OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜   作:名無しのモンスター

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何故神楽坂は決闘王(デュエルキング)のデッキを使っているのに、決闘王(デュエルキング)になりきっていないのか? その謎が今、明らかになる……と思う。


神楽坂から伝わる違和感

 

「翼からも神楽坂からも連絡が来ない……2人とも、一体何をしているんだ?」

 

 アカデミア校舎の中心に近い位置にあるホール。そこで三沢はデュエルディスクのメール機能やPDAを使い、翼や神楽坂に連絡を入れていた。

 

「うーむ……やはり当日じゃないのに決闘王(デュエルキング)のデッキを見ようなんて言ったのはまずかったか? にしては返信してくれないどころか既読にすらなってないが……」

 

 実は三沢は、展覧会の整理券を獲得したにもかかわらず、他の生徒達に先駆けて決闘王(デュエルキング)のデッキを拝見すべくこの場に来ていたのだ。

 三沢は勉強熱心で真面目な性分である。だが興味のある事には自制の上回った行動をしてしまう癖がある。そのためカードや寮──借り物の部屋に計算式を書いてしまう事もあった。今回のフライング見学もその類だ。

 だが幸いなことに、現時点では未だ消灯時間にはなっていない上に、デッキの展示会場も立ち入り禁止とされているわけではない。そのため、万が一の事が起きても罰則はそれほど高くないだろう。

 

「そういえば、神楽坂は整理券を手に入れに行ってなかったな。デッキ作りに集中していて忘れていたと言っていたが……なら尚更食いついてきてもおかしくないはず……」

 

 ふと、三沢はこれまでの神楽坂の行動を思い出す。

 エルドリッチと出会って以降、神楽坂は何処かよそよそしい雰囲気を出していたのだ。決闘王(デュエルキング)のデッキの話を聞けば何故か目を泳がせ、エルドリッチの話では何故かビクついていた。

 そして、展覧会の整理券の件。整理券を獲得できなかった事に対し、悔しがったりするのではと三沢は予想していた。だがそれはハズレとなっており、その時の彼の表情は『罪悪感』を表していたのだ。

 いつもと違った神楽坂の様子。それを今日まで見てきたからこそ、三沢は勘づいていたのだ。神楽坂の身に何かあったのではないか、と。

 

「……何なんだ、この違和感は……?」

 

 そう呟いていると、向こう側から足音が聞こえてくる。それも3人の、だ。十代・翔・隼人のいつもレッド生3人組かと三沢は想像したが。

 

「アラ。こんなところでまた会うなんて奇遇ね、王辻君とちょいちょい一緒にいるラー・イエローのボウ──んんっ。三沢君、だったかしら」

「貴様までこんなところに来たのか? 生真面目そうな奴が珍しいな」

「三沢さん、ごきげんようですわ」

 

 藤原 雪乃。青野 半次。音輪(おんわ) 舞香。翼がこれまでに出会ったことのあるゲームオリジナルキャラクター(内2人はモチーフ)のブルー生徒である。何故か彼等も十代達よりも先に来ていたようだ。

 半次がこの場に三沢が来るはずないと想定していたためか悪態を呟き、舞香がいつも通りといった感じに三沢に挨拶する中、雪乃は何かを言いかけた途端に苦笑して三沢から目を逸らした。

 

「久しぶりだな、雪乃。それに半次と舞香も。……1つ確認したいが、雪乃はなんで一瞬気まずそうな顔してたんだ?」

 

 無論、その不審な反応を見逃す三沢ではない。この事を指摘された雪乃は図星だと言っているかのように体をビクつかせ、青冷めた表情となる。

 

「ウッ……ちょ、ちょっといつもの癖で、あの時王辻君と一緒にいた貴方の事も……ね?」

「……あぁ、確か認めた相手以外に対する呼び名があるんだったな。俺は別に気にしてないぞ。寧ろ君に認められる程に自分が強いとは思ってないわけだし、俺を他人がどう呼ぶかを翼が決められるわけじゃないしな」

