現代の影   作:ただの片栗粉

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事件の兆し

 

触手が暴れまわる中、俺はすいせいさんに声をかける。

 

「すいせいさん、ここは危険です。早く避難してください。」

 

すいせいは一瞬迷ったようだったが、俺の真剣な表情を見て覚悟を決めたのか、頷いて一歩後退した。

 

すいせい「分かった。でも、気をつけて。」

 

彼女を確認すると同時に、俺は全神経を目の前の怪物に集中させた。

 

(あいつをここで止めなきゃ、もっと被害が広がる。)

 

触手が俺に向かって突き出される。俺は影踏みを発動し、一瞬でその動きを回避した。影をまとった体は音もなく移動し、怪物の背後を取る。

 

「影縛り!」

 

声と共に、俺の影が細長く伸び、怪物の根元に巻き付いていく。触手の動きが鈍り、勢いを失った。

 

(よし、このまま封じ込める!)

 

だが、その時、怪物の体からさらに強い光が放たれ、影縛りの拘束が弾かれる。衝撃で俺は数メートル後退し、地面に膝をついた。

 

「ちっ…厄介な奴だ。」

 

その時、不意に背後から聞き覚えのある声がした。

 

「天津さん!?大丈夫ですか!!」

 

振り返ると、そこにはさくらみこさんと白上フブキさんが立っていた。みこは心配そうな顔をして俺を見ており、フブキさんは鋭い目つきで怪物を見据えている。

 

「お二人とも、どうしてここに?」

 

フブキ「みこさんと買い物帰りに近くを通りかかったら、やばそうな雰囲気を感じたからね。案の定、天津くんが戦ってるみたいだし、手伝うよ。」

 

みこ「なんかすっごい大きい怪物だね~。天津さん、一人で大丈夫?」

 

「はい、大丈夫なのでお2人は避難してください。」

 

2人はすいせいさんのいる方へ避難して行った。

 

俺は再び影を呼び寄せ、怪物に向かって突進し触手の動きを牽制する。その隙に俺は怪物の足元に影を伸ばした。

 

「影縛り!」

 

影は再び怪物の動きを封じ込めるように絡みつき、今回はそのまま力を込めて動きを完全に止めた。

 

「これで終わりだ――影穿ち!」

 

影が槍のように形を変え、怪物の中心に突き刺さる。その瞬間、怪物は断末魔のような声を上げ、その体は徐々に崩れ、やがて光となって消えていった。

 

静寂が訪れる。俺は肩で息をしながら、戦闘が終わったことを実感する。

 

みこ「天津さん、かっこよかったね~!」

 

フブキ「さすがホロライブのスタッフ、ただ者じゃないですね〜。」

 

「いえいえ、そんなことはないです。」

 

すいせいもようやく駆け寄ってきて、ほっとした表情を見せた。

 

すいせい「天津さん、無事でよかった。」

 

彼女の言葉に苦笑しつつ、俺は目の前の地面を見つめる。

 

(あの怪物、どこから来たんだ?そして、これはただの偶然なのか?)

 


 

フブキ「にしてもうちの社員が能力持ちとは...こりゃ運がありますなぁ...」

 

すいせい「確かになんで言わなかったの?」

 

「この能力自体あんまいい思い出ないので言ってなかったですね。」

 

そうそう、この世界で儂みたいな能力を持ってる人物はそこそこ居るらしいが強さは個人差があるらしい。

 

フブキ「まぁ、確かに変な目で見られることもあるよね。でも、天津さんの能力は頼もしいね!あんな触手怪物をあっさり倒すなんて、普通じゃできないよ。」

 

すいせい「そうそう。むしろ隠してたことがもったいないくらい。もっと自慢していいんじゃない?」

 

「いやいや、自慢なんてとんでもないですよ。そもそも、この力を使うことで周囲に迷惑をかけることもあるんです。それがずっと引っかかってて。」

 

俺は少し視線を落として、足元に影が揺れるのを見つめた。江戸の時代、影の力を持つ俺は“異質”として恐れられた。それが原因で多くの争いが生まれ、命を落とす結果に繋がったことを、今でも忘れられない。

 

みこ「でもみこは今日の戦い見てたら分かるよ。天津さんの力は、人を守るために使える力だって。」

 

すいせい「みこちの言う通りだよ。だってさ、もし天津さんがいなかったら、今日あの怪物にみんなやられてたと思うし。」

 

すいせいさんは真剣な顔で俺を見てくる。その目には、俺を信じる強い意志が宿っていた。

 

「…ありがとうございます。そう言っていただけると少し気が楽になります。」

 

フブキ「うんうん!これからもホロライブの頼れるスタッフとして、そして秘密兵器として期待してるから!」

 

俺は苦笑しながら頭をかいた。

 

「秘密兵器は勘弁してくださいよ…。でも、できる限り皆さんの力になれるようにします。」

 

すいせい「じゃあ、これからも何かあったら私たちに頼ってよ。天津さん一人で全部抱え込む必要なんてないんだから。」

 

彼女の言葉は、まるで昔の俺に向けられているような気がした。一人で抱え込みすぎて、大切なものを失った過去。俺は今度こそ、それを繰り返さないようにしなければならない。

 

会話がひと段落すると、みこさんは別の収録へと向かった、フブキさんがポケットからスマホを取り出し、画面を操作しながらふとつぶやいた。

 

フブキ「そういえば、さっきの怪物のこと、マネージャーに報告しといたほうがいいかもしれないね。ホロライブ周辺でこんなことが起きるなんて、ただ事じゃないですよ。」

 

すいせい「確かに…でも、なんて説明するの?“触手怪物が出たから倒しました”なんて言ったら信じてもらえないよね?」

 

フブキ「確かに。それに、“社員が影の能力で倒しました”って言ったら、さらに混乱しそう。」

 

「…俺が直接報告しておきます。あまり驚かれないように、うまく説明してみますよ。」

 

すいせい「頼もしいね。でも、報告の前に、ちゃんとご飯行こうよ。さすがに疲れたでしょ?」

 

「あ、そうですね。お二人もお腹空いてるでしょうし。」

 

フブキ「よーし、じゃあ気を取り直して美味しいもの食べに行こう!」

 

すいせい「うん。じゃあ天津さん、何かおすすめのお店ある?」

 

「近くに美味しい焼き肉のお店があります。そちらでよければ。」

 

すいせい「いいね!焼き肉!行こう行こう!」

 

フブキ「よし、決まり!さっきの怪物の話はひとまず置いといて、美味しいお肉で元気出そう!」

 

三人で焼き肉屋に向かう道中、俺の頭の片隅には、先ほどの怪物がどこから来たのかという疑問がずっと引っかかっていた。しかし今は、一緒に笑い合うこの時間を大切にしたいと思った。

 

(ホロライブのスタッフとして、彼女たちの力になれるなら、俺の力も役に立つはずだ。)

 

俺は心の中でそう決意しながら、二人の楽しそうな笑い声に耳を傾けた。

 

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