現代の影   作:ただの片栗粉

28 / 33
災厄登場

数日後——

 

空は不気味なほど静まり返り、湿った風が街の外れを吹き抜けていた。

異常な雰囲気が漂い、まるで世界そのものが息を潜めているかのようだった。

 

そして——

 

「……来た。」

 

街の外れにぽっかりと空間の歪みが生じ、紫色のゲートが出現した。

その歪みの奥から、次々と異形のモンスターたちが這い出てくる。

 

前脚を大地に突き立てるたびに振動を生む巨体の獣、

無数の刃を持つ触手を蠢かせる異形の影、

鋭い牙を持ち、腐食する霧をまとう狼のような魔物——

 

俺は剣を握りしめ、一歩前に出た。

 

シオン「……本当にやるの?」

 

「はい。ここで“負ける”ことで、奴をおびき寄せるんです。」

 

シオン「……分かった。でも無茶しないでよ。」

 

「もちろんです。」

 

俺は深く息を吸い込み、モンスターたちへ向かって駆け出した。

 

激戦が始まる。

 

最初の獣が飛びかかってくる。

 

その爪が地面をえぐる寸前、俺はギリギリでかわし、剣を振るった。

鋭い一閃が獣の体を斬り裂き、黒い血が飛び散る。

 

背後から迫る触手を避けつつ、二体目の魔物に踏み込む。

剣を逆手に持ち、刃を突き立てる。

だが、わざと浅く斬りつけ、即死させない程度のダメージに抑える。

 

(ここからは……押される。)

 

三体目の魔物が口を開き、毒霧を吐き出した。

避けるのではなく、俺はあえてその場に踏みとどまった。

 

「……ぐっ……!」

 

毒霧が体を蝕み、感覚が鈍くなる。

 

その隙を突いて、獣の鋭い爪が俺の腹を斬り裂いた。

血が飛び散り、視界が一瞬揺らぐ。

 

(……まだだ。)

 

もう一撃、もう一撃と攻撃を受け、俺はゆっくりと地面に膝をついた。

 

モンスターたちは俺を完全に追い詰め、最後の一撃を加えようとする。

 

(……来い。)

 

俺は倒れたまま、視線だけを遠くに向ける。

 

そして——

 

正「やはり、師匠はそうするか。」

 

待ち望んだ声が響いた。

空気が一瞬にして変わる。

 

どこからともなく黒い霧が立ち込め、空間が軋むような音を立てた。

 

モンスターたちが突然動きを止め、怯えたように後ずさる。

 

まるで、この場の“主”が現れたことを察したかのように。

 

「——天川正。」

 

ゆっくりと霧が晴れ、そこに現れたのは、漆黒の衣をまとった男。

 

鋭い目で俺を見下ろし、冷たく笑う。

 

正「貴様が“負ける”など、不自然すぎる。」

 

「……気づいていましたか。」

 

天川正「当然だ。貴様がわざと敗北する理由は、俺をおびき寄せるため。それならば……」

 

彼はゆっくりと剣を抜き、刃を俺の喉元に突きつけた。

 

天川正「ここで終わらせるまでだ。」

 

刃が振り下ろされる——その瞬間。

 

シオン「開いて!ドリームウォーク!!!」

 

シオンの叫びとともに、禁書の力が解放された。

 

魔法陣が宙に浮かび、黒い靄のような魔力が広がる。

 

天川正の剣が一瞬、ピタリと止まる。

 

正「……それは……」

 

シオン「これ以上近づいたら、本当に発動するからね?」

 

天川正はシオンを見つめたまま、一歩引いた。

 

(今しかない——!)

 

俺は瞬時に剣を握り直し、天川正との距離を一気に取る。

 

正「……ほう、逃げるか。」

 

「逃げる訳が無い。」

 

俺は構えを取り、改めて天川正と対峙する。

 

「ここからが本番。」

 

静寂の中、俺と天川正の視線が交錯する。

 

次の瞬間、戦いが始まった。

刃と刃が交差し、鋭い衝撃音が夜の空気に響き渡る。

 

正の剣は重く、鋭い。

一撃でもまともに受ければ、即座に終わるほどの威力だ。

 

「……ッ!」

 

俺は間一髪で剣を弾き、後方へ跳躍する。

 

正「思ったよりも粘るな。」

 

「……当然だろ。」

 

天川正はわずかに目を細め、再び剣を振るった。

 

一閃——かすっただけで、服が裂ける。

直後、蹴りを繰り出してくるが、俺はそれを腕で防ぐ。

 

だが、そのままの勢いで吹き飛ばされた。

 

(……強い。)

 

一瞬でも気を抜けば、そのまま終わる。

だが、奴は明らかに余裕を持って動いている。

 

(まだ、何かを企んでいる——)

 

そう思った瞬間。

 

天川正が、唐突に後方へ跳び退った。

 

「……?」

 

正「そろそろ潮時か。」

 

「……逃げるのか?」

 

正「逃げる?違うな。」

 

彼はゆっくりと剣を収め、不敵に笑った。

 

正「俺の目的は、ここで貴様を倒すことではない。」

 

シオン「……どういうこと?」

 

天川正は視線を俺たちから外し、遠くの街を見下ろす。

 

正「貴様らはまだ気づいていないのか?」

 

シオン「何を……?」

 

正「この街は、もう終わる。」

 

その言葉と同時に——

 

街の上空に、巨大な亀裂が生じた。

 

紫色の光が空を裂き、ゆっくりと大きく広がっていく。

そこから現れたのは、無数のモンスターの影。

 

シオン「……まさか……!」

 

正「師匠——今起きてるモンスタースタンピードの主だ。」

 

「……!」

 

正「この街は、ここで終わる。」

 

彼は微笑みながら、一歩ずつ後退していく。

 

正「せいぜい、足掻くがいい。」

 

その言葉を最後に、天川正の姿は霧のように消えた。

 

残されたのは、街の上空に広がる異常な亀裂と、今にも降り注がんとする魔物の群れ——

 

「……ッ、シオンさん!」

 

シオン「分かってる!やるしかない!」




ちょっと文字数少なくて申し訳ないです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。