「そ、そう……なら、今は好きに呼ばせてもらうわね。三沢のボウヤ」

「その呼び名はそれで別の意味でヤバい気がするが……」

 

 寛大な対応で雪乃の緊張を解くも、ある意味良からぬ呼び名を付けられ苦笑する三沢。三沢のボウヤと言われるようになると、彼の息子がいるのではないかと思われるのではないかと感じたらしい。なんじゃそりゃ。

 

「ところでだが……君達もこんなところに来たということは、もしかして?」

「アラ、その言い草だと貴方もなのね? そうなの、私達も決闘王(デュエルキング)のデッキを先行で拝見させていただこうってわけよ。私もあの人のデッキはすごく興味があるしね」

「わたくしも雪乃さんと同じですわ。通常モンスターもそこそこ入れているとお聞きしましたし、ゴキブリデッキの参考になるのではと思いまして、待ちきれなくなってしまいましたわ」

「俺は音輪に誘われてだ。本当は整理券があるから別に当日でよかったんだが、彼女に押されて欲に負けてな……」

 

 どうやら三沢の予想通り、雪乃と舞香は決闘王(デュエルキング)のデッキを、誰よりも先に拝見したくて堪らず行動に移したらしい。半次はそれなりに自制していたようだが、舞香に勧められた結果、嫌々同行することになったらしい。

 

「ハァ……」

 

 表情から正気が失われているのが分かるように、だ。

 

「半次……君はここに来るまでに苦労していたんだな……」

「全くだ。音輪、この後何か罰則になるような事になったら責任取ることだな」

「えっ」

 

 オベリスク・ブルーの生徒である以上、校則違反等で罰則を受けたくないと考えている半次。もしもの事があれば舞香も正当に道連れににするつもりのようだ。

 それを聞いた舞香は目を見開き……何故か顔を赤らめその頬を両手で押さえ始めた。

 

「そ、それはもしや、官能モノでよくあると言われている、『代価は身体で』と……? あ、貴方がそう仰るのでしたら……」(ポッ)

「違うッ‼︎ どういう発想をしたらそんな考えになるんだッ‼︎ そして本気で考えるのやめろ‼︎ 大体俺はそんな事するつもりは………………ない」

「否定するまでの間が結構空いてなかったか……?」

 

 盛大なる勘違いをし、そっち方面でもどんとこいと語る舞香。それに半次は否定しようとするも、彼もやはり男子。そっち方面で舞香と関わる自分を想像し、否定するまでの間を伸ばしてしまう。舞香はとにかくデカいもんね(何処がとは言わないが)、仕方ないね♂

 そんな中、また新たな足音が聞こえてくる。それも3人のだ。さらに様々な条件が合うとなれば。

 

「アレ? 三沢、お前も来てたのか‼︎ それに雪乃や半次、舞香まで‼︎」

「えっ、三沢君やブルーの人達もボク達と同じ考えを持ってたの⁉︎」

「これは偶然と偶然の重ね合わせなんだな」

 

 十代・翔・隼人のいつもレッド生3人組が、ようやく登場したのである。どうやら三沢の予想上、十代も決闘王(デュエルキング)のデッキを見るのが待ちきれなくなったようで、翔と隼人も便乗して来たようだ。

 レッド生もこの場に集まってきてしまった。この事実を受け止めなければならないのかと感じたのか、半次は苦虫を噛み締めながら三沢達への視線を逸らした。

 

「ッ……これじゃあ俺まで好奇心でルールを破ってしまうバカな連中だと思われるじゃないか……‼︎」

 

 半次は危惧していた。流れによって校則違反で罰則を受ける事を恐れているだけでなく、レッド生と共にその罰則を受けた事による他者からの良くない視線に。

 今の彼は、自身でも不思議と感じる程に前よりは階級の低い者へと差別は和らいでいる。だがその者達──主にレッド生──を見る他のブルー生の視線は著しくない。その影響で自身もレッド生と同じ眼差しを向けられる事に嫌悪感があり、今すぐでもこの場から抜けたいと考えているようだ。

