OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜   作:名無しのモンスター

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前回のあらすじ

クロノス先生、【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】をNTRれる。


古代の機械(アンティーク・ギア)vsヴァンパイア(後編)

 

クロノス

LP:1700

手札:4枚

フィールド:

【補給部隊】×1

 

vs

 

カミューラ

LP:4700

手札:1枚

フィールド:

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】ATK:3000

【ヴァンパイア・レッドバロン】ATK:2400

【ヴァンパイア・スカージレット】ATK:2200

【ヴァンパイア・グレイス】ATK:2000

【シャドウ・ヴァンパイア】ATK:2000

【ヴァンパイアの領域】×2

伏せカード×1

 

 

 どうにかしてカミューラの方を見据えるクロノス先生。だけど、足は震え息は上がっている状態だ。これはカミューラの盤面を見たからじゃない、闇のデュエルによって受けた痛みを堪えているのだ。

 そんな彼を見て、カミューラは嘲笑うように紅い瞳を向けていた。

 

「アラアラ、顔色が悪いわよ先生。今にも倒れそうって顔ね。たった300ポイントのダメージを受けた時も片膝をついていたし、これじゃあデュエルで決着がつく前に先生が倒れるんじゃなくて?」

「フッ……この程度、なんともなイーノ……」

「強がりね。けど……醜い男のそんな姿、見ても楽しくないわ。どうせなら、彼のような子かその隣の金髪の子を相手にしたいわねェ」

「ッ……」

「は? 俺まで標的に?」

 

 俺氏、何故かカイザーと一緒に指名されるという。俺ってカミューラのおもちゃ対象なの? めちゃくちゃ悪寒が走ったんだけど。ってかカイザー引いてるじゃん。貴方にも受け入れ難いものがあるんですね。

 おいコラ待てウチの精霊ども。俺の目の前に立って殺意マシマシにならんといて。デュエル中の奴をデュエル以外の方法でボコすのはどうかと思う。カードの精霊はデュエル以外だと大抵リアリストだけどさ……

 

「ふざけんな。歳上の女性なんて、よっぽどの事がない限りはタイプでもなんでもないし、SMプレイも嫌いだ。拒否権無しと言われても拒否したいし。いやそれよりも……」

「それよりも?」

「デュエルの途中で対戦相手の鞍替えなんて、んなもん御法度だぞ。クロノス先生もそれを認めないはずだ」

「……シニョール翼の言う通りナノーネ」

 

 俺がカミューラに反発しながらクロノス先生の名前を言ったら、彼は両手で頬を叩き、己を奮い立たせた。

 

「彼等は私の大事な生徒‼︎ 指一本触れさせないはしませンーノ‼︎ そして、私は栄光あるデュエル・アカデミア実技担当最高責任者‼︎ 断じて闇のデュエルなど認めるわけにはいきませンーノ‼︎」

 

 捻くっている部分はあれど、それでも彼は教師だ。生徒を守らずして教師は語れない……そう言っているのを、背中で語っていた。

 これで十代をどうにかしてぎゃふんと言わせようとしているのは、どうにかならないのかとは思うが……

 

「けど、あんたボロボロだぜ」

「コラ万丈目君、敬語……いや、今はそれどころじゃないか。無理はなさらないでくださいクロノス先生。もしアレでしたら、ボクがこのデュエルを引き継ぎますよ」

「心配はいりませンーノネ‼︎ デュエルは光。私が正統なる光のデュエルで、闇を葬って見せマスーノ‼︎」

「……なら、何も言いません」

 

 遠回しな感じはあるが、クロノス先生の事を本気で気遣っているアレイスター。考え方が違うもの同士ではあるけど、互いが互いの事を考えているとか、教師の鑑なんだろうな……

 

「私のターン、ドロー‼︎ 手札から魔法(マジック)カード【苦渋の選択】を発動‼︎ デッキの上の5枚の中から、貴方に選ばれたカードを手札に加え、残りを墓地に送るノーネ‼︎」

 

 うわ、ここでこの世界で初めて見る禁止カードか。選ばれたカードの中からなんでもサーチし、残りのカードで墓地肥やし……数年後にはぶっ壊れになるって。サーチ対象は相手が選ぶけどね。

 めくられたのは、【サクリボー】、【古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)】、【古代の機械素体(アンティーク・ギアフレーム)】、【古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)】、【歯車街(ギア・タウン)】か。一部はめちゃ強、それ以外も全部そこそこ強いカードばかりではあるが……

 ってか【サクリボー】て。機械族のデッキに【サクリボー】て。

 

「さぁ、選ぶノーネ‼︎」

「難しい選択ね……なら【サクリボー】にするわ」

 

 ま、まぁこの中からそのカードは選出確定だろうな。だってシナジーがそんなにあるかどうか分からないし。機械族でも地属性でもないし。

 

「さらに手札から魔法(マジック)カード【天使の施し】を発動するノーネ‼︎ 3枚ドローし、2枚捨てルーニョ‼︎ この2枚にすルーノ‼︎」

 

 ここでさらに【天使の施し】を使ったか。手札が増えたわけでも減ったわけでもないが、減らさずに手札交換できるのは良い事だな。禁止カードだから俺は使わないけど。

 

「これナラーバ、いけるかもしれないノーネ……‼︎ 永続魔法【古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)】を発動するノーネ‼︎」

 

 まるで先端が四角いピラミッドであるかのように、4段に積み重なった形状となっている、土色のレンガの要塞が、フィールド魔法でも発動したかのように大地よりせり上がった。

 至る箇所にて大きな歯車が回っており、それらが要塞の起動源となっている事だろう。

 

「ここで墓地の【古代の機械射出機(アンティーク・ギアカタパルト)】の効果発動‼︎」

「アラ。そのカード、墓地で発動する効果もあるのね。便利じゃない」

「2つの効果の内いずれか1つしか発動できないのがネックだケーレドモ、こっちの効果も役立つノーネ‼︎」

 

 まぁ両方の効果を1ターンで使えたら強すぎるもんね、それは仕方ない。

 

「墓地のこのカードを除外し、私のフィールドのカードを1枚破壊し、【古代の歯車トークン】を特殊召喚すルーノ‼︎」

 

 何処からか巨大な鋼鉄の矢が放たれ、それが要塞の中心を貫通。それによって要塞は雪崩れ落ちながら崩壊していき、同時に何かが吹っ飛び、地面を何度も跳ねながらクロノス先生のフィールドに転がった。

 

 

【古代の歯車トークン】

ATK:0

DEF:0

 

 

 それは、ただの灰色の歯車と言うには、あまりにも大きすぎた。工場の巨大な機械に使うにちょうど良い大きさのそれは、電磁浮遊でも受けたかのように浮遊し、ゆっくりと歯車を回転させていた。

 

「さらーにサラミ‼︎ 【古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)】にも破壊された場合の効果があるノーネ‼︎ 手札・墓地から【アンティーク・ギア】モンスターを特殊召喚すルーノ‼︎ この効果の発動後、ターン終了時まで【アンティーク・ギア】しか出せまセーンが、私のデッキにこの制約は関係ないンヌ‼︎ 墓地から【古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)】を特殊召喚するノーネ‼︎」

 

 

古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)

ATK:500

DEF:2000

 

 

 崩れ落ちた要塞の残骸から、深緑色のボディを光らせる、子供の人型ロボットが飛び出してきた。藍色の歯車を背に着地し、ビシッと何処かヒーローもののポーズを取った。憧れの存在でもいるのだろうか。

 

「【苦渋の選択】で墓地に送られた雑魚モンスターね」

「【古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)】の効果発動ナノーネ‼︎ 召喚・特殊召喚に成功した場合、カードの種類を1つ宣言して発動できルーノ。このターン、私のモンスターが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで宣言した種類のカードを発動できなくなるノーネ‼︎ 私はモンスターを宣言すルーノ‼︎」

魔法(マジック)(トラップ)は他の【アンティーク・ギア】の素の効果で回避するのかしら? いいわ、通す」

 

 【古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)】の背中の歯車がギュルギュルと高速で回転し、それを光輪のように光らせる。その光に【ヴァンパイア】と【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】が視界を一瞬奪われ、目を塞ぎながら悶えてしまった。

 

「そして【古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)】と【古代の歯車トークン】を生贄に捧げ、このカードを攻撃表示で召喚するノーネ‼︎ 現れなサーイ‼︎ 【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】‼︎」

 

 うわでた、デュエルリンクスの【アンティーク・ギア】デッキで一時期よく見た奴がよ。

 

 

古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)

ATK:3000

DEF:3000

 

 

 【古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)】と【古代の歯車トークン】を体のパーツとして組み込むようにして現れたのは、飛竜(ワイバーン)と比べ物にならない大きさを誇る翼竜だった。その大きさは、【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】と同等。

 腕代わりにしている青紫色の金属板の翼から紫電が発生しており、雷鳴を放っているように感じ取れる。そして左足は長細い剣刃となっており、歯向かう者を迎え撃たんと煌めかせていた。

 そして一番に注目すべきなのは、彼の胴体に付いてある、金色の発芽らしき部品。その中には紫色のコアが光っており、それを起動源の核として動かしていた。

 

