OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜 作:名無しのモンスター
前回に関する感想、1個も来てない……(今回の投稿時点) 十代とダークネスの白熱としたデュエル回なのに……なんで?(圧)
光が角の隅ら辺のランプぐらいしかなく、黒や深緑などの暗い色の混じった、薄気味悪い空間。
そのホールらしき場所にて、何故か俺は立っていた。それもデュエルディスクを展開しながら。何かしらのカードが置かれている事から、デュエルしている途中である事が確証できる。
そんな俺の目の前に立っているのは、全貌を明らかにしていない長身の人影。向かい合うように立っている事から、その人物こそが、俺が闘っているデュエリストである事が窺える。
そして、その人影の背後にあるのは……全身がシルエットのように影で覆われていながらも、不気味な形状である事を確証させる、巨大な扉だった。
───この扉の生贄となる魂は、貴方の大切なもの達から選ばせてもらうわ‼︎
───そして、生贄になってもらう魂はもう決めてある‼︎
不吉、とだけでは済まされないだろう言葉が、俺の耳に強く響いてきた。そしてその扉から出てきた、無数の不気味な黒い手が次々と迫ってくる。
そして感じた事のある気配に気づいた俺は、精霊達を呼びそれらを守るよう指示する。きっとそれらを人質にされる恐れがあっての事だろう。
そんな中、他の精霊達と同じように何かを守ろうとフランメになったティルルに向かって、黒い影が迫り、やがて───
「───うわぁああああああっ‼︎」
悲鳴を上げたのと同時に、俺はベッドから勢いよく身体を起こした。これまで発した事のなかった声量・声質による悲鳴だ。
「………………ゆ、夢……?」
一体どんな夢を見たのか、それは分からなかった。悲鳴を上げながら勢いよく身体を起こしたのだから、それによる衝撃で記憶が吹っ飛んだのだろう。とはいっても、見た夢を覚えている事なんて稀なのだが。
「な、なんだったんだ……けど、相当ヤバい夢でも見てしまったんだろうな、俺」
ふと視線を下せば、俺の着ているパジャマとシーツは汗でぐっしょりだ。この様子を見れば、魘される程の夢を見たんだろう、きっと。なのに起きた途端に忘れるなんて、どうかしてるような……
ふと時計の方を見る。夜の3時か。そんな時間に起きてしまうとか、ホント一体どんな悪夢を見ていたんだろうな……
『あ、あの……ご主人様、大丈夫ですか?』
不意に左の鼓膜から、俺を心配している声が聞こえてきたため、その方向へと振り向いた。そこには薄い赤色のネグリジェを着ているティルルがいた。俺の悲鳴に気づいて、彼女も起きたのだろう。
「……悪いティルル、起こしちまったようだ」
『い、いえ。私は構いませんが……ご主人様は大丈夫ですか? 汗がすごいですよ……?』
「悪い、どうやら悪い夢でも見ていたようだ。その悪い夢は起きた途端に忘れたから、多分大丈夫……なはず」
夢なら大抵、忘れてしまったもんはあまり気にしなくていいはず。どうせ大抵非現実的なものばかりだから、正夢になんてならないだろ。もう一度寝た方がいいだろ、うん。
「とにかく、汗拭いてからもう一回寝るから、ティルルも寝ていいぞ」
『えっ。そ、それって、一度肌を晒し………………あっじゃなくて‼︎ ちょっとお待ちください』
なんか一瞬顔を赤くしながらも、何かを取り出し始めたティルル。一体何をするのかると思っていると、テーブルの上に電気ポットとティーカップを置き、何かを注ぎ始めた。
色は白くて、湯気が出ている……これは、ホットミルクか?
