OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜   作:名無しのモンスター

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炎の戦士「他が機械族使いばかりで、俺の居心地が……」

前回の【アドバンスドロー】、【マシンナーズ・フォートレス】の特殊召喚コストの8をそのままフォートレス自身のレベルだと思い込んでた……やっぱりプレミが起きたぜ……


プロデュエリストとのタッグデュエル(後編)

 

 翼と翔のアカデミアタッグ、マリクとキースのプロデュエリストタッグのデュエルは熾烈を極めていた。

 翔のモンスターの唐突な2ドロー連続リクルートからの大幅なサルベージ、キースの展開と破壊の両立した安定感のある無駄のない動き、翼の【炎の剣士】を駆使した戦法、マリクの【マシンナーズ】によるパワー戦法。

 全員が勝利を譲らんとする各々のプレイングをしていく中、翼と翔のタッグが先制ダメージを与えれたものの、マリクとキースのタッグに敗北しかけた状況に遭ってしまった。

 盤面的にも、バトルフェイズに最大3体のモンスターを破壊する【デスペラード・リボルバー・ドラゴン】、墓地に仲間の破壊をトリガーに蘇生して一定の全体破壊も備えている【マシンナーズ・カーネル】があるマリクとキースのタッグが有利となっていた。

 

 そんな危機的状況に陥っている翼と翔を見て、三沢が十代に問いかける。

 

「十代。このデュエル、翼と翔は勝てると思うか? 相手がプロのタッグとはいえ、あの盤面を2人が対処できるかどうか……」

「きっと勝てるさ‼︎ 翔も翼もここまで頑張って準備してきたんだ、努力が報われないわけがないぜ‼︎」

「……フフッ。君ならそう言うだろうな」

 

 翼と翔がこのデュエルに勝てるかどうか。それに対して返した答えはイエスだった。2人との仲が深い十代だからこそなのか、盤面云々関係なく『2人が勝つことを中心に』考えていたようだ。

 単純なのか、それとも心の奥底では確信がついているからなのか、お世辞を言っているように見せてない彼の答えに、三沢は思わず一瞬の笑みを浮かべる。

 そして表情を真剣なものへと戻し、翔の方を見やった。

 

「だが個人的に、俺は特に翔が心配だ。彼のプレイングの問題にもあるが、やはり俺達が見ている状況でのプロの相手というのは、かなりのプレッシャーを受けるはず。何処かでプレイングミスを犯さなければいいのだが……」

 

 三沢は不安で仕方ない様子だった。

 何せ、翔は多数の観客の前でデュエルしている。それも初めてのその状況下でのタッグデュエル、しかも初めてのプロデュエリストが相手となるデュエル。いつものデュエルとは異なった状況下でのデュエルというのは、本来持つべきコンディションを一時的に失いやすい状況なのだ。

 そのような中で、翔は翼のカードを応用できるようにしながら闘えるのだろうか……そんな不安が過ぎる中、十代が再び口を開く。

 

「いいや、翔なら大丈夫さ。カイザーに認められたいと誓っていたんだ。きっと、なんとかなる」

 

 先程と変わらない答えで、まるで翔の本筋を見抜いている──というよりは、見抜こうとしているかのように。

 

「少なくとも俺が見るに、翔は努力家なんだ。一度やろうと決めたらやり遂げようとする……そんな想いが、時々そんな様子を見せる翔をチラリと見ただけの俺にも伝わってきたんだ」

 

 そう呟きながら、緊張気味になるも盤面を凝縮する翔を見て、十代は笑みを溢した。

 

「だからこそ、俺は信じたいんだ。あいつが、翼と一緒に勝利を持って帰ってくれることに」

「……そうか」

 

 兄貴分だからこそ、十代は決めていたのだ。たとえ誰もが翔達の敗北を確信してしまったとしても、弟分である彼の勝利を祈ろう、と。そう語る十代の瞳の色は、言葉通りの想いを持っているからなのか透き通っていた。

 

「頑張れよ、翔」

 

 最後にそう呟いた十代は、翔を見つめながら再び笑みを溢した。

 

 

 

 

 

 

翼&翔

LP:5000

翼の手札:1枚(【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】×1)

翔の手札:8枚(【スチームロイド】×1、【ドリルロイド】×1)

フィールド:

【補給部隊】×1

機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)】×1

 

vs

 

マリク&キース

LP:7300

マリクの手札:3枚(【マシンナーズ・ギアフレーム】×1)

キースの手札:3枚(【モーター・カイザル】×1)

フィールド:

【デスペラード・リボルバー・ドラゴン】ATK:2800

【マシンナーズ・メタルクランチ】ATK:2800

【マシンナーズ・フォートレス】ATK:2500

【モータートークン】ATK:200

【補給部隊】×1

機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)】×1

 

 

 危なかった……一時は負けるかと思ったぜマジで。俺が【補給部隊】で【BK(バーニングナックラー) ベイル】を引かなかったら負けてた。まさか俺の運が悪いせいで負けることになるとは思わなかった……

 

『今回の汝の初期手札はかなり悪かったな。エースモンスターを出せる程の余裕がなかったようだ』

 

 それはその通りですラー様。そいつへと繋げるように枚数調整やお試しドローも兼ねてきたのに、まさか今回に限って初期手札が弱かったなんて……

 

『ただ、あのマリクとキースとかいう男達のデッキとの相性が悪かっただけという可能性も考えられるね。実際、モンスターを全滅させられたんだから』

 

 ユベル……それは俺へのフォローなのか? それとも対戦相手を褒めてるのか? どちらにせよ、なんだか慰められてる気がしない……

 

「ボクのターン、ドロー‼︎」

 

 おっといけね。今は翔のターンだった。頼むぜ翔、今はお前の立ち回りが頼りなんだから……‼︎

 とはいえ、バトルフェイズでコイントスの数だけモンスターを破壊するデスペラードに、破壊をトリガーに蘇生&モンスター複数除去を持つ墓地のカーネル……この2体をどう突破するのか……

 

「速攻魔法【ツインツイスター】を発動‼︎ 手札を1枚伏せ、フィールドの魔法(マジック)(トラップ)カードを2枚まで破壊する‼︎ 破壊するカードは【補給部隊】と【機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)】‼︎ 次のターンへの布石は作らせないっす‼︎」

 

 フィールドに細長い竜巻が2つも発生した。それらはマリクとキースのフィールドへと接近し、【補給部隊】と【機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)】のカードに激突。2枚とも風の暴力でヒビを作らされ、やがてガラスのように割れ竜巻に連れ去られながら消えていった。

 

「やるな……‼︎」

「まだまだ‼︎ 【ツインツイスター】で墓地に送った【シャッフル・リボーン】の効果発動‼︎ このカードを除外し、ボクのフィールドのカードを1枚デッキに戻して1枚ドローするっす‼︎ 【機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)】をデッキに戻し、ドロー‼︎」

 

 竜巻が止んだかと思えば、今度は骨が次々と落ちる音が発生。そして外生地が赤い黒色のマントを着た子供の骸骨が現れ、【機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)】のカードを持ち去って行ってしまった。1枚のカードを翔に手渡しながら。

 しかし、後続へと繋げられるカードを戻してまでドローをするとは、今の手札的にまだあの盤面を突破できないと思ってるのか? そう考えると、翔はとんでもない博打に出たな。エンドフェイズに手札を1枚除外しなくちゃいけなくなったんだから。

 

「これなら……‼︎ 魔法(マジック)カード【ビークロイド・コネクション・ゾーン】を発動‼︎ 手札・フィールドのモンスターで【ビークロイド】融合モンスターを融合召喚する‼︎ 手札の【サブマリンロイド】・【スチームロイド】・【ドリルロイド】で融合する‼︎」

 

 デフォルメされた汽車の機械、3つのドリルを持つ機械、そして上の8割が青色で下の2割が黄色の配色となって目が付いている潜水艦が同時に出現する。3体ともやる気に満ち溢れた瞳をしており、汽笛・ドリル・ファンをいつもよりも活発にさせていた。

 そして彼等の背後に混色となっている渦が現れ、3体はその中へと溶け合い混ざり合うように引き摺り込まれていった。そして一瞬の淡い光がフィールドの一部を飲み込めば、地中からけたましいドリルの音が響き出す。

 

「いでよ、【スーパービークロイド-ジャンボドリル】‼︎」

 

 

【スーパービークロイド-ジャンボドリル】

ATK:3000

DEF:2000

 

 

 地中から突き出て現れたのは、薄紫色・肌色・桃色の3色に分けられている潜水艦の形をした機体に、艦首と人体よりも一回り……否、二回り大きなドリルと鋼色の見えるモグラの手を付けた戦車。

 デフォルメな見た目ながらも豪快に地面の一部を破壊したそのパワーは、正に【スーパービークロイド】と呼ばれる程だ。

 

「それが君のエースモンスターか……」

「どんな効果を持ってるのか知らねェが、俺様のフィールドにはデスペラードがいるし、仮にそいつの効果を突破できたとしても、機械族モンスターを破壊した時点でマリクの【マシンナーズ・カーネル】が出る。そしてそいつの効果で、選んだモンスター次第では他の俺様達のモンスターまでもが道連れにされてしまう代わりに、テメェのそのエースも破壊されるぜ?」

 

 ご丁寧に説明どうも。確かにこのまま攻撃しても、カーネルは蘇生されてしまうな。そしてすぐに翔のモンスターを破壊してくるだろう。けど、そうなる事も踏まえて……

 

「そこら辺の対策も、翼君から教わったから問題ないっす‼︎ 手札の【D.D.クロウ】を捨てて効果発動‼︎ 相手の墓地のカードを1枚除外する‼︎ これで【マシンナーズ・カーネル】は除外させてもらうっす‼︎」

「なっ……」

 

 『キーッ‼︎』という鳥の勇ましい鳴き声が響いてきたかと思えば、中心部に赤いコアらしきものが嵌められているモーターを付けていた黒い鴉が出現した。ってかあの鴉、モーターを付けていたのか。ならイラストに【次元の裂け目】らしきものが開かれていたのも納得だぜ。

 その鴉はマリクのデュエルディスクに急接近し、腕で振り払われる前にカーネルのカードを引っこ抜き、その場から飛び去って行った。去り際に現れた【次元の裂け目】の中に潜りながら。

 

『えらいピンポイントのカードを渡したね。相手の蘇生要因を減らしやすくするために入れたのかい?』

「(モンスター以外も除外できて色々と妨害しやすいって理由もあるけど……まぁ手札誘発という利点も考えれば、そうとも言えるな)」

 

