OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜   作:名無しのモンスター

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前回のラストを見れば、こんなサブタイトルにした理由が分かる……はず。


ソ○モンよ‼︎ 彼は帰って来たァ‼︎

 

 デュエル・アカデミア対抗試合が、いよいよ明日に迫ってきた。コンディションを整えるために、俺は当日に使うデッキを決めて早めに寝る事にした。

 ちなみにデッキはもう決めてあるぞ。もちろんアカデミアでまだ使ってないデッキにしている。

 万丈目がいない間にみんなの前で使ったデッキは【HERO(ヒーロー)】しかないけど、海馬コーポレーションにて使ったor海馬社長に提供したデッキである【シャドール】と【ワイト】は既に知れ渡っているだろうから……

 

「……で、使うデッキを決めれたのはいいんだが」

『だが? 何があったのだ?』

「聞いたりあれ見たりすれば分かりますよね?」

 

 無垢のフリして問いかけてきたラー様に少しムカッとしながらも、俺は指差した方向に視線を向けるようにラー様に促した。その指差した方向にいたのは……

 

『オーッホッホッホッ‼︎ ついに(わたくし)がデュエル・アカデミアにて、愛しのマスター様の力になれる時が来ましたわ‼︎ これを騎士様がお聞きしたらどのような反応をしなさるでしょうね‼︎ あぁ当日が楽しみすぎて……は、はしたない笑顔になりそうですわね……えへへっ……』

 

 高らかにデカい声で1人呟いたかと思えば、急に別の意味でテンションがおかしくなるといった、1人で忙しい事してるお姫様がいた。途中で魔法少女に対して挙がった憧れを持つ、悪の組織のキャラみたいな危ない笑顔を見せながら。怖っ。

 

「こんなテンションになった彼女の対処、どうすればいいんですか?」

『汝への愛が強くてタイプの、人間に見えなくもない女の好感度を抑えろと? 《精霊ハーレム》のタグを回収しやすくなっておるのだから断る』

「断るなァッ‼︎ ってか、何か意味不明な事を言ったような気がするんですが、何なんですか?」

『気のせいである』

 

 理解した方がいいのかどうか分からない場面で、『気のせいだ』と言って誤魔化すのは良くないですよ。というか誤魔化せないですよ。

 

『彼女があぁなったのは、君への異性としての好感度が高いって事じゃないか。穿ってない……というよりは歪んでなければ問題ないし、色々とイイコトがあると思うんだけど』

 

 ユベル……愛に詳しそうなお前の事だから、まともな時にそういうのを言うとなんだか説得力があるな。けど……

 

「最後の『良い事』の言い方が、ちょっと良い感じの意見を全部台無しにしてんぞ」

『えっそうなの?』

 

 そんなつもりはない、みたいな感じが1番ムカつくんだけど。記憶と同時に人徳の一部が欠陥してんのか?

 

『しかし、何故あのお方のいるデッキをお使いになられる事に? 彼女が入っているデッキがかなりお強いのは確かですが……』

「ん? 理由が聞きたいのか?」

 

 ショートケーキとココアを持ってきてくれたティルルが問いかけてきたため、俺はちょっと最適そうな理由を考えてからこう答える事にした。

 

「そうだな……強いて言えば、たとえ初手が悪くてもきちんとカバーできるんじゃないかと思ってな」

『な、なんですかその理由……い、いえ、確かに初手が良くない場合の対策ができるデッキは、それで安定性があるのでとても良い事ですが、その……』

 

 うん、まるで妥協している感がある(・・・・・・・・・・・・・)とでも思ったんだろ? 分かる、分かるよ? 妥協するくらいならもっと真剣にデッキを選べ、と言いたげな感じが見え見えだもん。

 

「明日のデュエルはシリアス回並に大事なデュエルなんだからさ。いざという時に長期戦に持ち込みやすく勝てるデッキであれば、逆転も狙えるんじゃないか……俺はそういう観点を持ってして、アカデミア本校代表として闘っていきたいんだ」

