OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜 作:名無しのモンスター
翼「え?」
ウチの複数あるデッキの内の、3体の精霊がまさかのアカデミア新人教師になったという、意味不明☆で望んでないサプライズがあった入学式終了後。俺は重たく感じた足取りで校舎を出た。
「ハァ……なんであんなことになったんだよ……ってか精霊全員の行動なんか読めるかってんだよ。たくさんいるわけだしさぁ……」
今更後悔してももう遅い、と思われるような愚痴を溢す俺。それが我ながら虚しく感じたのかさらに足取りが重くなったように感じた。
この世界でこんなにも辛いって思えたの、ラー様とユベルが来た時以来だぜ……あの時の方が結構堪えたけどね。ハァ……早く帰って歓迎会が始まるまで休みたい……
『ご、ご主人様……あ、後で私の作るお菓子を食べて元気を出されては……?』
「(ありがとうティルル、そうさせてもらうよ)」
労ってくれるのは嬉しいよティルル。だけどアレイスター達が教師になっていた時に彼らをなんとかしようとしなかった事は覚えてるからな? どうすればいいのかわからず困っていた感じだったとはいえ、この事実は隠せれないと思えよ?
と、そんな理不尽な怒りの矛先を向けていると。
「あー‼︎ いたいたー‼︎」
「ちょっ、ちょっと待ってよアニキー‼︎」
と、そう元気ハツラツな声で叫びながらこちらへと駆け寄って来た少年がいた。クラゲみたいな髪型を茶髪で、赤い制服──オシリス・レッドを着ている少年。こいつは確か……
「どちら様? 俺、お前になんか恨みを買うようなことしたか?」
「? そんな事された覚えはないけど、なんでそんな事言うんだ?」
「いやすまん、悪気はなかった。そっちから話しかけてきたもんだから、念のため聞いてみただけなんだ」
「そうか? なんか悪いな……おっといけね、名前言わなきゃ。俺はオシリス・レッドの遊城 十代って言うんだ‼︎ よろしくな‼︎」
遊城 十代。この遊戯王GXの世界の主人公だ。カッコいいヒーローに憧れており、このアカデミアでは珍しく勝敗など気にしないタイプで、何よりデュエル大好きな、テンプレ少年漫画の主人公……だったと思う。
「ラー・イエローの王辻 翼だ、よろしく。で、そっちの眼鏡の少年は?」
よく見れば十代の隣に見覚えのある顔の奴がいたもんだから、どちら様なフリをしてそいつに話しかける。小柄で幼い外見が特徴で鼻眼鏡をしており、水色の髪で左右に髪がはねている少年。こいつはパッと見で分かったぞ。
「ボ、ボクは丸藤 翔っす。十代のアニキと同じオシリス・レッドっす」
中盤までは小心者だったけど、だんだんと成長していく少年の丸藤 翔だ。十代の事を初めて会ったばかりなのに『アニキ』と呼んでいる事から、十代に影響して成長してくれることだろう。そう確信できる。
後、彼の使うテーマ【ロイド】は正直良かったんだよなぁ。乗り物をコミカルなモンスターにしてるような彼らと一緒に翔と闘う姿、あれぞ成長していく弱気な少年の相棒達って感じがしてそこそこ良かった。
なのに【スピードロイ○】という同じ【ロイド】の名前の同じ機械族が出たせいなのか、アニメ終了後の新規が少ない気がするし今後も出そうにない気がしてるんだよなぁ……【スピードロ○ド】もぶっちゃけ超好きだけど、それよりもっと先のアニメに出た【ロイド】ももっとすこれよK○NAMI。
「あ、あの……どうかしたっすかそんなに見つめてきて? ボクの顔に何か付いてたとか……?」
「あ、すまん。どっかで聞いたことあるような名前が聞こえた気がしたけど気のせいだったよ」
「は、はぁ……?」
いけないいけない、どうやらジロジロと翔の顔を見てしまっていたようだ。こういう行動は怪しまれるし、気をつけよ。
「ってか十代。なんか俺に用がある感じだったけど、一体どうした?」
「あ、そうだった。なぁ、俺とデュエルしようぜ‼︎」
うん、だと思ったわ。ただ、このデュエルバカの事だから絶対デュエルしたがるとは思ってたけど、まさか初日から俺に申し込んでくるとは思わなかったよ……
