OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜 作:名無しのモンスター
学園対抗戦が終了し、万丈目がデュエル・アカデミアにオシリス・レッドとして復帰して数日後。俺のアカデミア生活はあまり変わりない感じだった。
いつも通り授業を受け、実技デュエルで皆に見せているデッキのみで全勝していった。ただ、目立たないように態と追い込まれてってのはやめた。代表戦と学園対抗戦で充分目立っちゃったから、もう吹っ切れました。
で、放課後に気まぐれでデュエルコートに行った時の事だった。その日はまだデッキ調整すべき時間ではなかった上にやる事がなく、十代がイベント以外でデュエルをしているならこの時間帯だろうな、とは思って行ってみたが……
「お前の【
「お待ちください‼︎
「んなっ……⁉︎ ッ、攻撃は中止だ‼︎」
デュエルリンクスのスタンダード・デュエリストモチーフ組の、半次と舞香がデュエルしていた。最近リンクス通りの性格っぽさが結構薄れている奴と、知った人に抜きネタにされそうな子か……中々の組み合わせかも。
『今、舞香に対する認識が酷い感じじゃなかったかい? 事実ではあるけど』
「(すいませんでし……いやお前もそう考えているのかよ)」
『別に厭らしい事を考えているわけじゃないけど、スタイルが結構良い事に変わりないからね』
うーん……なんか、ユベルが十代以外の奴を評価してるとなんかこそばゆいんだが……
あ。【ゴキポール】と【
しかもその後すぐ、他の【ジェムナイト】デッキのモンスター達も殴り倒されて、【ゴキボール】のダイレクトアタックで……
「クソッ‼︎ また負けた……‼︎」
「ですが、下手すればわたくしが負けてもおかしくなかった状況でしたわ。特にわたくしのターンに融合しての妨害……本当に素晴らしかったですわ」
「クッ……‼︎ 褒められている感じがするのは悪くないが、勝てないのならあまり意味がないだろ‼︎ 次こそは勝つ‼︎」
「ウフフ……デュエルでしたら、いつでもお相手いたしますわ」
……なんだろうな。この2人を見ると甘酸っぱい感覚を覚えちゃうんだが。なんかのラブコメか何かでは?
「ん? ……なっ⁉︎ つ、翼……お前、見ていたのか⁉︎」
「あっ。いや、最後の最後ら辺だけな」
「一番見られたくないところを見られたわクソが‼︎」
ま、まぁそうだな。一般ブルー生徒なら降格に繋がるような無様な負けとかして、それを他の人に見られたくないよな。けど……
「そう言う割には、思ったよりも悔しそうな表情をしてなかったような気がするけどな」
「ハァッ⁉︎ 負けたら悔しいに決まっているだろ‼︎」
「大抵の奴はそうなんだけどさ……」
けど、俺は見てしまったんだよな……舞香が再戦の約束をした時、お前、笑ってたぞ? 口では何とでも言っても、表情は隠しきれなかったようだな……(ニチャア)
「フンッ、まぁいい……王辻 翼‼︎ ちょうど良いから、次はお前にリベンジを挑ませてもらうぞ‼︎ 今からデュエル申請の紙を提出してくるから待ってろ‼︎」
「いや、別にいいだろそんなん。俺、何もする事なくて暇だからここに来たわけだし。真面目だなお前」
まぁ階級は態度やマナーを守れてるのかとか関与してそうだし、ある程度の事がきちんとしてなかったらブルーにはなれてないはずだよな。嫌味のあるキャラとは思えない部分だけど。
「そ、そっか……なら今すぐリベンジだ‼︎ 試験の時に使った【セリオンズ】でも構わんぞ‼︎」