『あ、あぁ……なるほど。つまりご主人様は、大事な場面で勝てそうにない状況になってしまう事を防ぎたい……そうお考えで、今回そのデッキを選んだわけなのですね』

「そういう事だ」

 

 ある程度は俺の思っている事を理解してくれたみたいだな。事故っても立ち直せるデッキなら、万が一の時でも敵側の代表と闘えるはず。俺はそれを考慮してこのデッキで挑む事にしたってわけ。これが伝わってくれると嬉しいぜ。

 そんな事を考えていると、例のお姫様がこちらへとターボ○美しながら向かってきた。豊潤でたわわな胸が揺れているのが見えるが、動きのせいで『厭らしい』よりも『ビックリした』な印象が強すぎる。

 

『つまりデッキの中にいる(わたくし)達が、マスター様の期待を裏切らなければよろしいのですわね⁉︎ お任せくださいましマスター様、貴方様に恥をかかせるような事は一切しないと誓いますわ‼︎』

 

 なんかこのお姫様、自分自身にプレッシャー掛けに行ってる発言してない? 恥をかかせるような事ってもしかして手札事故の事? 自分達の心身次第で初手の良さが変わる……とでも思ってるの? 聞いた事ないんだけどそんな能力。

 

「い、いやそれは運次第だからさ……あんまり色々な事を詰めすぎて体調崩さないようにな?」

『まぁ、マスター様は相変わらずお優しい……♡ はい、心得ましたわ‼︎』

 

 とりあえず適当な事を言ってリラックスしろと言ったら、すぐに理解してくれた感じになった。なんか頬を赤らめ息を荒くしているが、急に襲ってこない……だろうな?(震)

 

『ティルル……他の精霊の方々にも言えた事ですが、貴方もこれくらい積極的にならなければ、マスター様は(わたくし)が独占いたしますわよ?』

『なっ⁉︎ わ、私は独占欲があるわけでは……』

 

 なんかティルルを揶揄うような事しだしたから、脳天にチョップを入れてからデッキの中身を確認する事にした。なんか悶えている声が聞こえるが、まぁ気のせいやろ(知らんぷり)

 

 

 

 

 

 

 そして当日。本校への港──波止場にて俺や十代達、鮫島校長を含めた教師達に加え、大半の生徒が集まって来ていた。

 何故みんなして波止場に集まったのか? こうなると理由はもう明確。ノース校の者達は、母校の船に乗ってこちらに来るからだ。まぁこの本校が孤島なんだから、船以外の上陸手段が飛行機かヘリコプターぐらいしかないし……

 そしてしばらく待機していたら、水面から何かが浮き出てきた。鮫か鯨でも出てきたかと思ったが……

 

「デカッ⁉︎」

「うぉ~っ‼︎ すっげ~‼︎」

「まさか船じゃなくて、潜水艦で来るとは……」

 

 その正体は、まさかの潜水艦の上部。どうやらノース校は、船は船でも潜水艦で来たようだ。

 ……いや、なんで潜水艦で来たんだよ。もっと他にあったろ、移動手段。もしやアレがノース校を行き来する手段? 一体どんな学校だよ。

 そんな事を考えていると、その潜水艦の中から1人の中年の男性が現れた。もしや、彼がノース校の校長先生か? あ、鮫島校長と握手を交わした。

 

「おお‼︎ よくいらしたな、市ノ瀬校長」

「暫しうちの悪童らがお世話をかけますが、よろしくお願いしますよ」

「いや、私の方こそ」

「ところで……トメさんは、お元気ですかな?」

「もちろん‼︎ トメさんは、この対抗試合には欠かせない人ですからな」

 

 この2人は仲が良いんだな……と思ったが、トメさんの話となると何やら火花が飛んでいるように見えた。この2人……本当はトメさん絡みだと、思ったよりも仲良くはない感じか……?