「ア、アニキ⁉︎ 突然そんな事言っても翼君が困っちゃうだけっすよ⁉︎」
ホラ、翔もやめとけみたいな事を言ってるよ。少しは他人の事を考えなよ……ま、嫌いじゃないけど。
「一応聞く。なんで俺なんかにデュエルを申し込んできたんだ? ここはアカデミアなんだから、他にもデュエリストはたくさんいる。だから迷惑かどうか考えながらその人に申し込めばいいだろ。なのに何故俺を?」
「まぁ、確かに楽しくデュエルできるなら誰でもいいってのはあるけどさ……」
やっぱりデュエルの相手は誰でもえぇやんけ。
「でもでも‼︎ 俺電車の事故で遅れて見てなかったけど、お前が変幻自在のドラゴン達を使いこなして試験官を3ターン目で倒したって噂を聞いたんだ‼︎ そんなにスゲー奴がいるってんなら、闘ってみたくなるもんだろ⁉︎」
「そ、そうか? 普通なら強者には自分から勝負を挑むべきじゃないとは思うんだが……」
でも、逆に考えれば俺の実力が、これからすごい事をしていく主人公のお眼鏡に叶っているってことになるんじゃないか? なんか、照れちゃうな……
よし、と。決めた。
「今の俺は気分が良くなった。誰もいなさそうで安全な平地に行くぞ。そこでなら誰にも邪魔されにくい」
「ええっ⁉︎ 受けるの⁉︎」
「おっ、マジで⁉︎ いいのか‼︎」
「ただし。歓迎会には出たいからな、時間的にヤバいと感じたら途中でも切り上げる。さすがに生徒同士での交流できないのは嫌だし、お前達にも歓迎会に遅れてもらいたくないから」
「あぁ、わかった‼︎」
条件付きでデュエルしてもOKってやってやった。よく考えればここで断ってもいつかまたデュエルしろと申し込んできそうだし、面倒ごとになるヤツは早急に終わらせるのが一番だな。うん、この判断は間違ってないはず。
「(悪いなティルル、ティータイムはまた今度な)」
『いえ、ご主人様が元気を取り戻したのなら構いません。ティータイムしなくてもいいのかと言うと嘘になりますが……』
さっきティータイムを薦めてくれたティルルは許してくれたけど、ティータイムしたかったと不満を溢して残念がっている表情をしていた。あぁ……こりゃあどっかのタイミングで慰めてやらんとな。
「おーい‼︎ 早くデュエルできそうな平地を探そうぜー‼︎」
「ちょっ、アニキ待ってよー‼︎」
「はいはい、すぐ行くから落ち着けや」
十代に急かされたのでさっさと行くとするか。そんなに急かしてもデュエルは逃げんぞー。あ、俺が一応制限時間みたいなもんを設けてたんだった。そりゃ早くデュエルしたくなるよな。
……さてと。
「(見えてるかユベル? あいつがお前の持ち主である遊城 十代だ)」
『彼が十代。ボクの主人……か』
ユベルのカードが入ったペンダントを軽く握り、彼に十代の事を見るように促した。
遊城 十代はこの世界の主人公。ユベルは元々この世界の主人公が昔所持していたカード。ここまでいけば利点が合うはずだ。
そう、あの遊城 十代こそが、ユベルの元々の使い手だったのだ。
だけど。幼少期の十代に勝って悲しませたりした友人や近所のお兄さんを昏睡状態に陥れたりしたせいで宇宙に放り込まれ、原作と異なり俺のカードと一緒に正しき闇の力を取り込んだら、まともな性格になった代わりに記憶喪失になってしまったんだよなぁ……
アレ? なんか似たような説明を誰かにした気がするんだけど……気のせいか? まいっか。
「(どうだ? 少しは彼との記憶が蘇ったか?)」
『いや、不思議なことに彼を見ても何も思い出せないんだよね。長く一緒にいて深い思い出があるというのなら、この場で会って何かしら思い出せるはずなんだけど……なんか記憶の蓋を押さえつけられてる感じがするよ』
「(……そっか。悪いな、無理に思い出そうとしなくていい。心身の安全を第一にしたいからな)」
『すまないね、翼』
で、結局このタイミングではまだユベルは十代との記憶が思い出せない模様。まぁよく考えたら、このタイミングで記憶を思い出してしまったら原作通りの性格に戻る可能性もあるだろうし、気長にその時がくるまで待つとしようか。
『シリアス場面ではヲーはあの少年と共闘できるのだろうか?』