 あのカードを渡す時、ラー様が『墓穴の方を渡せ』だの『イジワル翼ー』だの言ってきたけど、そこら辺は無視しといてやった。だって彼に墓穴を渡したら、さすがに墓穴が強すぎるせいで、【D.D.クロウ】よりも翔が悪い交渉をしたって思われて、ねェ……

 

「クッ……【墓穴の指名者】みたいに効果を無効にできるわけではないとはいえ、蘇生効果が発動される前にカーネルを除外されるなんて……」

「まだっす‼︎ 装備魔法【『焔聖剣-オートクレール』】と【ブレイク・ドロー】を、それぞれ【スーパービークロイドージャンボドリル】に装備‼︎ 【ブレイク・ドロー】は発動した自分の3回目のエンドフェイズ時に破壊されるっす」

 

 ジャンボドリルの頭上に、金色の縁で覆われた紅い片翼のようなガード──鍔を持つ1対の剣と、様々な破損した武器の残骸で組み立てられたかのようなガントレットが浮上してきた。

 それらを見たジャンボドリルは、『え? なんで武器が宙に浮いてんの? 怖っ……』と言っているかのように、それらを凝縮しながらこの怪奇現象に対して恐怖で震えている様子を見せた。

 

「そしてオートクレールの効果‼︎ 自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動‼︎ そのモンスター以外では攻撃できない代わりに、このターンでの2回攻撃を付与させる‼︎ そして発動後、オートクレールは破壊されるっす」

 

 1対の剣──オートクレールが燃え盛る炎に覆われた。そしてその炎はジャンボドリルと移動するように燃え移り、今度は彼の身体を覆い尽くす。それも、身体に焦げ目1つすら付けずにだ。

 自身が纏った炎が全てジャンボドリルに移動したことにより、役目を終えたオートクレールはそのまま光の粒子となって消滅していった。

 自身の身体の変化に気づかず、オートクレールが浮遊するという現象が無くなって安堵した様子を見せるジャンボドリル。しかし、まだガントレット──【ブレイク・ドロー】が未だに浮遊しているのが見えた途端、再び恐怖で震えだした。

 

「翔……オートクレールって、カイザー……お前のお兄さんも十代とのデュエルで使ってたヤツだよな? 彼のデュエルを参考にしたのか?」

「いや違うよ⁉︎ ボクのデッキだと上手く複数のモンスターを戦闘破壊できそうにないと思ったから、このカードを入れて攻めの姿勢を強くしようと思って……」

「そ、そっか……パクったのかと思ってすまんかった……」

「な、なんかボクもごめんね?」

 

 いくら兄弟揃って同じカードを使ったからといって、なんで翔がパクればいいんじゃないかと思ってるんじゃないかと思い込んでしまったのか……翔に申し訳なかったぜ、マジで。

 

「コホンッ……バトルだ‼︎ ボクは【スーパービークロイドージャンボドリル】で【デスペラード・リボルバー・ドラゴン】を攻撃‼︎」

 

 ジャンボドリルのドリルとキャタピラが高速で回転し始める。スピードを上げての高速ドリルによる突貫で、マリクとキースのモンスター達を攻撃するつもりのようだ。最初に狙うのは、当然デスペラード。

 

「おっと? 小僧、もうデスペラードの効果を忘れちまったのか? 忘れたのならもう一度覚えとけよ? マリク‼︎」

「分かっているさ‼︎ 【デスペラード・リボルバー・ドラゴン】の効果発動‼︎ デスペラード・ルーレット‼︎」

 

 当然、それをデスペラードが許すわけがなかった。3つの銃口をジャンボドリルに向け、シリンダーを回転させ始める。次第に3つとも銃口に熱が込められていき、それらでジャンボドリルに向けて狙いを定める。

 

「表、表、表……よし、このターンでは僕も3回ともに表を出すことができた。よって【スーパービークロイドージャンボドリル】を破壊し、カードを1枚ドローさせてもらうよ‼︎」

 

 引き金の引かれる音と同時に、3つの銃口から次々と弾丸が放たれていく。雨霧と化したそれらがジャンボドリルに襲い掛かり、幾度もの爆発させる……

 が。それによって発生した爆煙から、複数もの弾丸の雨を受けたはずのジャンボドリルが、平然とした様子で爆煙を振り払いながらデスペラードに向けて突貫していっていた。

 

「させない‼︎ 【ビークロイド・コネクション・ゾーン】の効果で融合召喚されたモンスターは、魔法(マジック)(トラップ)・効果モンスターの効果によっては破壊されず、効果を無効化されない‼︎ しかもこの効果は永続的に続くっす‼︎」

「な、なんだと⁉︎」

 

 あ、もしかすると【ロイド】が強化されない原因がこれかも。もしも新しい【スーパービークロイド】融合モンスターが出て、そいつがかなりの強力な効果を持っていて、そいつを【ビークロイド・コネクション・ゾーン】で融合召喚したとしたら……

 うん。そう考えると、KONAMIは【ロイド】新規を出すかどうかで、議論し続け悩み続けていることだろうな。うーん、納得しそうでできない……

 

「クソッ……モンスターが1体も破壊されなかったことにより、ドロー効果は行えない……」

「さぁ、攻撃続行だ‼︎」

 

 ジャンボドリルがキャタピラの回転スピードを速め、再び弾丸を発射しようと銃口を構えていたデスペラードの頭部の銃口にドリルを突き刺す。

 その衝撃による圧迫と瞬時の大きな破損の発生により、デスペラードの頭部は爆発を起こしてしまい、そのまま身体全体をも爆発四散していってしまった。

 

「ぐあああっ‼︎」

 

 

マリク&キース

LP:7300 → 7100(3000 = 2800 = 200)

 

 

「ッ……【デスペラード・リボルバー・ドラゴン】には、墓地に送られた場合、コイントスを行う効果を持つレベル7以下のモンスターを1体手札に加えることができる効果があるが、僕のデッキにそのようなモンスターはない……」

「なら【ブレイク・ドロー】の効果発動‼︎ 装備モンスターが戦闘破壊したことにより、カードを1枚ドロー‼︎」

 

 ジャンボドリルの頭上に浮遊しているままのガントレットが、先程の戦闘の勝者を讃えるように光った。その戦闘に勝利した景品だと言わんばかりに1枚のカードを生成し、それが翔の手札へと加わった。

 これを見たジャンボドリルは、なんで戦闘に勝った奴にじゃなくて、そいつを従えている奴に渡すんだよ、と言わんばかりのジト目を浮かべていた。まぁ、不満に感じたんだよな。わかる。

 

「続けて【マシンナーズ・メタルクランチ】を攻撃‼︎」

 

 ならばこれならどうだと、ジャンボドリルは右向け右を行い、今度はメタルクランチへと突っ込んでいく。

 それ八つ当たりじゃね⁉︎ とでも言っているかのように戸惑うメタルクランチが、両腕それぞれの特殊な腕でジャンボドリルの身体を掴もうとするが、勢いを増したジャンボドリルの突貫力に敵わず事故のように吹っ飛ばされ空の彼方へと吹っ飛んでいってしまった。

 キラリンッという音が発生したかと思えば、天井にて左手でサムズアップしているメタルクランチの姿が浮かんでいるかのように見えたのは気のせいだろうか。

 

「これでまた【ブレイク・ドロー】の効果が……‼︎」

 

 

マリク&キース

LP:7100 → 6900(3000 = 2800 = 200)

 

 

「そう‼︎ 【ブレイク・ドロー】の効果でもう1枚ドローっす‼︎」

 

 再びガントレットが光り出し、その中でまた1枚のカードを生成する。今度こそ自分に恩恵が来るのかと期待に胸を膨らませるジャンボドリルだったが、また翔の元に加わったのを見て唖然とした表情を見せる。

 自分の手柄が他人の手柄になってしまうこの理不尽さ、俺にもわかるぞジャンボドリル。この扱いはあまりにも不憫すぎる。

 

「……よし、ボクはカードを2枚伏せてターンエンド‼︎ このエンドフェイズ時、【シャッフル・リボーン】の墓地効果で手札を除外しなくちゃいけないけど、ボクの手札は0のため問題ない‼︎」

 

 よし。厄介な2体のモンスターを攻略した上に、翔が【シャッフル・リボーン】の効果を理解し手札を全て伏せて0枚にしてくれた。良い立ち回りだったぜ翔‼︎

 

「思った通りだぜ‼︎ いいぞ翔ー‼︎」

「まさか本当にこの状況をなんとかしたとは……」

 

 なんか翔を賞賛する声が観客席(?)から聞こえてきたが、悪い事ではないし、デュエルに集中したいから一旦無視しておくか。翔を賞賛……ブフッwww

 

 

翼&翔

LP:5000

翼の手札:1枚(【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】×1)

翔の手札:0枚

フィールド:

【スーパービークロイドージャンボドリル】ATK:3000(装備:【ブレイク・ドロー】×1)

【補給部隊】×1

【炎の剣域】×1

伏せカード×3

 

vs

 

マリク&キース

LP:6900

マリクの手札:3枚(【マシンナーズ・ギアフレーム】×1)

キースの手札:3枚(【モーター・カイザル】×1)

フィールド:

【マシンナーズ・フォートレス】ATK:2500

【モータートークン】ATK:200

 

 

「小僧も中々やるじゃねェか。なら今度は俺様がまた魅せてやるよォ‼︎ ドロー‼︎ 【強欲な壺】を発動‼︎ 2枚ドローだ‼︎」

 

 うわ出た、ノーリスクノーコストの禁止カード。これだからDM〜GX民は。

 

「【モーター・カイザル】の効果発動‼︎ 手札からこいつを見せ、このターンも追加召喚を行うぜ‼︎」

 

 再びエンジンが起動する音が何処から響き渡る。するとそれに続くかのように、獣のけたましい叫び声がエンジン音よりも大きく響き渡り、フィールドに佇んでいるモンスター達の身体を震わせた。

 

「さぁ来い‼︎ 【悪魔獣デビルゾア】‼︎」

 

 

【悪魔獣デビルゾア】

ATK:2600

DEF:1900

 

 

 そうして現れたのは、薄めの青い肌を持つ厳つい顔つきの悪魔。まるで翼でも生やしているかのような大きさを誇る耳を広げており、背中・肩・そして様々な関節部から生やしている角のような鋭利な棘と共に目立たせていた。

 

「ここで機械族じゃないモンスター……ん? アレ⁉︎ ちょ、ちょっと待つっす⁉︎ そ、そのモンスター、よく見たらレベルが7もあるじゃないっすか⁉︎ な、なのに生贄無しで召喚できるなんて……」

