OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜   作:名無しのモンスター

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VS(ヴァンキッシュ・ソウル)に続いてサブタイトルに書かれる『vs』……スペルが同じだから紛らわしいよね。VS(ヴァンキッシュ・ソウル)にルビがあるだけまだマシだけど……


VS(ヴァンキッシュ・ソウル)vs恋する乙女(前編)

 

「フゥ、やっと帰れるな……」

「すまない翼、さっきは助かったぜ……」

「いいんだよ、さすがにアレは見て見ぬふりができなかったから」

 

 時刻は夕方。門限が近づいている時間帯ら辺である。

 いつもはこの時間には既に寮に戻ってはいるんだけど、今回に至っては神楽坂と共に帰るのが遅くなってしまった。

 何故かって? 神楽坂にデュエルを申し込んできたモブ達を鎮圧するための連続デュエルをしていたら、いつの間にかこんな時間になってしまったからだよ(泣)

 

 決闘王(デュエルキング)デッキ事件以来、あのデッキの名残りが神楽坂にはまだあるのではないかと思い込んでいるモブを中心に、次々と謹慎から解かれた神楽坂にデュエルを申し込むようになったらしい。

 本人は『もうあのデッキは使えない』『今のデッキもまだ試作段階だから』と訴えてはいたけど、モブどもはそんな事お構いなしだった。だから見てられなくなった俺が助太刀に行ったってワケ。

 デッキを複数持つ俺なら決闘王(デュエルキング)が使っているカードのデッキもあるのではと思い込んだのか、今度は俺にまでデュエルを申し込んでくる始末。だから『お前らなんか【ドラゴンメイド】デッキで充分だ‼︎』と宣言してから無双したった。正直やりすぎたぜ……

 しばらくしたら【聖殿の水遣い】が仲介に入ったことにより、デュエル申請騒動は収まり、俺と神楽坂は解放されることとなった。正直助け舟が来てくれてマジでよかったぜ……

 

「さて……こうして俺達は解放されたわけだが、この後どうする? いつもみたいにデッキ作りでもするか?」

「いや、悪いけどそれはまた今度にしてくれ。今日は精神的にも疲れたから……」

「……そっか、そうだよな。結構迫られたもんな」

 

 うん、そうだったな。そういえば途中から神楽坂もデュエルに参加していたんだったよな。疲れてるのだからそりゃ休みたくなるよな。じゃあデッキ作りも今日はお休みに……

 

「ん?」

 

 ふと、俺は草原の方に視線を向けた。

 

「どうした、翼?」

「いや、向こうで誰かがデュエルしているように見えたんだが……」

 

 その方向には人影が、それも何やらデュエルディスクを装着しているのが見えた気がした。誰かが草原でデュエルしているのか? 可能性があるとすれば、内1人は十代だろうけど……

 

「どうせ十代が誰かとデュエルしているとかそんな感じじゃないのか? 気になったデュエリストがいれば申し込んでいきそうだし、相手側から申請してきたら大歓迎みたいな奴だろ?」

「あ、お前もそう思ってるんだ」

 

 とにかくデュエル好きな十代の事だから、絶対いつかは主要キャラじゃない奴らからも、十代がデュエル大歓迎の男だと思われるだろうとは思ったけど……この時期に彼とデュエルしてない神楽坂からそう思われているとなれば、他の奴らも近い内に……

 ま、そんな事はどうでもいいさ。

 

「一体誰がデュエルしているのか、見に行ってみないか?」

「そこも同じように考えていたんだな。連続デュエルで疲れてるだろうに……」

「それはお前も同じ……というか俺以上の境遇じゃないか? 大体見るぐらいならそんなに疲れないだろ」

 

 正論を返されました(泣) 確かに俺は神楽坂以上に結構連戦デュエルしてたけど、意外と疲れなかったから……後、観戦するだけで疲れる事はないのは確かだよな。観戦で疲れるのは盛大に応援する時ぐらいだけだろうし……

 

「それなら見に行ってみようか。さて、十代はどんな奴とデュエルしているのか───」

「俺がどうかしたのか?」

「「アレェッ⁉︎」」

 

 早速その草原の方へと向かっていってみたら、その道中でまさかの十代と遭遇。まさかのあの人影の1人は十代ではない事が確定したという事実に衝撃が走った。いや、衝撃という程ではないけどな。

 じゃああの人影達は一体何なんだ? 一体誰がデュエルをしているんだ? そして何が理由でデュエルする事になったというんだ?