「(タッグデュエルがあればなんとか……ですかね)」
♢
デュエルできそうな場所を探し始めて僅か3分。それっぽい平地を見つけたので、俺と十代は早速デュエルすることに。
「アニキー‼︎ 頑張ってねー‼︎」
「おう‼︎ 見ててくれよ翔‼︎」
『共に頑張りましょう、ご主人様‼︎』
「(あぁ、頑張ろうなティルル)」
『このヲーも応援しているのだ、恥を掻くようなデュエルはするでないぞ‼︎』
『ま、悔いが残らないようにね』
「(ラー様もユベルもありがとう……ってかユベル、お前は十代の事も応援してやれよ)」
『記憶喪失の奴が応援してもおかしくないかい?』
「(そんな事……まぁいいや、とりあえず頑張るわ)」
それぞれが声援を貰う中(俺の場合はカードの精霊なので向こう側は貰ってるようには見えてないけど)、俺と十代はある程度距離を置いたところでデュエルディスクを展開して構え、デュエルの準備を整えた。
始まるんだな、主人公とのデュエルが……‼︎
「いくぜ翼‼︎」
「来い、十代‼︎」
「「
翼
LP:4000
十代
LP:4000
「先攻は俺からだ‼︎ ドロー‼︎」
「ゲフッ」
「「えっ⁉︎」」
あ、いっけね。開始早々やらかしたわ。こんなことしたらとんでもない誤解されるってのに。しかもこの吹き出たヤツ……最悪だ。
「ちょっ、大丈夫っすか⁉︎ 急に吐血してるじゃないっすか⁉︎」
「大丈夫大丈夫、先攻ドローアレルギーが出ちゃっただけだから。これすぐに治るから気にしないで。後この赤い液体、トマトジュースね」
「いや気にしないでって──アレ? なんかトマトの匂いがするっす」
「えっと……ってことは、身体は問題ない……ってことか?」
「そゆこと。だから早く続けて続けて」
クソが。マスタールール2アレルギーのせいで朝飲んだトマトジュースが逆流しちまったじゃねェか。
いや、俺は悪くないからな? マスタールール3以降のルールが好きなのにそのルールに変換しなかった神様に非がある……とは思えないな。変えてから俺を転生させたら世界が崩壊しかねないとか言ってたし、うん。
あ、そうそう。マスタールール3以降が好きだとは言ったけど、実際に好きなのはマスタールール3とマスタールール2020だけ。ただしマスタールール4、後つけもの、テメーはダメだ。
「ま、まぁ大丈夫なら続けるぜ‼︎
いやいきなりお前のデッキのキーカードである【融合】を使うんかい⁉︎ まだ物語の序盤だから早くても3ターン目以降に使ってくるかと思ってたぞ⁉︎
「手札の【
十代の頭上から、2体のモンスター……否、ヒーロー達がその姿を現す。
1体は水色のバイザーで顔を隠し、背中の黄金のウィングパーツと黄金の胸当てに群青のヒーロースーツに身を包んだ稲妻のヒーロー。もう1体は細身ながらも筋肉隆々な赤いヒーロースーツの上に赤黒い鎧を身に着けたヒーローであった。
その2体のヒーローの背後に渦が発生し、その中に2体とも溶け込むように混ざり合う。そして渦が発光したかと思えば、全く異なる姿を持つ1体の戦士が姿を現す。
「現れろ、【
【
ATK:2000
DEF:1000
全身を稲妻の模様が刻まれている黒いヒーロースーツで包み、両肩より黄金の翼型のアーマーを伸ばしているヒーローが『トアァッ‼︎』と力強く叫びながら降り立った。
しかしマジか……まさか1ターン目から十代の十八番である融合をしてくるなんてな。ステータスはそこそこぐらいとはいえ、そうするまでに俺の強さに対する評価が高いのか? それとも何か別の理由が……?
「アニキ、いきなり融合しちゃうの⁉︎ まだ先攻1ターン目なのに⁉︎」
「へへっ。こうでもしないと、翼が試験の時みたいな実力を発揮してくれねーんじゃないかなって思ったからさ‼︎」
……なるほど、俺に手加減させないための処置といったところか。まぁそりゃそっか。全力のデュエルができないなんてこと、十代が認めるわけないもんな。
「永続魔法【補給部隊】を発動‼︎ さらにカードを1枚伏せてターンエンドだ‼︎ さぁ来いよ翼‼︎ お前の力、俺に見せてくれ‼︎」
さらに丁寧に備え付けまでしちゃってまぁ……そんなに俺の全力プレイングが見たいってのか?