「それはこいつの効果によるものさ。【悪魔獣デビルゾア】は相手フィールドにモンスターが存在する場合、それだけで生贄無しで召喚することができるようになるのさ‼︎」

「つまり妥協召喚みたいに元々の攻撃力を下げずに、相手と対峙するように突然の援軍としてリリ……生贄無しで出ることができるってわけだな」

「な、なるほど……」

 

 あのモンスターの効果を俺は既に把握しているため、知らないふりで適当な解釈をして翔を無理矢理納得させとくことにした。なんか難しそうに考えようとしていたのが、彼の苦い表情で伝わっていたもので、つい、な……

 

「【悪魔獣デビルゾア】の効果発動‼︎ こいつは自分メインフェイズに1度だけ、デッキから【メタル化】(トラップ)カードを1枚セットすることができる。サーチじゃなくて、セットだぜ?」

(トラップ)カードをセットする効果だって⁉︎」

「こいつのこの効果により、デッキより【メタル化・強化反射装甲】をセットだ‼︎」

 

 【悪魔獣デビルゾア】が耳から静かな超音波を発生させる。さすればその音に導かれるように、銀色に光り輝く1枚の巨大なカードが光の粒子から生成されていく。そのカードは白い光によってイラストも効果も見えないように覆われており、超音波が鳴り終わったのと同時にその場でパタンと裏向きで置かれた。

 

「さらにこいつも出させてもらうぜ? 【モータートークン】を生贄に捧げ、【モーター・カイザル】を召喚‼︎」

 

 

【モーター・カイザル】

ATK:2000

DEF:1400

 

 

 【モータートークン】を核として、何処からか現れたエメラルドグリーンのパーツが次々と【モータートークン】を覆うように合体していく。そして最後にマイナスネジを1つの頭部として付けて完成されたのが、1体の巨人のロボット。

 下半身に比べて上半身が……というよりは両腕がかなり大きく、鉤爪を強く光らせていた。背中にある煙突らしきものからガスが噴き出ており、それによる熱が発生しているためなのか、全身からは緑色の蒸気を発行生させていた。

 

「また上級モンスターが……‼︎ けど、どれも攻撃力3000のジャンボドリルを倒すには程遠い‼︎ それに【ビークロイド・コネクション・ゾーン】の効果で効果破壊もされないっす‼︎」

「オイオイ、俺様がいつテメェのモンスターを破壊すると言ったんだ? 破壊以外の除去方法ならいくらでもあるんだぜ?」

 

 それはホントにそう。

 昔の遊戯王って、どのようにしてモンスターを戦闘破壊するかと考えがちになるってイメージが強いんだよなァ。それ故なのか、俺も翔がジャンボドリルを戦闘破壊するのではと思ってるんじゃないかって感じてたんだよなァ……

 もちろん、それ以外の方法では除去しちゃいけないorできないというわけではございませんので……

 

魔法(マジック)カード【ブラック・コア】を発動‼︎ 手札を1枚捨てることにより、相手モンスターを1体除外することができる‼︎」

「じょ、除外だって……⁉︎」

「破壊じゃなけりゃ、他の効果を受けきれねェだろ‼︎ よって俺様は【異次元の偵察機】を捨て、【スーパービークロイドージャンボドリル】を除外だ‼︎」

 

 こうなるとはなんとなく想像できた。

 戸惑うのも無理もない。エクストラデッキに戻るのならともかく、除外されたら再利用がかなり困難なものになってしまうからな。

 そんな事を考えていたら、フィールドの中央に黒い雷の巨大な球体が現れる。それはジャンボドリルに目掛けて降下していき、彼を飲み込まんとしていた。

 

「ッ……速攻魔法【融合解除】‼︎ これにより、ジャンボドリルは3体の融合素材モンスターへと分離する‼︎ 3体とも守備表示っす‼︎」

 

 

【スチームロイド】

ATK:1800

DEF:1800

 

【ドリルロイド】

ATK:1600

DEF:1600

 

【サブマリンロイド】

ATK:800

DEF:1800

 

 

 雷の球体が当たる寸前、ジャンボドリルの身体が淡い光に覆われ、3つへと縮小・変形・分離して球体を回避。それは地面に当たった途端に霧散していった。

 そしてジャンボドリルの代わりに現れたのが、タイヤの腕を持つ汽車、3つのドリルを持つ戦車、青と黄色に配色された潜水艦の3体のデフォルメされた機械達。彼等は己の身を犠牲にしても主人の翔を守ろうと決意していたのか、その場に彼を守るように佇んでいた。

 

「ならばバトルに移させてもらうぜ? 【悪魔獣デビルゾア】‼︎ 【モーター・カイザル】‼︎ それと【マシンナーズ・フォートレス】‼︎ 奴のモンスター達を破壊しな‼︎」

「僕のモンスターについで感覚で指示を出すな」

 

 マリクのツッコミを無視するかのように、2人のモンスターが一斉に攻撃を仕掛けていく。

 デビルゾアが飛び掛かってきたのと同時に鉤爪を振り翳したことによって、タイヤの腕をクロスさせてガードの態勢に入った【スチームロイド】を機体ごと切り裂き。

 【モーター・カイザル】が左腕の蒸気の纏った鉤爪で【ドリルロイド】の頭部のドリルを砕き、右腕の鉤爪でクレーターを作らせながら叩きつけ。

 フォートレスが肩の砲台の砲口を、翔に攻撃が当たらないと確信し地面に潜って一瞬の回避を試みようとした【サブマリンロイド】に向け、そこから放った奔流で潜水しようとした彼に飲み込んでいった。

 

「クッ……けど、【補給部隊】の効果でカードを1枚ドローさせてもらうっす‼︎」

「そんくらい構わねェよ。俺様はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

 

翼&翔

LP:5000

翼の手札:1枚(【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】×1)

翔の手札:1枚

フィールド:

【補給部隊】×1

【炎の剣域】×1

伏せカード×2

 

vs

 

マリク&キース

LP:6900

マリクの手札:3枚(【マシンナーズ・ギアフレーム】×1)

キースの手札:0枚

フィールド:

【悪魔獣デビルゾア】ATK:2800

【マシンナーズ・フォートレス】ATK:2500

【モーター・カイザル】ATK:2000

伏せカード×2(【メタル化・強化反射装甲】×1)

 

 

 さて、次は俺のターンか。キースが伏せたカードの内の1枚は【メタル化・強化反射装甲】であることは確かだ。けどもう1つのとマリクさんが伏せたカードの事も考えると、ゴッドフェニックスと1枚のドローカードだけだと心許ないな……

 ま、ここで悪態ついても意味はないか。とりあえずドローしてから考えるとしよう。

 

「俺のターン、ドロー‼︎」

 

 あ、そうだ。翔が伏せたもう1枚の伏せカードを確認しておくか。翔が前のターンのバトルフェイズでも2枚とも使わなかったのも、結構気がかりだったし……

 

「って、えっ? このカード達って……」

 

 ま、まさか翔、俺の事を考えてわざわざ……? 別に自分に対して使ってもいいはずなのに……

 いや、これはタッグデュエルなんだ。パートナーの事も考えるのも当たり前だよな。なら、使わなければ無作法というものだな。

 

「翔。お前が残してくれたカード、使わせてもらうぜ」

「うん‼︎ 遠慮なく使って‼︎」

「おう‼︎ 伏せカードダブルオープン‼︎ 魔法(マジック)カード【強欲な壺】‼︎ そして【天使の施し】だ‼︎」

「何ッ⁉︎ 小僧が残しておいた2枚の伏せカードが、どれも強力なドローソースだと⁉︎」

 

 2枚の伏せカードの正体に驚くキース。そう思うのも無理もない。2枚ともノーコストで手札を減らさない上に増やすことができるし、【天使の施し】なんかは引き次第で強力な墓地効果のあるカードや蘇生要員を2枚も落とせるのだからな。

 

「【強欲な壺】の効果で2枚ドロー‼︎ 【天使の施し】の効果で3枚ドローして2枚捨てる‼︎」

 

 散々相手が使っていたのに対して悪態をついてた上に、自分のデッキにもこの2枚を一切入れてない俺ではあるが、それらを俺のために残しておいてくれたパートナーの気持ちを無下にするつもりはない。

 そいつの想いを受け止めるためならば、そいつが俺のために伏せて残してくれたこの2枚の禁止カードを使うのを躊躇わない。だって俺のために使うのを我慢してくれたんだからな。

 さて、引いたカード達は……よし、これならいける。この5枚で形成逆転してやる。

 

「チィッ……(トラップ)発動‼︎ 【メタル化・強化反射装甲】‼︎ 俺様のフィールドの表側表示モンスターを1体生贄に捧げ、このカード名が記された通常召喚できないモンスターを特殊召喚し、こいつを装備する‼︎ 【悪魔獣デビルゾア】を生贄に捧げ、レベル5以上の悪魔族を生贄に捧げた事によって出せるこいつを特殊召喚だ‼︎」

 

 突然、デビルゾアの身体全体を覆うように、メタリックな装甲がデビルゾアに装着されていく。やがてその装甲は、デビルゾアの骨格などに合わさるように溶け込んでいく。そして……

 

「生まれ変わりな、【メタル・デビルゾアX】‼︎」

 

 

【メタル・デビルゾアX】

ATK:3000

DEF:2300

 

 

 デビルゾアは、緑青・群青・鬱金色の3色を中心とした装甲と一体化した──もとい完全なるマシンの姿となった。だが素体が悪魔・獣であるが故か、姿が変わったのと同時に自身を鼓舞する咆哮を上げていた。

 

「悪魔族モンスターが機械の姿になった……‼︎」

「こいつの効果で特殊召喚され装備されたモンスターは攻撃力・守備力が400ポイントアップし、魔法・モンスターの効果では破壊されず、相手によって魔法・モンスターの効果の対象にされなくさせる‼︎ 並大抵の奴じゃこいつは突破できねェぜ?」

 

 

【メタル・デビルゾアX】

ATK:3000 → 3400

DEF:2300 → 2700

 

 

 機械と化したデビルゾアの上に、さらにメタリックな装甲がコーディングするかのように覆われていく。その装甲は機械のデビルゾア── 【メタル・デビルゾアX】の体色と一致するように変色していき、まるで何事もなかったかのように溶け込んでいった。

 モンスターを属性に合わせた強力なモンスターへと変身させた上に、オマケ感覚のステータス上昇に加えて、効果破壊以外での対象を取らない効果と戦闘破壊でしか除去できないようにさせるとはな……

