから魔法陣の描かれた紙を取り出した。

 

「試しに、この魔法陣で術式の一部を解析してみるわ。」

 

「お願いします。」

 

シオンさんは床に魔法陣を広げ、俺の封印された腕の上に手をかざす。

すると、魔法陣が淡い紫色の光を放ち、札に浮かぶ模様がわずかに反応した。

 

シオン「んー……やっぱり、これはシオンの魔法とは系統が違うね。」

 

「そうですか……」

 

シオン「あー...わかんない!!!」

 

シオンさんは頭を掻いた。

 

シオン「呪言ってやつ魔法ってよりか、みこちの巫女とか陰陽師の方だね」

 

「確かにそうですね」

 

シオン「正直、腕を切り落とすとかしか出てこないや」

 

「....。」

 

シオン「ごめんごめん、でもこの力は強力なのは分かるよ」

 

「切り落とすのは最終手段にしますよ。」

 

シオン「なんか分かったらまた呼ぶよ。」

 


 

シオンさんとの話を終え、オフィスに戻ると、のどかさんがちょうど戻ってきた。

 

のどか「天津さん、上に報告してきました。」

 

「何か言われましたか?」

 

のどか「上も状況を把握したいとのことで、後で正式に話をする場を設けるそうです。」

 

「分かりました。」

 

のどか「それと……恐らく反応的には天津さんは在宅勤務になるかと思います。」

 

「まぁ、そうですね……」

 

のどかさんの表情はどこか険しい。

 

のどか「天津さん……呪言の人は、まだ近くにいると思いますか?」

 

「……あいつはそう簡単には引かないでしょう。」

 

のどか「なら、早めに対処しないといけませんね。」

 

「そうですね。」

 

俺は封印された手を見つめながら、ゆっくりと拳を握る。

封印を解かない限り、俺は影を使えないまま、戦いに挑むことになる。

 

しかし、まだ終わりではない。

方法はある。

必ず、突破口を見つけてやる。

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