十代
LP:4000
手札:1枚
フィールド:
【
ATK:2000
【補給部隊】×1
伏せカード×1
「見たけりゃ見せてやるよ、俺のプレイングをな‼︎ 俺のターン、ドロー‼︎」
早速俺の手抜き無しのプレイングを魅せに出掛ける‼︎ 後に続け俺のデッキのモンスター達‼︎
「俺は【ドラゴンメイド・ティルル】を召喚‼︎」
『ご主人様が1ターン目から私を⁉︎ 頑張りますね愛しのご主人様‼︎』
【ドラゴンメイド・ティルル】
ATK:500
DEF:1700
青い角に鱗付きの赤い尻尾を持ち、赤い長髪を靡かせるエプロン風のメイド服を着た女性──ティルルが姿を現した。早速こいつの効果を使わせてもら───
待てティルル。尻尾を勢いよくブンブン振り回しながら俺を見つめてくるな。後なんかお前の周りにハートが出てくる幻覚が見えるんだけど。デュエルに集中して?
「や、やっぱり可愛い……でも、試験みたいになんか様子がおかしいような気が……」
「? なんだ? 試験で何かあったのか?」
「いや、試験でも何やらこのモンスターだけ翼君に対して猛烈なアピールをしていた時があったっす。デュエルの後は念のためデュエルディスクの検査をしたけど、不調や違法となる改造をしていた跡とかも全くなくて……」
うん、そう。ティルルが俺に対する強い好意を向けていたから不審がられたよ。だから実はあの試験の後、無実を証明するために試験の人達にお願いしてデュエルディスクの確認してもらったってわけ。そして晴れて無実確定。変な取り調べも無し。やったぜ。
「ふーん……ま、俺は問題なくデュエルできるってんならなんでもいいぜ‼︎ それにさ? 裏を返せばあんな反応をする程、このモンスターは翼の事を信頼してるってことだろ? 寧ろ良いことだって‼︎」
「……あぁ、俺もそう思う」
ティルルに今はデュエルに集中しろと合図を送り我に帰ってもらいながら、十代の意見に賛成の意を示す。さすがは同じカードの精霊が見える男、理解が良くて助かる。
「納得してくれたところで続けさせてもらうぜ。【ドラゴンメイド・ティルル】の効果発動‼︎ 召喚・特殊召喚に成功したため、デッキから【ドラゴンメイド】モンスターを1体手札に加え、手札の【ドラゴンメイド】モンスターを1体選んで墓地に送る。【ドラゴンメイド・チェイム】を手札に加え、【ドラゴンメイド・フランメ】を墓地へ」
『先程お恥ずかしい姿を見せてしまいましたが、効果処理はきちんと行います‼︎』
ティルルが生クリームを泡立てる仕草を見せれば、出てきた生クリームの冷気が別の龍の角と尻尾のついたメイドを形取り、ボウルの入った生クリームには龍の模様が形取られていた。
冷気が徐々にカードそのものの姿になったのに合わせ、俺がデッキの中のカードを2枚引き抜き、それぞれ手札と墓地ゾーンに加える。
そしてデッキゾーンにセットさせた途端、俺のデッキはデュエルディスクの機能によってシャカシャカと動いた。
「なんだそれ⁉︎ デッキが勝手にシャッフルされたぞ⁉︎ スゲェ‼︎」
「ウチの知り合いが合格記念だと言って、デッキの中が勝手にシャッフルされるようにと、除外ゾーンの拡張と共に合法的に改造してもらったんだ。デュエル中にデッキ外から別のカードが加わったり、イカサマなどでデッキトップの固定がされたりしないようにと施された、不正やトラブル防止用の機能だ。後カードを痛めない」
「自分からイカサマするのを防ぐのか⁉︎ フェア感もあってカッコいいぜ‼︎」
本当は前からマッドラヴに改造してもらったものなんだけどね。でも合法なヤツだし、試験後の検査もお咎めがなかったし、全く持ってモーマンタイだったんだぜ? イェイ。
ん? 何故わざわざシャッフル機能や除外ゾーンをつけてもらったかって? こうした方がデュエルディスクのカッコ良さがあっていいだルォ⁉︎
後、一々デュエルディスクから取り出してシャッフルしたり除外する時にカードをディスクから取り出して戻したりするのめんどい(こっちが本音)
「ってかちょっと待つっす⁉︎ フィールドに炎属性のティルルちゃんがいて……」
ティルルちゃん?