 俺が転生特典を得たことによる世界への影響があるからとはいえ、【メタル化】に関するカードまでもが出てくるなんてな……しかもそれをプロが原作に合わせて使うとかヤベーって。今のプロ環境は魔鏡になっていってるんじゃね? 怖っ……

 ま、そんなことはどうでもいいさ。【メタル・デビルゾアX】単体でも結構めんどくさい効果があるわけだし、処理しないとな。でも初見でいきなり()()()()()を使ったら怪しまれるから、段階は踏んでおこう。

 ってなわけで。

 

「速攻魔法【サイクロン】を発動‼︎ 【メタル化・強化反射装甲】を破壊だ‼︎」

 

 まずは邪魔な装備カードを破壊させてもらうとしますかねェ‼︎

 突如【メタル・デビルゾアX】を中心で囲むように竜巻が発生する。【メタル・デビルゾアX】が自身の鉤爪を振るい竜巻を両断するが、既に遅し。二重になるように溶け込んでいたメタリックの装甲が暴風の力によって剥がれ、そのまま風に持っていかれてしまった。

 

 

【メタル・デビルゾアX】

ATK:3400 → 3000

DEF:2700 → 2300

 

 

「チッ。あっさりと装備カードを除去しやがったな……」

「まだまだ‼︎ 手札の【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】の効果発動‼︎ 自分のフィールド・墓地から装備魔法カードを1枚除外する事で、手札から特殊召喚することができる‼︎ 墓地の【ブレイク・ドロー】を除外し、効果適用だ‼︎」

 

 刹那。周囲を囲うように地面から炎が噴き出してくる。しかしその炎には不思議と熱がないためか、機械族モンスター達の体に何かしらの影響は発生しなかった。

 だがその代わりだと言わんばかりに、翼が羽ばたく音が大きく聞こえてくる。モンスター達がふと上空を見上げれば……天井から、巨大な炎を纏った……否、翼を生やし羽ばたかせていた人影が降りて来る。

 

「鋼鉄の騎士よ‼︎ 神の力を持つ不死鳥の力を纏い、その翼を広げよ‼︎ 現れろ、【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】‼︎」

 

 

【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】

ATK:3000

DEF:2200

 

 

 姿を現したのは、1人の騎士。胸部に薄紫色の宝玉を嵌めた、金色に縁取られた赤と純白の鎧を着込み、兜の頭頂部と背中から炎を噴き出していた。しかも背中の炎は翼のように上下に動きながら。

 地面にゆっくりと降り立ったその騎士は、金色の縁を持つ純白の盾を持つ左手を強く握りしめながら、同じく金色に縁取った西洋の剣の先端を機械軍団に向けた。

 

『出た‼︎ ヲーの最終形態そっくりの翼を持った騎士‼︎』

 

 うわ、ラー様めっちゃ喜んでるやん。でもそうなんだよな。このモンスター、ギア・フリードがラー様の炎を受けたってことを表しているんだし、こいつを見て喜ぶのも無理もないか。

 

「な、なんだぁ? ギア・フリードが新しい進化先を得たってのか?」

 

 うん、まぁその判断は正しいといっちゃ正しい。だってこいつにも名前が『ギア・フリード』って書いてあるからね。

 でも効果テキストに『ギア・フリード』は出てない。つまりこいつは実質『ギア・フリード』の進化先ではないってことになる。戦士族デッキの汎用カードではあるけど、なんだか悲しいね。

 さてと……匂わせをしておいたところで、他にも色々と準備しておかないとな。とりあえずまだ手札が心許ないから……

 

魔法(マジック)カード【貪欲な壺】を発動‼︎ 墓地のモンスターを5体デッキに戻してカードを2枚ドローする‼︎ 俺は【炎の剣士】、【黒衣の剣士ーブラック・フレア・ナイトー】、【幻炎の剣士-ミラージュ・ソードマン-】、【闘炎の剣士】、【焔聖騎士ーローラン】をデッキに戻すぜ‼︎」

 

 ゴトンッと天から巨大な紫色の壺が落下してきた。貪欲に満ち溢れていた表情をしたゴブリンの顔のそれはデロリンと情けなく舌を出し、俺の墓地のカードを5枚引っこ抜いた。そして壺の開口部へと放り込めば、そこから新たに2枚のカードを噴出させた。

 その2枚のカードを俺がキャッチすれば、壺はロケット噴射の如く天へと飛び去っていった。何なんだあの壺は。なんで空を飛べるんだよ、おかしいだろ。

 いやそんなことよりも、引いたカードはどうなって……あ、これならいけるな。

 

「永続魔法【炎の剣域】の効果発動‼︎ 手札の【焔聖騎士ーオリヴィエ】を捨て、再びエク……融合デッキからこいつを融合召喚扱いで特殊召喚するぜ‼︎」

 

 神の不死鳥の力を得た騎士の登場を祝うかのように、龍の顔をした炎が再び現れ周囲を旋回する。それによって発生した熱風の渦が周囲の熱気を上げていく中、渦の中心部から人影が見えてきた。

 

「戻ってきたところ悪いけど、もう一度来てくれ‼︎ 【炎の剣士】‼︎」

 

 

【炎の剣士】

ATK:1800

DEF:1600

 

 

 渦が霧散すれば、人影の正体が明らかとなった。その者は、【炎の剣士】そのもの。墓地から現れたのとは違い、鎧に傷や埃などは付いていないのが相違点と言える。

 

「墓地の【焔聖騎士ーオリヴィエ】の効果発動‼︎ 自分フィールドの戦士族モンスター1体の装備カードとする‼︎ そしてこのカードの装備モンスターは相手の効果の対象にならない‼︎ 対象を取るのは【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】だ‼︎」

 

 またもや炎が一瞬噴き出したかと思えば、左側の額を出し後ろ髪を結んだ赤と金の髪の騎士が、半透明として【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】の隣に現れた。赤8:白2の配色となっている鎧の上に羽織られている金の縁を持つ赤いマントが、燃える炎の如く風に靡かせていた。

 

「効果の対象に取れないのは厄介だな……それにチェーンして【メタル・デビルゾアX】の効果発動‼︎ 相手が魔法・モンスターの効果を発動した時、相手フィールドの表側表示モンスターを1体破壊する‼︎ 【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】を破壊し、対象を不発にしといてやるぜ‼︎」

 

 このまま彼を放置するわけにはいかない。そう悟った【メタル・デビルゾアX】が動き始める。腕をクロスした鉤爪を光らせ、装甲の奥の瞳で【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】を見据えているように見えた。

 

「やらせるか‼︎ 速攻魔法【禁じられた一滴】‼︎ 手札・フィールドのカードを墓地に送り、その枚数だけ相手モンスターの攻撃力を半分にし、効果を無効にする‼︎ 俺はこの効果で手札の【焔聖騎士ーオジエ】を墓地に送る‼︎」

 

 ふと【メタル・デビルゾアX】の上空に、悪魔の角を付けた黒いローブを羽織っている、白肌白髪で赤い爪を伸ばしている女性の堕天使が舞い降りて来た。

 その女性は手に持っている金色の水呑を傾けようとしており、『ここら辺で良いかな?』と呟いているかのように気の抜けた表情をしていた。

 

「おっと。【メタル・デビルゾアX】は1ターンに2度も効果が使えるんだぜ? よってもう一度効果を……」

 

 対処する順番を変えなければならない。またもや悟った【メタル・デビルゾアX】は標的を堕天使に変更し、彼女に向かって跳躍しようとするが……

 

「……いや、こいつは無理だったな」

「察しがつきましたね? そう、【禁じられた一滴】の発動コストとして墓地に送られた種類のカード効果は、【禁じられた一滴】に対して発動……チェーンすることはできない‼︎ 【焔聖騎士ーオジエ】はモンスターカード。よって同じモンスターである【メタル・デビルゾアX】の効果は発動できない‼︎」

 

 気づかぬ間に影に潜んでいた黒い不気味な人型の小人達が、次々と【メタル・デビルゾアX】に群がっていく。まるで何もするなと告げているかのように。

 小人の大群によって身動きを妨げられた【メタル・デビルゾアX】は、彼等を取り払うように腕と脚を振るう。しかしそれは間に合わず、堕天使が水呑から垂らした水滴に当たり、その水分を通された身体が軋み始める。

 

 

【メタル・デビルゾアX】

ATK:3000 → 1500

 

 

 やがて【メタル・デビルゾアX】は起動力を弱められ、膝をついてしまった。捕縛対象が無力化したのを確認した小人達は、その場から解散し散りばめるように退散していった。

 それに続くように、何処ぞの工事ネタの猫みたいに『ヨシ‼︎』とした堕天使も何処かへと飛び去って行った。

 

 そうしている内に、オリヴィエは自身の持つ双剣──オートクレールそのものを【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】に渡し、その場から消えていった。

 代わりに【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】が受け取ったオートクレールはその場で浮遊し、炎を纏いながら交差した。

 

「これで見える妨害は無くなった。装備魔法【サラマンドラ・フュージョン】を【炎の剣士】に装備‼︎ 装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、破壊される時に身代わりになる‼︎」

 

 【炎の剣士】の周囲を囲うように、龍の顔をした炎──【飛龍炎サラマンドラ】──に酷似した巨大な炎が旋回する。その炎に囲まれた【炎の剣士】の身体は、まるで炎そのものになったかのように変色していっていた。

 

「だが本命はもう1つの効果だ‼︎ 【サラマンドラ・フュージョン】が自分フィールドの融合モンスターに装備されている場合、このカードと装備モンスターを墓地に送り、【炎の剣士】かそのカード名が記された融合モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する事ができる‼︎」

「また融合素材を使わない正規の融合召喚か……‼︎」

 

 やがて【炎の剣士】が、脚以外の姿をそのままに完全なる炎へと姿を変えた。そして巨大な【飛龍炎サラマンドラ】と溶け合うように混ざり合い、巨大な炎……極炎の如く燃え広がった。

 

「炎の如く熱き魂を持つ剣士よ‼︎ 極炎の力をもその身に宿し、揺るぎなきその力と剣を振るえ‼︎ 融合召喚‼︎ いでよ、【極炎の剣士】‼︎」

 

 

【極炎の剣士】

ATK:2800

DEF:1600

 

 

 極炎の中から見える人影。その炎が海を割るかの如く切り開かれれば、その人影の正体がすぐに判明されることとなる。

 その者の正体は、彼もまた【炎の剣士】。だが容姿はかなり変わっており、青いインナースーツの上に朱色の縁が入った真っ赤で立派な剣士の鎧を着込み、体つきも逞しいものとなっていた。

