OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜   作:名無しのモンスター

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前回のあらすじ
原作のセブンスターズ、誰がクビになったんだ……

投稿2週間遅れてホントすみません。文字数をめっちゃ長くしちゃった癖に、前編後編を何処で分ければいいのか分からなくって……


粛声vsヴァンパイア(初出オリカあり)

 

LP:4000

 

カミューラ

LP:4000

 

 

 クロノス先生の魂を賭けた闇のデュエル。カミューラがこのデュエルで何をしでかすのかは分からないが、気を引き締めないと……

 待っていてくださいクロノス先生。みんなのためにも、絶対勝ちますから。

 

「このデュエルもレディファーストでいかせてもらうわ。デュエルディスクのシステム上でそう決まったのだから、文句は言わないでよね?」

「いいから早くしろ」

「なら遠慮なく。私のターン、ドロー。魔法(マジック)カード【強欲で金満な壺】を発動‼︎ このカードの効果以外でのドローを封じる代わりに、メインフェイズ1開始時、融合デッキからランダムで3枚ずつ裏側表示で除外する事により、3枚につき1枚、最大で2枚ドローする事ができるわ。私は6枚を除外し、2枚ドローするわ」

 

 暗い屋上から複数もの蝙蝠が飛んできて、2つのゴブリンの顔が施された巨大な壺を運んできた。緑の強欲な表情と金色の金満な表情の2種類だ。

 金色のゴブリンが舌でカミューラのエクストラデッキから6枚のカードを抜き取り、緑のゴブリンが満面の笑みを浮かべるのに合わせて壺の開口部から2枚のカードが飛び出してきた。

 カミューラの手札が増えた事を確認したのか、蝙蝠達は壺を持ったまま飛び去っていってしまった。結構重たいだろうな……

 

「【ヴァンパイアの幽鬼】を攻撃表示で召喚」

 

 

【ヴァンパイアの幽鬼】

ATK:1300

DEF:0

 

 

 カミューラが1番最初に呼び出したのは、【ヴァンパイア】のデッキエンジンとも言える下級モンスター。

 端の部分がボロボロな感じとなっている灰色のローブを身に纏い、霊気であろう青白い瘴気を放出させているその人物は、藍色の少々長い爪と小さな牙を煌めかせ、赤い瞳を光らせて俺を見据えてきた。

 

「【ヴァンパイアの幽鬼】の効果発動‼︎ 昨日二度も使っていたいたけど、一応もう一度説明しておくわ。このカードが召喚に成功した場合、手札及び自分フィールドの表側表示のカードの中から、このカード以外の【ヴァンパイア】カードを1枚墓地に送る事で、デッキからレベル4以上の【ヴァンパイア】モンスターを1体手札に加え、同じくデッキからレベル2以下の【ヴァンパイア】モンスターを1体墓地に送る事ができる」

 

 うん、何度聞いても【ヴァンパイア】デッキにとってのぶっ壊れカードだな。手札入れ替えに2体の【ヴァンパイア】を墓地肥やしって……

 他のテーマだったら、そのテーマ次第で絶対リミットレギュレーションに引っ掛かるって思える性能だよコレ。

 

「私は手札の【ヴァンパイア・ソーサラー】を墓地に送り、デッキから【シャドウ・ヴァンパイア】を手札に加え、【ヴァンパイアの眷属】を墓地へ送るわ」

 

 幽鬼の周囲に、3つの青白い人魂が浮遊してきた。幽鬼の周りを周回している内の1つがカードへと変化し、カミューラの手札へと加わった。そして残り2つの魂は何かしらの吸血鬼の幻覚を見せ、そのまま消えていった。

 というか、【ヴァンパイア・ソーサラー】と【シャドウ・ヴァンパイア】……この組み合わせ、クロノス先生とのデュエルでの最初のターンでも使ってた組み合わせじゃねェか⁉︎

 

「【ヴァンパイアの眷属】の効果発動‼︎ このカードが墓地に存在する場合、手札及び自分フィールドの表側表示のカードの中から【ヴァンパイア】カードを墓地に送る事で、このカードは特殊召喚できるわ。【ヴァンパイアの幽鬼】を糧とし、守備表示で特殊召喚‼︎」

 

 幽鬼が放っている瘴気が広がっていき、それが幽鬼の身体を包み込み、完全に見えなくなっていった後、その瘴気が霧散し……幽鬼の姿は完全に見当たらなくなり、代わりに別の存在が姿を見せた。

 