「いや、お前なんか【極炎の剣士】の馬鹿火力だけで充分だ」
「つまり別デッキでって事か……いいだろう、リベンジできるならそれで構わない‼︎」
「ではわたくしは観戦に回りますわね〜」
この後、【極炎の剣士】の攻撃力を10000超えにして後攻ワンキルしてやった☆ 【ジェムナイト・アクアマリナ】を出してきた時、ほんのちょっとしたトラウマが出たものだから、それを早く忘れたくて……
♢
翌日。大徳寺先生の授業が終わった後、俺は授業の内容をノートに書いていた手を止め、1つ背伸びした。彼の授業は錬金術についてなんだけど、普通に考えてこれ教育にいるぅ? って思ってはいるな。
科学とか生物基礎なら分かるけど、なんだよ錬金術って。俺達若者に危なっかしいものでも教えるつもりか? まぁ授業に組み込まれてるもんは仕方ないから真面目に受けているけど。
そんな事を考えていると、ふと大徳寺先生の声が聞こえてきた。
「遊城 十代君、お昼はちょっと待つのにゃ。私と一緒に校長室に来て欲しいんだにゃ」
「えっ俺?」
この時期に十代が校長室に呼ばれる……もしやこれは……
「アニキ……何かやったッスか? まさか……退学?」
「いや、何も心当たりはねェんだけどな……」
「ハッハッハ‼︎ 貴様とは短い付き合いだったが、どうやらここでさよならのようだな、十代‼︎」
……万丈目。お前、余裕そうに十代の事を笑っているけどさ。
「万丈目君、君にも来てほしいのにゃー」
「へっ……何ィッ⁉︎」
お前も一緒に呼ばれたやんけ。
「……退学案件を予想していたのに、外れていて草」
「その『草』は『ウケる』って意味だろ⁉︎ 笑うなァッ‼︎」
あ、この『草』の意味を理解していたんですね。一体どこ情報だったん?
笑うなって言われてもなぁ……ツンデレキャラにそう言われても、面白さが勝るから『またやりたい』って思えてしまうんだよ。悪いな。恨むなら自分の性格を恨むんだな(理不尽)
「それから三沢君に翼君、神楽坂君に明日香さん、雪乃さんも」
「「「「え?」」」」
今呼ばれた4人も、何故自分達がそうなったのかを理解できず、それぞれが目を見合わせていた。
「(まさか俺も呼ばれる事になるなんてな……)」
唯一呼ばれた理由がどんなものなのかを把握している俺の方はというと、
カードの精霊を所持している、使用カードがどのデッキのヤツも強いのばかり……という理由だけなら呼ばれる事はないだろうな、と思っていたからだ。心の方は強いのかどうか、自分でも分からないし……
「後、隣のクラスで青野君と舞香さんも呼ぶから、2人も来たら一緒に行くにゃ〜」
おぉ、まさかあの2人も呼ばれるなんてな。まぁ、原作では呼ばれなかった神楽坂とゲームでも選抜されなかった雪乃も呼ばれたんだし、もしかすると……とは思っていたけどな。
♢
半次と舞香と合流してから、他の生徒達から『なんだなんだ』とか『珍しい組み合わせだな』とかといった、好奇な視線を向けられながらも、俺達は大徳寺先生の後をついて行く事にした。ってか今はそうするしかない。
そんな中、昼飯を待てと言われて不服そうな十代が大徳寺先生に問いかける。そういやトメさんに弁当を作って貰ったんだっけ。そりゃいい気にならないのも納得がいくか。
「なんで俺達は呼ばれたんだ?」
「さぁ? 私にも分かりませんのにゃ」
どうやら大徳寺先生も、何故自分達が呼ばれたのか知らないようだ。
「なぁ翼。俺達ってなんで呼ばれたんだ?」
「さぁな。少なくとも成績が悪い奴らなんてほぼいないし……天上院はどう思う?」