 手に持っている剣も一回り以上に大きくなっおり、彫られている文字も『極炎』へと変わっていた。さらに地面に突き刺しているそれを豪快に引き抜き振り回して肩に担いだことから、剛健なる剣士としての貫禄さを放っている。

 さらに背中には、太陽の形状に似た光輪らしき装飾が付けられており、まるで彼を太陽そのものに仕える騎士であるかを象徴しているかのようだ。

 

「【炎の剣士】が進化した、だと……⁉︎ んなのまであるなんて聞いてねェぞ……⁉︎」

「あんなモンスター、城之内も持ってないはず……彼は一体、何者なんだ……?」

 

 あ、ヤベッ。どうやら元々の所持者が持ってないモンスターを出したらしいから、なんか2人に怪しまれてる……こ、これ以上詮索されないためにも、無理矢理デュエルを進めて話題を逸らしとかないと。

 

「戸惑ってる場合じゃないですよ? 墓地の【闘気炎斬龍】の効果発動‼︎ 自分・相手ターンにフィールド・墓地のこのカードを炎属性・戦士族の融合モンスターに装備し、【炎の剣士】かそのカード名が記された融合モンスターに装備されている場合、そのモンスターの攻撃力を700ポイントアップさせ、1度のバトルフェイズに2回攻撃ができるようにする‼︎」

 

 【極炎の剣士】の背後から現れたのは、またもや龍の炎。だがそれは【飛龍炎サラマンドラ】よりも大きく、厳つい顔つきをしており、口には『炎』の文字が彫られ炎に似た形状の刃らしきものが咥えられていた。

 その炎は【極炎の剣士】を囲い、奥に潜む眼光で機械達を睨みつけた。さらに【極炎の剣士】の持つ剣に自身の炎の熱を当て、それが発している熱の色を上昇させた。

 

 

【極炎の剣士】

ATK:2800 → 3500

 

 

「攻撃力3500……‼︎」

「墓地の【焔聖騎士ーオジエ】の効果発動‼︎ このカードもオリヴィエと同じく装備可能‼︎ 【極炎の剣士】に装備‼︎ これにより、装備モンスターは効果では破壊されなくなる‼︎」

 

 【極炎の剣士】の隣に1人の男性が降り立つ。その男は優男風に顔立ちが整っている金髪で、周囲に妖精達が彼と仲睦まじく群がっていた。

 そんな彼が【極炎の剣士】の方に目配りすると、妖精達と共に淡い光となって消えていった……否、淡い光そのものとなり、【極炎の剣士】の身体を包み込む。そして彼の身体は様々な色の光の膜に覆われ、輝きを放っていく。

 これで俺達の魔法(マジック)(トラップ)ゾーンは埋まってしまった。けど、このターンで倒すから問題ない‼︎

 

「今が使い時だな。【極炎の剣士】の効果発動‼︎ 相手フィールドのモンスターを1体破壊し、500ポイントのダメージを与える‼︎ こいつで【マシンナーズ・フォートレス】を破壊だ‼︎ 極炎の剣域‼︎」

 

 炎を纏った剣を再び豪快に振り回し、それを力強く地面に突き刺した【極炎の剣士】。するとそこから爆炎が発生して広がっていき、フォートレスへと迫っていく。

 フォートレスは肩の砲台から奔流を放ち、迫り来る炎を押し返す。しかし奔流を放ち終わった後も爆炎は迫っていき、やがてフォートレスの身体を飲み込む。フィールド全体に行き渡った後、爆炎はフォートレスの身体諸共消え去っていってしまった。

 

「チッ……‼︎」

 

 

マリク&キース

LP:6900 → 6400

 

 

「ッ……‼︎ 【マシンナーズ・フォートレス】は相手カードの効果の対象になった時、相手の手札をランダムに1枚墓地に送る効果を持っているが……」

「俺の手札は0。よってその効果は不発ってわけです」

 

 ちなみにこのフォートレスには戦闘破壊されると相手フィールドのカードを1枚破壊するという効果があったことを、マリクさんの説明があるまで忘れてました☆ 他のモンスター達の印象が強かったというのと、フォートレスを効果破壊しかしてこなかったからかなー。

 

『結果的に惨事は起きなかったから、一応よしとしておいた方が良いぞ。それよりも他にすべき事はないのか?』

 

 いや、テキスト確認ミスは状況次第では良くないんですが……と、とりあえず今はデュエルに集中するか。

 

「バトルだ‼︎ 俺は【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】で【モーター・カイザル】を攻撃‼︎ ゴッド・ブレイズ・スラッシュ‼︎」

 

 【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】が炎の翼を大きく広げ、それと同じ性質となる炎を自身の剣にも纏わせた。そして翼の力を用いて飛行を行い、【モーター・カイザル】に向けて剣を振り下ろした。

 熱を浴びた【モーター・カイザル】は腕をクロスさせながら、自身の鉤爪を持ってして剣を防ごうとするが、剣に触れた途端に炎の熱で溶かされたり切断されたりしてしまい、身体ごと溶かされ粉砕されてしまった。

 

「クッ……‼︎」

 

 

マリク&キース

LP:6400 → 5400(3000 - 2000 = 1000)

 

 

「さらに【極炎の剣士】で【メタル・デビルゾアX】を攻撃‼︎」

「ッ‼︎」

「ここで永続魔法【炎の剣域】のもう1つの効果発動‼︎ 1 ターンに1度、モンスターの攻撃宣言時、自分フィールドの戦士族モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000ポイントダウンさせ、そのモンスター以外の自分フィールドのモンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせる‼︎」

 

 再び地に降り立った【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】が、天に向けて剣を掲げる。すると彼の身体から炎とは異なる朱色の瘴気が立ち昇り始め、剣から放出されるように解き放たれる。

 そしてその瘴気が天へと昇った途端、フィールドに降り落ちるかのように拡散していった。その瘴気が【極炎の剣士】に触れた途端、彼はそれを身に纏い、その力を増大させていく。

 

 

【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】

ATK:3000 → 2000

 

【極炎の剣士】

ATK:3500 → 4500

 

 

「いけ、【極炎の剣士】‼︎ 闘気極炎斬剣‼︎」

 

 地面に突き刺していたままの自身の剣を引き抜き、その剣の先端を【メタル・デビルゾアX】に向けた【極炎の剣士】。そしてその剣に極炎を纏わせ、跳躍しながらその剣を振り下ろした。

 しかし、【メタル・デビルゾアX】は【モーター・カイザル】と違い、抵抗しようとする仕草を何1つしなかった。それはまるで、この後の展開がどうなるのかを既に把握しているかのようだった。それも、自身がやられるという意味ではなく、だ。

 

「リバースカードオープン‼︎ (トラップ)カード【ドレインシールド】‼︎ 相手モンスターの攻撃宣言時、そいつの攻撃を無効にし、そいつの攻撃力分だけ俺様達のライフを回復する‼︎ これでお前の【極炎の剣士】の攻撃は後1回となったぜ?」

 

 刹那。【極炎の剣士】と【メタル・デビルゾアX】の間に半透明の障壁が現れる。それは【メタル・デビルゾアX】を守るように展開されており、弾いた剣の衝撃と炎を吸収していった。

 

 

マリク&キース

LP:5400 → 9900

 

 

 クソッ……これでこのターンで俺達が勝つ事は不可能になってしまったか。伏せカードを除去するカードはなかったから仕方ないだろうとはいえ、これは痛手だな……

 だけど、実はキースはここでプレイングミスをしている。それは、その【ドレインシールド】を【極炎の剣士】の2回目の攻撃に使わなかったことだ‼︎

 

「【極炎の剣士】でもう一度【メタル・デビルゾアX】を攻撃‼︎」

 

 弾かれ一時態勢を崩されるも、すぐさま地を踏んで態勢を立て直し、剣を構え直す【極炎の剣士】。そんな彼の背後に再び刃を咥えた龍の炎──【闘気炎斬龍】が現れ、その顎の力を強めながらそこからさらに炎を噴出させ、刃に纏わせた。

 

「戦闘を行うダメージステップ開始時、【極炎の剣士】のもう1つの効果発動‼︎ このカードの攻撃力はターン終了時まで倍になる‼︎」

「攻撃力の倍増だと⁉︎」

 

 【極炎の剣士】が既に纏っている炎と、【闘気炎斬龍】の炎の身体が増大・激しく燃え上がっていく。その2つの炎が合体・共鳴するように混ざり合い、フィールド全体を覆い尽くす程の勢いを持つものへと変化した。

 その炎の熱気を全て帯び、己の筋肉へと伝達させる【極炎の剣士】。さすれば彼の身体は剣と共に炎に酷似した色合いとなり、まるで太陽……否、太陽神であるか如くの貫禄さを放っていった。

 

 

【極炎の剣士】

ATK:4500 → 9000

 

 

「こ、攻撃力、9000……‼︎」

「この効果を発動したエンドフェイズ時、このカードは破壊されるが、装備されたオジエの効果で効果による破壊は防がれる。よって、【極炎の剣士】は攻撃力を倍増しても、エンドフェイズには元々の攻撃力に戻るだけとなり存続し続ける‼︎」

 

 そして【極炎の剣士】の身体を包んでいた光の膜が、さらに強く発光していき、彼の炎と酷似した色の身体を淡く輝かせた。その光はまるで、【極炎の剣士】の命を潤滑にさせ、力尽きるはずの未来を変えるかのようだった。

 

「攻撃続行だ‼︎ いけ、【極炎の剣士】‼︎ 闘気極炎斬龍剣‼︎」

 

 【極炎の剣士】と【闘気炎斬龍】、各々の炎の力を混ぜ合わせた2体の炎の剣使いが、同時にその場で各々の刃を振るう。するとどうだろうか。極炎を纏った巨大な斬撃が発生し、地面を抉りながら【メタル・デビルゾアX】へと迫っていったではないか。

 その斬撃はさすがに外部による手段がないと判断したのか、一か八かと腕をクロスして防御の態勢を取る。だが、攻撃力が10000に近い数値を誇っているモンスターの攻撃に耐えられる訳もなく、斬撃に触れた途端あっさりと飲み込まれ、そのまま溶かされて消滅していった。

 

「クソが……」

 

 

マリク&キース

LP:9900 → 2400(9000 - 1500 = 7500)

 

 

「これで今度は俺様達のモンスターが全滅か……」

「しかもライフが大きく削られるなんてな……」

 

 フッフッフ……【極炎の剣士】の効果とこのデッキの恐ろしさ、味わっていただけたかな? 下手すればワンキルだけど、貴方達が耐えてくれてよかったですよ。色んな意味で、ね。

 とはいえ、やはりやりすぎたか。翔が『カッコいいしプロも使ってたエースが中心になってるから』という理由で採用したデッキとはいえ、軽々しくワンキルできるデッキは使わない方がよかったかな。そのせいで目立ちやすくなったと思うし……

 ま、最初の手札事故が予想以上の目立ちにならなくて済みそうなのが不幸中の幸いだけどな☆(おいコラ)

 

「俺はこれでターンエンド。この瞬間、【極炎の剣士】は自身の効果と【炎の剣域】の効果でアップした分の攻撃力がなくなり、【闘気炎斬龍】の効果でアップした分だけ残る」

 

 

【極炎の剣士】

ATK:9000 → 3500

 

 

翼&翔

LP:5000

翼の手札:0枚

翔の手札:1枚

フィールド:

【極炎の剣士】ATK:3500(装備:【闘気炎斬龍】×1、【焔聖騎士ーオジエ】×1)

【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】ATK:3000(装備:【焔聖騎士ーオリヴィエ】×1)

【補給部隊】×1

【炎の剣域】×1

 

vs

 

マリク&キース

LP:2400

マリクの手札:3枚(【マシンナーズ・ギアフレーム】×1)

キースの手札:0枚

フィールド:

無し

 

 

 さて、この状況……マリクさんならどう突破するとでもいうのだろうか。いや、突破されてほしくはないんだけどね?

