OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜 作:名無しのモンスター
突然だが、実はこの俺・王辻 翼はこの世界の人間ではないし、既に一度死んだはずの存在である。
何故こんな事を言っているんだって思う奴も大勢いるだろうが、俺自身もどうしてこうなったのかを理解できずに今を生きている。
俺は元々遊戯王OCG──この世界でいうデュエルモンスターズが大好きなただの一般社会人だった。だけど家近くの遊戯王OCGの大会終わりの帰り道で、劣化して落ちてきた建物の看板に潰されそうな老人を見かけ、咄嗟に庇ってそこから死んだはずだったんだ。
そして目が覚めた時には真っ暗な空間の周りにLED電球が浮遊している謎の場所にいて、そして目の前に○ラゴン○ールでいうポ○ンガそっくりの緑色のガタイの凄い龍が現れて、こう言ってきたんだ。
───死なせてしまったお詫びに、転生先を教える上に願いを3つ叶えてやろう。
マジのポルン○か? と思ったなあの時。いやどっちかというとセ〇編終盤以降の〇龍なんじゃないかな? 〇ルンガは専用の言語じゃないと呼ぶこと自体無理だし。
実はあの龍、俺が庇った神様だったんだ。下界の調査をするために月一でランダムに人間に変身し、各国を周っていっていたそう。その時に庇った俺を死なせてしまったお詫びとして、漫画やアニメの平行世界で第二の人生を歩ませることにしたとか。
その時は半信半疑だったけど、こんなチャンスは二度とないと感じたから『じゃあお言葉に甘えて』ってことで現在に至るわけよ。
で、転生先はここ『遊☆戯☆王GX』となった。遊戯王アニメシリーズの人気主人公の一人・遊城 十代のいる世界というか時代のヤツ。シンクロ以降の特別な召喚法が出ない世代ね。アレ一応何話か観たけど、少ない話数観ただけでも神作だと感じたなー。
そして叶えてくれた願いなんだけど……
1つ目は『その世界に合わせた俺の知ってるテーマのカードやデッキを複数持てるようにしてほしい』。
2つ目は『デュエルモンスターズの精霊が見えるようにして仲良くできるようにしてほしい』。
3つ目は『他のデュエリストが使うカードは全てOCG基準でアニメオリカ無しかつ俺の世界のリミットレギュレーションに合わせ、ルールもマスタールール2020にしてほしい』。
これらになったんだ。
『必ずデュエルに勝利できるようにしてほしい』とか『原作と絡む時に毎回ハッピーエンドにしてほしい』とかも考えてはいたけど、前者はただ勝ってばかりはつまらないデュエルになると思うし、そもそも龍の神様曰く叶えられる願いの範囲は限られているとか。
ちなみに3つ目の願いの件なんだけど、転生先の世界線を合わせた状態で俺を転生させないとその世界が崩壊しかねないとのことで、『一部の禁止カードは健在するしルールも変えられないし、アニメにも出てなくOCGにもないオリカは出るよ』って忠告を受けたんだ。
ルールも変わらなかったせいで、先攻ソリティアとか先攻ワンキルも多かった事を思い返してその可能性が高くなったのではないかという考えが頭から離れなくなってアレルギーになっちゃって……ついでに守備表示の通常召喚に対するアレルギーにも……
世界線に合わせたオリカ……いつかOCGでも実装させそうだな。
【ロイド】モンスターはもっと増えてもいい‼︎ 【ス○ードロイド】なんかに負けるな‼︎
………………コホンッ、失礼。取り乱した。
それと1つ目の願いの件。よく考えてみれば複数のカードやデッキを、いつ・どこで・どのタイミングで手に入るのかってのを考えずに願ってしまって、その時はどうしようって思ってたんだけど……
───転生先で海馬コーポレーション主催のカードデザイン募集イベントがあるので、そこで使いたいのを文字でもいいから全て書け。後は実際にカードになって手元に届くように完全補助を行う。
と、龍の神様がそう言っていたため、転生してしばらくしてテーマ名とか色々書いた結果、今のように俺が出してあげてる【ドラゴンメイド】などのカードが、1ヶ月を待たずに郵送で届いた。願いの加護どうなってんの。
その時、ちょっと冒険心でOCGに無さそうな自分のオリジナルはカード化されるのかってのを検証してみたんだ。その時に書いたのが黄色い鳥で、オリジナルとまではいかなくても【
『ヲー、いつになれば卓上デュエルではなくソリッドビジョンでデュエルに参加できるのだ?』
「気軽に出たらもうデュエルどころじゃなくなると思いますので、結構ヤバいシリアスイベントまで我慢してください……」
まさか三幻神の最高位である【ラーの翼神竜】様が、OCGテキストそのままかつOCGのサポートカードと共に3枚フルで誕生するとは思わんやん?