 

「ところで……隣にいるそちらの生徒さんは、もしや……?」

「うむ。彼が我がデュエル・アカデミア本校代表の、ラー・イエローの王辻 翼君だ」

「あ、はじめまして。俺が王辻 翼です」

 

 流されるままに軽く自己紹介すれば、ノース校の校長──一ノ瀬校長が歓喜しながら俺に近づき握手してきた。急に迫ってきた感じでビックリした。

 

「おぉ‼︎ 君がそうか‼︎ 君の話はこちらも聞いているよ‼︎ 良き腕を持ったデュエリストじゃないか‼︎」

「ど、どうも……ほ、本日はよろしくお願いします……」

「礼儀正しいのは良い事だが、あまり堅苦しくならなくていいぞ。自然体で接してくれたまえ‼︎」

「は、はい……ははは……」

 

 バンバンと叩かれている右肩が痛ぇ……

 というか、本校にいた俺の事が姉妹校にも伝わっているってマジ? 大抵のデュエルでは、ただ前世のパワーカード達の力頼りに動いているだけなんですが……

 それでも何か勘違いされるような事を、気づかない内にしちゃってたのかな……? なんか、ある意味申し訳ない感じがするのだが……

 おっといけない、そろそろ本題に移ってもらわないと。

 

「ところで、そちらの代表は一体誰ですか?」

 

 さて、ノース校の代表は一体誰なのか……原作通りか? それとも……

 

「俺だ」

 

 ふと耳に届いてきた、聞き覚えのある声(・・・・・・・・)。その声に気づいた俺は、反射的にその声がする方向に振り向いた。

 その方向──潜水艦の上に立っていたのは、不良感のある複数の屈強な男達。なんか……出る作品間違えてません? 服装も一致してないし、自由形なとこなの?

 いや、気にすべきなのは彼らの方じゃない。その連中の最奥にいる、1人の男の方だ。本校の制服は着てないが、顔を見れば一発で分かる。

 不規則に跳ねていてボリューム感のある黒髪に、キリッとした鋭い瞳。これらを見ただけで、既にその顔を見てきた俺達にとっては見知った男だと一目で分かる。

 そう、俺が戦う事になるノース校の代表は……

 

 

 

「お前だったんだな……万丈目(・・・)

 

 

 

 原作通り、万丈目準である。しかも着ているのはブルー時代のアカデミアの制服ではなく、紫色のインナーシャツの上に羽織っている、黒や灰色を基調としているロングコート。それが彼の復活を示していた。

 

「ああっ⁉︎ 万丈目(・・・)⁉︎ 本当に万丈目だ(・・・・・・・)‼︎」

万丈目さんだ(・・・・・・)

「「「「さんだ‼︎」」」」

 

 しかもノース校の奴らに慕われている感が半端ない。中には2年・3年の人達もいて、正しくノース校のトップである事が伝わってきている。

 実際に彼とちゃんと出会った事はないが、佇んでいるだけで強者感が伝わってきている。なんだこいつ……カッコ良すぎだろ……

 

「しかし驚いたぜ万丈目。急にアカデミアからいなくなったと思えば、まさかノース校でトップの座に立って代表になるなんてな……さすがブルーでトップだった万丈目」

「だから万丈目さんだ」

「アッハイ」

 

 ってかどうしても『さん』付け呼びさせようとしてるなこいつ。トップに昇り至ったからって偉そうに……しているわけじゃないな。もし偉そうにしているのなら、こんな事で落ち着いていないもんな。

 

「おい1年。さっきから聞いていれば、サンダーさんのことを呼び捨てにしやがって」

「いっちょシメてやろうか」

「あ、すみません。暴力は……しかもみんなが見ている目の前でするのマジでやめてくださいお願いします」

「「デュエルでに決まってるだろ‼︎ それぐらい分かってるわ‼︎」」

「放っておけ。一応普段の奴は礼儀をきちんとしている。それに……奴の相手は俺だぞ」

 

 オイ、待てい(江戸っ子風)。一応普段の奴はってなんだ一応普段の奴はって。その言い方だと、裏では愚痴を吐いていたりして態度悪いって言っているように聞こえるから、マジでやめてもろて。

 しかし……マジであの短期間でノース校のトップにまで這い上がってくるとは、ホント何が万丈目をここまで強くするんだよ。何があいつの心を動かしてんだよ。こいつホントに初期は噛ませ犬だったん?

