現代の影   作:ただの片栗粉

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モンスタースタンピード④

影が地を這い、俺の足元で蠢いている。

 

正「ほう……随分と雰囲気が変わりましたね。」

 

「……今の俺は、ただの俺じゃない。影道としての力、そして悪魔の力もある。」

 

影が形を変え、俺の腕に纏わりつく。悪魔の気配が混ざり合い、ただの影ではない、異質な力へと変貌していく。

 

「さっきまでとは違うぞ。」

 

正「……面白い。」

 

俺は地を蹴り、一瞬で間合いを詰める。

 

「——影魔轟裂*1

 

影と悪魔の力を掛け合わせた一撃が、正の前に炸裂した。

 

ズガァァン!!

 

衝撃波が地面を砕き、黒い閃光があたりを包む。

 

正は紙一重で飛び退いたが、左腕を覆っていた呪符の防御が剥がれた。

 

正「なるほど……影と悪魔の力をここまで融合させるとは。」

 

「まだまだいくぜ。」

 

影が俺の背後でうねり、触手のように広がる。

 

「悪魔の"力"ってのは、ただの力じゃねえんだよ。」

 

俺は影を前方に放つ。すると、影は無数の爪のように形を変え、一斉に正へと襲いかかる。

 

正「——呪言"火壁"」

 

正の前に炎の壁が生まれ、影の爪が触れた瞬間に爆ぜた。

 

しかし——

 

「甘いな。」

 

影が炎を巻き込み、漆黒の炎となって正を囲う。

 

正「……ほう。」

 

「——影炎獄*2

 

影と炎の力が融合し、正の足元から黒い火柱が噴き上がる。

 

正は飛び上がるが、その軌道を読んで俺は影を剣に変えて突き出した。

 

ザンッ!!

 

剣が正の胴をかすめ、呪符の防御がさらに剥がれる。

 

正「クク……これは驚いた。」

 

「お前の呪言、そろそろ底が見えてきたんじゃねえか?」

 

正は一歩退く。

 

しかし——

 

正「いいえ、むしろこれからが本番です。」

 

「……?」

 

正の足元から、黒い紋様が浮かび上がる。

 

正「——呪言"開門"」

 

地面が揺れ、巨大な魔法陣が展開される。

 

正「モンスタースタンピード、ここで解き放ちましょうか。」

 

「……なに?」

 

正「あなたが力を見せてくれたおかげで、私も決意できました。この街はもう不要です。」

 

「おい……まさか……!」

 

正「さあ、宴の始まりです。」

 

魔法陣が輝き、次元の裂け目が広がっていく。

 

「——っ!!」

 

次元の裂け目が完全に開き、そこから無数のモンスターが這い出してくる。異形の影がビルの壁をよじ登り、地面を揺らしながらのし歩く獣型の怪物、空中を旋回する鳥型の魔物——その数、軽く百を超える。

 

正「さて、思う存分暴れてください。」

 

「ふざけるな……!」

 

俺は影を剣の形に変え、前に出ようとした。

 

——しかし、その瞬間、空間が揺れた。

 

シオン「天津さん!!」

 

星の光が地面に降り立ち、そこからシオン、シオン?、マリン?が現れる。

 

シオン?「おーおー、大変なことになってるじゃない!」

 

マリン?「モンスター大量発生!? これってまさかヤバイやつでは!?」

 

シオン「とりあえず、こっちはシオン達で何とかする!」

 

「助かる……!」

 

いろはも駆けつけ、バトルアックスを担いで構える。

 

いろは「天津殿、すいせい先輩を頼みます!風真はこのモンスター達を優先して倒すでござる!」

 

「分かった、頼む!」

 

俺はすいせいを見る。

 

彼女は息を荒げながら立っていた。戦いの最中、星の力を覚醒させたばかりの彼女は、まだその力を制御できていない。

 

「すいせい……ここから離れろ。」

 

すいせい「で、でも……!」

 

「今のお前じゃ、また戦いの途中で動けなくなる。ここはシオン達に任せて、まずは力の使い方を学べ。」

 

すいせい「っ……分かった……」

 

彼女は悔しそうな表情を浮かべながらも、俺の言葉に従って後退していく。

 

俺は改めて、目の前の天川正に向き直った。

 

「さて……お前との決着、そろそろつけようぜ。」

 

正「フフ……まだ余裕があるようですね。では、どこまで持つか、見せてもらいましょうか。」

 

影と悪魔の力が腕に纏わりつく。

 

「この街は……誰にも壊させねぇよ。」

 

正「……ほう?」

 

天川正がこちらを見据え、わずかに口元を歪める。まるで、すべてを見透かしているかのような不気味な笑み。

 