 

「でも舞香さんのその誘いに断れなかったということは、実際貴方も待ちきれなかったんじゃないかしら? ボウヤ」

「そんなわけあるか‼︎ 後ボウヤと言うな‼︎ 不愉快だ‼︎」

 

 今回に限っては、実質弱みを握られているような状況下にあるため、逃げようにも逃げられない状態である。雪乃にその事を指摘されたのがその証拠である。

 彼は今、この事にではなく『ボウヤ』呼ばわりされ、子供扱いと雪乃による強者認定されなかった事に対して怒っているが。

 

「まあまあ‼︎ せっかくみんな集まったんだ、早く一緒に遊戯さんのデッキを見に行こうぜ‼︎」

「……何故レッドのお前が仕切るんだ」

 

 このまま煽り煽られの口喧嘩になるかと思いきや、十代が仲介に入った事でそれは阻止され、半次が呆気に取られた表情となった。

 

「十代さんは、最近わたくし達ブルーと同様にお強いと噂されていますし、強さも考えればこれでもよろしいでは有りませんか」

「まぁこのボウヤの言う通り、みんな決闘王(デュエルキング)のデッキを見たいと思って集まって来ているわけだから、喧嘩しちゃいけないのは確かね」

「……ハァ」

 

 アカデミアは階級がものを言う時もあれば、デュエルの腕がものを言う時もある。そのためなのか、舞香も雪乃も十代の意見に賛同し、半次も渋々認める他なかったのだった。高飛車キャラから苦労人にシフトチェンジでもしたのだろうか。

 

「ある程度まとまったようだし、そろそろ中に───」

 

「マンマミーヤァァァァァァッ‼︎」

 

 三沢が皆をまとめてからホールに入るように促し始めた途端、アカデミア生徒にとって聞き覚えのある声が、ホールの扉を突き抜ける程の声量で外にも響き渡った。

 

「あの声は……」

「あぁ、クロノス教論の声だ‼︎」

「一体何が……⁉︎」

「とにかく入ってみましょう‼︎」

 

 中で何が起きたのかを把握すべく、少々強引ながらもホールの扉を開ける一同。

 扉の先には、青冷めた表情で動揺しているクロノスと、決闘王(デュエルキング)のデッキが入っているはずの展示ケースがいた。だが展示ケースはというと……

 

「あぁっ⁉︎ 展示ケースが割られている‼︎」

「王のデッキも無いんだな⁉︎」

「う、嘘でしょ⁉︎ あの人のデッキが無くなったの⁉︎ 遊戯さん好きだったのに……」

 

 無残にもケースが割られており、デッキまでもがカード1枚も残らず無くなっていた。

 この事実に皆が唖然とする中、1番に取り乱しそうな程の動揺を見せているのは、まさかの雪乃だった。瞳孔も大きく開いているため、彼女が隠れた大ファンである可能性が捉えられる。

 それはともかく、重要視すべきなのは今の状況である。展示すべきであった決闘王(デュエルキング)のデッキがこの場にないということは、盗難されたと見ていいだろう。

 

「シ、シニョール達にシニョーラ達⁉︎ えっと、これは、その……」

「まさか、クロノス教論……⁉︎」

「いくら決闘王(デュエルキング)のデッキだからって……」

「これは『エルドランド』が提供したデッキ展示なのですのよね? 『エルドランド』は犯罪を行った者への冷遇が恐ろしいとの噂があるそうですし、このままではクロノス先生が……」

「ま、待つノーネ‼︎ 犯人は私じゃないノーネ‼︎」

「いや、クロノス教論が監視したとなれば……」

「クロノス先生、見損ないました……‼︎ 遊戯さんファンの心を弄んで……‼︎」

 