『なんか、ラティスさん以外の人にちゃん付けで呼ばれるのはこそばゆいですね……』
だろうね。
「そして今さっき墓地に送られた【ドラゴンメイド】は、同じ炎属性でレベルが違うフランメ……まさか⁉︎」
「えっ? なんかあるのか?」
翔の奴、試験を見てたから察したみたいだな? そうよ、そのまさかよ‼︎
「ご明察だぜ‼︎ エクス……じゃなかった、融合デッキのこのカードは、自分のフィールド及び墓地から1体ずつ、同じ属性でレベルが異なる【ドラゴンメイド】モンスターを除外した場合のみ特殊召喚が可能‼︎」
またエクストラデッキと言いかけちゃったよ……この時代はまだエクストラデッキのカードが融合しかいないし世界観を合わせるために他のを入れてないから、どうにもエクストラデッキを融合デッキと言うの慣れないんだよなぁ……
「やっぱり……‼︎」
「融合系カード無しに自力で融合⁉︎ そんなカードがあったんだな‼︎」
「俺のフィールドには炎属性でレベル3のティルルが、墓地には炎属性でレベル8のフランメがいる。よってエク……んんっ。また言いかけたよ……融合デッキから特殊召喚するための条件はこれで満たされた‼︎」
『ラティスさん、どうかご主人様に勝利を……‼︎』
ティルルが祈りを始め、背後から背中や尻尾の赤い鱗を輝かせる巨体の龍──ティルルの変身体であるフランメが半透明で出現。ティルルを翼と尻尾で抱擁するように覆えば、1人と1匹の体が1つの光となって全身を包まれ、やがて足して割っているかのように縮小しながら姿形を変え始めていく。
「同じ従者である仲間に導かれ、光の従者よ、今ここに‼︎ 融合召喚‼︎ いでよ、【ドラゴンメイド・ラティス】‼︎」
【ドラゴンメイド・ラティス】
ATK:2000
DEF:3000
光が収まり、ティルルとフランメの代わりに、高級かつ清楚なレディースメイドのドレスを着た、白がかった金髪の美少女が降り立った。こいつが出れば、【ドラゴンメイド】は自分達のしたかった動きがある程度できることだろう。
『それではご主人様、本日もラティスは皆様のために誠意を尽くして参りますの』
「(あぁ、頼むぜラティス)」
ラティスが『〜の』というお嬢様口調で自分は頑張るよアピールをしてきたため、俺はそれに応じる。そしたらニコッとした優しい微笑みを俺に浮かべてきた。
こいつはティルルやチェイムみたいに好き好きオーラをぶつけないはず……なのに何故俺はこいつに後退りしちゃうのだろうか? 別の意味で怖い……
「守備力3000はスゲェな……けど、攻撃力の方はダーク・ブライトマンと互角。このまま攻撃するとなると相打ちだぜ?」
「おっと、デュエルで大事なのはステータスじゃなくて効果だぜ? 俺はそう思う」
なんか十代が、まるで俺が何か対策してることをお見通ししてるようなことを言ってきたため、俺はデュエルに集中し直しながらそれっぽいことを言ってカッコつけることに。寧ろなんか俺がそうすることを期待してないかこいつ?