『夜遅くまで働いていたメイド長やラドリーに快眠してもらうために、よく作って飲ませてあげているんです。睡眠効果に有効なので、ご主人様もこれを身体を飲んで温かくして寝るといいですよ』
えっ……【ドラゴンメイド】仲間によくやっている事を、俺にもしてくれるのか? こんな遅い時間に起こしてしまったというのに? ……ヤバい、めっちゃ良い子やん。俺の好きな女性の条件の1つに当て嵌まったる……‼︎
「……わざわざありがとうな、ティルル。こんなにも気が利く事をしてくれるなんて、将来は立派なお嫁さんになれるかもな」
『えっ……⁉︎ お、お嫁さっ……⁉︎』
……なんか、思ったよりも恥ずかしい事を言った気がする。心なしか顔が熱くなった気がするし、ティルルも顔を真っ赤にしてるし……
「と、とにかく。ホットミルク、いただくぜ」
『えっあっはい‼︎ どうぞお飲みください‼︎』
あーくそ。だんだん恥ずかしくなってきたから、ホットミルク飲んで身体を温めて、そしてさっさと寝よう。そうしよう。じゃないとかえって眠たくなくなってしまう。
『お、お嫁さん……ご、ご主人様のお嫁さんにも、頑張ればなれるのでしょうか……えへへっ』
♢
翌朝、快眠でき心地良く起床。ホットミルクってスゲー。途中悪夢で目覚めて眠気が飛んでいたというのに、アレ飲むだけでもう一度快眠できたんだから。
そして朝のランニングを終え、シャワーを浴びてから食堂で朝飯を食う事になった俺氏。ちなみに今日食べるのはホットケーキだ。なんかイエロー寮ってカレーばかりが出るイメージだったんだけど、他にもメニューはあるみたいで助かったよ。
あっメニューといえば、アレイスターが『レッド寮の食堂のレパートリーも増やすべきだ』とか言って、なんか会議に出す案の制作とか署名活動とかしているようだ。確かにあそこは素朴な感じがするし、メニューが増える事はレッド生の娯楽が少し増えて良いとは思うな、うん。
「よっ翼。隣いいか?」
ふと、神楽坂が声を掛けながらこちらに来た。
「おう……って、朝からカツカレーかよ。普通のカレーならともかく、朝っぱらからよくそんな胃に重たいものを食えるなお前」
「昨日はデッキ作りに没頭しすぎて、夕飯食うの忘れてたからな」
「あぁ……なーる」
つまり腹空かせたまま寝てたと。よく時間を忘れてデッキ作りに集中していたお前。
……と思ったが、三幻魔の鍵を守る俺達のサポートをすると言っていたんだから、それができるようにと必死で努力しているんだろうな。だからデッキ作りに長時間没頭したんだと思う。そりゃ腹減るか。
「十代の奴、一昨日は危険な目に遭ったよな。まさかセブンスターズの1人と、火山のところでデュエルしていたなんて」
「あぁ。しかもその人が、アカデミアで行方不明になっていた天上院のお兄さんだったって事には驚きだった」
人質にされた翔と隼人を助けた後、何故か1人火山口に取り残され渋々1人で出て行った俺は、あの後どうなったのかを翔達に聞いた。
まず魂がカードに封印される件。どうやら仮面に魂が宿っている感じらしく、それがカードに封じ込められたようだ。
そこに振動する鍵に導かれた三沢や万丈目達が駆け寄り……そこでダークネスの仮面を着けた男の正体が、明日香の兄でカイザーの親友・吹雪である事が判明したようだ。
そして十代は無事かというと、闇のデュエルによる大きなダメージが身体が蓄積されて無事なわけなく、吹雪さんと共に保健室で寝転がる事になった。
十代は目を覚ましているものの激しい動きが出来る状況ではなく、吹雪さんは意識はあるものの目を覚ます気配はないとの事。出来れば原作通りのスピードで目を覚ましてくれるといいが……
「にしても最初のセブンスターズが操られたような人だとは驚いたな。そうなると、他のメンバーも普通の人間じゃない可能性がかなり高いぞ」
とはいっても、俺はほぼ全員把握してるから、全員が人間じゃない事は分かっているけどな。
「それだけど、これは俺の憶測なんだが……例の噂が、2人目のセブンスターズの可能性もあると見ているんだ」
「噂って?」
「あぁ。「それってハネクリb」昨日の夜、ブルー寮の奴らが肝試しとして湖に行ったらしいんだ」
ネタとしてボケようとしたら遮られました。まぁ指摘されたら面倒なところなので、聞こえないように小声しているけどね。
「そしたら見えたらしいんだ。湖の上に美女が立っていて、美人だなって見惚れていたら……どうやら口元で、牙が光っていたんだとか」
湖……美女……口元に牙……なるほど、やはり2人目のセブンスターズはあいつのようだな。大体ダークネスの次と来たらあいつである可能性が高いし、しゃーない。