 今のホールの中には、クロノス以外の人物が見当たらない。そしてクロノスも決闘王(デュエルキング)をかなり評価している。そのためなのか、皆してクロノスがデッキを盗んだのではないかという反応を見せている。

 十代以外が、のようだが。

 

「だからホントに違うーニョ‼︎ 大の大人が盗みとかしないノーネ───」

「分かってるってクロノス先生」

「「「「「「「えっ?」」」」」」」

 

 十代がクロノスを庇うように呟いたため、全員が思わず呆然とした目で彼の方に視線を向けていた。彼だけクロノスが犯人でない事を断定させていたため、驚くのも無理もない。

 

「シ、シニョール十代? な、何が分かってルーノ……?」

「だから、クロノス先生が盗んだ訳じゃないって事だろ? だって先生には鍵があるから、開けるならケースを壊す必要ないじゃん」

「「「「「「あっ」」」」」」

「あっ……そうナノーネ、鍵は持ってるノーネ……」

 

 十代がそう説明すれば、周囲がデッキを盗んだ犯人がクロノスではない──クロノスは白である──事を理解し、クロノスも落ち着きを取り戻した。

 どうやら先程のクロノスの焦りは、展示会の責任者となっているが上の責任云々によるパニックによるものらしい。もしもデッキの盗難が公になる事があれば、倫理会などからの責任が問われることだろう。クロノスはその危惧によって慌てていたのだ。

 

「とにかく、まだ時間は経っていないはずだ。急いで犯人を見つけ出そうぜ‼︎」

「ハァ……クロノス教論。この事は内緒にしておきますんで、俺達が先んじて来てしまった件も内緒にしてくださいね?」

「も、もちろんデスーノ‼︎ 私は恩を仇では返さないノーネ‼︎」

 

 そんなこんな犯人を探すことになった十代達。そこに半次がクロノスに念を押し、お咎めがなくなった事に対してガッツポーズをしたのだった。

 

「よし、早速行こうぜ翔‼︎ 隼人‼︎ 半次‼︎ 舞香‼︎ 雪乃‼︎」

「「「ん?」」」

「俺もいるぞ‼︎」

 

 何やら今後の三沢に対する不穏さを、ブルー生徒の3人は感じたのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 こうして決闘王(デュエルキング)のデッキを探すこととなった十代達。手分けして探し、居合わせた生徒や教師に『怪しい者は見かけなかったかと』問いかけもしながら(デッキが盗難されて件は伏せながら)。

 そんな中、三沢は皆と同じくアカデミア中を周りながら、PDAを通して翼と神楽坂に連絡を入れていた。決闘王(デュエルキング)のデッキが盗難されたとなれば、2人は黙ってないと判断しての助け舟の要求だろう。特に神楽坂なら承諾すると考えての事だ。

 しかし。

 

「これにも2人とも出ないなんて……一体どうしたというんだ?」

 

 これが現状。2人揃って返信しないどころか、既読すらつかない状態である。何故神楽坂どころか翼すらメールに応じないのか……三沢はそう疑問に思いながらも通話に切り替えようとした、その時だった。

 

「ッ⁉︎ う、うおおおおおおっ⁉︎」

 

「⁉︎ 今の声は⁉︎」

 

 近くから聞こえてきた、聞き覚えのある者の断末魔。その声を鼓膜でキャッチした三沢は、すぐさまその声がする方へと走り出す。

 草むらをかぎ分け、岩場の中でも大きく海側にせり出した岩の上にまで辿り着けば……

 草が生い茂っていた箇所にて、翼が仰向けで倒れていた。それも吹っ飛ばされた後かのように。

 

「翼⁉︎ おい、しっかりしろ‼︎ 何があった⁉︎」

 

 即座に彼の元へと駆け寄り、抱き抱えながら問いかける三沢。その声に気づき目を覚ましたのか、瞼を開いた翼は口を開く。

 

「す、すまん三沢。神楽坂の様子がおかしかったから止めようとしたんだけど、負けてしまった……」

「お前が負けただと⁉︎ しかも神楽坂って……」

 