「へぇ。また攻撃力3000のモンスターを出せるなんて、やるじゃないの」

「ノンノンノンノーン‼︎ 関心するにはまだ早いノーネ‼︎ 【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】は召喚する際、【ガジェット】モンスターである【古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)】を生贄の素材に使っターノ。よってこのカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できルーノ‼︎」

 

 どさくさに熱核竜(リアクター・ドラゴン)の背中に付けられていた、【古代の歯車機械(アンティーク・ギアガジェット)】の背中の歯車が高速で回転する。それが熱核竜(リアクター・ドラゴン)の機動力を上げ、それに合わせるように雄叫びを上げさせた。

 

「2回も攻撃が……? それはすごいわね」

 

 台詞的には関心している風なのを見せているが、実際にそう思っていないといった感情で言ってるなこの女。いや、どうでもいいから感情無しにそう言ったのか? なんか十代絡みのクロノス先生以上にクソムカつく……‼︎

 

「バトルフェイズに入ルーノ‼︎ 私は───」

「お待ちになって? ここでリバースカードを発動するわ。永続(トラップ)【スピリットバリア】よ」

「ナヌッ⁉︎」

「これにより、私のフィールドにモンスターが存在する限り、私は戦闘ダメージを受けなくなるわ」

 

 戦闘ダメージを結構防げるカードを入れていたのか。しかも永続(トラップ)……

 なるほど。【ヴァンパイア】のライフポイントをコストにする効果を使えやすくする上に、いざって時に【マジック・プランター】でコストにしてドロー……結構構成を考えているんだな。敵ながら上手いぜチクショー。

 

「ムムムのム……しかーし、攻撃しなければ不利になるだけナノーネ‼︎ 【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】で【ヴァンパイア・レッドバロン】 を攻撃ナノーネ‼︎ このカードの攻撃中、貴方はカードの効果を発動できないンヌ‼︎ オーバーヒート・ショック‼︎」

 

 核の光の力をさらに強め、それを熱として体全体を脈動させる熱核竜(リアクター・ドラゴン)。そして首をレッドバロンのいる方向に突き出しながら口を開けば、(アギト)から熱線が、紫電と共に奔流として解き放たれる。

 その奔流の危険性を察したレッドバロンが、馬に跳躍しての回避を指示しようとするも、時既に遅し。呆気なくその不死の騎士は奔流に飲み込まれ溶かされてしまい、奔流はそのままカミューラに直行してドーム状の透明なバリアに遮られてしまった。

 

「これでまた私のモンスターが入れ替わる、なんて事にはならなイーノ‼︎ 【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】の効果発動‼︎ このカードが攻撃したダメージステップ終了時、フィールドの魔法(マジック)(トラップ)カードを1枚破壊できルーニョ‼︎ 【スピリットバリア】は破壊させてもらうノーネ‼︎」

 

 奔流が巨大な火花を散らしながら、弾くように消滅したのと同時に、バリアの中央からヒビが大きく入る。そして僅か2秒の内に、そのバリアはガラス細工のように割れて散っていってしまった。

 

「1回しかダメージを防げられなかったわね……ま、無いよりはマシね」

「続いて【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】を攻撃ナノーネ‼︎ 私の……ノン、人のエースモンスターを奪い取ったまま酷使するのは、さすがに御法度……返してもらウーノ‼︎」

 

 【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】が紫電色のモノアイを光らせ、【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】を睨みつける。ぶっ飛ばしてでもお前を必ず正気に取り戻してやる……そう宣言するかのように。

 

「この状況で相打ち狙いなんて、かなりキツいんじゃないの?」

「心配ご無用ナーノ‼︎ 速攻魔法【禁じられた聖槍】を発動‼︎ 【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】の攻撃力を800ポイントダウンさせるノーネ‼︎」

 

 突如、一瞬だけ夜空に隠れていた光が見えた。そこから天の槍が投げ落とされ、眩い光を振り撒きながら降下していく。それに【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】が咄嗟に気づくも、反応が遅かったためか呆気なく胴体に突き刺さってしまう。

 それと同時に、ギャリギャリッと言った不吉な鉄の音が発生し、【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】の動きが鈍くなり始めた。槍が内部にまで突き刺さったのが原因なのが明確だ。

 

 

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)

ATK:3000 → 2200

 

 

「いくノーネ、【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】‼︎」

 

 足の刃を構え、そこに体内から放出した紫電を纏わせる【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】。そして動きを鈍くさせられた【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】に向かって突撃を行い、すれ違い様にその巨人の胴体と腰を泣き別れさせた。

 抵抗できず呆気なく体を上下別々に切断された【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】は、胴体が地面にクレーターを作りながら落ちたのと同時に機能停止され、モノアイの光を失いながら粒子となって消滅していった。

 

「……ふぅん。その程度かしら?」

「あいつ……実際に体にダメージを受けているように見えてるのに、何事もなかったのように耐えてやがる」

 

 

カミューラ

LP:4700 → 3900(3000 - 2200 = 800)

 

 

 【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】の落下による衝撃がカミューラに襲い掛かるが、一瞬体が揺れただけで平然としていた。

 たったの800ダメージだから、という理由もあるだろうが、闇のデュエルによる実際のダメージを受けても問題ないとか、どんな耐性だよホント……

 

「ッ……【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】の効果で、【ヴァンパイアの領域】を1枚破壊させてもらウーノ」

 

 平然としているカミューラに恐怖を感じながらも、自身が不利にならぬよう潰せるものを潰したクロノス先生。1枚あるだけでも厄介な【ヴァンパイアの領域】を1枚減らせたのは美味しいだろうな。

 

「私はリバースカードを2枚伏せ、ターンエンドナノーネ……」

 

 

クロノス

LP:1700

手札:0枚

フィールド:

古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】ATK:3000

【補給部隊】×1

伏せカード×2

 

vs

 

カミューラ

LP:3900

手札:1枚

フィールド:

【ヴァンパイア・スカージレット】ATK:2200

【ヴァンパイア・グレイス】ATK:2000

【シャドウ・ヴァンパイア】ATK:2000

【ヴァンパイアの領域】×1

 

 

「私のターン、ドロー‼︎ ……アラ、ここでこのカードが来たのは良い事ね。永続魔法【生還の宝札】を発動。これにより、私の墓地からモンスターが特殊召喚されれば、私はカードを1枚ドローする事ができるわ」

「ンナッ……⁉︎」

 

 ここで新たな禁止カードか‼︎ 三沢が使って以来、最近見なくなった気がする……じゃなくて‼︎ あいつのデッキとのシナジーがめっちゃ合っているから、あのカードは明らかにヤベーだろ⁉︎

 

「んで、とりあえず【ヴァンパイア・グレイス】の効果発動。魔法(マジック)カードを墓地に送ってもらうわよ」

「グヌヌ……【古代の機械城(アンティーク・ギアキャッスル)】を墓地に送るノーネ」

 

 とりあえず感覚でデッキデスを狙うのやめろ。しかし……最初のターンもそうだったけど、クロノス先生のデッキには墓地で発動する魔法(マジック)カードはなかったのか。これはキツいかもしれんな。

 

「墓地の【ヴァンパイアの眷属】の効果発動‼︎ このカードも【ヴァンパイアの使い魔】と同じく、手札または自分フィールドの表側表示の【ヴァンパイア】カードを1枚墓地に送る事で特殊召喚できる‼︎ ここは……そうね、【ヴァンパイア・スカージレット】を墓地に送るわ」

 

 

【ヴァンパイアの眷属】

ATK:1200

DEF:0

 

 

 スカージレットがマントで身を包んだかと思えば、無数の蝙蝠へと変化して夜空へと飛び去っていってしまった。

 そして森の中から代わりに出てきたのが、不気味な影に体半分が覆われた白い狼。前のターンのと同じ個体で、【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】に叩き潰された事があるためか、熱核竜(リアクター・ドラゴン)を見た途端、睨みながら唸り声を上げた。

 

「【ヴァンパイアの眷属】の効果発動‼︎ ライフポイントを糧に、デッキから【ヴァンパイア・デザイア】を手札に加える‼︎」

 

 

カミューラ

LP:3900 → 3400

 

 

 熱核竜(リアクター・ドラゴン)を睨みつけながらではあるものの、カミューラが血を授けたのだと匂いで気づいたのか、何処からか取り出した1枚のカードを咥え、それをカミューラに差し出した。

 

「そして墓地からモンスターが特殊召喚されたため、【生還の宝札】の効果でカードを1枚ドローするわ。……アラ、これは良い引きね。2体目の【ヴァンパイアの幽鬼】を召喚‼︎」

 

 

【ヴァンパイアの幽鬼】

ATK:1500

DEF:0

 

 

 先程まで眷属が移動していた足跡に、青白い人魂が出現した。それは上半身が人型・下半身が幽霊の形となり、やがて青と白以外の色もついてきた。

 こうして誕生したのが、灰色のローブ羽織った性別不明の幽霊という、【ヴァンパイア】の中でも珍しいとも思える姿のモンスター──幽鬼である。

 しかし、ここで幽鬼を呼び出すか……これはかなりヤバいな。

 

「【ヴァンパイアの幽鬼】の効果発動‼︎ 手札の【ヴァンパイア・ロード】を捨て、デッキから【ヴァンパイア・ジェネシス】を手札に加え、【ヴァンパイアの使い魔】を墓地に送るわ」

 

 3つの魂が再び幽鬼の周囲に漂い始める。それは幽鬼になる前の人魂よりも小さかった。そしてその内の1つが1枚のカードとなってカミューラの手札へと加わり、残り2つの魂は異なるの吸血鬼の幻覚を見せながら消えていった。

 ってか、なんかどっかで聞いた事のある【ヴァンパイア】の名前が聞こえた気がするけど……気のせい? 気のせいじゃないよね?