 とりあえず【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】は出たターンは特殊召喚の効果しか使わなかったから、何も知らずに展開しようとしてくれるのを祈ろう。

 ちなみに効果は後2つもあって、その内の1つが、攻撃するダメージステップ開始時にこのカード以外のフィールドの表側表示モンスターを1体選び、攻撃力500ポイントアップの装備カード扱いとしてこのカードに装備するという効果なんだ。

 何故その効果を使わなかったかって? 魔法(マジック)(トラップ)ゾーンが埋まってるからだよチクショー(怒)。でもぶっちゃけ【補給部隊】の効果も助かるから除去できんかった、というか寧ろできなかったよ(苦笑)

 

「………………バトルフェイズになっても、【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】は効果を発動しなかった……ただ特殊召喚されるだけの効果しかないのなら、採用されるはずがない……何か複雑な条件で効果発動ができるのか……?」

 

 ん……? なんか、俺がどうでも良さそうなことを考えていたら、マリクさんが【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】の事を警戒しているんだが……?

 いや、それもそうか。エースである【極炎の剣士】もめっちゃ強かったし、他のモンスター達もサーチや装備カード化、融合モンスターを後続に出したりとかして結構強かったし……警戒されてしまうのも無理もないか。

 となると、マリクさんはどうにかして【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】を攻略していくかという行動に移すことになるだろうな。直感が当たらなければいいが……

 

「とにかく、【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】には注意しながら動くか……僕のターン、ドロー‼︎ 魔法(マジック)カード【強欲な壺】を発動‼︎ この効果で【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】はチェーンを組めるか⁉︎」

 

 うわ出た、禁止カード。ってかわざわざ確認してくるということは、【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】がどのタイミングで効果を発動してくるのかと睨んでいるのか? この世界じゃ容易く相手カードの効果を確認できないとはいえ、さすがに警戒しすぎでは……?

 

「……チェーンは組めません」

「よし‼︎ 2枚ドロー‼︎ ……これなら‼︎」

 

 ん? なんか攻略できそうなカードでも引けたとでもいうのか? やめてくれよ……(懇願)

 

「さらに僕は手札から【マシンナーズ・ラディエーター】の効果発動‼︎ 手札の【マシンナーズ・カーネル】を墓地に送り、このカードを特殊召喚する‼︎」

 

 ファッ⁉︎ ここで2体目のカーネルだと⁉︎ しかも特殊召喚する効果のコストとして墓地に送られて⁉︎ まずい、今ここで2体目のラディエーターの着地を許せば、他の後続と一緒に……‼︎

 気がつけば天井に、四角いパネル状の巨体の機械──【マシンナーズ・ラディエーター】がフィールドに降り立とうとしていた。無論、それを俺が見過ごすわけがなく……

 

「これはさすがに通すものか‼︎ 【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】の効果発動‼︎ 1ターンに1度、モンスターの効果が発動した時、自分フィールドの表側表示の装備カード1枚を墓地へ送る事で、その発動を無効にし破壊する‼︎ オリヴィエをコストにして適用だ‼︎ アイアン・フェニックス‼︎」

 

 【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】が再び大きく翼を広げ、剣の先端をラディエーターに向けるように掲げた。するとオートクレールが全身を一回り超える程の大きさを誇る、不死鳥を形取った炎に変えられる。

 不死鳥となった炎は、上空へと飛び上がるように【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】から放出された。その炎は一気にラディエーターのいる位置へと接近し、触れた途端に大爆発。ラディエーターを破片1つすら残さず灰と化しながら消滅していった。

 

「ならば次はこれだな。【マシンナーズ・ギアフレーム】を召喚‼︎」

 

 

【マシンナーズ・ギアフレーム】

ATK:1800

DEF:0

 

 

 立ち昇っている爆煙をバックに、ラディエーターとは別の機械が降り立ってきた。それは細身の人型。傭兵の鎧を彷彿としているかのような形状をした橙色の装甲を持つ機械が、己より強い2人の剣士を臆することなく見据えていた。

 

「ギアフレームは召喚に成功した時、デッキから【マシンナーズ】モンスターを1体手札に加える事ができる。僕は【マシンナーズ・アンクラスペア】を手札に加える」

 

 両手に電流を軽く流しながら、ギアフレームがその指を合わせる。すると電流が強くなり、それから1枚のカードを生み出し、それをマリクに手渡す……

 ことをせず、ギアフレームはそのカードを上空へと浮遊させた。するとどうだろうか。カードが巨大化し、徐々に変形していき始めた。

 

「【マシンナーズ・アンクラスペア】はドローフェイズ以外で手札に加わった場合、機械族モンスターしか特殊召喚できない制約を付ける代わりに特殊召喚する事ができる‼︎」

 

 

【マシンナーズ・アンクラスペア】

ATK:1800

DEF:800

 

 

 やがてカードは、大型の真っ黒な機関型の狙撃銃を持った、銃兵を思わせる黒と灰色の配色となっている人型の機械となった。

 肩や腿の繋ぎ目とも言える部分に巨大なマイナスネジが付けられており、赤い2つのモノアイがこちらを見据えていた。

 レーザーサイトを怪しく赤く光らせている狙撃銃には、黒いオーラを全身に漂わせる金色の円柱の機械が装着されており、そこから巨大なモノアイまでもが赤く光らせていた。

 

「ここでマリクさんも闇属性の機械族を……⁉︎」

「【マシンナーズ・アンクラスペア】の効果発動‼︎ このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから同名以外の【マシンナーズ】モンスターを1体墓地に送る事ができる。これにより、【マシンナーズ・ルインフォース】を墓地に送らせてもらうよ‼︎」

 

 アンクラスペアが狙撃銃のセーフティーを解除すれば、天井に向けてトリガーを引き、赤い閃光が発射された。それと同時に爆発音が発生し、フィールドが揺れ始めた。何かの前兆でも起きているとでもいうのだろうか。

 

「……一言言わせてもらうよ。モンスター効果を無効にするタイミングを間違えたようだな」

「へ?」

「速攻魔法【超獣の咆哮(デカネローグ)】を発動‼︎ 自分フィールドのモンスター1体と相手フィールドのカード1枚を破壊する‼︎」

 

 ファッ⁉︎ 自壊して効果を発揮するカードとピッタリなヤツじゃねェか⁉︎ しかも墓地にカーネルがある状態でそいつを使うだなんて……⁉︎ マ、マジで俺、効果を無効にするタイミングを間違えたのか⁉︎

 

「僕のモンスターからは【マシンナーズ・アンクラスペア】を、君のフィールドからは……そうだな。【極炎の剣士】の装備カードとなっている【焔聖騎士ーオジエ】か【闘気炎斬龍】を破壊して【極炎の剣士】を倒しやすくするのもいいが、また翼君のターンが回ってしまう可能性も考慮して、【補給部隊】を破壊させてもらおう‼︎ ミラージュ・ソードマンをドローされてまた呼び出されても困るからね‼︎」

 

 何処からか、淡い翡翠色の光の奔流が放たれた。それはアンクラスペアと【補給部隊】を飲み込み、あっさりとその熱で2つとも灰1つも残さず溶かしながら飲み込んでいってしまった。

 それに続くかのように、キャタピラを走らせる音が響いてきた。

 

「そして僕のフィールドの機械族モンスターが破壊されたため、墓地の【マシンナーズ・カーネル】を特殊召喚する‼︎」

「2体目でとはいえ、また来やがった……‼︎」

 

 

【マシンナーズ・カーネル】

ATK:3000

DEF:2500

 

 

 奔流による焼け跡をキャタピラで走行した時の跡に塗り替えるかのように、豪快にキャタピラ走らせ姿を現した、強力な武器を腕にした異質の機械。それは目の代わりとしている黄色いモノアイを光らせ、先代の仇の敵を見るようにこちらを睨んでいた。

 

「まだまだいくぞ‼︎ レベルの合計が12以上になるように、自分の墓地の機械族モンスターを除外した場合のみ、このカードを墓地から特殊召喚できる」

 

 ギュイイインというキャタピラの巨大な音と様々な機械が動いている音が発生し、それらが激しい騒音を響き渡られた。

 

「起動せよ、【マシンナーズ・ルインフォース】‼︎」

 

 

【マシンナーズ・ルインフォース】

ATK:4600

DEF:4100

 

 

 マリクの背後に、様々な武器が身体中に装着されている黒い巨大な機械が、同じく巨大となっているキャタピラの脚で動きながら姿を現した。

 中心にモノアイを顔代わりにした頭部がついているものの、胴体を含めると他の身体のパーツよりも1番小さく見えていた。

 背中には巨大なプラズマキャノン砲が付けられており、砲口から赤い光を灯している。

 両肩は3本の鉤爪が付いた4口のランチャー砲となっており、右手は2本の鉤爪と見せかけた禍々しい砲身に、左手は特殊な形状の刃となっていた。

 

「攻撃力が元から4600だって⁉︎」

 

 元々の攻撃力がまさかのオベリスクを超えているという、破格の性能を持つこのモンスター。攻撃力もそうだが、効果も結構攻撃的なんだよなぁ……

 

「バトル‼︎ 僕は【マシンナーズ・ルインフォース】で【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】を攻撃だ‼︎ 機甲部隊の排除実行(マシンナーズ・デリート)‼︎」