 っていうか。

 

「十代、なんでこんなところにいるんだ? もう少しで門限前だというのに」

「あぁ、実は学園に忘れ物をしてしまったみたいでさ。先生達に許可をもらって学園に向かっているところなんだ」

「あ、そうなんだ……」

 

 忘れ物をした、か……まぁ十代の事だから、デュエル以外では何処か抜けてるところがあるんじゃないかとは思ってはいたけどさ……

 

「で、一体誰がデュエルしてるって話してるんだ?」

「えっ。あ、向こうで人影が見えたから、一体誰がデュエルしてるんだろうなって疑問に思って、そんで見に行こうとしていたところなんだよ」

「えっ⁉︎ 誰かがデュエルしてるのか⁉︎ いいなー‼︎ 俺もデュエルしたいぜー‼︎」

 

 オイ、お前は学園で忘れ物を取りに行く途中なんだろ。なのにその用事をほっぽり出してデュエルの方を優先すんのかよ。ホントデュエル馬鹿だなお前は。

 

「くぅ〜‼︎ こうしちゃいられねェ‼︎ 早く見に行こうぜ‼︎ どんな奴がデュエルしてるのか気になってきた‼︎」

「あ、おい‼︎ ……先に行ってしまったか……」

 

 ホント、あいつのデュエルバカで後先考えない性分はなんとか治らないものかねェ……

 そんな事を考えていたら、神楽坂がポンッと俺の肩に手を置いた。

 

「とりあえず、今は十代の後を追いかけようぜ。後、十代の事は気にするな。それだけデュエルモンスターズに夢中って事は、アカデミアにとっては良い事のはずだから」

「あ、うん……そうだね……」

 

 それって、神楽坂は俺よりも十代の味方寄り……ってコト⁉︎ いや、別に十代に味方がつくのは良い事だし、別に俺の味方じゃなくなったわけでないのは分かってるけどさ……なんか、切なくて寂しい……

 

 そして、しばらくして十代に追いつき、草原の方へと視線を向けると、そこにいたのは……

 

「アレって、間藤先生と……レイか?」

「お前と同じレッド生か……けど、あんなちっちゃい奴いたか?」

「いや、今日新しく編入されたみたいでさ……」

 

 まさかのマッドラヴと、原作キャラの1人・早乙女 レイであった。なんでこの2人がデュエルしてるの? 原作準拠の事件を起こすにしてはまだ全然明るいのに……まるで意味が分からんぞ⁉︎

 

 

 

 

 

 

間藤

LP:4000

 

レイ

LP:4000

 

 

 おっ、来とる来とる。マスターと十代がレイのデュエルを見に来とるな? さぁ刮目せよ、早乙女 レイのデュエルを‼︎

 ……で実際、彼女は一体どんなデッキを使ってくるんだろう? この世界はOCG基準なんだから、【恋する乙女】とそれ関連のカードは出すのが難しいんじゃ……

 

「先攻はボクからだね……ドロー‼︎」

 

 そうこう考えている間に、レイの先攻でデュエルが始まった。さて、彼女は一体どんなデッキを使ってくるのやら……

 

「ボクはモンスターをセット‼︎ リバースカードを3枚セットしてターンエンド‼︎」

 

 

レイ

LP:4000

手札:2枚

フィールド:

セットモンスター×1

伏せカード×3

 

 

 ありゃ? モンスターをセットして、リバースカードを伏せて……たったそれだけ? あまりにも消極的すぎないかい? まぁ何もしないよりはマシだけど。伏せカードが3枚もあるし。