 

「そして今ここで墓地に送られた【ヴァンパイアの使い魔】の効果発動‼︎ 【ヴァンパイアの眷属】を墓地に送り、このカードを特殊召喚する‼︎ ただし、【ヴァンパイアの眷属】は自身の効果で特殊召喚されている場合、墓地に送られる時に除外されるわ」

 

 

【ヴァンパイアの使い魔】

ATK:500

DEF:0

 

 

 幽鬼が己の瘴気を放出し、それを身に纏うように自身の体に包ませた。そして姿・形・身長……何もかもを変形させていき、やがて巨大な目の見当たらない黒い蝙蝠と化した。

 デジャヴを感じるだろうが、前のターンと同じ流れなのでそう思えても仕方ないな。うん。

 

「【ヴァンパイアの使い魔】の効果発動‼︎ ライフを糧に、デッキから【カース・オブ・ヴァンパイア】を手札に加えるわ」

 

 

カミューラ

LP:3400 → 2900

 

 

 その蝙蝠は翼の中に仕込んでいたカードを取り出し、軽く投げたのと同時に口で優しくキャッチする。そしてそれを咥えながらカミューラの元に行き、彼女に渡した。

 

「そして【生還の宝札】の効果でカードを1枚ドロー。これも良きカードね。王を迎えるのに相応しい引きだわ。フィールド魔法【ヴァンパイア帝国(エンパイア)】を発動‼︎」

「ここでフィールド魔法……‼︎」

 

 夜空の月を爛々と不気味に紅く光らせるかの如く、赤い霧が漂い始める。その月を背景とし、中世ヨーロッパを思わせる街並み、その奥の山の天辺に聳え立つ城が顕現する。

 フィールド魔法によって攻撃的にもなったのか。かなりヤバいな、これは……

 

「ここで魔法(マジック)カード【ヴァンパイア・デザイア】を発動‼︎ 2つある効果の内1つを選択する。私はこの効果を選択するわ。それは、自分フィールドのモンスターを1体墓地に送り、墓地の【ヴァンパイア】モンスターを1体特殊召喚する効果よ」

「ホワッツ⁉︎ という事は、【ヴァンパイア】を増やしながら【生還の宝札】の効果でさらにドローできる……って事ナノーネ⁉︎」

「そういう事よ‼︎ 【ヴァンパイアの使い魔】を墓地に送り、【ヴァンパイア・スカージレット】を復活‼︎ 眷属は使い魔と同様、自身の効果で特殊召喚されたため除外される‼︎」

 

 

【ヴァンパイア・スカージレット】

ATK:2200

DEF:2200

 

 

 もう何度目の出現なのか分からない、蝙蝠の群れの登場。使い魔がその中へと飛び込んでいったかと思えば、群れが周囲に散り散りとなって飛んでいった。

 そして眷属の姿が見当たらなくなり、代わりに姿を現したのは、魔法らしき杖を持った美青年な吸血鬼。ボロボロのマントを翼のように広げ、紅い瞳でクロノス先生を睨みつけた。

 

「【ヴァンパイア・スカージレット】の効果発動‼︎ 1000ライフポイントを糧にし……フフフッ、ここで面白いものを見せてあげるわ。【ヴァンパイア・ロード】を特殊召喚‼︎」

 

 

カミューラ

LP:2900 → 1900

 

【ヴァンパイア・ロード】

ATK:2000

DEF:1500

 

 

 スカージレットが発動させた魔法陣の中心地に、紅い光の柱が発生する。そしてその魔法陣から現れたのは、ロード──吸血鬼の卿。

 黒いタキシードの上に、細い悪魔の手に掴まれたかのような装飾のついた濃い赤紫色のマントを羽織り、水色の髪から紅い瞳でクロノス先生を見据える。それも、ゴミを見るような目で。

 

「【生還の宝札】でカードを1枚ドロー。そしてこの【ヴァンパイア・ロード】を除外する事で、このカードは特殊召喚……王となって進化する‼︎ さぁ現れなさい、【ヴァンパイア・ジェネシス】‼︎」

 

 いや即座に進化形に変えるんかい。環境的にそうした方がいいかもだけど。

 突如【ヴァンパイア・ロード】を黒い影が包み込み、完全に見えなくなるように覆われていく。そしてその霧の中で、何かが膨張・破裂・錬成などといった様々な事が繰り返し行われていくような音が立て続けに鳴り響き───

 

 

【ヴァンパイア・ジェネシス】

ATK:3000

DEF:2100

 

 

 やがて霧が払われたかと思えば、そこに美しき悪とも言える【ヴァンパイア・ロード】の姿は見当たらず、代わりに強靭な悪魔が、その姿を見せた。

 紫色の筋肉隆々な体を持つ悪魔が、巨大な手を持つ円形状の翼を広げながら、己を鼓舞するように雄叫びを上げた。そして彼に敬意と忠誠心を示そうと、【ヴァンパイア】達が次々と右膝をつき頭を下げた。

 

「【ヴァンパイア・ジェネシス】の効果発動‼︎ 手札のアンデット族モンスターを1体捨て、そのモンスターよりレベルの低いアンデット族モンスターを1体特殊召喚する事ができる‼︎ 私が捨てるモンスターは、レベル6の【カース・オブ・ヴァンパイア】。よってレベル5以下を特殊召喚する‼︎ 私が蘇らせるのは【ヴァンパイア・デューク】よ‼︎」

 

 【ヴァンパイア・ジェネシス】の掌に、赤紫色の球体のエネルギーが引き寄せられた。そしてそれをジェネシスが握り潰せば……

 その光が大地に散って滴り、それが魔法陣となって展開されていき、やがてそこから冥界でも繋がったのか、一度フィールドから消えていった吸血鬼が現れた。

 

 

【ヴァンパイア・デューク】

ATK:2000

DEF:0

 

 

 こうして姿を見せたのは、薄紫色の肌を持つ正統派の吸血鬼。マントを優雅に翻し、彼の周囲に部下である蝙蝠達を旋回させた。

 

「【ヴァンパイア・デューク】の効果発動‼︎」

「ナヌッ⁉︎ そのデュークは召喚ではなく特殊召喚で現れたモンスターなのデースよ⁉︎ い、いやそもそもモンスターゾーンが埋まっているノーデ、仮に蘇生効果が使えテーモ……」

 

 そう、【ヴァンパイア・デューク】の蘇生効果は召喚じゃないと反応しない。そもそもモンスターゾーンが埋まっている。なのに何故デュークを呼び出したのか。それは……

 

「安心なさい、【ヴァンパイア・デューク】は特殊召喚した場合の効果も持っているわよ。その効果は【ヴァンパイア・グレイス】と同じ、宣言した種類のカードを相手のデッキから墓地に送らせる効果よ‼︎ さぁ、(トラップ)カードを墓地に送りなさい‼︎」

「ニュヤッ⁉︎」

 

 特殊召喚した時の効果が異なるからだ。しかもこれもデッキデスに繋がる効果だ。デッキデスは必要カードを手札に引き込む確率を無くすのにもうってつけな戦略だ。発動させておいて損はない。

 

「ヌゥッ……【スキル・サクセサー】を墓地に送るノーネ」

 

 デュークの部下である蝙蝠の1匹がクロノス先生のデュエルディスクへと近づき、デッキの1枚を引き抜いて墓地スロットへと無理矢理差し込んだ。

 

「【生還の宝札】で1枚ドロー。そしてこの瞬間、【ヴァンパイア帝国(エンパイア)】の効果発動‼︎ 1ターンに1度、相手のデッキからカードが墓地へ送られた時、自分の手札・デッキから【ヴァンパイア】闇属性モンスターを1体墓地に送り、相手フィールドのモンスターを1体選択して破壊するわ‼︎」

「ナ、ナンデスート⁉︎ ま、まさかレッドバロンではナーク、デュークを蘇生させたのは……⁉︎」

「そう……破壊に転じて貴方のプライドを捻じ伏せながら、耐えられても【ヴァンパイアの領域】でライフポイントを多くできるようにするためよ‼︎」

 

 なんだその理由。かなりタチが悪いじゃねェか。けど、レッドバロンのコントロール入れ替え効果にもかなりライフがコストになるから、安全面を考えれば破壊も妥当か。

 

「私は【ヴァンパイア・ソーサラー】を墓地に送り、【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】を破壊するわ‼︎ これでそのドラゴンはガラクタと化すわ‼︎」

 

 西洋な街並みの中から、次々と無数の蝙蝠が飛び出してきた。それもこれまで一度に出てきた中の数から……いや何回出てくるんだろ蝙蝠の群れ。いくら【ヴァンパイア】の演出だからって出過ぎだろ。