「【ドラゴンメイド・ラティス】の効果発動‼︎ このカードが特殊召喚した場合、デッキからレベル4以下の【ドラゴンメイド】モンスターを1体特殊召喚することができる‼︎ 【ドラゴンメイド・パルラ】を特殊召喚‼︎」
『かしこまりましたの。パルラちゃん、出番ですの』
『はいよっと‼︎』
【ドラゴンメイド・パルラ】
ATK:500
DEF:1700
ラティスが懐からエメラルドを取り出し翳せば、掌から発せられた光に包まれたエメラルドは徐々に姿・形・大きさを変えていく。光が収まった時には、それはミニスカート調で露出度がそこそこ高い黄緑色の髪のメイドとなっていた。
あ、口の周りにクッキーの食べかけがついてるやんけ。こいつまたメイドの仕事サボってつまみ食いしたな? 仕事は完璧とはいえ、このサボり癖とつまみ食いの癖はなんとかならんものか……
まぁいいや、デュエルに集中集中。
「【ドラゴンメイド・パルラ】の効果発動‼︎ 召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから【ドラゴンメイド】カードを墓地に送ることができる。ここで墓地に送るのは【ドラゴンメイドのお片付け】だ」
『フフンッ♪』
ティーカップとティーポットを取り出したパルラ、それらを用いて上品に紅茶を注ぐ。注ぎ終わった紅茶の表面には、【ドラゴンメイド】達が片付けの作業を行っている様子が描かれたシルエットを写しているように見えた。
「
「結構回してくるな……‼︎」
こいつはドローソースとしてだけじゃない。いざという時のためのブラフ要因としてだけでなく、【
この時代に少しでも多くドローソースを入れることは大事だと俺は思ってるよ? チューナーが使えないこの世界で、チューナーが多い手札誘発のカードを抜くとデッキに入れられる手札誘発が限られるからな。それらを持っていきやすくするために入れてるってわけ。
さてと……そろそろ攻撃する準備は整ったかな。
「バトルフェイズに入る。そしてこの瞬間、【ドラゴンメイド・パルラ】の効果発動‼︎」
「アニキ気をつけて‼︎ パルラが変身する‼︎」
「おっくるか‼︎ 【ドラゴンメイド】の注目すべきだという効果‼︎」
「自分・相手のバトルフェイズ開始時、このカードを持ち主の手札に戻し、自分の手札・墓地からレベル8の【ドラゴンメイド】モンスターを1体選んで特殊召喚することができる‼︎」
『それじゃ、早速お見せしよっかな‼︎』
フフンッと微笑みながら、パルラはその場でくるりと美麗に一回転した。それと同時に、彼女の背中からイメージカラーに合わせた龍の翼が生えて広がりだす。そして瞬く間に全身が光に包まれ、姿を大きく変貌させる。
「パルラよ、【ドラゴンメイド・ルフト】となれ‼︎」
【ドラゴンメイド・ルフト】
ATK:2700
DEF:1700
光が収まれば、パルラは龍の姿へと変貌させていた。腹部に白・背中に濃い緑色の羽毛を持っている黄緑色の龍だ。
「おおおおおお‼︎ これが【ドラゴンメイド】の変身か‼︎」
「ヒーローとは違った変身はお気に召したか?」
「あぁ‼︎ 強いドラゴンに変身する奴なんて見たことないから、スゲー興奮する‼︎」
へへっ。やっぱり十代は【ドラゴンメイド】を気に入ってくれたみたいだな。こっち魅せてやった甲斐があったってもんよ‼︎
「【ドラゴンメイド・ルフト】でダーク・ブライトマンに攻撃だ‼︎ フレンツブラスト‼︎」
「おっと、そいつは通させないぜ‼︎ リバースカードオープン、【ヒーローバリア】‼︎ 自分フィールドに【E・HERO】と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、相手モンスターの攻撃を1度だけ無効にする‼︎」
ルフトが口の中で溜めてから放った黄緑色のレーザーを、ダーク・ブライトマンの視界を覆うように現れた風車のようなバリアが、旋風を巻き起こしてレーザーを相殺させる。
攻撃を止められたか……だがこれで十代の伏せカードを使わせた。
「攻撃権が残ってるのは、ダーク・ブライトマンと攻撃力が同じラティスだけ‼︎ そう易々と攻撃できな───」
「ラティスでダーク・ブライトマンを攻撃‼︎」
「えっ⁉︎ 攻撃すんの⁉︎」
俺が同じ攻撃力のモンスターをぶつけようとしていることに驚く十代を無視し、ラティスは両手で三角の形を作りながら光の弾丸を生成させ始めた。