 

「……王辻 翼」

「な、なんだ?」

「正直に言って、俺は貴様ではなく十代が代表になると思っていた。悔しいが、奴はかつて天性だったこの俺を負かした程だったからな」

 

 あれ? その対戦した相手を認めざるを得なかったって感じ、まるで2度目に会った時の半次やん。

 

「だが代表が貴様になったからと言って、俺は手を緩めるつもりは一切ない。戦う事になった以上、貴様を完膚なきまでに叩き潰し、十代にあの時の俺が受けた屈辱を雪いでやるための踏み台にしてやる」

「は? 踏み台だって?」

 

 俺がお前の倒すべき相手ではないから、目標を達成するための土台になれってか? よくそんな事が言えるなお前。前世OCGプレイヤーであるこの俺の事、舐めてもらっちゃ困るんだよなァ……

 

「やってみろよ、踏み台になんて絶対ならねェからな。俺にも負けられない理由があるんでね」

「……フンッ、逆にこの俺を貴様の目的のための踏み台にする気満々……って事か」

「「「「なんだと⁉︎ サンダーを踏み台にするとは無礼者め‼︎」」」」

「いやそこまでは考えてないっす。取り巻きの皆さん方も本気にならないでもろて」

 

 強気に言い返したら変な誤解を生んだんだが。そして万丈目の取り巻き達も本気になってるし。やめてお前らにまで喧嘩売る気なんて一切ないから。

 と、そんな事を考えていたら。突如空からヘリコプターのローターの音が激しく響いてきた。それと同時に、波止場に1台のヘリコプターが着陸しようとしてきた。しかもドデカく『万』と書いてあるんだが。

 

「あれは⁉︎」

「なんだあの万事屋専用っぽい感じのヘリは」

「あのマークは……万丈目グループの」

 

 あ、お前んとこの家族のヤツか。お前結構ボンボンなんだっけ。

 ちょ、まだヘリ動いてんのに扉が開いてんだが。スカイダイビングでもするんか? にしては距離が短すぎん? と思っていたら、そこから2人の人物が顔を出してきた。

 

「久しぶりだな準‼︎ 元気でやっているのか⁉︎」

「長作兄さん、正司兄さん……何しに来たんだ」

「もちろん、お前の勝利を祝福するためにさ‼︎」

「あまり心配をかけるなよ準」

 

 ヘリのローター音がうるさいのに、よくスピーカー無しにデカい声で会話できるなアンタら。声のデカさに関する大会にでも出たら?

 ってか、あの2人はどちらも万丈目の兄だったのか。そういや万丈目には兄弟がいたという情報を前世でも知ってたんだが、あの2人だったんだな。

 

 

 

 

 

 

 あの後、ヘリが降り立ったのと同時に、万丈目兄さんコンビ(ワテが勝手に命名した)が各所から許可を得て連れてきたというテレビクルー達が出現。何も知らない2人の校長との話し合いの末、仕方なくと言った感じにテレビ中継が許可されたそうな。

 いやテレビ中継するなら、真っ先に中枢とも言える存在の人達への許可を貰う必要があっただろ。普通アポ無しはそう簡単に受けられるものじゃないんだで? そこら辺は考えてたんか万丈目兄さんコンビよぉ?