「ま、あくまでブルーの生徒1人が騒いでいる噂だがな。けど今じゃ、その噂はブルーだけじゃなく他の寮にまで届いているんだ。特に女子が盛り上がっている」
「なんで女子がその噂にはしゃいでんだよ」
「デュエル以外の娯楽なんてあんまりないだろ?」
あぁ……娯楽の多さってのは、女子にとって良い薬味となっているらしいからな。そう考えると、美しい系の都市伝説を聞いてワクワクしないわけないか。
とりあえず勘のフリして、ちょっと匂わせて注意喚起してもらうようにしておくか。
「しかし、夜の時間に光る牙の見える人間か……もしかすると、そいつ吸血鬼だったりしてな‼︎」
「いや、さすがにそんなのが実在するわけが……と思ったけど、正体がセブンスターズの1人だとしたら、その可能性も濃厚だな」
「だろう? だから念のため注意した方がいいぜ」
「それもそうだな」
しかし吸血鬼か……数世紀前に存在しそうな奴が、近代のヤツを容易にやるって印象がないんだよな。だからよく考えてみれば、吸血鬼がデュエリストってちょっと違和感が───
あっ。そういえば古代の人がデュエルモンスターズの元となるような対決をしているんだっけ。そうなると、それに合わせて吸血鬼もデュエルモンスターズをする事になって、交渉でセブンスターズになったとかか? それなら納得いくけどな。
「あっ。そういや十代は今頃どうしてるんだろうな。保健室で『デュエルしたい』とか言って騒いでそうだけど」
「その可能性が高いだろ。だってあいつ、誰よりもデュエル好きなんだから」
「それもそうか」
「「ハッハッハ‼︎」」
♢
一方その頃、十代が寝転がっている保健室では、何が起きているのかというと……
「な、なぁ半次? なんだよその教科書の山……?」
「オシリス・レッドの貴様が、授業に出れない分の遅れのせいで、俺達に泣き噦られたりしたら溜まったもんじゃない。だから特別にオベリスク・ブルーの俺や音輪が勉強を教えてやる」
「うげぇ⁉︎ 勘弁してくれよ〜‼︎ 俺、勉強苦手なんだから〜‼︎」
「怪我が長引くせいで、出席数が少なかったり試験に出れなかったりして、留年や退学になる可能性が出てもいいのか?」
「そ、それは実技で───」
「手ェ出そうか?」
「……すみませんでした」
「せっかくですし、明日香さんも参加しませんこと? お兄さんの看病で授業に出れないらしいではありませんか」
「そうね、せっかくだしお願いするわ」
「というわけで鮎川先生。遊城の怪我も考慮して、図書館の代わりにここを勉強場所に使わせてください」
「まぁ本当は良くないけど、遊城君の状態的に仕方ないわね。静かにやるならいいわよ」
「そ、そんなぁ〜……」
「ほら、特別に貴様でも出来そうなペースでやってやるから、とっとと始めるぞ」
「はぁい……」
十代が半次に強制的に勉強を教えられる羽目になっていた。ついでに舞香も教える側となり、明日香もそれに参加している感じだ。
♢
その日の夜、俺達は例の噂が流れていたという湖に来ていた。
事の発端は、鮫島校長が昼頃に俺達を呼んでいた時の事だった。彼は学園にて広まっている、湖の牙の生えた美女──吸血鬼の噂から、その者が新たなセブンスターズの刺客ではないかと悟り、俺達に注意換気してもらうよう呼び込んだらしい。
ちなみに十代・明日香・半次・舞香は来なかったようだ。授業に出れない2人に授業の内容を教える名義と同時に、十代の監視をするためだそうな。舞香は半次について行ったって感じらしいが。
校長の話を聞いて、万丈目とクロノス先生は否定気味だった。特に後者はオカルトを信じないがためか、その意思はかなり強かったが。だが2人とも、自分達に混乱を引き起こすための演技という可能性を捨てられなかったようだ。
もしもの可能性があると見て、昼間でも確認すべきだという三沢とカイザーの意見の元、一度昼間にて湖に来てみたものの……案の定、その湖に行っても何も起きなかった。
ってなわけで、この夜の時間にて、翔と隼人も連れてもう一度集まったのだが……まだ何も起きてないな。これだけ鍵の所有者とその守護者っぽいポジションの奴らがいるというのに、何も起きないとか……なんか寂しい。
と。そんな事を考えていたら、湖に波が立った。風なんて吹いていないというのに。しかも静か空間の中で音が鳴るものだから、そちらの方を向いて警戒せざるを得ない。
それと同時に、その湖の上にレッドカーペットが敷かれた。なんで湖の上? 濡れて渡りづらくならない?