いやね、一応ラー様とは差別化できるようなデザインにはしといたんだよ? 嘴は小さくて可愛らしい感じにしたし、腕は書いてないし、脚はラー様よりも結構細いし。何より緑色の模様を付け足してるんだよ。
なのにどうしてこうなった。俺は既にもう誰の手にも入らない存在となった原作のとは違うだろうとはいえ、【ラーの翼神竜】関連がほしいとは微塵も願ってないというのに。神様俺の思考読んだ? 読んでないよね?
いやラー様もめっちゃ強いんだけどね? 実装当時みたいに強くないままだったら様付けしてないけど。でも原作世界で使いたいとは言ってない。使ったら色々と問題が起きる。
一応龍の神様からの贈り物として、精霊としての力を抑えたりそれが見える人でも見えないようにと細工されてあるペンダントのおかげで、ラー様が精霊の見える奴に見えなくなったらしいけどな……
『確かにヲーはこの世界を楽しみたいとは言った。だがデュエルに参加できず、只々汝がヲー無しでのソリッドビジョン使用のデュエルをしているのを観戦するだけ……という生殺しを受けるつもりはないのだ‼︎ それなのに汝は……‼︎』
「この世界にも別人とはいえ貴方がいるんですよ? しかも崩れ落ちた王の墓と一緒に永遠の眠りについてるわけですし。なのに貴方が出てしまうと、お偉いさんとか取材陣とかによる尋問を俺が受ける羽目になって、結果次第ではもうデュエルできなくなる可能性だって……」
『ウッ……‼︎ そ、そんなのヲーの能力でサイズを小さく……』
「そういう問題じゃない」
ちなみにさっきの会話でみんな察してるとは思うが、ラー様は自分の事を『ヲー』と呼ぶ(サポートカードをもらうまでに付けられた不名誉な呼ばれ方)。わんぱく頑固って感じの性格。ソリッドビジョンによるデュエルに出たがる。本当にこの人(?)は神様か? と目を疑う程に威厳が無いのだ。
このあまりの無邪気さ、この世界の【ラーの翼神竜】が見たらどう思うでしょう。惨めに思われるだろうなぁ……
とにかく、昼にやったアカデミアの実技試験でも出さなかったんだし、なんとしてもラー様のご機嫌を取らなければ。
「でもその代わり、原作キャラがいなく本気で勝たないといけないデュエルとか、シリアスイベントで俺もデュエルしなくちゃいけない場面とかでは、積極的に貴方の入ったデッキを使いますから。それで許してもらえますか?」
貴重なデュエルに参加させられる場面を作ることを約束すると宣言すれば、ラー様は落ち着きを取り戻してくれた。今回も上手くいきそう……か?
『………………今すぐにすごく美味いスイーツをくれるって条件も付け足すのならば、許す』
よし‼︎ 今回はスイーツで許してくれるようだ‼︎ ラー様は地球の食べ物がめっちゃ好きなグルメ家だからな、食べ物関連の条件を出してくるだろうとは思ってた‼︎
「ティルル‼︎ ラー様に渡すスイーツの用意だ‼︎ パルラはラー様がストレス無くスイーツを食えるようこの部屋の模様替えを頼む‼︎」
『か、かしこまりました‼︎』
『りょーかい‼︎』
早速ティルルとパルラに、ラー様が安心してスイーツタイムを楽しめるように準備をしろと指示を出す。ティルルはお菓子作りが得意だからな、彼女のお菓子に満足しないわけがない!!