 そんな事を考えている中で、その蝙蝠の群れが次々と熱核竜(リアクター・ドラゴン)に襲い掛かる。生物の体ではないのにお構いなく、その鉄の体を次々と蝕んでいく。

 

「貴方に破壊されるくらいナラーバ……‼︎ リバースカードオープン‼︎ (トラップ)カード【デストラクト・ポーション】を発動するノーネ‼︎ 私のフィールドのモンスターを1体破壊し、その攻撃力分だけライフポイントを回復するノーネ‼︎ 私は熱核竜(リアクター・ドラゴン)を破壊し、ライフポイントを3000回復させルーノ‼︎」

「アラ、自らモンスターを破壊するのね」

 

 熱核竜(リアクター・ドラゴン)が体中の紫電を帯電させ、敢えて蝙蝠の群れによってできた窪みにその紫電を通す。すると内部が紫電によってショートを起こし……

 やがて熱核竜(リアクター・ドラゴン)は爆発。その熱と爆風に耐えきれなくなったのか、蝙蝠の群れの何匹かは撃ち落とされ、何匹かは吹っ飛び、残りは逃げるように飛び去っていってしまった。

 そして熱核竜(リアクター・ドラゴン)のいた位置から紫色の霧がクロノス先生の元へと漂い、彼の体……というよりはライフポイントを癒していったのだった。

 

 

クロノス

LP:1700 → 4700

 

 

「そして2枚の【補給部隊】の効果でカードを合計2枚ドローするノーネ‼︎」

「だけど、これで貴方のモンスターゾーンはガラ空き。ジェネシスともう1体で攻撃すれば私の勝ちよ」

 

 カミューラは勝ちを確信しているようだが……クロノス先生がそう簡単にやられる程に柔じゃない。もし柔かったら、鍵の守護者の監督役になんかなれないし、実技担当最高責任者としてアカデミアにいるはずもない。

 

「バトルよ‼︎ 私は【ヴァンパイア・ジェネシス】でダイレクトアタック‼︎」

 

 ジェネシスが両腕を天に上げれば、そこを中心にジェネシスの周囲を回っていた蝙蝠達が集う。そしてその腕をクロノス先生に向けて突きつければ、蝙蝠達が一斉にその方向へと飛びかかっていった。

 

「「「「「クロノス先生(教論)‼︎」」」」」

「心配無用ナノーネ‼︎ リバースカードオープン‼︎ 永続(トラップ)古代の機械蘇生(アンティーク・ギアリボーン)】‼︎ 1ターンに1度、私のフィールドにモンスターが存在しない場合、墓地から【アンティーク・ギア】モンスターを1体、攻撃力を200ポイントアップさせて特殊召喚する事ができマスーノ‼︎」

 

 突如として、地面から複数もの鎖が突き出てきた。それらは蝙蝠達の進行を完全に妨げ、幾多の×印を形成した。

 そして複数の鎖が突き出た地面の中心から、何かが這い出てきた。それも、巨体のものだ。

 ……ってヤベッ、ソリッドビジョンを気にしてる場合じゃない‼︎ 状況が状況だから、クロノス先生に助言しないと‼︎

 

「クロノス先生‼︎ そのモンスターは守備表示で出してくださ───」

「復活するノーネ、【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】‼︎ ……へっ? シニョール翼、今なんて言ってましターノ?」

 

 

古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)

ATK:3000 → 3200

DEF:3000

 

 

 時既に遅し。翼竜の姿をしたその鋼鉄の巨体は、攻撃表示で出てきてしまった(・・・・・・・・・・・・・)

 紫色のモノアイで無数にいる蝙蝠達を睨みつければ、蝙蝠達は怯え慌てながら【ヴァンパイア】達の元へと避難した。

 いやそんな事より、結局攻撃表示で出すなっていう指示が間に合わなかったか。このままだと、またクロノス先生は……‼︎

 

「またそこの坊やが察したみたいだけど、もう遅いわよ‼︎ 出し直しも効かないわ‼︎ 【ヴァンパイア・ジェネシス】で【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】を攻撃‼︎」

「ナヌッ⁉︎ 【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】の攻撃力は【古代の機械蘇生(アンティーク・ギアリボーン)】の効果で200ポイントアップしていて、【ヴァンパイア・ジェネシス】の攻撃力を超えているノーヨ⁉︎」

 

 ジェネシスが己の筋肉を見せつけ、これから起こりうる恐怖を植えつけようと、合わせて唸り声の混じった雄叫びを上げる。それが核にも響いてきたからなのか、【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】は一瞬怯んでしまうが、負けじと機械混じりの轟咆を上げる。

 しかし、声の違いで勝敗が決まるわけがない。カードの効果やステータスが全てが決まるのだから。

 

「【ヴァンパイア帝国(エンパイア)】にはもう1つ効果があるの。それはアンデット族モンスターの攻撃力を、ダメージ計算時のみ500ポイントアップさせるという効果よ‼︎」

「ホワッツ⁉︎ 【ヴァンパイア帝国(エンパイア)】にはそんな効果もあっターノ⁉︎」

「よって【ヴァンパイア・ジェネシス】の攻撃力は3500。【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】の攻撃力を、僅差だけど300ポイント超えたわよ」

 

 【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】が放った熱混じりの紫電の奔流が迫ってくる中、ジェネシスの体に紫色の霧らしきものが漂い始めた。

 その霧を吸い込みながら、ジェネシスは右腕を強く突き出した。するとその拳に触れた奔流はあっさりと弾け、火花のように散っていった。

 

 

【ヴァンパイア・ジェネシス】

ATK:3000 → 3500

 

 

「いきなさい、【ヴァンパイア・ジェネシス】‼︎ ヘルビシャス・ブラッド‼︎」

 

 奔流を熱・電力をも相殺させたジェネシスが、突如として自身の身体を瘴気と変化させる。すると瘴気の風力が一気に強まり、やがて文字通りの嵐となって【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】に襲い掛かる。

 【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】は自身の翼を大きく羽ばたかせ嵐を掻き消そうとするが、嵐の勢いに翼を動かす力の威力が一気に消され、そのまま嵐の暴力に負けて体を粉砕されてしまった。

 

「グハッ……⁉︎」

「クロノス先生‼︎」

 

 

クロノス

LP:4700 → 4400(3500 - 3200 = 300)

 

 

【ヴァンパイア・ジェネシス】

ATK:3500 → 3000

 

 

 僅か300ポイントでの実体化する痛み。だがそれはクロノス先生にとっては初めて受ける数値ではなかった。そのためか、彼は一瞬後ろに倒れそうになったが、脚に力を入れていたためか踏ん張っていた。

 

「フフフッ……この程度のダメージくらいなら耐えれて当然よね。けど、次はどうかしら? おっとその前に、【ヴァンパイアの領域】の効果でライフポイントを回復よ」

 

 

カミューラ

LP:1900 → 2400

 

 

「ここから一気に攻めさせてもらうわ‼︎ いけ、【ヴァンパイア・グレイス】‼︎ まずは貴方でダイレクトアタックするのよ‼︎」

 

 グレイスが自身の血液を魔力に変え、その光を杖に纏わせる。そしてその杖をクロノス先生に突きつければ、宝玉から魔力の弾丸が放たれた。

 まずい、このままだとクロノス先生は……

 

「さ、させなイーノ‼︎ 手札の【工作列車シグナル・レッド】の効果発動するノーネ‼︎ このカードを特殊召喚し、攻撃対象をこのカードに移し替えてバトルを行ウーノ‼︎ 守備表示で特殊召喚するノーネ‼︎」

 

 お、おぉ……‼︎ 【補給部隊】で引いたカードの内の1枚がそれとは、何たる神引き……‼︎ それとも物語の本来の設定に合うようにそうなったのか? よく分からんが、とにかくヨシ‼︎(現場猫風)

 

 

【工作列車シグナル・レッド】

ATK:1000

DEF:1300

 

 

 列車の発車するサイレン音と踏切が鳴り響いてきた。ソリッドビジョンによって広がった線路を走りながら現れたのは、アームが2本ついた朱色の小型列車。赤いランプと黄色いライトで前面を照らしながら、グレイスの魔力の弾丸に衝突した。

 

「この効果で特殊召喚されたシグナル・レッドは、この戦闘では破壊されないノーネ‼︎ これでこの後、貴方の全てのモンスターの攻撃を受けても、私のライフポイントは残せるノーネ‼︎」

 

 魔力の弾丸との衝突によって発生した爆発・爆煙が収まれば、再びサイレンが鳴り響き、赤い光が残る爆煙を吹き飛ばした。

 そこにいたのは表面か少々黒く焦げていたシグナル・レッド。どうやらこの列車はまだ壊れていないようだ。

 

「けどこの後の戦闘は耐えられない‼︎ いけ、【シャドウ・ヴァンパイア】‼︎ 【工作列車シグナル・レッド】を攻撃‼︎」

 

 その列車の背後に、【シャドウ・ヴァンパイア】が瞬時に移動していた。そして彼の持つ剣を横薙ぎに振るえば、その斬れ味に耐えきれる程の耐性を失ったシグナル・レッドは上下に切断され───