「何だ……?」
「バージンロードってやつか?」
「いや、違うだろ」
「夜にこんなところでバージンロードをする奴なんて、危なっかしくて珍しいにも程があると思うぞ」
「刺激的ではあるのだけれど」
「……呼んでいるんだ、俺達を」
しかし、そろそろあの展開が来るのか。ここは被害を防ぐために俺が奴と命懸けの闘いをするのか? それともとあるキャラの改心のために出ないでいるか? どっちを選んでも一長一短ではあるが……
という考えをした僅かコンマ0.01秒にて、誰か前に出てレッドカーペットの端の真ん中を踏んだ。
「流石なんだな、クロノス教諭」
「真っ先に立候補するとは」
「教師の鏡なんだにゃ」
「この思い切った行動、ボクら新人教師も見習わないとなー」
みんなクロノス先生が自らの意志で前に出たと思い込んでいるようだが……すまん、俺は見てしまったんだよ。クロノス先生が大徳寺先生と同じように後退りしようとしていたけど、何かぶつかった衝撃で偶々前に出てしまった場面を。
ってかマッドラヴ。お前わざとらしくみんなに合わせんな。絶対楽しんでいるだろこの場面を。この後の原作通りの展開を知っている癖に。
ほら、クロノス先生もその気ではなかったからなのか動揺しているし……あ、それを誤魔化すように笑った。
「あ、当たり前ナノーネ‼︎ 赤き道は紳士の道。つまり、メディチ家の末裔であるこの私の道ナノーネ‼︎」
いや、無理しなくていいですよクロノス先生? いくら教師として情けない姿を見せられないからって、無理に自分を奮い立たせなくても……
「ところでですがクロノス先生。相手がもしセブンスターズでしたら、三幻魔の鍵の所有者を優先してデュエルするかと思われます。なので何かしら言われたりして、クロノス先生が無視される可能性が……」
「ノンノンノン‼︎ 心配いりまセンーノ、ペペロンチーノMrs.晴田」
聖殿に鍵の事を指摘されるも、そんな事は想定済みだと言っているかのように、クロノス先生は首に掛けている
「現在保健室にいるシニョーラ舞香との話し合イーデ、私が一時的に預かっていまスーノ‼︎ 保健室にてシニョール半次と共に、ドロッ……シニョール十代の見舞いと勉強のレクチャーをしている時ーニ、そこに
いや、そこにいる十代や明日香も鍵を持っているからあまり意味がないんじゃ……と思うところだろうが、実は既に神楽坂と雪乃が代理として2人の鍵を一時的に持っているため、その件だけは問題ないって事になっている。
だが、その件の有無に関係なく、生徒の最悪な被害を避けるための判断をするのは良い事だと思う。その件は素直に褒めさせてくださいクロノス先生、貴方はよくやってくれた。
「おい、見ろ‼︎」
「誰かが歩いてくる」
「湖の上でよく歩けるね……沈んだりしないのかな?」
万丈目やアレイスター達の声に反応し、俺はレッドカーペット側の方を見た。どさくさに霧がかかってるな向こう側。気づかんかったわ。
そのカーペットの上を、1人の人物が悠々と歩いていた。よく湖の上に敷かれて浮かんでいるカーペットの上……というか湖の上を渡れるな。アレイスターの意見の通りだよ。
「ようこそ、赤き闇への道へ」
そう言いながら姿を見せたその人物は、西洋の怪奇さを感じさせる妙齢の美女。胸元と両腰のスカートのスリット部に蝙蝠の刺繍が施された、露出の高い赤いドレスを着こなしていた。
彼女の周りには蝙蝠がたくさん飛んでいる事と、牙がキラリと見えていた事から、吸血鬼という噂は本当である事が窺える。
「あら、お相手は貴方なの?」
「いかにもナノーネ……‼︎」
「ふむ………………チェンジはありかしら?」
「だぁっ⁉︎」
その美女もとい吸血鬼は他のメンバーを見渡して、対戦相手を変えろと言ってきた。いやいくらなんでも失礼だろ、ホストじゃねェんだからさ……
「ぐぅぅぅ……‼︎ 失礼ナノーネ‼︎ このクロノス・デ・メディチ、相手にとって不足はないノーネ‼︎」
「そう」
顔が醜いと思われたのか反論するクロノス先生。まぁ確かに人を見た目で反論するのは失礼だけどね。けど今のクロノス先生は中身でも……
だが彼の抗議は蔑ろにされるわけではなく、対戦相手の交代すら期待していなかったのか、その吸血鬼はあっさりとクロノス教諭との対戦に同意し、黄金のコウモリの翼を模したかのようなデュエルディスクを展開させた。
ちょっと待て。今気づいた事なんだけど、なんだそのデュエルディスク。明らかに自作である感が半端ないんだけど。
ってかよく考えたら、クロノス先生が同時に展開させたデュエルディスクも独特だよな。ギターのように胸の前に吊り下げ、テーブル状にカードパネルを広げて配置する肩掛けタイプって。どうやったらそんなんのが出来るねん。
なんていう心のツッコミを余所に、三幻魔の鍵を賭けた、2人目のセブンスターズとのデュエルが始まろうとしていた。
「では始めましょう、闇のデュエルを。今回は私、セブンスターズの貴婦人、ヴァンパイア・カミューラがお相手してさしあげますわ」
「貴方の相手はこのクロノス・デ・メディチがするノーネ‼︎」
「「
クロノス
LP:4000
カミューラ
LP:4000
冒頭の悪夢、絶対正夢になりそうだよね……?