 

【ヴァンパイアの眷属】

ATK:1200

DEF:0

 

 

 左半分が影に覆われ、その顔が不気味な笑みを浮かべている白い狼。その狼が俺を視界に入れた途端、威嚇するように唸り声を出してきた。けど残念だったな、お前如き怖くないんだよ。

 

「【ヴァンパイアの眷属】の効果発動‼︎ ライフポイントを500支払う事でデッキから【ヴァンパイア】魔法(マジック)(トラップ)カードを1枚手札に加える事ができる。私はこれで【ヴァンパイアの領域】を手札に加えるわ」

 

 

カミューラ

LP:4000 → 3500

 

 

「ここからクロノス先生の時と似た流れかよ」

「なんとでも言いなさい、この展開の仕方はやりやすいのよ」

 

 それはそうだけど。けどライフポイントは基本4000しかないんだから、もう少しライフポイントの管理をしてほしいんだが……

 そんな中、カミューラの身体から血液の如く赤い瘴気が漏れ出てきた。その瘴気の臭いに反応してか、眷属が赤い目を光らせながら夜空に向けて遠吠えする。するとその方向から蝙蝠が現れ、手に取っていた1枚のカードをカミューラに手渡した。

 

「そしてこれよ。永続魔法【魂吸収】を発動。このカードのコントローラーはカードがゲームから除外される度に、1枚につき500ライフポイント回復する」

 

 除外される度にライフポイントの回復……なるほど、そう来たか。【ヴァンパイア】はカードを除外する事も意外と多いし、意外と相性が良いんだな。

 

「墓地の【ヴァンパイア・ソーサラー】を除外し、効果発動‼︎ そして【魂吸収】の効果でライフを回復するわ」

 

 うおっ、早速眷属の効果で減らした分の回復か。しかもソーサラーの効果を有効活用できる状況だからむだにならないし、ヤバそうだな。

 

 

カミューラ

LP:3500 → 4000

 

 

「そして永続魔法【ヴァンパイアの領域】を発動し、すぐさまその効果発動‼︎ 500のライフポイントを支払い、【ヴァンパイア】を追加で召喚する。そして【ヴァンパイア・ソーサラー】によって生贄が必要なくなったため、【シャドウ・ヴァンパイア】を召喚‼︎」

 

 

カミューラ

LP:4000 → 3500

 

 

【シャドウ・ヴァンパイア】

ATK:2000

DEF:0

 

 

 重々しい鋼鉄の音を鳴らしながら、1人の人物が上の通路から降りて来た。

 それは、上半身の黒い鎧が刺々しく不気味となっている騎士の吸血鬼。降りながらこちらを見下ろしている赤い瞳が恐怖を示そうとしており、鋭利な棘の部分が多く見える黒い剣を覗かせる。

 

「【シャドウ・ヴァンパイア】が召喚に成功した場合、手札・デッキから同名以外の【ヴァンパイア】闇属性モンスターを1体特殊召喚する事ができる。このターン、そのモンスターしか攻撃できなくなるけれど、先攻1ターン目なら問題ないわ‼︎ よってデッキから【ヴァンパイアの使い魔】を特殊召喚する‼︎」

 

 ダンスホールのところにまで降りて来た【シャドウ・ヴァンパイア】が、地面に剣を突き刺した。すると剣を中心に赤い魔法陣が出現し、引き抜いたその地点から光の柱が出現し、そこから何がが飛び出した。

 

 

【ヴァンパイアの使い魔】

ATK:500

DEF:0

 

 

 それは、壺を運んできた集団のよりも二回り大きく、目が体色によって完全に隠れ大きな口から牙を見せている、ある意味恐ろしさのある蝙蝠。フィールド中を旋回し、『キキッ』と鳴きまくっていた。

 

「【ヴァンパイアの使い魔】が特殊召喚したため、ライフポイントを500支払う事で、デッキから同名以外の【ヴァンパイア】モンスターを1体手札に加える事ができるわ。よって私は【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】を手札に‼︎」

「……‼︎」

 

 

カミューラ

LP:3500 → 3000

 

 

 カミューラの身体から血液に似た色の瘴気が放たれたのと同時に、使い魔が既に翼の皮膚に仕込んでいた1枚のカードを、長い尾で抜き取って彼女に投げ渡した。尾が器用なのはいいけど、渡し方。主人相手には投げないで普通に渡せよ。