そして10分もしない内に俺の部屋の一部はスウィートルームとなり、そこでティルルの出した手作りマフィンやドーナツを、ラー様が上品ながらも超ご機嫌に平らげていく。1皿に各20個ぐらいはあっただろうそれらを5皿もだ。デカい=大食いって法則に基づいてやがる……
ってなことを考えラー様の様子を見ながら、俺はもう一つのペンダントのケースを開いた。こいつの事も定期的にケースから出してあげないとストレスを溜めさせちゃうしね。
『相変わらず神に対してすごい世話を焼いてるね君は。ご機嫌取りを日常茶飯事の如くやっていってさ』
「お前は他人事みたいに言いながら笑ってんじゃねェよ……【ユベル】」
解放させて早々悪戯気味に嫌味を言ってきたのは、時期的に地球に来るのが早すぎたカードの精霊。
悪魔の翼に黒と灰色の体、女性的な顔立ちに不気味なオッドアイ、そして第3の目が額に開いている……人間なのか悪魔なのか、そもそも左右非対称な胸部のせいで性別がどちらなのかすら不明な存在。
こいつは【ユベル】。アニメ3期に登場する大ボスデュエリスト兼モンスター。主人公に対し異常な程の愛情と独占欲を持ち、主人公を自分のものにするためなら世界すら滅ぼそうともするくそやばメンヘラヤンデレである。まぁ訳あって和解して仲間になるんだけどね。
そんなラスボス系から主人公の頼もしい味方になるこのヤベー奴、何故か俺の元にやってきた。原作通り的となる流れに行かず、主人公のところに戻るわけでもなく、俺のところに来るってどういうことだよ。って今でも思うんだよなぁこれが。
だが少なくとも、こいつが主人公の元に戻らなかったのには訳があった。
「ったく……お前はそろそろ元々の持ち主のところに戻ってもいいんじゃないのか? お前を打ち上げた人と俺達のおかげでヤバい成分は抜けたんだしさ」
『
実はユベル、原作とは異なり歪み過ぎた性格が増えるどころか抜けてしまったかわりに、そうなるまでの記憶を完全に忘れてしまったようだ。
幼少期の主人公のデュエル相手である友人や近所のお兄さんを、主人公に勝って悲しませたりしたことで昏睡状態に陥れるなど『主人公を守る』というとはかけ離れた過剰な保護を行っていたことがある。
そのため、主人公はカードデザイン募集イベントにて子供の頃から憧れる理想のヒーローのアイデアをデザインに起こすと共に、宇宙のエネルギーをユベルに浴びせ矯正しようと海馬コーポレーションに送付し、ユベルのカードをカプセルに収納し宇宙へ打ち上げてもらったそうな。
そして原作ではヒーローが宇宙の生命を育み守る正しき闇の波動を受けたのに対し、その願いも虚しくユベルのカードは全ての生命を根絶やしにせんとする破滅の光の波動を受けてしまい、歪んだ愛を持ってしまうはず……なのだが。
「未だに信じられねェんだよなぁ……お前のカードが入ったカプセルが俺のアイデアの入ったカプセルにくっついて、正しき闇の波動を受けるようになっただなんてよ……」
『それが君のいう、原作通りってのよりは大分マシになったと思うのだけど』
「その代償がお前の記憶の全消去とかなんだよ。せっかく○○の願い通りの性格になったってのにそりゃあねーだろ」
ん? ちょっと待てよ? 確か破滅の光を受けたユベルはそれを受けている間、苦痛の声を主人公に夢の中に毎晩共有させて魘されるようにしたんだったよな? で、主人公の両親が最新医療技術で主人公のユベルに関する記憶を封印させて、声を届かなくさせたとか……
それと、なんか心の闇を抱えていた頃の、トンデモ事件の一つを起こす悪役を唆すことで利用し、自分の本来の体を取り戻すことを企んでいたような……
これらの問題というか原作設定と展開、ユベルが今の状態になったことでなくなって原作がさらに崩壊したことになるんじゃね? じゃあ3年生編はしばらくの間だけど平和になるんじゃね?
「じゃあ後は記憶さえ戻れば結果オーライか」
『急に何納得してんのさ』
うるせェ。自分の性格をマシにさせてくれた俺のモンスター達のカプセルに感謝することだな。
まぁ何はともあれ、これで俺の3年生生活は比較的平和になった!! やったぜ。後は1年生編と2年生編のラスボスが倒されて、何らかの影響でユベルの記憶が戻るようになることを祈るだけだ!! ってか主人公がそのきっかけを作ってくれることを祈ろう‼︎
俺の遊戯王GX転生生活、順風満帆になーれ!!
『そうなるとは限らないし、代わりに原作と似た出来事が起きるかもしれないのが世界の理なのだが、果たしてどうなるのだろうな。運命とはどのように左右されぬのかは分からぬ』
ラー様、心の中を読まないでくれます? ってか読めるの?
『そのユベルとやらの代わりに、僕が実行してあげるよ。そいつが本来起こそうとした計画を……ね』
この時、俺はまだ知る由もなかった。ラー様の不吉な予感が、予期せぬ方向で当たっていたことに。
その日の夜、ふと見上げた夜空に、赫い仮面らしきものを着けた人が飛んでいたような気がした。
最後に出てくるの一体何ピアの導化何ベルなんだ……