 

「いいや、まだ破壊されなイーノ‼︎ 墓地の【サクリボー】のを除外する事ーデ、私のモンスターの戦闘破壊を1度だけ防げるノーネ‼︎」

『サクリ〜‼︎』

 

 る事はなく、代わりにシグナル・レッドを守るべく飛び出した、背中に黄金の目の装飾をつけた、明るい茶色の毛むくじゃらな一頭身のモンスターが吹っ飛ばされただけに留まった。

 【シャドウ・ヴァンパイア】は一度態勢を整える必要があると判断してか、すぐさまその場から跳躍し、カミューラの元へと着地した。

 

「それは【天使の施し】で墓地に送ったカードの1枚のようね。ならば【ヴァンパイア・デューク】の攻撃で破壊し、最後に【ヴァンパイア・スカージレット】でダイレクトアタック‼︎ 【ヴァンパイア帝国(エンパイア)】の効果で攻撃力は500ポイント上昇よ‼︎」

 

 

【ヴァンパイア・デューク】

ATK:2000 → 2500

 

【ヴァンパイア・スカージレット】

ATK:2200 → 2700

 

 

 デュークが部下の蝙蝠達に指示を出せば、その蝙蝠達が次々とシグナル・レッドに群がりボディに噛みついていく。その牙に込められていた魔力がシグナル・レッドのボディに侵食していき、やがて腐食していったのかガラガラと崩れ落ちていってしまった。

 その間にスカージレットの元に集いている蝙蝠達に向けて、彼は杖から赤い光を解き放つ。すると己部下となる蝙蝠達の瞳が、より深い紅の光を見せ、唸り声混じりの鳴き声を響かせ凶暴と化した。

 そして次々とクロノス先生へと迫っていき、通り過ぎ様に翼や牙をクロノス先生に当てていく。な、なんて酷い事をしてきやがる……‼︎

 

「ヌァアアアアアアッ‼︎」

「クロノス先生……‼︎」

 

 

クロノス

LP:4400 → 1700

 

 

【ヴァンパイア・デューク】

ATK:2500 → 2000

 

【ヴァンパイア・スカージレット】

ATK:2700 → 2200

 

 

 これまでクロノス先生が受けたダメージの合計値は、初期ライフを容易に削っていた。それらによって蓄積された傷に耐え切れるわけもなく、クロノス先生はうつ伏せに倒れ伏せてしまった。

 

「ウ、ウゥッ……」

「本当にライフポイントが残るなんてね。それも回復される前の数値に戻って、後ちょっとともいかない程にとか、どんな奇跡よ? 逆にすごいと思うわ」

 

 それは確かにそう思ってたけど……‼︎

 

「けど、体の方は持つかしら? あぁそうそう、【ヴァンパイアの領域】の効果で与えたダメージ分、私のライフを回復させてもらうわ」

 

 

カミューラ

LP:2400 → 5100

 

 

 ライフポイント5100……‼︎ 前のターンのとの差があまりないとはいえ、5000ポイント台か……‼︎ 闇のデュエルでここまでライフを回復させられるなんて、かなりキツいじゃねェかよ……‼︎

 

「リバースカードを1枚伏せ、これでターンエンドよ」

 

 

クロノス

LP:1700

手札:1枚

フィールド:

【補給部隊】×2

 

vs

 

カミューラ

LP:5100

手札:1枚

フィールド:

【ヴァンパイア・ジェネシス】ATK:3000

【ヴァンパイア・スカージレット】ATK:2200

【ヴァンパイア・グレイス】ATK:2000

【ヴァンパイア・デューク】ATK:2000

【シャドウ・ヴァンパイア】ATK:2000

【ヴァンパイア帝国(エンパイア)

【ヴァンパイアの領域】×1

伏せカード×1

 

 

 クロノス先生の手札は僅か1枚で、フィールドのモンスターは0。そしてカミューラのライフは5000台で、フィールドのモンスターは5体……

 これは明らかにジリ貧だ。次のクロノス先生の引き次第では負けは明らかだぞ……‼︎

 

「翼‼︎ みんな‼︎」

「……‼︎ その声は、十代か‼︎」

 

 ふと聞き慣れた声が後ろから聞こえたので振り返ってみれば、そこには隼人に後ろで抱えられた十代がいた。明日香・半次・舞香の3人もおり、彼等もクロノス先生が心配で来たという事が理解できる。

 あ、十代が落ちそうになって───

 

「うおっと危なっ」

 

 そこにマッドラヴが駆け寄り、背中から落ちそうになった十代を支え、隼人の態勢が直るように補助した。

 

「ご、ごめん間藤先生。助かったんだな」

「いいっていいって。それよりもじゅ……遊城君さぁ、まだ傷が治ってないじゃん。大人しく寝れないのかい?」

「悪い、間藤先生……けど、クロノス先生が頑張ってんだ。こんなところで寝てられるか」

「……まぁ、実際にセブンスターズの1人と闘った君からしたら、さすがに不安になるよね」

 

 十代が本気で、クロノス先生の身を案じている事が、真剣な眼差しで俺達に伝わってきている。それはマッドラヴも同じ気持ちなのか、少し暗い表情となってクロノス先生を見つめた。

 

「ク、クロノス教論……⁉︎ あの人がここまで追い込まれるとは、セブンスターズってのはそこまで強いというのか……⁉︎」

「クロノス先生……‼︎」

 

 今の彼の姿を見て、半次も舞香も背筋が凍りついたかのように驚愕した表情となった。明日香も言葉にできないだけで身を見開いており、クロノス先生が今どれだけ危険なのかを、その目で見てはっきりと察したようだ。

 

「アラ、またギャラリーが……というよりは、控え(・・)が増えたわね。ここまで増えたのなら、誰を選ぶか迷っちゃうわ」

「ひ、控え……? だ、誰を選ぶか……? そ、それはどういう意味ナノーネ……」

 

 聞き捨てならない言葉を聞いたのか、クロノス先生はまだ立ち上がれはしないものの、カミューラを見上げながら睨みつけた。

 

「この際だからはっきりと言わせてもらうわ。貴方、弱くて話にならないのよ。私に与えたダメージが少ないし、私が攻撃する度に負けそうになるしで……最初のターンの後にも言ったけど、アペリティーヴォにすらならなかったわよ」

「ッ……だ、だからといって……私達の生徒や、私の後輩の、教師の皆さんに、手を出すのは……黙って見てられないノーネ……‼︎」

 

 どんなに自分の嫌いな貶し・蔑みの含む罵倒の言葉を言われても、それでも同じ学園の者達への危害が出るのは、例えその対象が誰になろうと看過できないようだ。

 しかし、そういった強気の言葉は出せても、痛む体を起こせなかったら説得力は弱い。それ故に、彼を見下しているカミューラの瞳は何処か冷えていた。

 

「ハァ……そんな状態になって、まだ意地を張るというかしら? 私はもうウンザリなのよ、こんなに弱くて無様なデュエリストの相手をするなんて───」

「クロノス先生は弱くないぜ‼︎」

「えっ……?」

 

 クロノス先生の弱さを断然と否定する者。その声に耳を疑ったのか、彼は驚きの声を隠さず漏らした。

 その声の正体こそ、クロノス先生に何かと嫌がらせを受けた十代だった。とは言っても、本人はそれを受けている事に全く気づいていないのだが。

 

「クロノス先生は強い‼︎ 戦った俺が言うんだから間違いない‼︎ クロノス先生、見せてくれよ‼︎ 闇のデュエルを打ち破る、最高のデュエルを‼︎」

「……ドロップアウトボーイ……」

 

 彼は入学試験の実技試験にてクロノス先生に勝った後、そこで恥をかいた彼から、憂さ晴らしや面倒事を押し付けられたり、彼を退学に陥れようといくつもの工作を仕掛けられたりしていた。

 それなのに、たとえこれまでの事でクロノス先生が裏で何かやっていたと知ってしまったとしても、初めて会った時から持っていたその尊敬の心を捨てず、彼を奮い立たせようとしているのだ。

 

「ウゥッ………………ヌォオオオオオオッ‼︎」

 

 その事実を知って微笑みが漏れたのか、クロノス先生は叫びながら立ち上がった。息切れは治っていない。それでも自分の背中を確実に支え、押してくれる者がいた。その事実に、その期待に裏切ってはいけない。その一心が、彼を動かしたのだ。

 

「このクロノス・デ・メディチ、断じて闇のデュエルに負けるわけにはいきまセンーノ‼︎ 何故なら‼︎ デュエルとは本来、青少年に、希望と光を与えるものでアーリ、恐怖と闇を齎すものではないノーネ‼︎」

 

 で、出た〜〜〜〜〜〜‼︎ 遊戯王GXシリーズを代表する名セリフの1つ‼︎ デュエルとは何たるかを断言し、その想いがあれば闇のデュエルにも打ち勝てる……そう伝えているかのように感じ取れる‼︎ あっヤバッ、ちょっと泣けてきそう……

 