 

 そんな事を考えていながら、トイレを済ませた俺は、待機室の代わりとなっているデュエルコートの準備室の1つ──今やアカデミア本校代表控え室──に戻っているところだ。

 家庭準備室とか美術準備室がある学校は知っているけど、まさかデュエル準備室なるものがあるとは。しかも2つも……さすがアカデミア。

 ちなみに女の子が入っているデッキは、鍵をかけた準備室に置いている上に教師となっている精霊達に見張らせている。野郎が用を足しているところを見たいという、特殊な性癖の奴なんているわけないだろ。俺も見せたくないし……ね?

 

「───どういうつもりだ、兄さん達」

 

 ほえ? 今、どっかの部屋のドア越しに聞き覚えのある声がしたんだが? あ、『ノース校代表控え室』って書いてある。万丈目がいるなこれ。

 

「決まっているじゃないか。このテレビ中継は、俺達兄弟の約束を現実に移す一プランなのだ」

 

 なんか明らかに万丈目ではない声まで聞こえるんだが。この声は……万丈目兄さんコンビの内の誰かか? 彼等も万丈目の手伝いをしている感じか?

 この後盗み聞きしてしまった話によれば、万丈目グループは世界制覇を目指している模様。長男の長作が政界、次男の正司が財界、そして三男の自分がカードゲーム界の覇権を手にしようとしているらしい。

 カードゲーム界が政界や財界と同じくらいすごい事なのだろうか? と思っている輩がいるだろうから、敢えて言わせてもらう(誰に言ってるのかは知らんけど)。この世界、カードゲームが社会にも影響を与えている世界ぞ? だから政界や財界と同じくらいすごい事になっているぞ。

 

「準。クロノス教諭とかに聞いたが……お前、3か月前にここを退学──いや、長期無断欠席しているそうじゃないか」

「そ、それは……」

 

 あ。もう万丈目兄さんコンビは、万丈目が何故本校ではなくノース校の代表になったのかを、クロノス先生を通して知ってしまったのか。んで、クロノス先生が万丈目が退学してないと言ったのは、やはり万丈目が正式な手続きをしてないから休学扱いにしている……ってわけか。

 

「良いか準。お前は元々、俺達兄弟の落ちこぼれ」

「我が万丈目グループ主催でテレビ中継するからには、絶対に負けることは許さん」

 

 ちょっおま、プレッシャー掛けるのやめてもろて。今の万丈目はそんな事を気にせずデュエルがしたい所存なんだよ。余計な事するんじゃねェ。って、ドア越しに静かに盗み聞きしているだけの俺が心の中でそう言っても、彼等に聞こえるわけないか。

 と思っていたら、何やら重たいものが置かれたような音が鳴り響いてきた。これって……もしやトランクの音?

 

「ここには、俺と兄貴が金に物を言わせたカードが山と入っている。これを使い、最強のデッキを組み立てるのだ‼︎」

「いいな準。決して万丈目グループの顔に泥を塗るようなことをするなよ?」

 

 うわマジか。山ほどのカードがあるって事は、俺が転生した影響で流通したOCGカードまで入っているって事なのか? 万丈目兄さんコンビがデュエルモンスターズに詳しいのかは分からないが、強いカードもあるとなると厄介だな……気を引き締めないと。

 そして身を潜めながら、万丈目兄さんコンビが控え室から立ち去るのを見届けた俺氏。ふと見えた2人は満足そうな笑みを浮かべていた。あれなら大丈夫そうだと思い込んでいる感じか。

 ……さて。あの2人に俺の存在が気づかれる事はなかったようだし、さっさと俺も自分の控え室に───

 

「───そこにいるんだろ、王辻 翼」

「すみませんでした」

 

 万丈目にバレてて即刻呼ばれたので、反射的に返事してしまった……しかも謝っちゃったよ……あーあ。このまま逃げたら後先が面倒・大変な事になるので、観念して彼のいる部屋に入る事にした。

 浮かない顔を見るに、万丈目兄さんコンビに色々とやかく言われるのは乗り気じゃなかったのか。再会した時は俺を倒す事だけを思っていた感じだったし、無理もないかな。

 とりあえず、正直な事を言っておこう。なんかこいつにはくだらない嘘は通じそうにないから。

 