 

 ルインフォースが砲口を全て【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】に向け、そこから赤黒いプラズマレーザーと赤い線が中央に横向きで描かれた黒鉄の複数ものミサイルが一斉に放たれた。

 【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】は何発ものミサイルの爆発を盾で防ぎながら、剣を振るってもう何発かのミサイルを、薙ぎ落としたり斬り落としたりしていく。

 しかし全てかつ奔流をも受け流せるわけもなく、身体に触れたミサイルの爆発と奔流の光・熱を浴び、身体の一部すら残らず消え去っていってしまった。

 

「ッ……‼︎」

 

 

翼&翔

LP:5000 → 3400(4600 - 3000 = 1600)

 

 

「【マシンナーズ・カーネル】で【極炎の剣士】を攻撃‼︎」

「えっ⁉︎ 攻撃力が倍増する【極炎の剣士】に攻撃だって⁉︎ しかも【闘気炎斬龍】によって攻撃力を超えられてるのに⁉︎」

 

 いや、わざわざ最初から攻撃力を上回っている【極炎の剣士】に攻撃してきたってことは……マリクさんの手札には、それをひっくり返すカードを握っているということだ。

 

「この瞬間、手札の【マシンナーズ・リザーブレイク】の効果発動‼︎ 1ターンに1度、手札・フィールドのこのカードを墓地へ送り、自分フィールドの【マシンナーズ】モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1200ポイント上昇させる‼︎」

 

 プラズマキャノン砲に光を溜め始めるカーネルの頭上に、4つの砲口を持つミサイルランチャーをそれぞれ肩に付けた、2足で這っている機械が現れた。赤い3つのモノアイが付いた細長い頭部の首元に、アンクラスペアの銃と同じ金色の円柱の機械が捩じ込まれているかのように付けられていた。

 その機械──リザーブレイクがゆっくりと降り立ったかと思えば、そのままカーネルの両肩に乗るように装着された。するとリザーブレイクの身体から、赤黒く禍々しい瘴気が発生し、カーネルの熱を強めた。

 

 

【マシンナーズ・カーネル】

ATK:3000 → 4200

 

 

「つ、翼君‼︎ 早く【極炎の剣士】の効果を……‼︎」

「いや、ダメだ……‼︎ わざわざ攻撃力を倍増させる【極炎の剣士】に攻撃してきたということは、ここからさらに何かしてくるに違いない……‼︎ 特にルインフォースが、何か仕掛けてくる気がする……‼︎」

「えっ……?」

 

 というか、この場面だと絶対そうしてくるって‼︎ 何せ俺、既にルインフォースの効果も前世で把握してるし‼︎ そいつがいる状況で【極炎の剣士】の効果を使ったら絶対負けるって‼︎

 

「察しがついているようだな。その通りさ。というわけで、この攻撃は通させてもらう‼︎ いけ、【マシンナーズ・カーネル】‼︎ 機甲部隊の激砲(マシンナーズ・バスター)‼︎」

 

 カーネルがプラズマキャノン砲から熱の籠った赤い光の奔流を、両肩のミサイルランチャーによる各4つの砲口から複数ものミサイルを発射させた。それらは全て【極炎の剣士】に向けて放たれており、【極炎の剣士】はそれらに迎え撃つべく【闘気炎斬龍】と共に己の得物を振り下ろすことになった。

 極炎を纏った2つの刃が、奔流を押し返すべく衝突する。しかし、複数のミサイルが次々に【極炎の剣士】と【闘気炎斬龍】に襲い掛かり、身体に当たったことによる爆発と衝撃によってパワーと耐久力を削がれていってしまう。

 やがて耐えきれなくなったことにより、2体とも奔流に押され飲み込まれていき、灰1つ残らず溶かされ消えていってしまった。

 

「クソッ……‼︎」

 

 

翼&翔

LP:3400 → 2700(4200 - 3500 = 700)

 

 

「墓地の【マシンナーズ・リザーブレイク】の効果発動‼︎ このカードが墓地に存在し、自分の【マシンナーズ】モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、このカードを手札に加える事ができる‼︎ これで次のターンに返り討ちにすることだって可能だ‼︎」

 

 砲撃を終えた両肩のミサイルランチャーが、1人でに装着を解除。カーネルから離れながら噴出によって上空へと飛び去っていってしまった。

 

「最後に【マシンナーズ・ギアフレーム】でダイレクトアタック‼︎」

 

 仕上げだと言わんばかりに、ギアフレームが跳躍し、機械の拳を振り下ろした。その拳は俺の足元付近に叩き落とされ、拳の当たった地面にクレーターが生まれた。ソリッドビジョンだけどね。

 

「ッ、ライフがギリギリでよかったぜ……‼︎」

 

 

翼&翔

LP:2700 → 900

 

 

「メインフェイズ2。【マシンナーズ・ギアフレーム】の効果発動‼︎ 1ターンに1度、このカードを破壊の身代わりとなる装備カードとして、自分フィールドの機械族モンスターに装備する事ができる‼︎」

 

 ギアフレームが跳躍して後退しながら、カーネルの元へと移動する。そして着地してからまた跳躍すれば、なんと彼は搭乗するようにカーネルの中へと入っていった。カーネルは搭乗者がいたことに喜んでいるのか、それを示すようにチェンソーを高速で回転させた。

 

「さてと……ここで翔君にも教えてあげるよ。【マシンナーズ・ルインフォース】には、バトルフェイズ中に1度、相手が発動した効果を無効にして相手ライフを半分にする効果を持っているんだ。もし【マシンナーズ・カーネル】の攻撃中に【極炎の剣士】の効果を発動していたら、ライフは1700下げられた上にさっきの戦闘ダメージでさらに減らされ、【マシンナーズ・ギアフレーム】のダイレクトアタックで負けてただろうね」

 

 あ、わざわざ優しいご説明どうも。そのおかげで翔がプレミしてしまってさらに不利になる可能性は減ったぜ。プロじゃない上にアカデミアの生徒だからこその対応なのかな?

 

「な、なんでも効果を無効にした上にライフを半分に⁉︎ 翼君が【極炎の剣士】の効果を使わなかったのは、こうなってしまうと勘付いたからなんだ……‼︎ ご、ごめん翼君、ボクは君を急かそうとしていたよ……」

「気にすんな。これはその……偶々予想が当たっただけだ。勘が外れたら逆に俺が謝ってた」

 

 ま、本当はルインフォースの効果を前世で既に把握したからなんだけどね。でもそれを言ったらみんなに怪しまれるし、それは伏せておくよ。ってか伏せないと色々とヤバい。

 

「今の僕達のフィールドには、バトルフェイズ中に効果無効とライフを半減する【マシンナーズ・ルインフォース】に、一部の全体破壊ができる上に身代わりとなる【マシンナーズ・ギアフレーム】を装備した【マシンナーズ・カーネル】かいる。君達はこの布陣をどう突破するかな?」

 

 しかも手札にはリザーブレイクがいるというね。モンスター破壊にバトルフェイズ中の効果無効&ライフ半減、そして火力上昇の手札誘発……これはかなりキツい状況だ。

 

「僕はこれでターンエンド」

 

 

翼&翔

LP:900

翼の手札:0枚

翔の手札:1枚

フィールド:

【炎の剣域】×1

 

vs

 

マリク&キース

LP:2400

マリクの手札:0枚

キースの手札:0枚

フィールド:

【マシンナーズ・ルインフォース】ATK:4600

【マシンナーズ・カーネル】ATK:3000(【装備:マシンナーズ・ギアフレーム】×1)

 

 

 ……うん、やっぱりこの状況は明らかに不利だよな。翔がこの後のドローを含めた手札2枚で、なんとか勝てるのだろうか……

 

「ボ、ボクのターン……ウゥッ……」

 

 まぁ、だろうな。こんな状況下で冷静になれというのがおかしいよな。でも、このまま負けたら翔がまた色々と責任感じちゃうし……

 よし、ここは一か八か賭けてみるか。

 

「シャキッとしやがれ、翔‼︎」

「ウェッ⁉︎ つ、翼君……?」

 

 そう、叱責だ。俺は十代みたいに、人の心を動かせる程の良い行動ができるかどうか分からない。そしてそれを迷いなくやれる程の強い心を持ってない。

 だが今、翔を勇気づけることができるのは俺だけだ。自分の思っていることをぶつけ、翔に何が大切なのかを気づかせるんだ。

 

「さっきまでの余裕のあったお前はどうしたんだよ⁉︎ カイザーに……お前のお兄ちゃんに認めてもらうためにここまで来たんだろ⁉︎ なら『もういいんだ』って諦めるにはまだ早ェだろ⁉︎」

「つ、翼君……で、でもこの状況はさすがに……」

「よく盤面を見てみろ‼︎ メインフェイズ中にマリクさん達に手札・フィールド以外のカードで他に何かされる可能性があるか⁉︎ ルインフォースより高い攻撃力のモンスターを出せないと思うか⁉︎」

「えっと、それは……」

 

 余計な不安を消すようなことは言っておいた。後は、そうだな……

 

「お前が魂を込めて頑張って作り上げたデッキは、こんな状況を突破できない程にヤワじゃねェはずだ‼︎」

「‼︎」

「もしそうだと思っている輩がいるってんなら、俺だったら全力で反論するね‼︎」

 

 失いかけていた、翔の自分自身のデッキを信じる想い。これを蘇らせてみることにした。

 翔のデッキを一緒に組んであげてる時、彼は笑顔を見せてくれていたんだ。自分がこのデッキで戦うのだ、このデッキを勝たせたくなった、そう言うくらいの自信をついてくれた程にだ。その時の彼自身を、俺は裏切らせたくないんだ。

 うーん……でも、強く言い過ぎたかな? けど今の翔は弱気になっているんだし、その弱気を直すにはこれくらいの長文や態度がちょうど良いかもしれんな。

 実際、翔は何かを感じたのか目の曇りが薄まってきている。これは上手くいけば、きっと……よし、最後に後一押しだ‼︎

 

「自分のデッキを、そして自分自身を信じろ‼︎ 信じる力が奇跡を生むはずだ‼︎ 少なくともお前には、その可能性が俺よりもある‼︎」

「信じる力が、奇跡を……」

 

 まぁこれはぶっちゃけると、アニメ補正に賭けているってことになるな。でも、翔は主人公側についているんだし、時期や物語の流れ的にちょうど良いと思ったんだ。それが味方してくれることを……

 

「………………ごめん、翼君。ボク……まだ完全に負けたわけじゃないのに、翼君の想いも無視して勝手に諦めてた」

 