「クロノス教論……」

「だよな、クロノス先生」

「それで闇のデュエルは存在してはならない、してはいけないと教諭は言い続けていたのか……」

「そう聞くと、闇のデュエルを否定するクロノス先生の気持ちも分かってくるな」

「クロノス教論は、その想いで……」

「……ア、アラ? きゅ、急に涙が出てきたわ……」

「感動しましたものね、分かりますわ……雪乃さん、わたくしのハンカチをお使いください」

 

 他の人達も、クロノス先生のこの言葉が胸に響いてきたようだ。雪乃に至っては涙腺が緩くなって……いや待って、お前が一番に感動で泣くの? なんというか、意外な感じが……

 

「……チッ。争いとは本来闇のもの。そんなことも分からないとは、群れるしか能がない人間はこれだから……」

「争いがいつまでも闇である必要なんてないと思うんだけど?」

「……何ですって?」

 

 この流れを良く思ってないカミューラが愚痴を溢せば、それを聞いたマッドラヴが呆れながら反論してきた。

 

「まぁね、争いが闇から生まれるのは確かかもしれないんだけどさ? 解決や和解を通じて光を見出すこともあるんだよ? というか、闇のままでいいなんて決まり、何処にあるというの?」

「争いが闇……負の感情から始まるとしても、対話したり相手を理解したりする事で、正の感情という光に変えられるものさ。争いを起こしてしまったからといって、闇に留まる必要なんてないよ」

「確かに争いは人の心の闇から起こるものです。ですが、和解や成長への一歩として、光に転じる可能性だって必ずあります。そのまるで『一生変わらない』なんて言い方、やめていただけませんか?」

 

 マッドラヴに続くように、アレイスター・聖殿の2人も反論していく。争いに闇がつきものである事を敢えて肯定しながらも、それは正しい方向へと変わっていくものだという事を、カミューラに伝えたかったんだろうな。

 何を考えているのかまだ分からないけど、やっぱりこの3人も教師。正しい事を熱心に伝える精神も中々のものだな。

 

「先生方の言っている事は、皆さん正しいデスーノ‼︎ それを私がこのデュエルに勝利して、証明して差し上げマスーノ‼︎」

「……やれるものならやってみなさい」

「私のターン、ドロー‼︎ 魔法(マジック)カード【貪欲な壺】を発動するノーネ‼︎ 墓地の5体のモンスター……【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】、【古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)】、【古代の機械箱(アンティーク・ギアボックス)】、【古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)】、【工作仮面シグナル・レッド】をデッキに戻すノーネ‼︎ そしてカードを2枚ドロー‼︎」

 

 クロノス先生のフィールドに、貪欲に満ち溢れていた表情をしたゴブリンの顔をした紫色の壺が降りてきた。周りには様々な色・種類の宝石が刺さっており、貪欲らしさが表していた。

 その壺が舌を伸ばし、クロノス先生のデュエルディスクの墓地スロットに入っていた5枚のカードを取り出しては飲み込んだ。そして鼻に力を入れながら鼻息を出しながら、開口部から2枚のカードを放出。クロノス先生はそれをキャッチした。

 これでこの状況を打破できるカードを引けるといいんだけど……

 

魔法(マジック)カード【強欲な壺】‼︎ さらに2枚ドローするノーネ‼︎」

 

 ここで禁止カードでのドローか。これで今度こそ……

 

「……来たノーネ‼︎ 魔法(マジック)カード【ナイト・ショット】を発動ナノーネ‼︎ 相手フィールドのセットされた魔法(マジック)(トラップ)カードを1枚破壊するノーネ‼︎ そのセットカードは【ナイト・ショット】の発動に対して発動する事はできなイーノ‼︎」

「むっ……まぁ仕方ないわね、通すわ」

 

 カミューラのセットカードに、ロックオンされたような光の紋章が当てられた。そこに閃光が解き放たれ、セットカードは爆発して消滅していった。

 破壊されたセットカードは……【奈落の落とし穴】か。もし破壊できてなかったら、この状況を打破するモンスターが出たとしても、破壊されて意味がなくなってしまうな。破壊できてよかったですね、クロノス先生。

 

「次に手札カーラ【古代の機械像(アンティーク・ギアスタチュー)】を特殊召喚‼︎ このカードは、相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合、手札から特殊召喚できるノーネ‼︎」

 

 

古代の機械像(アンティーク・ギアスタチュー)

ATK:500

DEF:800

 

 

 続いて現れたのは、【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】に下半身と腕を取ったかのような像が現れた。背中や下部に石の装飾がつけられており、まるで美術館にありそうな程にクオリティの高い美術品だ。

 

「【古代の機械像(アンティーク・ギアスタチュー)】の効果発動‼︎ このカードを生贄に捧げる事で、デッキから【アンティーク・ギア】モンスターを1体、召喚条件を無視して特殊召喚できるノーネ‼︎」

「召喚条件を無視して……まさか」

「察しがいいノーネ……その通りナーノ‼︎ 再び私の元に現れるノーネ‼︎ 【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】‼︎」

 

 

古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)

ATK:3000

DEF:3000

 

 

 石の装飾が突然外れたかと思えば、何処からか現れた巨大な腕や腰などが(スタチュー)に装着され、やがて完全に【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】そのものとなった。

 

「そしてこれナノーネ‼︎ 魔法(マジック)カード【古代の機械融合(アンティーク・ギアフュージョン)】を発動‼︎ 【アンティーク・ギア】融合モンスターを融合召喚するノーネ‼︎」

「クロノス先生が、融合を⁉︎」

 

 そういえばクロノス先生は、生徒相手に全力を出さない主義なんだっけ。なんでも生徒の成長の妨げにならないようにするためだとか……

 

「基本、生徒相手に融合モンスターを出す事はないノーデスが……そうではない者ナラーバ別‼︎ 手加減なしに倒させてもらウーニャ‼︎」

「あらそう。というか……融合するには手札のカードがないみたいだけど、墓地のモンスターを融合素材にするのかしら?」

 

 まぁそう考えてしまうよな。クロノス先生のフィールドにも【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】1体のみ。それなのに融合カードが発動できるとなれば、そう思うのも無理もない。

 けど、カミューラのその思考は外れる事となる。何故なら……

 

「それは違うノーネ‼︎ 【古代の機械融合(アンティーク・ギアフュージョン)】はフィールドの【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】を融合素材とする場合、デッキのモンスターをも融合素材にできルーニョ‼︎」

「なっ……デッキから融合ですって⁉︎」

 

 この世界の今の環境では、墓地融合はともかくデッキ融合なんて、ほぼ全くといっていい程に見かけないよな。驚くのも無理もない。というか、盗み見でそのカードを見られる事がなくてよかったな……

 

「私はフィールドとデッキの【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】の合計3体で融合するノーネ‼︎」

 

 突如として、【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】が分身したかのように3体に増えた。そして出現した混沌の渦の中へと解け合うように取り込まれていき、新たな生命を生み出した……いや、3体で合体した。

 

「生徒達を守るため、今こそ現れるノーネ‼︎ 【古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)】‼︎」

 

 

古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)

ATK:3300

DEF:3300

 

 

 こうして誕生したのが、腕と脚がそれぞれ6本に増え、強靭な蜘蛛人間を模した巨人の姿となって進化した【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】。轟咆の代わりに体中から歯車などの様々な金属の音を発生させた。

 

「さ、3体の【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】を融合素材にしたモンスター⁉︎」

「でも【青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメット・ドラゴン)】みたいに、攻撃力がそんなに高くなってないみたいだな」

「いや? 【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】1体は融合素材にしなきゃいけないけど、他の融合素材は【アンティーク・ギア】2体ならなんでも良さそうだぜ」

 

 あっいっけね。前世で超巨人(メガトン・ゴーレム)の事を知っていたせいで、ここはみんなに合わせて初見のフリをするつもりが、つい知っている程で説明口調になっちゃったよ……

 

「シニョール翼、察しがいいノーネ。その通リーデス‼︎ 【古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)】の融合素材となるモンスターは、【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】を含めた3体の【アンティーク・ギア】で融合できるモンスター‼︎ よって他の2体は【アンティーク・ギア】ナラーバ、【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】じゃなくてもOKナーノ‼︎」

 

 あ、クロノス先生が『勘で当てた』って事にしてくれた。いや彼は実際そう思っているだろうけど、この対応にマジ感謝……‼︎ これで怪しまれなくて済んだ……と思う。

 

「けどわざわざ【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】3体を使って融合したって事は、何か理由でもあるのかしら?」

「大アリナノーネ‼︎ 【古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)】は、融合素材に使用した【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】と【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)ーアルティメット・パウンド】の数だけ、1度のバトルフェイズ中に攻撃が可能になるノーネ‼︎」

「何ですって⁉︎」

 

 ここでカミューラ、ようやく驚きの表情を見せる。超巨人(メガトン・ゴーレム)が連続攻撃できる上に、最大攻撃回数となる条件をも満たせているのだから、そりゃビックリするわな。

 

「つまり、融合素材となった【古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)】はちょうど3体だから……」

「3回も攻撃が可能って事ね‼︎」

「やっぱりクロノス先生はスゲェや……‼︎」

 

 これは素直に賞賛できる。この土壇場で形成逆転が可能なモンスターを呼び出せたんだからな。

 