「あー……すまん。実はトイレから戻ろうとしたところに、偶々さっきまての会話が聞こえてたから、つい聞いちまったんだよ。悪い」

「……ふん。あんなの、謝られる事じゃない」

 

 万丈目の奴……人が心配して話しかけてるのに、意地張ってツンデレってるな。まるで『お前には関係のない事だから触れてくるな』と言っているかのように……

 でもまぁ、このまま色々なプレッシャーを持たせたままの万丈目の相手をしても、彼の為にもならんし後味が悪いからな……聞かせてやるか。さっきの会話から想像していた、ワイの考察を。

 

「まぁ……アレだ。言葉選びとか言い方とかは良くなかったけど、弟想いではあるんじゃないのか? あの2人は」

「はぁ? 弟想い、だと? アレの何処にそういった要素があるというんだ」

「あの2人が素直な事を言わなかったってだけ」

 

 まぁここだけの話、誰かが前向きになれるような本当の気持ちを言わず、逆に一部の人が傷つくような事を言うタイプのツンデレって大抵嫌いなんだよね。正直になれないからって強い言葉を使ったら、大抵の人はそれをまともに受けちゃうんだから。

 おっと、今はそんな事どうでもいいんだった。話の続き続き。

 

「よく考えてみろ。お前は突然アカデミアを去っていったと思えば、今度はたったの短期間でノース校の代表になった。落とされてからの快挙なんてなかなかできない事だぞ。それを成し遂げたお前に花を持たせるために、あの2人はお前に注目の的を浴びてもらいたかったんだと俺は思う。その上で勝てるようにと、大量のカードを買い込んでそれをお前に全部渡した……内心でも罵倒するような奴だったら絶対にしないぞ、ここまでの手厚いサポートなんて」

 

 まぁ、金にものを言わせているのは嫌味がある感じがしてムカつくけどね。

 

「それはあまりにりもポジティブ……いや、お気楽な発想としか言いようがないぞ。兄さん達は自分達の夢を叶えるために、できる事をなんでも熟してきている。今みたい、落ちこぼれのに俺に何かを分け与えているのも、俺を自分達の夢のための駒として働いてもらおうと思っているだけに過ぎない───」

「いちいちネガティブになってんじゃねェぞ。お前らしくねェ」

「……何?」

 

 すまん、我慢できなかったから怒り混じりに荒い声を出しちまった。けど俺が知ってた万丈目はこんなんじゃないから、喝を入れてやろうかと思います。耳の穴かっぽじってよく聞けコラ。

 

「確かにあの2人はお前の事を『落ちこぼれ』と言った。なら何故そんな落ちこぼれに対して、政界と財界を支配しようとしている人間達が、こんなにも色々と手厚くサポートしてくれているんだ? もしも本当に『落ちこぼれ』だとか『駒』だとか思っていたのなら、一目見て『これはダメだな』と思ったその時点で見限られたはずだぞ。それでもここまでしてくれているって事は……急激な成長を遂げたお前に、()()()()()()()()()()()()()()?」

「……それは……」

 

 これでもどうにか否定しようとしていた万丈目だったが、口籠もって止まっているのがはっきりと見えた。万丈目兄さんコンビなりに気にかけているんだって事を、なんとなく察してきた感じかもな。

 

「実際にそういった世界に入ってない俺が言っても……とは思うが、プロはいつだって、今のお前みたいな状況に遭っている。だけど、お前は1人じゃない。形がどうであれ支えようとしてくれている人達がいる。そしてお前もデュエリストだから、共に支え戦ってくれるカード達もいる。お前なりに、そいつらと向き合ったりしてみろ。自然と、お前が背負ってきているものが、少しは軽くなってくるはずだぜ?」

 

 ここまで自分なりの意見を言ってみたら、心なしか、万丈目の顔の曇りが少しずつ薄くなってきているように感じた。自分にとって何が大切なのか、それに気づかされたかのように。