 あ、やっぱり? まぁそんなんだろうとは思ってたよ。

 

「でも……もうボクは逃げない‼︎ ボクが信じているデッキ達のためにも‼︎」

 

 そう宣言した翔の瞳は、曇りが完全になくなったことがはっきりと伝わっていた。覚悟は決めた、そんな目だった。

 

「よく言ったぜ翔‼︎ さぁ、2人のプロに見せてやれ‼︎ お前の覚悟をな‼︎」

「うん‼︎ ボクのターン、ドロー‼︎」

 

 風を切る勢いでデッキからカードを引き抜いた翔。そのドローカードは、彼の想いに応えてくれるのだろうか……応えてくれなきゃヤダ。

 

「ここは……‼︎ 魔法(マジック)カード【融合徴兵】を発動‼︎ 融合デッキの融合モンスターを見せ、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスターを1体、デッキか墓地から手札に加えることができる‼︎ ボクは融合デッキから【ユーフォロイド・ファイター】を見せ、デッキから【ユーフォロイド】を手札に‼︎」

 

 そう宣言しながら翔が手札に加えたのは、デフォルメされたUFOに顔の付いた機械が描かれたカード。俺が以前渡したカード、このデュエルでも早速使ってくれたんだな……俺は嬉しいぜ(ホロリ)

 っていうか、まさか翔の奴、このターンでアイツを出すつもりなのか……⁉︎ とんでもない博打な気がするぞ……⁉︎

 

魔法(マジック)カード【貪欲な壺】を発動‼︎ ボクは【エクスプレスロイド】・【サブマリンロイド】・【スチームロイド】・【ドリルロイド】・【スーパービークロイドージャンボドリル】の5体を墓地からデッキに戻す‼︎ そして2枚……ドロー‼︎」

 

 例の幾多の宝石を嵌め込んでいる紫のウザ顔の壺が、翔の元へと落ちてきた。そして翔が指定したカード達を舌で掬い取り、開口部へと投げ入れた。

 そしてそこから新たに出た2枚のカードを舌で受け取り、それを翔の手元へと差し出した。彼が2枚とも受け取ったのを確認すると、壺は手の代わりに舌を振りながらその場から消えていってしまった。

 

「………………………………来た‼︎」

 

 来たのか、逆転の一手が‼︎

 

「ライフポイントを半分払い、速攻魔法【サイバネティック・フュージョン・サポート】を発動‼︎」

 

 って、なんかスゲェのキター⁉︎ そういや翔のデッキにあんなカードをピン挿しで入れてたんだった⁉︎

 

 

翼&翔

LP:900 → 450

 

 

「このターン、自分が機械族融合モンスターを融合召喚する場合に1度だけ、その融合モンスターによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・フィールド・墓地から選んで除外し、それらを融合素材にできる‼︎」

「デッキ以外からのモンスターを、1度だけどれでも融合素材にするカードだと⁉︎」

「他の融合カードと合わせないといけないとはいえ、とんでもない破格カードだな……」

 

 破格カード……うん、その表現は合ってる。何せこのカードは、あのカードとも相性が結構良すぎるからな。

 

「翼君‼︎」

「おう‼︎ 俺のモンスターも遠慮なく使え‼︎」

「うん‼︎ 魔法(マジック)カード発動‼︎ 【パワー・ボンド】‼︎ 機械族融合モンスターの融合召喚を行うっす‼︎ ボクは手札の【ユーフォロイド】を墓地に送り、墓地の【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】を除外し、この2体で融合‼︎」

「戦士族までをも融合素材にする機械族融合モンスターだと……?」

 

 翔の背後に、デフォルメされ顔の付いたUFOと炎の翼を持った騎士が現れ、さらに彼等の上空に巨大なバーナーが出現する。そのバーナーは2体の間に青いレーザーを放ち、地面に火花を散らす。

 その地点から光の波が大きく広がっていき、それが2体の体を浸透させていく。そして2体は引き寄せられるように、光の波の発信地へと移動した途端……彼等を覆うように、淡い光が広がり出す。

 

「いでよ、【ユーフォロイド・ファイター】‼︎」

 

 

【ユーフォロイド・ファイター】

ATK:?

DEF:?

 

 

 その光から現れたのは、宙に浮かぶ台座となり、顔となる上部分とデフォルメ要素を無くした【ユーフォロイド】。そしてそこに下半身を嵌め込んだ、あまりにもシュールすぎる【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】。

 これはその……アレだな。みんなこういうのを『乗っただけ融合』と言うけど、これの場合は『くっついただけ融合』……いや、『嵌っただけ融合』か? 少なくとも『乗った』って感じがしないんだがな……

 

「なんだァ? あまりにも腑抜けた融合モンスターじゃねェか。それぞれのモンスターの一部を入れ替えただけって感じがするぜ」

 

 あ、向こうは『体の一部を入れ替えただけ融合』と思っている感じか。確かに半身だけ入れ替わってるって感じがするし、それの方が正しいような……

 

「これはただの簡易的な融合モンスターじゃない‼︎ 【ユーフォロイド・ファイター】には、自身の元々の攻撃力・守備力を、融合素材にしたモンスター2体の元々の攻撃力を合計した数値にする効果がある‼︎」

「攻撃力の合計をそのまま数値に⁉︎ しかも守備力にまでも反映されるのか……‼︎」

「【ユーフォロイド】の攻撃力は1200。【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】は3000。よって攻撃力・守備力は4200となる‼︎」

 

 【ゴッドフェニックス・ギア・フリード】が嵌めた【ユーフォロイド】の下部分となる台座から、周囲を迸らせる程の強さを誇る電流が溢れ出し始める。それが炎の翼と共鳴し、共に増大していく。

 

 

【ユーフォロイド・ファイター】

ATK:? → 4200

DEF:? → 4200

 

 

「攻守4200……だけど、僕達のライフを削り切るにはまだ足りないよ。それに【マシンナーズ・ルインフォース】よりも低いステータスだ。【マシンナーズ・カーネル】の効果で破壊すれば【ユーフォロイド・ファイター】も破壊され、【マシンナーズ・カーネル】は復活し、破壊された【マシンナーズ・ルインフォース】の効果で除外された【マシンナーズ】達も合計レベル12以下になるように特殊召喚できる。状況はさらに悪化すると思うよ」

 

 確かにこれだけだと(・・・・・・)、ルインフォースよりも攻撃力が低い。そのせいでカーネルによってルインフォースが破壊された途端に巻き添えを喰らってしまう。

 しかも先程マリクさんが説明してくれた通り、同じく巻き添えを喰らったカーネルが自己蘇生し、ルインフォースは自己蘇生しない代わりに除外状態から後続を呼び出せる。そう、【D.D.クロウ】によって除外されたカーネルも現れてしまうというわけだ。

 さらにオマケとして、マリクさんの手札にはリザーブレイクがいるから、カーネルを攻撃しても相打ちにされた挙句、そこでもカーネルが自己蘇生してくるってのがオチだ。

 そう考えると、高ステータスの【ユーフォロイド・ファイター】を呼んでも、カーネルとルインフォースによって無駄死にされてしまう。

 

「まだっす‼︎ 【パワー・ボンド】にはさらなる効果がある‼︎」

 

 普通に考えたら、だけどな。実はもう既に、翔がそれに対する解決策を講じているんだよ。

 

「【パワー・ボンド】の効果によって融合召喚された融合モンスターは、元々の攻撃力分だけ攻撃力がアップする‼︎ よって、【ユーフォロイド・ファイター】は攻撃力がさらに4200ポイントアップだ‼︎」

 

 今度は大空を覆っていたはずの天井から、黒い雲が立ち昇り始めた。そこから巨大な落雷が発生し、【ユーフォロイド・ファイター】に直撃する。

 だが、【ユーフォロイド・ファイター】は落雷のダメージを受けなかった。それどころか全身に迸る電流が増量・膨大化し、周囲に暴風が巻き起こる。さらには炎の翼と対になるように、2枚の雷の翼が生まれ大きく広がった。

 下半身の形状の違和感に目を瞑れば、【ユーフォロイド・ファイター】は今、太陽と雷の神の力を授かった伝説の騎士……と呼ばれることだろう。

 

 

【ユーフォロイド・ファイター】

ATK:4200 → 8400

DEF:4200 → 8400

 

 

「「攻撃力……8400‼︎」」

 

 【極炎の剣士】の最大攻撃力には及ばなかったとはいえ、装備カード無しでこの攻撃力だ。これでも圧巻しないわけがない。寧ろこのデュエルのMVPといっても過言ではない。

 

「バトルだ‼︎ 【ユーフォロイド・ファイター】で【マシンナーズ・カーネル】を攻撃‼︎」

「ッ……‼︎ これじゃあ【マシンナーズ・リザーブレイク】で攻撃力を上げても防ぎきれない……‼︎」

 

 電流がさらに激しく迸り、炎も激しく燃え上がる。それに合わせるように4枚の翼が暴風と熱風を巻き起こしながら羽ばたき、【ユーフォロイド・ファイター】が台座の浮遊力も加えながら力強く、空高く飛翔する。

 天井近くまで飛翔すれば、炎を纏った剣に電流が加わる。炎と雷、2つの属性が混ざり合った途端、自身の身体よりも一回り……二回り大きな、紅と蒼の2色となる1つ奔流の刃が生まれ、それか剣に宿り出した。

 剣を掲げ、奔流の刃が天井にギリギリ届きそうになった途端、そこから中心に、【ユーフォロイド・ファイター】の身体全体までもが奔流に覆われる。そしてオーラと化したそれは形取っていき、やがて不死鳥の形状を作り上げる。

 

「いっけー‼︎ フォーチュン・ゴッド・ブレイズ‼︎」

 

 不死鳥と化した【ユーフォロイド・ファイター】がそのまま降下。カーネルが放ったレーザーも、ルインフォースが発射した赤黒いレーザーと無数ものミサイルをも掻き消していき……

 やがて地面に当たった途端、不死鳥を形取った奔流は爆発の光となり、全て飲み込んでいった。

 

「……ったく。してやられたな、俺様達は」

「あぁ……完敗だ」

 

 

マリク&キース

LP:2400 → 0

 

 

 アカデミア生徒とプロデュエリストによるタッグデュエル。結果はまさかの、アカデミア生徒のタッグによる勝利で収まったのだった。

 




長かったぜ……タッグデュエルとなるとこんなに長くなるものなのか……⁉︎

何はともあれ、【ユーフォロイド・ファイター】でフィニッシュできたからヨシ‼︎
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