「……けど、まだまだ甘いわよ先生‼︎ 【ヴァンパイア帝国(エンパイア)】の破壊効果は、相手のカード効果でも反応する‼︎ よってそのモンスターは破壊され───」

「墓地の【スキル・プリズナー】の効果発動‼︎ このカードを除外し、私のモンスターを効果の対象にする効果を無効にするノーネ‼︎」

 

 無数の蝙蝠が群がろうとする中、突如超巨人(メガトン・ゴーレム)を守るように菱形の光のバリアが出現。それが蝙蝠達を弾いていき、眩い光で撤退させていく。

 やがて迎撃がないと判断されたのか、そのバリアはゆっくりと消滅していった。

 

「そのカードも【天使の施し】で……なんて運の良い……」

「運の良さもデュエルでは実力となルーニョ‼︎ バトル‼︎ 【古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)】で【ヴァンパイア・グレイス】を攻撃ナノーネ‼︎ このダメージ計算時、墓地の【スキル・サクセサー】の効果発動ナノーネ‼︎ 私のターンに墓地のこのカードを除外する事ーデ、このターン、私のモンスター1体の攻撃力は800ポイントアップするノーネ‼︎」

 

 6つもある超巨人(メガトン・ゴーレム)の拳に、淡い光の瘴気(オーラ)が纏わりついた。それが彼の込める力を強め、轟咆代わりとなる音をさらに響かせる。

 

 

古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)

ATK:3300 → 4100

 

 

 攻撃力4000超えの3回攻撃……これはかなり痛い事だろうな。

 けど、これで3体の攻撃力2000のモンスターを攻撃しても、【ヴァンパイア帝国(エンパイア)】の攻撃力上昇効果が邪魔して、カミューラのライフを削り切れないな……となると、逆転返しできる可能性のあるモンスターの除去が大事か。

 

「このまま続けて【ヴァンパイア・ジェネシス】と【シャドウ・ヴァンパイア】にも攻撃するノーネ‼︎ いくノーネ、【古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)】‼︎ アルティメット・ラッシュ・パウンド‼︎」

 

 

【ヴァンパイア・グレイス】

ATK:2000 → 2500

 

【ヴァンパイア・ジェネシス】

ATK:3000 → 3500

 

【シャドウ・ヴァンパイア】

ATK:2000 → 2500

 

 

 超巨人(メガトン・ゴーレム)が、全ての腕をマシンガンの如く素早く豪快に、そして交互に振るいまくる。そして除去対象となる標的に反撃どころか逃走の余地すらも与えず、ただひたすらに殴りまくった。

 殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。ただこれの繰り返しが、数秒間に渡って続いていた。

 脅威のパンチングラッシュが嵐のような突風を巻き起こし、それがカミューラに襲い掛かり、仰け反らせる。

 

「クッ‼︎ ウゥウウウウウウ……‼︎」

 

 

カミューラ

LP:5100 → 3500 → 2900 → 1300

 

 

 強烈な攻撃が実際にデュエリストの体にも襲い掛かるためか、3連続一気にダメージを受けたカミューラはふらつきながらも、顔を俯かせたまま直立した。

 しかし、やはり倒しきれなかったか。まぁ、攻撃力2000のモンスター3体に攻撃しても合計ダメージは4800で倒し切れないし、やはり逆転の一手を潰すを先決したのは良い事だよ。

 

「後もうちょっとナノーネ……私はこれでターンエンドナノーネ‼︎ エンドフェイズのため、【スキル・サクセサー】の効果が切れるノーネ」

 

 

古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)

ATK:4100 → 3300

 

 

クロノス

LP:1700

手札:0枚

フィールド:

古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)

ATK:3300

【補給部隊】×2

 

vs

 

カミューラ

LP:1300

手札:1枚

フィールド:

【ヴァンパイア・スカージレット】ATK:2200

【ヴァンパイア・デューク】ATK:2000

【ヴァンパイアの領域】×1

 

 

 これでクロノス先生が形成逆転した………………けど、ここまで来るとやっぱり何か嫌な予感がする。明らかなイレギュラーな介入がない限り、運命は避けられない……と。

 

「……フフッ……」

「……何がおかしいノーネ」

 

 不意に聞こえてきた、カミューラの静かで不気味な笑い声。それはエースモンスターらしき存在を除去された事などの落胆……によるものではない感じがした。

 やがてゆっくりと顔を上げたカミューラ。だが、その表情は……いや、その顔つきは。

 

 普通の人間では思えない程に、豹変していた。美しい顔が頬まで口が裂け、目元や首筋も血管が浮かび上がり、人間離れした変化を起こしていたのだ。

 

「ヒッ⁉︎」

「ウッ……‼︎」

 

 クロノス先生が悲鳴を上げたのに続いて、俺も思わず恐怖で背筋が凍りついたような感じがした。他の奴らもちょっとした悲鳴を上げた者がいたり、目を見開いて言葉を失った者もいた。

 そして俺と同じように、原作知識を少しでも得ている教師組の精霊達も、周りと似た反応をしていた。いくらモンスターと言えど、先程まで普通の表情をしていた者が、種族が変わる程の豹変さには耐性がないようだ。

 

「先生……ほんの少しだけ訂正してあげましょうか。アンティパストにはならなかったけど、アペリティーヴォ程度にはなったわ」

 

 美声のあった声も、ノイズが当たったかのように変声していた。それだけでも、彼女が人間ではないという事がはっきりと伝わってきてくる。実際吸血鬼だけど……

 

「けど、そのアペリティーヴォの時間はもうお終いよ‼︎ 私のターン、ドロー‼︎ そしてこのドローしたカードを、敢えてそのままリバースカードとしてセット‼︎」

 

 ドローしたカードを敢えてすぐさまにセット? アレが(トラップ)カードだとしたら分からなくもないが、何故わざわざセットする事を宣言したんだ? それもそれがたった今ドローしたヤツだと言うんだ?

 ……こいつ、何やら良からぬ事を考えているな。だからあんな回りくどい事をしているんだな。一体何を思って……?

 

「さぁ……前の私のターンから取っておいた、残りの1枚となる手札が何なのかを教えてあげるわ‼︎ 墓地の【ヴァンパイア・ソーサラー】を除外し、生贄無しで【ヴァンパイア】モンスターを召喚するわ‼︎ 現れなさい、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】‼︎」

 

 突如発生し、展開された紅い魔法陣の中心地から、紅く太い光の柱が眩く光りながら出現した。そしてその中から人型の吸血鬼のシルエットが見えてきて、そこからクスクスと艶のある女性の微笑む声が聞こえてきた。

 

 

【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】

ATK:2500

DEF:2000

 

 

 柱の中から飛び出して現れたのは、弱点である筈の十字をあしらい、紺の修道服にも似た服装を、臍周りを大胆に露出した妖艶なる女性吸血鬼。灰色混じりの白いストレートな髪を靡かせながら、蟲惑魔的な微笑みを浮かべていた。

 その女性吸血鬼は、この地に降り立ったかと思えば、クロノス先生の方を見やり、丁寧に貴族らしい振る舞いで一礼し、顔を上げたのと同時に静かに微笑んできた。

 

 

 

『ウフフフフ……さぁ、今宵の同胞のデュエルにて、私の能力に取り憑かれる者は、何処の誰なのでしょうねェ……?』

 

 

 

 ………………アレ? 今こいつ、喋った? しかも自立している感じに動いて、カミューラの肩に軽く右手を置いているし……

 もしかしてこいつ、カードの精霊なのか……? にしてはカミューラの方は、あいつが喋っている事には全く気づいていないみたいだけど……

 というか、しれっと原作には存在しなかったカミューラのカードの精霊が出るとか、一体どんな歴史の歪みだというんだよ……

 

「【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の効果発動‼︎ 魂を我が物にへと変えよ、ポルター・ソウル‼︎」

『いただきますよ、貴方の魂を……』

 

 【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】が自身の唇を、右手の人差し指でゆっくりとなぞり始めた。するとその唇に紅い光が灯され、なぞらせている指の先端にもその光が宿る。

 紅い瞳を光らせながらその指で、今度は空気をなぞり、それを【古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)】に向ける。するとどうなるというのか。

 【古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)】のモノアイが、自身の放つモノアイの光よりも濃い紅い光を灯されれば、だんだんと透明となって消えていってしまった。

 

「んなっ……⁉︎ わ、私の【古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)】が……⁉︎」

「【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】は1ターンに1度、このカードまたは【ヴァンパイア】モンスターが召喚された時、このカードより攻撃力が高い相手フィールドのモンスターを1体選び、このカードの装備カードにするわ‼︎ 貴方のフィールドのモンスターは【古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)】のみで、その攻撃力は2500を超えている。よってそいつを装備カードとしていただいたのよ‼︎」

 

 やがて超巨人(メガトン・ゴーレム)がいた位置には、紅い人魂らしき光の球体が浮遊していた。それが1人でに移動すれば、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の体内へと腹部を通して入っていった。

 

「そして【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の攻撃力は、このカードの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする‼︎ 装備カードとなった【古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)】の攻撃力は3300。よってその数値分アップし、攻撃力は5800となるわ‼︎」

『あぁ、やはり強者の魂は私の体を潤してくれますね……ウフフッ♡』

 