「ダメージ計算開始時に速攻魔法【禁じられた聖槍】を発動‼︎ 対象のモンスターの攻撃力を800ポイントダウンさせ、
「やっべ⁉︎ そういや翼の手札は6枚もあるんだった⁉︎ だったら速攻魔法が手札にあってもおかしくねェ‼︎」
納得してくれて何よりだ。と思っていたところに、上空から薄白く発光している槍が降り掛かり、それがラティスの弾丸を受け止めようと構えていたダーク・ブライトマンの右腕を弾く。
【
ATK:2000 → 1200
「いけラティス‼︎ レディネスシュート───」
『○功砲ー‼︎ ですの‼︎』
「(気○砲って言いやがったよこいつ⁉︎)」
手の形からして言いそうな名前をホントに叫んだラティス、光の弾丸を発射させ怯んでいるままのダーク・ブライトマンの身体を覆い尽くす。防御態勢を崩されたダーク・ブライトマンはその弾丸に耐え切れず爆発を受けながら消えてしまった。
「くっ‼︎ やるな‼︎」
十代
LP:4000 → 3200(2000 - 1200 = 800)
「けど、このままやられっぱなしとはいかないぜ‼︎ 破壊されたダーク・ブライトマンの効果、それにチェーンして【補給部隊】の効果発動‼︎」
あ、ヤベッ。ダーク・ブライトマンにはこのタイミングで発動できる効果があるのか。昔の融合ヒーローなんて種類が豊富な上にマイナーもそこそこあるんだ。全部の効果を把握できるわけないやん。覚えてるのかも怪しい。
「チェーンの逆順に行っていくぜ。【補給部隊】の効果で1ターンに1度、俺のフィールドのモンスターが破壊されたため1枚ドロー。そしてダーク・ブライトマンの効果で相手フィールドのモンスターを1体破壊するぜ‼︎ 破壊するのは【ドラゴンメイド・ラティス】だ‼︎ そいつにもドラゴンの姿があったらいつ変身するか分からないからな‼︎」
巻き起こった爆煙から紫色の電撃がラティスに目掛けて襲い掛かる。俺もラティスもそれを防いだり回避したりする術を持っていなかったため、そのままラティスは『はわ〜』とゆるふわな悲鳴を上げながら電撃を喰らい、それによる爆発を受けて消えてしまった。
『ご主人様、ごめんなさいですの〜……』
「(心配するなラティス。すぐにフィールドに戻してやるからな)」
ラティスが破壊されたのは痛手だけど、それをカバーできるこのカードを【トレード・イン】の効果で引けてよかったぜ。というわけで早速使うとしますか。でもその前に……
「バトルフェイズを終了させ、【ドラゴンメイド・ルフト】の効果発動。自分・相手のバトルフェイズ終了時、このカードを手札に戻し、手札のレベル3の【ドラゴンメイド】を1体特殊召喚することができる。ルフトよ、守備表示で【ドラゴンメイド・パルラ】に戻れ」
『お疲れ様〜』
【ドラゴンメイド・パルラ】
ATK:500
DEF:1700
ルフトの全身が黄緑色の光で覆われたと思いきや、姿や形・大きさを変えていく。そして光が収まった時には、ルフトはパルラの姿へと戻っていた。
「また墓地肥やしか?」
「いや、パルラの墓地肥やし効果は1ターンに1度だけだ」
こいつらは昔のカードとは違って、なるべく禁止制限がかからないようにしてもらってるからな。名称ターン1での強力な効果は助かるぜ。
「メインフェイズ2。
『戻って参りましたの』
【ドラゴンメイド・ラティス】
ATK:2000
DEF:3000
エジプトの幸運のお守り等に使われる『アンク』と呼ばれる翡翠色の輪つき型十字架が現れたと思いきや、それは瞬く間に発光し、先程破壊されたはずのラティスをこの場に呼び戻した。
「ゲゲッ⁉︎ もうバトルは終わったとはいえ、また【ドラゴンメイド】を呼ばれたらまずい……‼︎」
「安心しろ、ラティスの仲間を呼ぶ効果も1ターンに1度だけだ」
「そ、そうか? なら安心した……」
まさかお前、俺がただ壁要因としてラティスを出したと思ってるな? そう勘違いしてると足元掬われるぜ?
「
さぁ十代、お前はここからどう動く?
翼
LP:4000
手札:3枚(【ドラゴンメイド・チェイム】×1、【ドラゴンメイド・ルフト】×1)
フィールド:
【ドラゴンメイド・ラティス】DEF:3000
【ドラゴンメイド・パルラ】DEF:1700
伏せカード×1
十代
LP:3200
手札:2枚
フィールド:
【補給部隊】×1
頑張ってデュエルを最後まで書いたら文字数がめっちゃ長くなったので、続きは次回に回します……
え?『後書きでもそんなこと言ってただろ』だって?……【ブレインコントローラー】召喚。効果発動。