「いや、私が知るわけないでしょ……」
「まぁそれもそうか」
悪いな明日香。知らないフリして何かしらの反応をしてもらわないと、俺がほんのちょっとした事で疑われちゃうからな。許せ。
そうこうしている内に、校長室の扉へと近づいてきていた。そして。
「ヌヌ? そうそうたる顔ぶれデスーノ。貴方達も校長に呼ばれたのデスーカ?」
反対側からそう聞こえたため、その方向へと視線を向ければ、そこにはクロノス先生とカイザーが来ていた。原作知識がなくとも、『校長に呼ばれた』という言葉から察するに、この2人も俺達と同じ感じなのだろう。
「ティラミスふぅみぃ……」
いやそこは『ひぃふぅみぃ』と言うべきではないですか? 何ダジャレみたいな感じに言い換えてんすか。
「……これは間違い探しです~ノ? 1人だけ仲間はずれがいるノーネ」
おいコラ問題発言。
「本人の目の前で失礼じゃないですか? ここにいる全員が呼ばれているんで、教師の癖に生徒の仲間はずれを作るのはやめてください」
「ニャヌッ⁉︎ こ、ここにいる全員が呼ばれてターノ⁉︎ ペペロンチーノ⁉︎」
「そうやって知らないフリして現実逃避すんのもやめてください」
「つ、冷たい視線が正にフリーズドラ〜イ……アサ○スーパー───」
「それ以上いけない」
続けてのダジャレで何言おうとしてんだアンタは。それはそれで大問題になりそうだからやめなさい。
「まぁそう気にすんなよ、サンダー」
「お前の事だ‼︎」
「十代……お前さぁ、クロノス先生に目の仇にされてる自覚持てよ」
「えっ? 俺、クロノス先生の目を怪我させちまったのか?」
「そのままの比喩で捉えんな」
十代はクロノス先生にハブられているとは全く思ってない模様。鈍感なのかどうかはともかく、嫌味な事言われても全く気にしてないとは、ポジティブがすごいんじゃ……
「クロノスせんせー、突然止まらないでくださーい。進めないんですけどー」
「ん? アレ、そこにいるのは大徳寺先生じゃないですか。それに
「これはすごい顔ぶれ……こうして見ると、中々の実力者揃いの集まりですね」
と、クロノス先生の背後から聞き覚えのある声がした。その方へと視線を変えれば、そこには聖殿・アレイスター・マッドラヴの精霊教師3人組がいた。
「
「その通りさ‼︎ クロノス先生共々呼ばれたからねー、校長先生の頼み事なら断っちゃいかんでしょ‼︎」
「ただ、呼ばれたのがデュエルの腕に自信がある者達ばかりとなるとね……」
「そのデュエル絡みで、何やら重大な事が起きた……そう考えられますね」
……なんか、物々しさを感じさせる演技が得意って雰囲気がすごいな。シリアスっぽく真剣な表情をするとか、いつもとのギャップが……
♢
あの後。校長室の前でぺちゃくちゃ喋るのもアレだからとの事で、ようやく校長室に入る事にした俺達。そこで待たされていた鮫島校長は、いつも通り微笑んでいた。
「よく来てくれましたね、皆さん」
「校長先生、俺達に話とは」
カイザーと鮫島校長はサイバー流の師匠と弟子の関係である。けど今回の要件にはサイバー流は関係ないと察してなのか、カイザーは普通に生徒と教師の関係として鮫島校長に単刀直入した。
「……これは一般生徒や一般教員も知らないことなのですが、このデュエル・アカデミアの地下には、【三幻魔】と呼ばれるカードが封印されています」
「【三幻魔】?」
やはり始まったか……【三幻魔】の封印を賭けた闘いとなるストーリー、セブンスターズ編が。……アレ? 三幻魔編だったっけ? どっちだったっけ?