 

「悪いけど、最初からちょっとアクセルを踏ませてもらうよ‼︎ ボクのターン、ドロー‼︎ ボクは手札から【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ラゼン】を召喚‼︎」

『うっし、いくぜ博士‼︎』

 

 

VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ラゼン】

ATK:1800

DEF:1500

 

 

 現れたのは、青色や水色・緑色を基調としたカラーが強調されているジャケットを羽織った、尖りのある派手な緑青色の髪を持つ少年。両腕にはトンファーが付けられており、それを己の拳と共に武器にしている感じがある。

 ちなみに彼、というかこのデッキの全ての【VS(ヴァンキッシュ・ソウル)】モンスターは皆、ボクと同じカードの精霊だ。だからボクの耳にラゼン君の声が聞こえるし、精霊が見える奴の耳にも聞こえるはずだ。

 

「ラゼン君の効果発動‼︎」

「ラ、ラゼン『君』……?」

「このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから【VS(ヴァンキッシュ・ソウル)】モンスターを1体手札に加える事ができる。ボクは【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ホーリー・スー】を手札に‼︎」

 

 ラゼン君がトンファーの電源をONにすれば、それに描かれたメーターが光り輝く。その光が収まった時には、1枚のカードがトンファーの上にて浮遊していたので、ボクはそのカードを華麗に取った。

 そして、すぐさまそのカードを見せながら宣言する。

 

「そして手札の【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ホーリー・スー】の効果発動‼︎ 手札の【VS(ヴァンキッシュ・ソウル)】モンスターを1体見せる事により、このカードは特殊召喚できる‼︎ 【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ヘヴィ・ボーガー】を見せ、守備表示で特殊召喚だ‼︎」

『では、参りましょう』

《よぉっしっ‼︎ 頑張ろうねスー‼︎》

 

 

VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ホーリー・スー】

ATK:500

DEF:2000

 

 

 続いて現れたのは、荘厳なデザインとなっている白・金のローブを着て、口元を布で隠している淡い金髪の女性。聖なるイメージを基調としつつも、どこか威圧的で好戦的な雰囲気を持たせている。

 彼女が持っている、細長く先端に宝玉や光を放つ装飾が施された豪華な作りの杖は、実は自覚意識を持っており、口数の少ない彼女の代わりに表情とか色々なところを表現してくれる存在となっている。

 ちなみに彼女はマスターが前世で死んだ後、その世界で実装された存在なんだ。だからマスターも彼女の存在は知らない……はず。

 

「ホーリー・スーの効果発動‼︎ 【VS(ヴァンキッシュ・ソウル)】モンスターは、手札から見せる指定された属性のモンスターによって効果が決まる」

「手札のモンスターを見せる事で効果が変わるモンスター⁉︎」

「そ。ちなみにホーリー・スーは手札の炎・闇属性モンスターをそれぞれ見せる事で、デッキからサイキック族以外の【VS(ヴァンキッシュ・ソウル)】モンスターを1体手札に加える事ができる。ボクはこの効果で……そうだな、【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) マッドラヴ】をサーチしようかな」

『何故一気に決めるためのモンスターをサーチしようとしない……?』

《あくまで彼女のデッキを確かめるためじゃない? 最初から全力じゃ指導にならないよ?》

『……それならいいです』

 

 なんかホーリー・スーが愚痴ってたけど、とりま効果の発動はしてくれるようだ。掲げた杖の宝玉が光れば、その光から1枚のカードが出てくる。ボクはそのカードをすかさずキャッチし、すぐさま次の行動に移る。

 

「ラゼン君の第2の効果発動‼︎ ラゼン君は手札の炎・闇属性モンスターをそれぞれ見せる事で、同じ縦列の他のモンスターを全て破壊する‼︎ こいつのサーチ効果との同時併用ができないのがネックだけど」

「あっ!? 今のボクのフィールドのモンスターは、ラゼンと同じ縦列にいる⁉」

 