 翼が向けている視線に三沢も向ければ、そこには神楽坂が仁王立ちで腕を組みながら突っ立っていた。それも少々歪な笑みを浮かべながら。

 

「よう三沢、誤解を招きそうな場面に出くわさせてごめんな。訳あって翼とのデュエルに乗ってあげて、運を最大にしながら本気出したらこうなったもんでさ……」

「……いつも通りの感じを出しているにしては、随分と不穏な感じを出しているじゃないか。翼もお前の様子がおかしいと言ってたぞ」

「不穏? 様子がおかしい? 何を言っている、俺はいつも通りの俺だぞ。何かの言いがかりに聞こえるから、その言い方はやめてくれよ」

 

 神楽坂はそう言っていつも2人にしてきた友好的な様子を見せるが、笑顔にある歪さは抜けていなかった。寧ろ不気味さを増しているようにも見えた。

 違和感と警戒心の消えない三沢。そんな彼の心や考察に答えようとしているかのようにに、翼が自身の憶測を呟く。

 

「アイツ……決闘王(デュエルキング)のデッキを使って、俺を後攻ワンキルしやがったんだ」

「何ッ⁉︎ 決闘王(デュエルキング)のデッキだと⁉︎ まさか、神楽坂がホールに展示されるはずだったあのデッキを……⁉︎」

 

 自分達が探していた、デッキの監視がつく前の隙を突いて盗まれたとされる決闘王(デュエルキング)のデッキ。それを自分や翼と同じラー・イエロー所属の友人である神楽坂が盗んで使用していた。その事実に三沢は愕然とした。

 だが、それと同時に合点がついてきていた。神楽坂は決闘王(デュエルキング)に憧れを抱いていた。そして彼のデッキを再現しようと必死で、自分達と共に試行錯誤を繰り返してきた。もしやその時の悩みがストレスとなり、窃盗に走ってしまったのでは……

 

『否、盗難は彼奴の意思ではない。ヌゥ、やはり遅かったか……』

「‼︎ エルドリッチさん‼︎」

 

 悪意を否定するかのように、三沢の背後から1人の男性の声が聞こえてきた。その方向へと振り向けば、そこにはこちらの方へと歩を進めている、全身が黄金で出来ており怪物らしき顔の仮面(?)を付けた男性・エルドリッチである。

 彼は神楽坂を見据えながら、赤い模様のお札らしきものを握りしめていた。

 

『余の会社では、除霊・降霊など、霊に関する事をするのに必要なものを作っていてな。デッキの護衛用として貼り付けようとしたが、ヘマを起こしてしまい、偶々近くにいたあの神楽坂とやらに貼ってしまったのだ。すぐに取り外したが、札の中にいた守護霊はもう既に、あの男に憑依してしまったのだ』

「「えっ……?」」

 

 エルドリッチの言葉に引っかかりを感じたのか、翼と三沢は思わず呆けた声を出しながら目を丸くした。『エルドランド』が霊関連の物品を作っていた事にではなく、守護霊がどうのこうのという点に観点をつけたのだ。

 

「ええっと……もしかしてですけど、神楽坂がデッキを取ったのは、その守護霊とやらが、自分が護る対象にしているデッキを持った方が盗まれないだろうという考えを持ったからであって、無理矢理ケースを破壊してて……」

「そして俺とのデュエルでそのデッキを使ったのは、守護霊が把握したあのデッキを使った方が効率的だとか、そんな感じなんですか……?」

『そういう事になるであろうな。よって、デッキの窃盗は神楽坂の意思ではないのだ』

「どんなやらかしを犯したらこんな事になるんですか」

 

 大体、他にもセキュリティシステムに関する安全なものがあるはずじゃないのか。というツッコミも入れようとした翼だったが、この世界共通のガバガバ認識によるものかもしれないと悟ったのか、そのまま思い留まるだけに済ませた。それでいいのかオリ主よ。