 

「……俺なりに向き合ったりしてみろ、か」

「そ。だから気に病む必要なんてないと思うぜ。思い切って、全力で俺にぶつかってこいよ。俺も全力で迎え撃ってやるからよ」

 

 大まかに言えば、ポジティブに考えながら自分のしたいようにしていけって意味だ。プレッシャーを背負い過ぎは良くないし、お前が今本当にしたい事は兄2人の夢のサポートじゃないはずだしな。

 

「………………フンッ」

 

 あ⁉︎ 今、鼻で笑ったな⁉︎ 自分なりにお前の事を思って良い事を言ったはずなのに、それを笑ったな⁉︎ 結構頑張って考察してたんだからな俺⁉︎

 ……でも、逆にこれでよかった。俺のよく知っている万丈目に戻ってくれた。それだけでも満足だ。

 

「いいだろう。そこまで言うのならば、兄さん達の期待に応えるためにも、全力で貴様を叩き潰してくれてやろう。そして貴様を踏み台にし、次は十代にあの時の雪辱を晴らしてやる」

「あぁん? 踏み台にできるもんならやってみろコラ。返り討ちにしてその鼻をへし折ってやる。俺と俺のデッキ達を舐めんじゃねェぞ」

「後で吠え面かいても知らないからな」

「そのセリフ、そのままバットで打ち返してやるよ」

 

 ちょっとムカつく言葉を言われたけど、万丈目が元気を取り戻してくれたからそれでチャラにしてやる。これで安心して、彼とのデュエルに集中できるってわけだ。

 さてと、俺もそろそろ自分の控え室に戻るとしますかね。これ以上敵の控え室にいたら、周囲から何を問われるのか分からないからな。んじゃ、お邪魔虫はこれにて退きゃーく。

 万丈目の控え室を出てドアから去ろうとしたところで、小さな窓から万丈目が『よし、やるか』と言いながら、万丈目兄さんコンビから貰ったトランクの中のカードを手に取り始めたのが横目に見えた。

 

 

 

 

 

 

 そしていよいよ、両校の対抗試合開始の時間となった。中継用のカメラが回る中、2人の校長がデュエルコートの中央に立ち……

 

「ではここに、デュエルアカデミア本校」

「ノース校」

「「対抗デュエル大会の開催を宣言する」」

 

 開幕宣言したのと同時に、集まってきた各校の生徒達の歓喜の声が響き渡る。ノース校の生徒もアカデミア本校に負けない人数おり、その大半が全員厳つい。環境の悪いところだと思われないだろうかノース校。

 

「クロノス教諭、デュエリストの紹介を」

「信じられないノーネ‼︎ 私の姿が今、全国に流れているなンーテ‼︎」

 

 鮫島校長に指示されたクロノス先生、思ったよりもガチガチな様子。別に貴方がデュエルするわけじゃないのだから緊張しなくてもいいのに……

 

「まず紹介するノーハ‼︎ アカデミア本校代表、ラー・イエローの王辻 翼ナノーネ‼︎」

「……よし、いくか‼︎」

 

 早速呼ばれたため、両頬をパチンッと叩きデュエルコートへと上がった俺。緊張してないと言ったら嘘になるが、プロデュエリストなら毎回こんな感じだよなと改めて思い出しながら、ゆっくりと落ち着いて深呼吸を繰り返していく。

 

「頑張れー翼君‼︎ 負けるなー‼︎」

「翼ー‼︎ いつも通りでいけよー‼︎」

「気張るんだなー‼︎」

「頑張れよ、翼‼︎」

「俺達がいるからなー‼︎」

 

 十代達レッド3人組や、三沢や神楽坂を中心に、色々な生徒達からの応援の声が次々と飛び交ってくる。こうやって近くで応援されると得られる安心感というものがあるのだな。

 