 レイちゃんのモンスターはリバースモンスターである可能性が高い。けど、リバースする瞬間までは大抵の奴は無力に等しい。アドバンス召喚以外での召喚でセットされたモンスターなら尚更のはず‼︎

 蹴りの構えに入ったラゼン君の右脚に炎が宿る。それは、狙った標的に必殺技を当てるための準備とも言える。

 

「炎属性である2体目の【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ラゼン】と闇属性の【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ヘヴィ・ボーガー】を公開し、この効果を適用‼︎ さぁ、そのセットモンスターには退場して───」

「ちょーっと待ったー‼︎ リバースカードオープン‼︎ (トラップ)カード【強制脱出装置】を発動‼︎ フィールドのモンスターを1体手札に戻す‼︎ フィールドから離れれば、そのモンスターは縦列にいない扱いとなり不発となる‼︎ よってラゼンには手札に戻ってもらうよ‼︎」

 

 うげっ、そう来たか。確かに破壊したいモンスターがいても、そいつが指定された縦列にいなかったり、縦列にそのモンスターがいても発動したカードがその列にいなかったら意味がない……そこを突かれたか‼︎

 

「ならばせめて……手札の【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ヘヴィ・ボーガー】の効果発動‼︎ 自分・相手のメインフェイズに、機械族以外の自分フィールドの【VS(ヴァンキッシュ・ソウル)】モンスターを1体手札に戻す事により、このカードを手札から特殊召喚する事ができる‼︎ ラゼンと交代だ、【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ヘヴィ・ボーガー】‼︎」

『悪いボーカー、ここは任せた‼︎』

『あぁ、後は任せろ。ラゼンは手札でゆっくり休んでおけ』

 

 ラゼン君の背後に、ダークメタリックな機械らしき巨大な腕が出現する。その巨大な手が出てきた事に気づいたラゼン君は、その手とハイタッチを交わしてから飛躍し、何処かへと立ち去っていった。

 

 

VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ヘヴィ・ボーガー】

ATK:2500

DEF:1500

 

 

 交代するように現れたのは、全体的に角ばった形状の分厚い装甲で覆われた巨大なロボット。

  頭部は比較的小さめで、赤いバイザーの付いた装甲ヘルメットのような形状。腕の表面には機械的な関節やパイプが露出しており、装甲の継ぎ目やリベットが細かく見える。脚部も装甲によって重厚で、安定感のある構造となっている。

 背部や腕にはミサイルポッドや追加の装甲パーツのようなものが備わっており、重量級ファイター系の戦闘マシンとしてのダイナミックな印象を与えていた。

 

「先にバウンスを仕掛けてきた事で、【強制脱出装置】が不発になった……‼︎」

「まぁ、結局ラゼン君がフィールドから離れたから、彼の破壊効果は不発に終わるんだけどね」

 

 ただ、同じバウンスなら自分の盤面を強くするためのバウンスを選ぶけど。だから【強制脱出装置】でバウンスされる前に、ヘヴィ・ボーカーの効果をチェーンしたってわけ。

 

「ヘヴィ・ボーカーの効果発動‼︎ 手札の闇属性モンスターを1体見せる事で、カードを1枚ドローする事ができる。ってなわけで、闇属性モンスターの【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) マッドラヴ】を見せ、効果を適用させてもらうよ。ドロー‼︎」

 

 ヘヴィ・ボーカーのバイザーが赤い光を放てば、彼の身体のシステムによる連動なのか、デュエルディスクに『1DRAW』と出たため、ボクは遠慮なく1枚ドローした。引いたカードは、と……うーん、まあまあかな。

 

「バトルだ‼︎ ボクは【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ヘヴィ・ボーガー】でセットモンスターを攻撃‼︎」

『その隠れている奴にはご退場願う‼︎』

 

 そう宣言すると共に、ヘヴィ・ボーガーが右腕の掌をセットモンスターに向ける。その掌に埋められているであろうコアらしきものが赤く光り、そこからレーザーでも放とうとしている雰囲気を醸し出していた。