 

「なんだ? まさかお前達もこのデッキを手に入れる気なのか? そうはいかない‼︎ このデッキは俺が護る‼︎」

「その考えからどういう思考に至ったら、ケースの破壊と無許可の持ち込み=窃盗のW奇行に走るんだよ。もっとコンプライアンスとか考えて行動しろやバカ」

 

 この発言は守護霊に対してか、はたまた神楽坂に対してか……真相は不明だが、そう語る翼の目は冷えていた。

 

『ともかく、神楽坂とやらに取り憑いている守護霊を引き剥がし、彼奴が護るといって窃盗したデッキを取り返すには、デュエルで勝つのが今行うべき最善の手段であろうな』

「そんな不確定な考えでいいんですか」

 

 いくらこの世界が、大抵の事はデュエルで解決するようになっているからといって、何でもかんでもデュエルすれば良いという考えは如何なものか……翼は心の中でそう思ったそうな。

 どちらにせよ、神楽坂に取り憑いている守護霊の力を沈静化させなければ、神楽坂も決闘王(デュエルキング)のデッキも解放されないことだろう。

 だがデュエルで解決するにしても、翼は敗北しているため、三沢かエルドリッチのどちらかが相手しても勝てるかどうか……というグレー判定である。如何したものか───

 

「ここは俺がやります。エルドリッチさんは翼の介抱を」

「み、三沢⁉︎」

 

 ここで敗北した翼に打って変わり、神楽坂──神楽坂に憑依したデッキの守護霊──の前に立ったラー・イエローの生徒は、他の誰でもない……三沢だった。

 

「オイオイ、お前大丈夫なのかよ⁉︎ 相手は本人じゃないとはいえ、決闘王(デュエルキング)のデッキを使っているだぞ⁉︎ しかも神楽坂はコピーデッキの扱いが得意だし……」

 

 他の強いデュエリストに任せた方が得策だから、お前は闘わないでくれ。遠回しに止めようとする翼に対し、三沢は首を横に振った。強さ云々が問題じゃない、そう言っているかのようだった。

 

「だが、今の神楽坂は乗っ取られているようなものだ。決闘王(デュエルキング)どころか、神楽坂本人を相手しているわけでもない。なら、なんとかなるはずさ」

「三沢……」

 

 そして三沢は神楽坂と守護霊──守護霊坂──の方に視線を向き直せば、デュエルディスクを装着し展開させる。正式に『俺がお前の相手だ』と、守護霊坂に伝えているかのように。

 

決闘王(デュエルキング)でも神楽坂でもない俺が相手だったら勝てるだと? ハッ。俺は守護する対象の全貌を把握できるんだ、このデッキの使い道や展開ルート、捲り方も把握している。勝てるなどと思わないことだな」

「なら、試してみるか?」

 

 守護霊坂の慢心・余裕さを表す演技にも動じず、三沢は彼を見据えたまま微笑んだ。言葉で確かめ合うのではなく、実際に相手をしてみたらどうだ……と。

 引く気がない様子の三沢に、守護霊坂は豆鉄砲を喰らったかのような表情になるも、すぐに微笑み展開した状態のデュエルディスクを三沢に向けて構えた。

 

「……いいぜ。その挑発、乗ってやる」

「そうこなくちゃな。いくぞ‼︎」

 

「「決闘(デュエル)‼︎」」

 

 

三沢

LP:4000

 

神楽坂(決闘王(デュエルキング)デッキの守護霊)

LP:4000

 




設定が色々とおかしい? それはごもっともです。自分でも『アレ?』って思うところがあって……でも他の『これがいい‼︎』と思い浮かんだアイデアが今回のよりも酷いかなと感じており、試行錯誤した結果……ってわけです。

ん? 神楽坂が決闘王(デュエルキング)のデッキを持った理由が雑? しようがねえだろ原作と比べて強さに執着してるわけじゃないからさ。
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