『ご主人様ー‼︎ ティルル達がいますからねー‼︎』

『ヲー達の応援パワーを受け取るが良い‼︎』

『ま、翼らしくやっていきなよ』

『マスター、ご武運を‼︎』

『どうかしましたかレイノハート様? ちゃんとマスターを応援しましょうよ』

『何処の誰かのせいで、その気力を精ごと持っていかれたのだが……』

『ワイトもそれはやりすぎだと思います』

『とにかく気合いだぞ、王辻少年‼︎』

『頑張ってーマスター‼︎』

『絶対勝テー‼︎』

『モシャー‼︎』

 

 ………………うーむ、その分喧しいと思える事もあるもんなんだな。ほとんどが嬉しい言葉だけどさ。ってか、しれっとレイノハートが今日もシェイレーンに絞られていた事が明らかになったんだけど。これで何回目なん?

 

「対するはノース校───」

「いらん。俺の名は俺が告げる」

「へっ?」

「黙って引っ込めと言ったんだ、おかっぱ野郎」

「お、おかっぱじゃないワ~ヨ──ニョ⁉︎」

 

 今度は万丈目の紹介……といったところで、彼が自分でやると言い出してクロノス先生からマイクを奪い取った。この衝動でクロノス先生、コートから転倒。あーあ、あまりにも情けない場面がテレビに……

 

「お前達‼︎ この俺を覚えているか‼︎」

 

 そんなクロノス先生など無視し、万丈目はコートの中央に立ち、この場にいる全員に問いかけながら高らかに発し始める。

 

「この学園で、俺が消えて清々したと思っている奴。俺の退学を自業自得だとほざいた奴……知らぬなら言って聞かせるぜ。その耳かっぽじってよく聞くがいい‼︎ 地獄の底から不死鳥の如く復活してきた、俺の名は‼︎」

 

 ここまで言って一度言葉を切り、片手で人差し指を立てながらその腕を伸ばす。

 

「一、十」

「「「「百‼︎」」」」

「「「「千‼︎」」」」

 

 万丈目に続くように、ノース校の生徒達もカウントらしき何かに合わせて唱和を始めた。そして『万』といきそうになったところで、万丈目は拳を大きく突き上げ───

 

 

「万丈目サンダー‼︎」

 

 

 復活を果たした己の名を、叫んだ。

 

「「「「うおおおおっ‼︎」」」」

「「「「サンダー‼︎」」」」

「「「「万丈目サンダー‼︎」」」」

「「「「万丈目サンダー‼︎」」」」

「「「「万丈目サンダァァァァァァッ‼︎」」」」

 

 両手を上げ、喝采と万丈目の名のコールを次々と行うノース校の生徒一同。万丈目がノース校に来てからの期間は長くないはずなのに、ここまで人望が厚いとは……いやはや、恐れ入るよマジで。

 万丈目コールが止まない中、万丈目はクロノス先生にマイクを投げ渡し、展開させたデュエルディスクを構えこちらを見据えてきた。

 

「いくぞ王辻 翼‼︎ このデュエル……万丈目一族のため、後ろの馬鹿共のため、そして何より俺自身のプライドを取り戻すため、負けるわけにはいかない‼︎ 勝たせてもらうぞ‼︎」

 

 その言葉を聞いた俺は、無意識にも微笑んでしまった。前世で定着していた性格の万丈目に戻ったのがはっきりと伝わったから、嬉しく思えたに違いない。

 これ以上笑ってたら万丈目に何か言われそうだなと思いながらも、俺も続くようにデュエルディスクを展開させ、彼に見せつけるように構えた。

 

「悪いが、俺も一応アカデミアのみんなの想いを背負っているんだ。俺も本気で勝ちにいくつもりでいかせてもらうぜ、万丈目‼︎」

「だから万丈目さんだ‼︎」

 

「「決闘(デュエル)‼︎」」

 

LP:4000

 

万丈目

LP:4000

 




ちなみに前回で匂わせた白黒の龍の出番、ないよ☆

?『は?』(ブチギレ)
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