 まぁ、彼は基本拳を振るって闘うんだけどね。ラゼン君みたいに。

 

「その攻撃も通さないよ‼︎ リバースカードオープン‼︎ (トラップ)カード【リトル・オポジション】を発動‼︎」

 

 【リトル・オポジション】? 何だっけそのカード? イラストはどっかで見た事ある気がするけど。なんでリトルナイトとマスカレーナが描かれているねん。

 

「このカードは、同じ縦列の使用していないメインモンスターゾーンを2ヵ所指定し、自分・相手の順に、手札・デッキからレベル2以下のモンスターを1体選び、指定された自身のメインモンスターゾーンに表側攻撃表示か裏側守備表示で特殊召喚する事ができる‼︎」

 

 うわお、何その限定的なリクルート効果。上限レベルの指定があるとはいえ、テーマ指定無しにデッキからモンスターを呼べるのは結構強いとは思うけどね。まぁ相手もそれが出来ちゃうけど、低レベル中心のデッキじゃなかったらそれ程刺さらないか。

 というか、レベル2以下を出せるって事は、レイちゃんのデッキにはやっぱり……?

 

「これがボクのマイフェイバリットカード、【恋する乙女】を守備表示で特殊召喚‼︎」

 

 

【恋する乙女】

ATK:400

DEF:300

 

 

 来たー‼︎ やっぱり入ってたかー‼︎ レイちゃんと言ったらやっぱりこのカードだよねー‼︎

 レイちゃんのフィールドに現れたのは、栗色の長髪を揺らす平凡な雰囲気の少女。髪に付けている花の髪飾りや淡い黄色の清潔なドレスが、彼女の可愛さ・美しさを際立たせていた。

 

「ほほー、この子が君のフェイバリットカードなのか。確かに、恋する乙女の名に相応しいカードだね。あ、【リトル・オポジション】の続きだけど、ボクはレベル2以下のモンスターは出さないよ」

 

 ボクのデッキのレベル2以下のモンスター、手札誘発のヤツばかりだからね。無闇にそいつらを出す程バカじゃないってわけさ。

 

「というか、セットモンスターへの攻撃を通さないと言っていたけど、その子を出すだけで防げるとは到底思えないんだよねェ。ってなわけで、ヘヴィ・ボーカーの攻撃は続行。もちろんセットモンスターへと攻撃だ‼︎」

『ただの出まかせだったようだな』

 

 コアを光らせている掌を握り、パンチ攻撃の態勢に入ったヘヴィ・ボーカー。レーザーじゃなくてパンチに路線変更するんかい。

 そしてそのまま跳躍し、セットモンスターに向けてその拳を振るう。あのドデカい拳を上からまともに喰らったら、並大抵の奴はぺしゃんこレベルになるだろうな。

 ……って、ん? ちょっと待って?

 

「ア、アレ? なんで【恋する乙女】が庇ってるんだい?」

 

 何故かセットモンスターの目の前に、【恋する乙女】が両手を広げて庇うように突っ立っていた。ねェ、ボクって【恋する乙女】じゃなくてセットモンスターに向けて攻撃宣言したよね?

 

「【恋する乙女】がモンスターゾーンに存在する限り、攻撃可能な相手モンスターはこのカードを攻撃しなければならない‼︎ 友達や仲間は護る、それがこの子の覚悟だ‼︎」

「攻撃とその対象の強要だってェ⁉︎」

 

 それってアニメオリカの【ディフェンス・メイデン】を常時内蔵している……ってコト⁉︎ ホントにセットモンスターに攻撃が通らないようにしている⁉︎

 あ、そっか。そういえば前世の世界では、マスターの死後に【恋する乙女】が実装されたんだっけ、しかも今の環境に合わせてか、レイちゃんが【恋する乙女】を使う時に一緒に使用したアニメオリカの何枚かの効果を内蔵して。だからあんな効果も持つようになったのか……

 

『クッ⁉︎』

 

 さすがのヘヴィ・ボーカーも幼女に攻撃するのは本望じゃないと思ったのか、振り上げていた拳を下ろし、その場で着地した……が。

 