「そうです。この島に封印されている、古より伝わる伝説のカード。そもそもこの学園はそのカードが封印された場所の上に建っているのです」
「あっえっ⁉︎ そうなんですか⁉︎ ……あっヤベッ、失礼」
思わずビックリ仰天の声を出してしまった……三幻魔のカードが何処にあるのかは分からないから、火山の中とかにあるのかなと思ってはいたけど、この島の地下て……
ってか全然関係ない事だけど、鮫島校長って基本は丁寧な口調なのね。プロデュエリストとのデュエルがある事を伝えてくれた時はタメ口だったから、なんか新鮮な気がする。
「まぁ驚くのも無理もない。まさかこんな島に、カード封印しているだなんて誰も想像できないだろうから」
「い、いや気を遣わなくて大丈夫です。その方が逆に恥ずかしい感じがするので……」
「そ、それはまた失礼……」
また気を遣わせてしまった……お願いですからこれ以上恥晒しさせないで……
「ところでさ? この学園ってそんな昔からあったのか?」
「うるさい、黙って聞け」
お前は空気読め十代。そしてありがとう万丈目、こいつにツッコミ入れてくれて。
「続けますね。島の伝説によると……三幻魔は三幻神と対を成す存在。そのカードが放たれる時、世界は魔に包まれ、混沌が蔓延り、人々に巣食う闇が解放され……やがて世界は破滅し、飢えと帰す。それ程の力を秘めたカードだと伝えられています……」
「破滅……」
三沢が【三幻魔】の中で一番注視すべき言葉を輪唱すれば、皆も耳を疑うように目を見合わせた。普通カードゲームで世界が破滅するなんて想像できるわけないよな。
まぁこの世界でなら、闇のデュエルによるものでとか、三幻神といった神の力を持つカードとかあるから、それらのカードでならカードゲームでも世界を破滅させそうだけどな……
「しかし……そのカードの封印を解こうとしている者達が現れたのです」
「誰なんですかそいつらは?」
「───七精門。セブンスターズと呼ばれる7人のデュエリストです」
あ、セブンスターズって別の呼び方もあるんだね。しかも七精門ってセブンスターズの別名なんだな……三幻魔を封印している場所の事を言っているのかと思ったぜ……
「全くの謎に包まれた7人ですが、もう既にその1人がこの島に……」
「えっ⁉︎」
ちょっ、おい。待てい(江戸っ子風)
「いやいやいやいや。なんで孤島であるアカデミアに、不法侵入者が出ているんですか……」
「相手はそれを許してしまう程の実力者……という事で───」
「
ってヤベッ。ツッコまないといけない点に注目してしまって、思わずワッ○のモノマネでタメ口を使ってしまった……いや、アカデミアに部外者が出ないようにすべきなのは大事だけどさ……
「あぁ、うん……誘拐の件以来、外部に対する警備をかなり強くしたはずなのですが……こちらがまだ甘かったようで……それは本当に申し訳ない」
「あっいえ。こちらもタメ口を使ってすいませんでした」
だから本気で謝らないでくれません? 俺が惨めになるだけですから。ね?
「すいません、話の続きを」
「う、うむ……そのセブンスターズの目的は、三幻魔を復活させるのに必要な7つの鍵を狙っています。三幻魔のカードはこの学園の地下の遺跡に封印され、七星門と呼ばれる7つの巨大な石柱がカードを守っています。その7つの石柱は、7つの鍵によって開かれる。これがその7つの鍵です」
鮫島校長がそう言うと、デスクの何処かから巨大な銀色のケースを取り出し、それを開錠した。
そこに入っていたのは、1枚のパズルのように組まれている7つの鍵。パズルのピースのように複雑な形となっており、千年アイテムっぽい謎の模様が刻まれていた。ただ不思議と、繋がれば四角になるような構図となっていた。
「アカデミアの中でかなりの実力を持つ貴方達には、この7つの鍵を守る役目……もしくは鍵を守る者のサポート・監督役を担っていただきたい」
