現代の影   作:ただの片栗粉

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ストック消費してる中で力を入れて書いたら6000文字になってました。


非日常

翌日、谷郷社長自ら話をしに来てくれた。結果は在宅勤務でしばらく様子を見るとの事だ。

 

「逆に非日常って感じだな。」

 

いつものオフィスだと人も居たりしていつも賑やかだ。それとは違い自分の家は静かで違和感がある。影が使えなくなってからか、異様に仕事に身が入らない。

 

「とりあえず、早めに終わらせれるものだけ終わらせるか。」

 

俺はノートPCを開き、今日のタスクを確認する。メールの返信、資料作成、進行中の案件のチェック……普段なら手際よく片付ける内容だが、今はやけに集中できない。

 

影を操れないという違和感が、頭の片隅にずっとこびりついている。まるで利き手を縛られたまま細かい作業をしようとしているような感覚だ。

 

「……まぁ、やるしかないか。」

 

無理やり意識を仕事に向け、手を動かす。文字を打ち込み、資料をまとめ、報告書を整理する。だが、どこか違和感が消えない。

 

それに──

 

「静かすぎる。」

 

いつもならオフィスの喧騒や、いろはやのどかさんの声が聞こえてくる。だが、今はただ自分のキーボードを叩く音と、遠くで鳴る時計の秒針の音だけだ。

 

仕事を進めているうちに、スマホが小さく震えた。

 

画面を見ると、すいせいさんからのメッセージだった。

 

すいせい『在宅勤務だって?しばらく寂しくなるね~』

すいせい『でも今日さ、私休みなんだよね』

 

そうなのか、数少ない休みだからしっかりと休んで欲しい。。

 

すいせい『だから今から天津さんの家行くね』

 

『いやいや、せっかくの休みですし...』

 

すいせい『行くね?』

 

『分かりました....』

 

そう返信すると、すいせいさんはすぐにスタンプを送ってきた。

 

「……マジかよ。」

 

ひとまず、仕事に集中しよう。少しでも進めておけば、何か動きがあったときすぐ対応できる。

そう思い直し、俺は再び画面に向き直った。

 

数十分後、インターホンが鳴った。

 

すいせい「おじゃましまーす。」

 

玄関を開けると、すいせいさんが軽いバッグを肩にかけて立っていた。

 

「本当に来たんですね。」

 

すいせい「そりゃ行くって言ったら行くよ。ほら、さっさと上がるね。」

 

すいせいさんは遠慮のない様子で部屋に入ると、ソファにどっかりと腰を下ろした。

 

すいせい「で、仕事してたの?」

 

「まぁ、一応は。でも集中できなくて。」

 

すいせい「そりゃそうだよねー。影使えないの、めっちゃストレスじゃない?」

 

「正直、かなり。」

 

すいせい「だよね。天津さんって、影ありきで動いてるし。」

 

俺は黙って頷いた。すいせいさんはテーブルの上に視線を落としながら、少し考え込むような表情を見せる。

 

すいせい「……で、何か進展あった?」

 

「シオンさんが解析してくれてるのと、呪言に対抗できる人を探しています。」

 

すいせい「ふーん。でも、天津さん自身はどう思ってるの?」

 

「どうって?」

 

すいせい「いや、天津さんがどうしたいかってこと。」

 

俺は一瞬、答えに詰まった。

 

「封印を解く方法を探すしかないですね。」

 

すいせい「……そっか。でもさ、天津さんって自力で解決するタイプじゃん?」

 

「それは、まぁ。」

 

すいせい「なら、今回も自分でどうにかしようとは思わないの?」

 

「それができるなら、もうやってますよ。」

 

すいせい「そっか。でもさ、天津さんは絶対に諦める人じゃないでしょ。」

 

すいせいさんはそう言って、軽く笑う。

 

「……まぁ、そうですね。」

 

すいせい「じゃあ、どうにかしようよ。」

 

すいせいさんの言葉はシンプルだったが、妙に説得力があった。

 

「……そうですね。」

 

すいせい「よし、じゃあまずは息抜き!天津さん、ゲームしよ。」

 

「ゲーム?」

 

すいせい「そう!考えすぎても仕方ないし、気分転換大事!」

 

そう言って、すいせいさんは持ってきたバッグからコントローラーを取り出した。

 

「まさか、持参してきたんですか?」

 