『キャッ‼︎』

 

 重量級の奴が空中から着地すれば、地面が一瞬揺れてしまうのは明らか。ヘヴィ・ボーカーが着地した事による震動により、【恋する乙女】はその場で尻餅をついてしまった。

 

「【恋する乙女】は戦闘では破壊されない‼︎ そしてこのカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時、相手フィールドの表側表示モンスター1体に乙女カウンターを1つ置く事ができるよ‼︎」

 

 うわ、やっぱりそんな効果も持ってたのか。原作だと相手からの攻撃のみ、戦闘したその相手モンスターにしか乙女カウンターを置けず、それもダメージ計算後に発動するようになっていたけど、ダメステ後に適用可能はさすがにキツいな……

 

『す、すまないお嬢さん。怪我はしてないか?』

『あぁ……お優しいのですね、ヘヴィ・ボーカー様。こんな私の事を心配してくださり、ありがとうございます……』

『いや、君が無事ならばよかった。俺とて、闘う気の無い者を傷つけたくないからな』

 

 そう言いながら【恋する乙女】の手を優しく取るヘヴィ・ボーカーだけど、こうなったのは【恋する乙女】が自分から仲間を護るために行ったからだからな? 少なくとも『護る』名目で闘う気はあったと思うよ? 多分。

 

 

VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ヘヴィ・ボーガー】

乙女カウンター:0 → 1

 

 

「とにかく、今はこれ以上攻撃できるモンスターがいないから、バトルフェイズ終了……したいけど、何か発動したいカードとかないかな?」

「あぁ……今はないよ」

 

 ホッ……【最終突撃命令】とかあったらどうしようかと思ったけど、その心配はないようだ。もしアレがあってホーリー・スーまで攻撃を強要されたらどうしようかと思ってたところだよ……

 

「何もないならカードを2枚セットし、永続魔法【強欲なカケラ】を発動‼︎ これでボクはターンエンドだ」

 

 うーん……カウンターの乗ったヘヴィ・ボーカーを残す羽目になっちゃったな。強化実装された【恋する乙女】の事だから、あの効果も備わっているだろうけど、大丈夫だろうか……

 

 

間藤

LP:4000

手札:4枚(【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ラゼン】×2、【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) マッドラヴ】×1)

フィールド:

VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ヘヴィ・ボーガー】ATK:2500(乙女カウンター:1)

VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ホーリー・スー】DEF:2000

【強欲なカケラ】

伏せカード×2

 

vs

 

レイ

LP:4000

手札:2枚

フィールド:

【恋する乙女】DEF:300

セットモンスター×1

伏せカード×1

 

 

「ボクのターン、ドロー‼︎ ボクはセットモンスターを反転召喚‼︎」

 

 おっ? ここで反転召喚? って事は、あのカードはリバースか反転召喚する事で効果を発動するモンスターかな?

 

 

【デス・ラクーダ】

ATK:500

DEF:600

 

 

 こうしてセット状態から姿を見せたのは、包帯の巻かれた不気味なラクダのゾンビ。『ウゥ〜』と呻きながら、その眼球の見えない白い目でボク達を見据えた。

 渋いカードをデッキに入れたなァ……っていうか、【恋する乙女】のデッキにそんな不気味なモンスターを入れて大丈夫なのかよ。【恋する乙女】が怖がらないのか──って頭撫でてるよ。しかも絆してるし。

 

「【デス・ラクーダ】の反転召喚成功時の効果発動‼︎ カードを1枚ドローするよ‼︎」

 

 なるほど。【恋する乙女】でコントロールビートしていき、彼女によって護られている【デス・ラクーダ】の反転召喚で繰り返しドローをしていく……というのが、あのデッキの算段ってわけだね。護りながらドローソースを毎ターン稼ぐ……やるじゃん。

 

「チェーンして【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ホーリー・スー】の効果発動‼︎ 【VS(ヴァンキッシュ・ソウル)】の手札を見せて発動する効果は相手ターンでも使える‼︎」

「嘘ッ⁉︎」

 

 いいえ、ケフィア──じゃなくて本当です。

 【デス・ラクーダ】の2回目の呻き声に合わせて、ホーリー・スーが杖を掲げその宝玉から光を放つ。さて、今度はどいつをサーチするとしようかなー?