「……一応聞きますけど、カードを狙っているという事は、デュエルで守れって事ですか? セブンスターズは正体不明な奴らばかりですし、デュエル以外の卑劣な手段を使いそうですが」
デュエル以外で奪われないだろうかと俺が問い掛ければ、鮫島校長はその質問をしてくると予想してか、「実は問題ない事なのですよ」と微笑みながら答えていく。
「古代エジプトでは、精霊を石板に宿し、必要な時に呼び出し……今で言うデュエルをして事の取り決めを行ったと云われています。三幻魔はその精霊……対となる三幻神の事でしょうね。それらの化身とも言われており、その身は石板……今ではカードなって、そこに閉じ込められている状態です。それ故に、復活のためには古代と同じデュエルという方式を踏まねば、彼らは現世に召喚されないのだとか」
あ、三幻魔って三幻神の化身みたいな存在なのか。どおりでOCGで『アレ? こいつら三幻魔にそっくりな見た目だな』って思ったわけだ。
というか石板にいたヤツが今はカードって……時代の流れ的にどうして石板からカードになったんだよ。怪奇現象って、怖いよね……
『ちなみにヲーの化身も三幻魔の中にいるらしいぞ。OCGの世界でもそうなっておる。……こっちの世界のヲーそっくりな彼奴は女の子で、宝石店を営んでいたりなんか副業もやっていたりとか……元気にしているだろうか』
あ、そっちの世界もそういう感じなんですね。ってか性別はきちんとあるんだな……ポ○モンで言う、伝説のポケモンとかでよくある『性別不明』ってわけじゃないのか。
って、よく考えたらラー様も『自分は男だ』発言をどっかでしてたような……
「校長先生、質問です」
「もちろん。なんでもどうぞ」
ここで亜鈴先生ことアレイスターが校長に質問してきた。いつもの笑顔どころか愛想すらない、真剣な眼差しで。
「デュエリストと同じ存在……またはデュエルと同じ儀式での勝敗を決した者でしか、鍵を安全に所持できない事は分かりました。ただ、その鍵が奪われてはいけないものだとしたら、壊すべきではないかと思いますが……何故それをしないのですか?」
「……亜鈴先生の言う通り、できるならそうしたいところです。ですが、それができない理由もある」
あ、やっぱり壊したらいけない感じ? アニメではそういう重要な事が出てなさそうだとは思っていたけど、ちゃんとした理由とかがあるんだな。じゃないと誰もアニメの中で『処分しろよ』なんて思わない……はず。
「三幻魔のカードを守るための鍵は、その三幻魔の力を抑えるのに必須となるもの。破壊してしまえば抑制する力は失われてしまう。三幻魔から離れた場所へと移動しても、その距離によって徐々に効力を失われていき……」
「やがて抑制し切れず、三幻魔が世の中に解き放たれてしまう……だから厳重に封印すべき場所が限られている、というわけですか」
「そういう事です」
あぁ……なるほど。鍵の存在があるだけで、三幻魔が何かしらの事態で復活してもなんとかなるって感じか。じゃあ尚更損失したらいけないって事か。大変やんけそれ。
「話は以上です。もちろん無理強いはしません。ですが、もしその覚悟を持っていただけるなら、この七星門の鍵を受け取っていただ───」
「あのすみません。話の途中からなのか、もう既にその鍵を手に取った人が出てきているんですけど」
「───えっ?」
鮫島校長、鍵を取るか否かを問いかけようとしたところで、俺が衝撃の事実を報告した事に目を疑ったのか、その目を見開いた。
話の途中で七星門の鍵を取っていたのは誰か? デュエル好きの十代? いや、彼は原作でも話が終わった後で手に取っているから違う。
ならば誰が手に取ったのか? それは……
「アラ失礼。話を聞くに、もしかするとと思って手に取ったのですが……間違えていましたの?」
俺達と同じく校長に呼ばれた者──舞香である。いやいやいやいや、いくらマイペースだからって何の躊躇いもなく受け取るなよ。しかも話の途中で。
「お、音輪……⁉︎ お前、これがどういうものなのか分かっているのか⁉︎」