「本体の俺を狙っても無駄だ。」

 

俺は影を操り、事務所に眠る本体ごと術を取り込んだ。闇の波が地面から湧き上がり、まるで空間そのものを飲み込むように本体の俺を包み込む。

 

正「……なるほど。影の力を利用して、本体を"影の領域"に隠したわけですか。」

 

「そういうことだ。」

 

正「ならば——貫くまで、ですね。」

 

彼は袖から何枚もの呪符を取り出し、指で素早く印を結ぶ。

 

正「呪言《滅穿》。」

 

次の瞬間、呪符が一斉に弾け、鋭い光を帯びた矢が無数に生まれる。それはまるで光の雨のように降り注ぎ——

 

「甘いな。」

 

俺は影を伸ばし、悪魔の力と融合させた。影が漆黒の翼となり、全ての矢を弾き返す。

 

「この影の中にいる限り、俺はお前の攻撃を受けることはない。」

 

正「……随分と厄介な力ですね。」

 

「お前の術ごと"喰った"からな。お前が狙うべき本体はもう、お前の術が届かない場所にいる。」

 

正はわずかに目を細めた。

 

正「では、その影ごと消せば良いだけのこと。」

 

再び呪符を取り出し、今度は別の印を結ぶ。

 

正「呪言《封獄》。」

 

地面が軋み、影の中にまで異質な力が侵食してくる。まるで影そのものを縛り、閉じ込めようとするかのような術。

 

「……そう簡単にはいかねぇよ。」

 

俺は悪魔の力をさらに解放し、影と混ぜ合わせる。すると影が形を変え、まるで巨大な顎のようなものが形成される。

 

「影喰い——"無尽黒牢"!!」

 

影の顎が一気に正へと襲いかかる。

 

正「フ……これは……!」

 

彼は咄嗟に後退するが、その瞬間、俺は影の中から飛び出し、正の懐に入り込んだ。

 

「——喰らえ!!」

 

黒く変化した拳が正を捉え——

拳が天川正の顔面を捉えた瞬間、衝撃が周囲に波紋のように広がる。しかし——

 

正「……遅いですね。」

 

ゴッ!

 

俺の拳が貫いたはずの天川正が、まるで影のように揺らぎ、霧散した。

 

「っ、分身か……!」

 

正「影を扱うのはあなたばかりではないですよ。」

 

いつの間にか俺の背後に回り込んでいた天川正が、呪符を数枚宙に放る。

 

正「呪言《封獄・影縫い》。」

 

呪符が俺の影へと突き刺さり、鋭い鎖のように絡みつく。影を支配する力が強制的に封じられ、俺の動きが鈍くなる。

 

「クソッ……!」

 

正「あなたの影の力は厄介ですが、所詮は影。"光"の前では無力ですよ。」

 

正が手をかざすと、呪符から眩い光が放たれ、俺の影をかき消そうとする。影が弱まると同時に、俺の体に重圧がかかる。

 

(このままじゃ……!)

 

俺は悪魔の力をさらに引き出し、影を"喰わせる"ことで打開を図る。

 

「——"闇喰い"!!」

 

影の中から黒い触手のようなものが生まれ、絡みついた呪符を無理やり喰らい尽くす。

 

正「ほう……」

 

正がわずかに驚いた表情を浮かべたその瞬間——

 

ドォンッ!!

 

事務所周辺に大量のモンスターが召喚され、街のあちこちで咆哮が響き渡る。

 

「っ……これは……」

 

正「私の手の者たちが"門"を開きました。さぁ、これであなた方は私と戦っている暇などなくなる。」

 

視界の端で、シオンたちが集合し、それぞれの武器を構えるのが見えた。

 

シオン「そっちは任せたよ!シオンたちはこのモンスターを片付ける!」

 

いろはも既に動き出し、次々とモンスターを斬り伏せている。

 

いろは「天津殿!拙者たちがここは食い止める!」

 

すいせいはまだ息が整わない様子で立っていたが、俺は彼女を見て指示を出した。

 

「すいせいさん、あなたは下がってください!」

 

すいせい「で、でも……!」

 

「まだ力を使いこなせていないあなたがここにいても危険です!今は休んでください!」

 

すいせいは悔しそうに唇を噛みながらも、一歩後退する。

 

正「さて……これで邪魔は入りませんね。」

 

正が再び呪符を構える。

 

「……あぁ、やっと邪魔が入らずにお前を潰せるってことだ。」

 

俺は影を広げ、悪魔の力をさらに引き出しながら、決着をつける覚悟を固める。

*1
えいまごうれつ

*2
えいえんごく




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