すいせい「もちろん!今日は天津さんを元気づけるために来たんだから!」

 

そう言って笑うすいせいさんの姿を見て、少しだけ気が楽になった気がした。

 

俺は一度深く息を吐いたあと、苦笑しながらすいせいさんの差し出したコントローラーを受け取った。

 

「……まぁ、気分転換も大事ですね。」

 

すいせい「そうそう!じゃあ、天津さんが最近やってるゲーム、教えてよ。」

 

「最近はあまりできてなかったんですが……アクション系なら多少は。」

 

すいせい「いいね!じゃあ対戦しよ!」

 

すいせいさんはすぐにゲーム機を起動し、俺が普段遊んでいた格闘ゲームを選んだ。

 

「これ、すいせいさんやったことあるんですか?」

 

すいせい「んー、ちょっとだけ。でも天津さん、今影使えないんだから反射神経鈍ってるでしょ?つまり私にも勝てるチャンスがあるってこと!」

 

「……すごい自信ですね。」

 

すいせい「もちろん!私、ゲームには本気だから!」

 

すいせいさんはやる気満々の表情でキャラクターを選んだ。俺も適当にキャラを選び、試合が始まる。

 

──結果。

 

「……強すぎませんか?」

 

すいせい「ふふん、天津さんの動き、ちょっと鈍ってるね~。」

 

「……これは認めざるを得ないですね。」

 

すいせいさんは嬉しそうに笑っている。

 

すいせい「もう一回やる?」

 

「もちろん。」

 

それからしばらく、俺たちは対戦を繰り返した。すいせいさんのプレイスタイルは大胆で攻撃的。だが、それだけではなく、相手の動きを読む勘も鋭い。

 

「……すいせいさん、ゲームになると別人みたいですね。」

 

すいせい「それ、よく言われる!」

 

俺は苦笑しながら、再びコントローラーを握り直した。

 

数十分ほどゲームを続けたあと、すいせいさんがふとコントローラーを置いた。

 

すいせい「天津さん、ちょっとは気分転換になった?」

 

「……そうですね。少しだけですが、頭がスッキリしました。」

 

すいせい「よしよし!じゃあ、ここからは真面目な話。」

 

そう言って、すいせいさんは俺の方を真っ直ぐ見つめる。

 

すいせい「天津さん、影が使えない今、何が一番の問題だと思う?」

 

「……戦えないことですね。」

 

すいせい「うん。でもさ、それって本当に天津さんの一番の強み?」

 

「……どういう意味ですか?」

 

すいせい「私が思う天津さんの強みって、影の能力じゃないんだよね。」

 

すいせいさんは真剣な表情で続ける。

 

すいせい「天津さんって、いつも周りをよく見てるし、困ってる人がいたら動くじゃん?だから、影の能力がなくても、何かしらの方法でちゃんと切り抜けるんじゃないかなって思うんだよね。」

 

「……。」

 

すいせい「今は能力が封印されてる。でも、それをどうやって乗り越えるかを考えるのも天津さんらしさじゃない?」

 

俺はすいせいさんの言葉を噛みしめるように考えた。

 

影がない今、どう動くか。

 

「……なるほど。」

 

すいせい「天津さんは、影が使えないからって弱くなったわけじゃない。だから、影がなくてもどうにかできる道を探してみてもいいんじゃない?」

 

俺は少し考え、頷いた。

 

「……ありがとうございます、すいせいさん。」

 

すいせい「どういたしまして!」

 

すいせいさんは満足げに微笑んだ。

 

そして俺は、自分にできることをもう一度整理し始めた。

 

すいせい「後、今日泊まってくね?」

 

「……は?」

 

思わず聞き返した。

 

「いやいや、すいせいさん、冗談ですよね?」

 

すいせい「冗談じゃないよ。だって天津さん、一人だと考えすぎてまた変な方向に行きそうじゃん?」

 

「変な方向って……そんなことは」

 

すいせい「あるね。」

 

即答された。

 

「……そんなに信用ないんですか?」

 

すいせい「信用してるから泊まるんだよ?」

 

「いや、意味が分かりませんが……」

 

すいせい「それにさ、天津さん、今影使えないでしょ?もしまた敵が来たらどうするの?」

 

「……まあ、それは……」

 

すいせい「ほらね。だったら私がいる方が安心じゃない?」

 