「分かっておりますわ。世界を滅ぼす力を持つとされる三幻魔を封じるための鍵……そして、セブンスターズと命懸けとも言える賭けのデュエルをしなければならないもの……そういう感じですわよね? 校長先生」
「え、えぇ……お、大まかにはそうですが……」
あ、ちゃんと話を聞いた上で手に取ったのか。それにセブンスターズとのデュエルが『遊び』ではなく『戦闘』であるという認識で。ただ興味本位とかでってわけじゃないのか。よかった……いやよくないけど。
「なら何故それを理解した上で、何の躊躇いもなく取った⁉︎ もっとこう……恐怖とかそういうものがあるだろ⁉︎」
「怖いのは当たり前ですわ」
「即答⁉︎」
怖いのに躊躇いもなく受け取ったの⁉︎ それはある意味すごいわお前⁉︎
というか、なんか半次が結構焦ってるな。ライバルが危険な目に遭う事に黙っていられなくなったのか? それとも……
「ですが……わたくしはデュエルモンスターズが大好きですの。色んな方達を繋がる事ができる、このカードゲームを。そのカードで世界を滅ぼすような真似をする人達を、わたくしは許す事などできませんわ。いつまでも皆さんとデュエルする事ができるこの世界を、時間を……何もかもを奪われたくありません。だからこそ、わたくしはこの鍵を守りたいのですわ」
お、おぉ……十代とは違ったデュエル好きだからこそ、デュエルで世界を滅ぼそうとする奴らが許せず、闘う事を決めたのか。音輪家の令嬢(だと思う)なのにすごい度胸だな……
それを聞いて、止めようとしていた半次が唸るように悩む様子を見せ……諦めたのか少々荒く頭を掻いた。
「ッ………………だーもうっ‼︎ 分かった分かった‼︎ 本当はこの案件から降りたかったが、お前がそう言うのなら話は別だ‼︎ サポートに回ってやるから、その鍵は大事に持っておけ‼︎」
「……‼︎ はい‼︎」
これは……舞香の決意に負けて折れ、闘う前から逃げようとしたのをやめた感じか。同意してくれた事に舞香も喜んでいるし、
ゲームのモブとしての性格からしてそうなるかとは思っていたけど、舞香によって気が変わるとは……お前、やはり彼女に毒されたな☆
「な、なんだその顔は⁉︎ 翼、お前何故ニヤニヤしてるんだお前は⁉︎」
「いやぁ、そういうところが万丈目とそっくりなんだなぁって思っただけだよ」
「聞こえてるぞ王辻 翼‼︎ 貴様それはどういう意味だ‼︎」
「そのまんまの意味だけど?」
経緯は知らんけど少し(?)丸くなった半次と万丈目サンダーって、なんだかGX界のWツンデレって感じがして面白いな(半次はオリキャラだが)。こういう奴らがまともなツッコミ役をすれば、周りが結構賑やかに……
「それなら私もサポートに回るわ。本当は面白そうだから鍵を守る方をやりたかったけど、2人は同じオベリスク・ブルーの中で結構仲良くやっているし、2人に何かあったらつまらなく思える自信がある。だから……ね?」
ここで雪乃もサポート役として承認か。彼女の腕の実力も結構あるから助かるけど、変な刺激目的で……ってわけじゃないよな? 俺とデュエルしてからそう思えてきて不安なんだが。
「雪乃さんも、ありがとうございますわ」
「……変なちょっかいはかけないだろうな」
「しないわよこんな重要案件で」
あーらま、半次に警戒されちゃってまぁ。言語がアレだからってのもあるから、変な事されないかって不安がるのは分かるが。
「そうですか……分かりました。鍵の1つは音輪さんに、彼女の援護は青野君と藤原さんに任せます。他の皆さんの方は……いかがいたしますか?」
3人の意志が伝わったのか、溜息をつきながらも承諾した鮫島校長。改めて俺達の方を見て、『本当は怖がらせたくないから無理なら遠慮なく断ってもいい』という慈愛の瞳で訴えてくる。
ウチのトコでは色々叩かれている彼だけど、それでも教育者なんだよな……本当は生徒達を危険な目に遭わせたくないけど、苦渋の決断をしなければいけなかった……そんな辛い想いを背負っていた事が、間近で不思議とひしひし伝わってくる。