 

「ってなわけで、【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ラゼン】と【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) マッドラヴ】を手札から見せ、効果適用───」

「これ以上手札の増強はさせない‼︎ 速攻魔法【禁じられた聖杯】を発動‼︎」

 

 ゲッ。ドローフェイズで引き当ててたか。

 

「フィールドのモンスターの攻撃力を400ポイントアップさせ、効果を無効にする‼︎ これでホーリー・スーのサーチ効果は使えないよ‼︎」

「やってくれたね……‼︎」

 

 ホーリー・スーの上空に、金色の水呑が現れては注ぐように傾く。そこから垂れ流れる清い液体がホーリー・スーの身体に浸透していき、彼女はそれによる感覚に襲われ、杖を落としてしまった。

 

『ッ……‼︎』

《あいたっ⁉︎ スー、せめてもうちょっと優しく置いて⁉︎》

 

 さすがにそれは難しくね? 神界で作られた液体は普通じゃないから。多分。

 

 

VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ホーリー・スー】

ATK:500 → 900

 

 

「よし……後はチェーンされたカード効果の逆順処理をするだけだね。ホーリー・スーの効果は不発になり、【デス・ラクーダ】の効果でボクはカードを1枚ドロー‼︎」

「うーむ、手札を増やされるのはやっぱり地味にキツいよなァ……」

 

 ボクがそう呟いている間に、【デス・ラクーダ】に巻かれている包帯の一部──首元辺りから1枚のカードがチラリと出てきた。それに気づいた【デス・ラクーダ】がそのカードを口に咥え、レイちゃんに投げ渡した。肉片も一緒に渡してないかな?

 

「サーチは封じられたけど、それ以外での手札を増やす方法が無効にされなかったわけじゃないもんねー。ヘヴィ・ボーカーの効果‼︎ 闇属性のマッドラヴを見せ、カードを1枚ドロー‼︎」

 

 さて、今度は良いカードが引けたかな? ……あぁ、このターンに動けるカードではないか。しゃあない、今日は引き運が悪かったという事にしておこう。

 

「それでもボクのすべき事は変わらないよ、間藤先生‼︎ 【恋する乙女】を攻撃表示に変更し、バトル‼︎ ボクは【恋する乙女】で【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ヘヴィ・ボーガー】を攻撃‼︎」

 

 おっ? ダメージ覚悟で突っ込んで来るか? いいぜ来いよォッ‼︎

 変に意気込んでいる中、【恋する乙女】がとととと……って感じにヘヴィ・ボーカーに向けて走って行った。

 ヘヴィ・ボーカーの方は……うん、この後どうすればいいか分からなくてオドオドしてるな。別に突っ立っているままでよくない?

 

「ここでリバースカードオープン‼︎ 永続(トラップ)【スピリットバリア】‼︎ このカードが魔法(マジック)(トラップ)ゾーンに表側で、尚且つボクのフィールドにモンスターが存在する限り、ボクへの戦闘ダメージは0になる‼︎」

 

 うへぇ、また予想が的中したよ……OCG化した方なら、戦闘ダメージを受けずとも効果を発揮できるだろうなと思ってたから、絶対戦闘ダメージも防ぐと思った。さらにキツくなった……

 

「攻撃続行だよ‼︎ 一途な想い‼︎」

『ヘヴィ・ボーカー様‼︎ 私の一途な想い、受け取って〜‼︎』

『えっ。あ、いや、その……えっと……』

 

 ついに【恋する乙女】の攻撃が発生。彼女がヘヴィ・ボーカーに向けて飛びついてきたため、ヘヴィ・ボーカーは自身の硬い装甲に彼女がぶつからないようにと、彼女を巨大な腕で優しく受け止めた。