 そして【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】が頬を赤らめ、吐息を出しながら惚悦とした表情になれば……彼女をコアとしている化身のように、紅く白い半透明の超巨人(メガトン・ゴーレム)が、幻影となって出現した。彼女に取り込まれた証拠、というべきか。

 

 

【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】

ATK:2500 → 5800

 

 

 というか……これはもう、どうしようもないのでは……⁉︎ クロノス先生の墓地にはこのターンを乗り切るためのカードがないし、伏せカードがあるかどうかなんてのも尚更……‼︎

 確定した勝敗の結果に俺達が愕然とする中、いつの間にか顔つきが元の美しい女性のものに戻ったカミューラが、戻りきっていないと思われる口元を手で隠し、1枚のカードを墓地スロットから取り出しながら、元の声を出してきた。

 

「ここで1つ良い事を教えてあげるわ。墓地にあるこの【ヴァンパイアの幽鬼】なんだけど、私か相手のメインフェイズ中、このカードを除外しながらライフを500ポイントを払う事で、【ヴァンパイア】モンスターを召喚する事ができるの。つまり、先生のターンでも【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】は召喚できたってわけ」

《なっ……⁉︎》

 

 衝撃の事実。実はクロノス先生のターンでも【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】を『召喚』する方法はあり、それを敢えて使わなかったのだという。

 それを聞いた全員がさらに愕然とした様子を見せている。前世でその効果を知っていた俺は、クロノス先生相手に手加減していたという事実に怒りを感じた。まるで彼の事を舐めているかのようだったから……‼︎

 

「出せるってんなら、なんで先生がバトルフェイズに入る前に使わなかったんだよ⁉︎ そうすりゃダメージを受けずに済んだのに……‼︎」

「出さなくても負ける事はないと確信したからよ。その上で敢えて泳がしておいた方が、どっちに転じても私の勝ちは明らかだったって事実を理解して、絶望した表情も見てみたかったしね」

「下衆がよ……‼︎ こんな事なら、俺が真っ先に対戦相手になるべきだったか……‼︎」

 

 よく考えれば、ここまでの展開をさせておいて、何故乱入したりして助けようとしなかったんだ俺は……‼︎ デュエルディスクに乱入システムがないからなのか? それとも負けた後が怖いから?

 どちらにせよ、何もしようとしていない自分が憎くなってきた……‼︎ こうなったら、一か八か乱入を試みて───

 

「───シニョール翼、自分を責めようとするのはやめるノーネ」

「……えっ?」

「シニョールの、シニョーラカミューラが使うカード効果の理解度が高かったのは、素晴らしい事ナノーネ。ですが、『ならば何故自分がデュエルしようとしなかったのか』なんてのは、結果論に過ぎないノーデス」

「けど……‼︎」

「それに、私は教師デスーノ。生徒を危険な目を遭う事を防ぐのも、教師の役目ナノーネ」

「あっ……」

 

 ……そうだった。彼はデュエリストであろうとなかろうと、教師としての立ち位置にいるんだった、仮に俺が名乗り出ようとしても、代わりに彼が俺達を守ろうと前に出ていた事だろう。

 生徒を微塵も大切にしない教師なんて、いてはいけない。彼は今、己の邪な心を捨てて、その見本となっているんだ。

 どんな理由であれ、俺達の事を大切にしているからこそ、か……

 

「そして諸君、よく見ておくノーネ。そして約束するノーネ……たとえ闇のデュエルに敗れたとしても、闇は光を凌駕できない……そう信じて、決して心を折らぬこと。私と約束してくだサーイ」

「クロノス教論……」

「クロノス先生……」

 

 優しい微笑みをみんなに向け、闇のデュエルに負けない、本当の強いデュエリストになれ……そう伝えてきた。それに俺達は頷くしかなかった。自分の身を挺して俺達を守ろうとしているその背中を前に、何かしようと考えられなかった。

 そんな俺達を余所に、クロノス先生は首に掛けていた鍵を舞香に投げ渡した。その鍵を、彼女は何も言わず暗い表情で受け取った。見届ける覚悟をしている、そんな様子だ。

 

「シニョーラ舞香。この鍵は、元々貴方が守るべき物ナノデスーノ。このデュエルが終われば、この鍵がどうなるのかは分かりまセーンガ、私の代わりに貴方がきちんと持っているノーネ」

「……わかりましたわ、クロノス先生……」

「アラ、既に本当の所持者がいたのね。なら、このデュエルで鍵が手に入るかどうか微妙って事か……なるほど、考えたわね」

 

 してやられた……と思っているはずなのに、余裕そうな表情を浮かべるカミューラ。クロノス先生がこの程度なら、他のデュエリストは大した事ないと思っているのだろうか。舐めやがって……‼︎ 俺達を、誰の指導の元でさらに強くなったと思っているんだ……‼︎

 

「まぁいいわ、替えの所持者を潰すのも無駄ではないし。……さて先生、最後の授業は終わったかしら?」

「いつでも来るがいいノーネ‼︎」

「それならお望み通り、とどめを刺してあげるわ‼︎ いけ、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】‼︎ ダイレクトアタックよ‼︎ ファントム・トラディメント‼︎」

『華々しく、散りなさいな』

 

 【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】が両腕を前方に大きく振り下ろす。するとそれに合わせるように、超巨人(メガトン・ゴーレム)の幻影が、その6本もある腕を、クロノス先生に向けて一斉に振り下ろした。

 

 

クロノス

LP:1700 → 0

 

 

 拳が触れた大地が激しく震動し、周囲に土煙と突風が発生する。それを実際に受けたクロノス先生はなんとか堪えようとするも、糸が千切れた人形のように、その場で両膝をついて座り込んでしまった。

 そしけ再び俺達の方を見ながら、彼は静かに呟いた。

 

「ボーイ、光のデュエルを……」

 

 それと同時に、クロノス先生はうつ伏せとなってその場に倒れ込んでしまった。

 

「さてと……鍵は次まで保留として、闇のデュエルに負けた罰ゲームを受けてもらうわよ」

 

 言葉を失った俺達を余所に、カミューラは左手に布で作られたシンプルな無地の人形を持ち、クロノス先生に向けて右手を翳した。するとそこから光が放たれ、クロノス先生に当てた途端……

 彼の身体が消滅し、代わりに人形の方に、クロノス先生の特徴が装飾のように浮き出ていた。

 

「ク、クロノス先生が人形に……‼︎」

「魂があそこに封印されたって事か……」

 

 人形にされたクロノス先生を見て戦慄している翔を余所に、俺はその人形を見ながら右手を握る力を強めた。これが闇のゲームの敗者の結末なのだと、クロノス先生以外の奴らも似たような悲劇を受ける可能性があるのだと、見て実感した事による震えでこうなっているようだ。

 そんな俺達の視線を確認しながら、カミューラはその人形を拾い上げ一瞥する。そして。

 

「やっぱり不細工、いらないわ」

 

 その人形を、その場で投げ捨てた。

 刹那。俺はいつの間にか身体が勝手に動いており、地面に当たる寸前のクロノス先生の人形を素早く拾い上げ、カミューラを強く睨みつけた。さすがに今のは看過できなかったのだ。

 

「テメェ……‼︎ ふざけやがって‼︎ 次は俺が相手だ‼︎ テメェのようなクズのその透かし顔を、お前認識のクロノス先生以上の不細工にしてやるよ‼︎」

 

 我ながら汚い言葉とアンチコメントを使ったなという自覚はある。けど、あんな反応をされて黙って見ていられるわけがなかったのだ。原作知識がない状態でも、きっとそうしていたと思う。

 

「フフッ。信頼のある者からの反感は怖いものね。いいわ、次の夜のお相手は貴方にしましょう。それでは、今宵はこのあたりで。何れ素敵な招待状を出させていただきますわ。フフッ、フフフッ……」

『それではみなさん、ごきげんよう。清々同胞を退屈させぬよう、お願いしますね……?』

 

 不気味な微笑みと合わさったかのように、月光に照らされながら、湖に巨大な西洋の城が浮かび出てきた。アレが彼女の居城とでもいうのだろうか……ってか、さっきまで怒っていて何だけど、よくスタンバイさせてたなマジで。

 そんな事を考えていたら、カミューラは身体を霧散させながらその城へと飛び去っていってしまった。眷属の蝙蝠達と、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の精霊と共に。

 

「……翼、お前……」

「悪い、取り乱した……けど、そうなる前から、次は俺が相手をするって決めているんだ。だから……頼む、次は俺に任せてくれ」

 

 そう言いながら、俺はみんなに頭を下げた。償いとかそんな理由でじゃない。ただ単に、素直にアイツを倒してクロノス先生を助けたいという想いでそう決めたんだ。

 そんな俺の覚悟が伝わってきたのか、みんながそれに承諾してくれた。中には『無茶をしないで』と言ってくれる奴もいたが、そうしない保証はないと思う。闇のデュエルに無茶はつきものだから(体験してないけど)。

 待っていろカミューラ、絶対テメェをボコボコにしてやるからな。

 




Q. 何故【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】をカードの精霊にしたん?
A. レベル7・攻撃力2500・守備力2000……もう主人公が使うエースモンスターのステータスやん。これはもう、それなりの待遇はせんと……ね?
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