そう言われると、完全に否定はできない。事実、俺が今無防備な状態なのは間違いないし、天川正が再び現れる可能性もゼロではない。

 

「……それはそうですが、さすがに泊まるのは問題が……」

 

すいせい「私がいいって言ってるんだからいいの!」

 

「いやいやいや……」

 

すいせい「それとも何?私と一緒にいるのそんなに嫌?」

 

「そういうことではなく!」

 

すいせい「じゃあ決まり!」

 

俺が反論する間もなく、すいせいさんは自分のスマホを取り出し、誰かにメッセージを送り始めた。

 

「何をしてるんですか?」

 

すいせい「家に泊まるって連絡。ほら、一応報告しといた方がいいでしょ?」

 

「……はぁ。」

 

もう何を言っても無駄な気がして、俺は肩を落とした。

 

「じゃあ、布団を準備しますね。」

 

すいせい「え?布団?天津さんのベッド大きいでしょ?一緒に寝ればよくない?」

 

「いや、それはさすがに……!」

 

すいせい「冗談だよ、冗談!」

 

そう言って、すいせいさんは楽しそうに笑った。

 

「……本当にもう。」

 

俺はため息をつきながらも、すいせいさんが少しでも気を紛らわせようとしてくれているのを感じていた。

 

「じゃあ、泊まるなら適当にくつろいでてください。」

 

すいせい「はいはーい。」

 

そうして、俺の家にすいせいさんが泊まるという、予想外の1日が始まった。

 


 

──その夜。

 

リビングのソファに座り、すいせいさんはスマホをいじりながらくつろいでいた。俺はキッチンで飲み物を用意し、ひと息つく。

 

「コーヒー、いります?」

 

すいせい「んー、いる!」

 

カップを手渡すと、すいせいさんはひと口飲んで「うん、おいしい」と頷いた。俺もカップを持ち、ソファの向かいに座る。

 

「……なんか、妙に自然ですね。」

 

すいせい「そう?まあ、天津さんとこうやってゆっくり話すこともそんなにないし、たまにはいいんじゃない?」

 

「たまに、ですか。」

 

すいせい「うん。普段、天津さんって仕事のときは真面目モードだからさ。もっと気楽に話したらいいのにって思うことあるよ。」

 

「気楽に、ですか……。」

 

確かに、俺は仕事中はいつも気を張っている。特にホロライブの仕事は特殊な環境で、ミスが許されない場面も多い。自然と慎重になるのは仕方ないと思っていたが……すいせいさんからすると、俺は少し堅すぎるのかもしれない。

 

「でも、気楽にって言っても難しいですよ。やっぱり仕事ですし。」

 

すいせい「そりゃ仕事のときはそうかもしれないけど、オフのときまでそれだと疲れちゃうでしょ?」

 

「……まあ、そうですね。」

 

すいせい「それに今、天津さんは能力封印されてるじゃん?」

 

「はい。」

 

すいせい「そういうときこそ、力を抜くのも大事だよ。ずっと張り詰めてたら、余計に疲れる。」

 

「……そういうものですかね。」

 

俺がそう言うと、すいせいさんはにやりと笑った。

 

すいせい「ほらほら、もっとリラックスしなよ。今日は私がいるんだから、天津さんが何かあっても大丈夫だよ!」

 

「……頼もしいですね。」

 

すいせい「ふふん♪ もっと頼っていいよ!」

 

そう言って、すいせいさんは胸を張った。その姿を見て、少しだけ肩の力が抜けた気がした。

 

「じゃあ、せっかくなので、何かゲームでもします?」

 

すいせい「いいね!何する?」

 

「ボードゲームとか、トランプとかもありますよ。」

 

すいせい「おー、いいね!じゃあ、負けたら罰ゲーム付きで!」

 

「……嫌な予感しかしませんが。」

 

すいせい「大丈夫大丈夫、そんなにひどい罰ゲームにはしないから!」

 

そうして、俺とすいせいさんの夜は、思いのほか穏やかに過ぎていった。

 

──封印のことや、天川正のことを考えれば、状況は決して楽観できるものではない。だが、それでもこの一瞬だけは、少しだけ普通の日常を楽しんでもいいのかもしれない。

 

そんなことを思いながら、俺はすいせいさんとゲームを始めた。

 