 

『だ、大丈夫だったかい? お嬢さん』

『ヘヴィ・ボーカー様……一度にあらず、二度も私の事を心配してくださるのですね……』

 

 オイ、なんか背景がお花畑になってるんだけど。周りの空気もピンク色になってるんだけど。ハートの模様もたくさん出てきたんだけど。なんだこの時間。

 

『逞しいながらもお優しいヘヴィ・ボーカー様……どうかその力、私達のために振るってくださいませんか?』

『ウッ……』

 

 にこやかな笑顔でヘヴィ・ボーカーをこちら側へと誘ってくる【恋する乙女】。それに対してヘヴィ・ボーカーは仲間を裏切りたくないがために、どうにかして断ろうと考えているようだが……

 

「【恋する乙女】が相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動できる効果はもう1つある‼︎ それは、乙女カウンターの乗ったモンスター1体のコントロールを得る事‼︎ よってヘヴィ・ボーカーをボクのフィールドへと移動させ、そのままホーリー・スーを攻撃‼︎」

 

 正常に発動したカード効果に、ソリッドビジョンが勝てるわけねェだろうがッ‼︎

 ってなわけで。

 

『クッ……すまない、ホーリー・スー‼︎』

『ブエッ』

何故(なにゆえ)〜〜〜〜〜〜⁉︎》

 

 ヘヴィ・ボーカーはそのままレイちゃんのフィールドへと移動し、そのままボクのフィールドへと跳躍。ホーリー・スーの足元を殴りつけ、それによる衝撃と震動によってホーリー・スーはそのまま吹っ飛ばされていってしまった。

 

「よし、続けて【デス・ラクーダ】でダイレクトアタック‼︎」

 

 後に続くように、【デス・ラクーダ】の包帯の一部が1人でに動き、それがボクの頭を叩いた。

 

「あいたっ‼︎ 肉体とかで攻撃しないんかいっ‼︎」

 

 

間藤

LP:4000 → 3500

 

 

「メインフェイズ2‼︎ ボクもヘヴィ・ボーカーの効果発動‼︎ 手札の闇属性である【D.D.クロウ】を見せてからカードを1枚ドロー‼︎」

 

 ゲッ、早速ヘヴィ・ボーカーの効果を利用されてしまったじゃん。しかも【D.D.クロウ】を公開って、ボクのモンスターの蘇生を一度だけ封じられるじゃん。

 ボクの伏せカード、どれも墓地のモンスターを対象に取って蘇生するカードなんだよね……一時的に封じられたってわけか……

 

「そしてボクはモンスターをセット‼︎ さらにリバースカードを2枚伏せてターンエンド‼︎」

 

 うわ、またセットモンスター込み……また反転召喚モンスター? それとも普通にリバースして効果発動できるモンスター? うーむ……分からん。そもそも【恋する乙女】のせいで戦闘破壊はできないし、困ったもんだ……

 

 

間藤

LP:3500

手札:5枚(【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ラゼン】×2、【VS(ヴァンキッシュ・ソウル) マッドラヴ】×1)

フィールド:

【強欲なカケラ】×1

伏せカード×2

 

vs

 

レイ

LP:4000

手札:1枚(【D.D.クロウ】×1)

フィールド:

【恋する乙女】ATK:400

VS(ヴァンキッシュ・ソウル) ヘヴィ・ボーガー】ATK:2500(乙女カウンター:1)

セットモンスター×1(【デス・ラクーダ】)

【スピリットバリア】×1

伏せカード×2

 

 

 むむぅ、ここまで戦況を狂わされるとは思わなかったな……さて、この【恋する乙女】コントロールビートデッキにどう対抗すべきか……

 




ホーリー・スーの効果……サーチではなくリクルートだって事を、後編の編集中に知りました。でも個人的に戻れないところまで来ちゃったから、このままいきます……

初めてコメントで教えられる前に自分からプレミに気づいたのは、まぁマシな感じ……?
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