けど……こいつらの覚悟は、もう決まっている。
「面白いじゃん‼︎ デュエルで俺が出なきゃ誰が出るって言うんだ‼︎」
「十代……言っておくけど」
「心配するな翼。これは遊びじゃないことぐらい分かってる。世界の1つや2つ、守ってみせるさ‼︎」
「……そういやお前、デュエルの事となると真剣だったな。勉強はダメだけど」
「イテェところ突かないでくれよ⁉︎」
2つ目の鍵は十代が手に取り、セブンスターズと闘う事を決意した。
それに続くように、カイザーも鍵を受け取り、明日香、三沢、万丈目も鍵を持つ事になった。
そして、後1つだが……
「ここまで来たからには、俺も鍵の所持者になりたいんだが……神楽坂はどうする?」
「俺はお前と三沢、最低でもどちらかの援護に回りたいかな。親友にもしもの事があったら嫌だし……何も主役と同じ立場になる事だけが、世界の為になる事じゃないだろ?」
「お前がそう言うなら」
「神楽坂……すまない、その時は頼むよ」
「おう、任せとけ‼︎」
神楽坂……
そして辞退という手段もあったのに、友の為に一緒に闘ってくれるのか……ありがとう神楽坂、お前が親友になってくれて。
「……となると、残ったボク達教師組はサポートか辞退かのどちらかかなー。他の先生達はどう思う? ボクは前者だけど」
「ふむふむフランクフルト……オカルト話はさすがに信じられない事デスーガ、教師として生徒達にすべき事が何なのかは、もう決まっているノーネ」
間藤先生ことマッドラヴは、当然と言っているかのようにサポートに回ってくれるようだ。それに続くように、クロノス先生が誇らしげに胸を張り、自身はどうするのかの答えを言葉と態度で伝え……たのはいいが。
「あ、辞退ッスか」
「ノーノーノーノートブックスッ⁉︎ 全然違ウーノ‼︎ 私も生徒達を守るために監督役として打って出るって言っていまスーノ‼︎」
「いや、オカルト話を信じないってなると、辞退が安定なのかなって思いまして……」
「それ以降の話は聞いてないノーネ⁉︎ Mrs.間藤、それはさすがに酷イーニョ‼︎」
クロノス先生、揶揄われて威厳が完全に台無し。マッドラヴ、お前空気読めよ……
「教師とは生徒を守り、導く者。私は喜んで皆さんを守り切ってみせましょう」
「ボクもそのつもりでいくよ。……それで、大徳寺先生はどうします?」
「残念ですが私はパスにゃ〜。ぶっちゃけ私はこの中だと一番弱いし、実力がはっきりとしている人達の方が、いざという時にみんなを守れるので、先生方にお任せしますにゃ〜。私は見守る方が向いてるにゃ〜」
あ、一応同行する感じか。そういや大徳寺先生って、錬金術の他に闇のゲームに関する研究もしていたんだっけ。怖いとかなら同行する必要ないと思ったのに、そうしようとしているのはこれが理由なのだろうか。
何はともあれ、これで7人が鍵を受け取り、他の人達もほぼ全員が鍵の守護者となった者達のサポートに回る事になった。過剰戦力かとは思われるが、万が一の時のために仲間が多くいるに越した事はないし、えぇやろ。
「ありがとう……今この瞬間から、戦いは始まっています。どうか、いつでもデュエルのスタンバイをしておいてください。そして必ずや、【三幻魔】のカードを──七精門の鍵を守りきってください」
「終わったらそれ相応の報酬をお願いしますね。なんちゃって───」
「えぇ。生徒の皆さんには申し訳ないと思ってはおりますが、危険な依頼ですからね。納得のいく報酬をお渡しできるよう準備しますよ」
「半分の冗談をまともに受けてくれた⁉︎ なんかすみませんでした校長先生‼︎」
「冗談は半分かよ」
つい口に出てしまった冗談をまともに受けるつもりの校長に、俺は思わずツッコミを入れてしまった。そこは聞くにして少しは唸って悩むところでしょうが⁉︎ なんかすみませんでした‼︎
世界の存亡が掛かっているとはいえ、7つの鍵を守るのに必要な人数が多すぎる……とは言ってはいけない。これくらい保険があってもえぇやろがい。