ゲームが始まってしばらく。

すいせいさんはカードをシャッフルしながら、満足げに笑った。

 

すいせい「天津さん、今のところ私の三連勝だけど?」

 

「……強すぎません?」

 

すいせい「ふっふっふ、これが私の実力よ!」

 

確かに、すいせいさんはゲームが強いとは聞いていたが、ここまでとは。しかも、罰ゲーム付きである。

 

すいせい「さて、今回の罰ゲームは……どうしよっかな~?」

 

「さっきから思ってたんですけど、すいせいさんが勝つ前提で罰ゲームを決めてますよね?」

 

すいせい「当たり前じゃん!」

 

堂々と言われると、何も言い返せない。

 

すいせいさんは少し考えるふりをしてから、ニヤリと笑った。

 

彗星「よし、決めた。天津さん、私に敬語禁止!」

 

「……え?」

 

すいせい「だから、私に敬語使わないこと!タメ口ね!」

 

「いや、それは……。」

 

すいせい「ダメー!敬語使ったら追加で罰ゲームだからね!」

 

「そんなルール聞いてないんですけど……。」

 

すいせい「今決めた!」

 

こういう時のすいせいさんは本当に容赦がない。

 

すいせい「ほらほら、早く試しに言ってみなよ!」

 

「えっと……すいせい、さん?」

 

すいせい「はい、敬語アウトー!」

 

「えっ!?」

 

すいせい「『さん』つけるのは別にいいけど、今の言い方はアウト!」

 

「理不尽じゃないですか……。」

 

すいせい「はい、もう一回!」

 

仕方なく、俺は口を開いた。

 

「……すいせい。」

 

すいせい「うんうん、いい感じじゃん!」

 

嬉しそうに頷くすいせいさんに、俺は軽くため息をつく。

 

「なんでこんな罰ゲームなんですか……?」

 

すいせい「だって天津さん、いつも堅いんだもん。こういう時くらいフランクにしよ?」

 

「いや、俺は普段からこれで……。」

 

すいせい「まぁまぁ、今日はこれで行こうよ!ほら、次のゲームしよ!」

 

すいせいさんは楽しそうにカードを配り始めた。

 

──その後も俺の連敗は続き、結局すいせいさんに終始からかわれっぱなしだった。

 


 

ゲームがひと段落し、俺たちはソファに座ってくつろいでいた。

 

「……なんか、こうしてのんびりするのも久しぶりだな。」

 

すいせい「天津さん、普段仕事ばっかりだもんね。」

 

「まぁ、そういう仕事だし。」

 

すいせい「でもさー、ずっと忙しいのって大変じゃない?」

 

「まぁ、大変じゃないって言ったら嘘になるけど……。」

 

そう言いながら、ふと考える。

 

影を封印され、戦えない今。仕事に集中するしかないと思っていたけど、こうして気を抜いている時間も、案外悪くないのかもしれない。

 

すいせい「天津さんってさ、趣味とかないの?」

 

「趣味……。」

 

すいせい「ゲームはそんなにやらないよね?」

 

「まぁ、下手だし。」

 

すいせい「じゃあさ、なんかやってみたいこととかないの?」

 

「やってみたいこと……。」

 

改めて考えてみると、俺はこの転生後、ほとんど仕事と影の力のことばかり考えていた気がする。

 

「そうですね……料理とか?」

 

すいせい「へぇー、意外!」

 

「いや、意外って……。」

 

すいせい「だって天津さん、料理できるの?」

 

「最低限くらいは。」

 

すいせい「じゃあさ、今度一緒に料理しよ!」

 

「えっ?」

 

すいせい「私、天津さんの手料理食べてみたい!」

 

「……俺の料理でいいなら、別にいいけど。」

 

すいせい「やった!じゃあ、今度材料買いに行こ!」

 

すいせいさんは満足そうに頷いた。

 

すいせい「天津さんってさ、意外と家庭的?」

 

「いや、そんなことは……。」

 

すいせい「ふふっ、なんかちょっと親近感湧くなー。」

 

そんなことを話しながら、俺たちは深夜までダラダラと過ごした。

──こうして、俺の在宅勤務初日の夜は、思っていた以上に騒がしく、そして、不思議と心地よいものになった。




今日仮免試験あって自動車運転は合格したので後は筆記だけなので頑張って物語も書きますね
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