 しかし、まさかここで【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】をサーチするとは……【ヴァンパイアの幽鬼】か墓地にあるんだし、任意のタイミングで俺が呼び出したモンスターを装備カードとして除去されるのは厄介だな。警戒せんと。

 

「私はリバースカードを1枚伏せ、永続魔法【冥界の宝札】を発動‼︎ 私はこれでターンエンド。さぁ坊や、貴方のターンよ」

 

 

カミューラ

LP:3000

手札:2枚(【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】×1)

フィールド:

【シャドウ・ヴァンパイア】ATK:2000

【ヴァンパイアの眷属】DEF:0

【ヴァンパイアの使い魔】DEF:0

【ヴァンパイアの領域】×1

【魂吸収】×1

【冥界の宝札】×1

伏せカード×1

 

 

 さてと、見えている妨害は……【ヴァンパイアの幽鬼】からの【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】と、正体不明の2枚の伏せカードか。伏せカードの方は不安だが、それでもやるしかないな。

 

「俺のターン、ドロー‼︎」

 

 ……って、よく見たらこの手札、想像していたよりも良い手札じゃないか? これはいけるかもしれない。完璧な手札だ‼︎(フラグにならない事を祈る)

 

「まずは魔法(マジック)カード【儀式の下準備】を発動‼︎ デッキから儀式魔法カードを1枚選び、さらにその儀式魔法にカード名が記された儀式モンスターを1体、自分のデッキ・墓地から選ぶ。俺がまずデッキから選ぶのは【粛声なる祈り】。そしてこのカードのテキストには儀式モンスターの【粛声なる守護者ローガーディアン】が記されている。よってこの2枚を手札に加える‼︎」

 

 金箔の2枚の仮面を左右の顔半分に付けた黒い鳥が、カットステーキの刺さったフォークを左手で持ちながら手すりの上を歩きながら現れた。そして懐から2枚のカードを取り出して俺に手渡し、そのまま歩き去って行った。

 ……あの鳥、帰り道とか分かるのかな……? いやソリッドビジョンなのは分かるけど、ステージ全体を使っての演出をされると、どうでもいい事を考えてしまって仕方ない……

 

「まさか……今回の翼のデッキは儀式召喚を中心としたデッキか⁉︎」

「まだそうとは限らないが……よく考えてみれば、翼が儀式関連を使うのは何気に初めて見るな」

「翼の使う儀式デッキ……一体どんなのかしら」

 

 ここで十代達が、俺が儀式デッキを使うという事実に驚きを見せてきた。うん、そういや俺ここまで儀式デッキなんて使ってなかったな。新鮮さを感じて、意外だとかそういう反応をしてもおかしくないよな。うん。

 

「儀式デッキ、ねェ……手札事故とか起こしちゃわないかしら?」

「へっ……安心しろ、その心配はいらない‼︎ 続いて【粛声の祈り手ロー】を召喚‼︎」

『我等が神とマスターに勝利を……』

 

 

【粛声の祈り手ロー】

ATk:50

DEF:2050

 

 

 こうして俺が呼び出したのは、赤いローブを着た紫陽花色の髪の少女。ローブには金の縁に龍の模様が施されており、そこから優しい輝きを出しながら両手を組んでいた。

 

「ローの効果発動‼︎ 召喚・特殊召喚した場合、デッキから【粛声】永続魔法・永続(トラップ)カードを1枚自分の魔法(マジック)(トラップ)ゾーンに()()()()()()()事ができる‼︎」

「………………はっ?」

 

 ここでカミューラ、耳を疑っているかのように呆然とした表情としていた。まぁそうだよな、俺が今使ったカードの効果が、普通のとは違って独特な感じだったからな。

 

「永続魔法・永続(トラップ)カードを、『セットする』じゃなく『発動する』でもなくて、()()()()()()()、ですって……⁉︎ 何よそのデタラメで紛らわしい効果は……⁉︎」

 

 うん、だよね。紛らわしいよね。『サーチ』じゃないってだけでも紛らわしいというのに、『表側表示で置く』って表記となっているから、さらに紛らわしいよな。分かるよ、複雑な効果や裁定が多いよなOCGって。

 

「そういう効果なんだからしゃあないだろ。って事で【粛声なる結界】を表側表示で置かせてもらうぜ」

『神のご加護がありますように……』

 

 ローが祈りを捧げれば、彼女を中心に、ルーン文字などが刻まれ星雲や銀河を思わせる輝きを放っている、金色と青色のポータル──結界が展開された。

 この結界こそ、ローが支持している神を祀るための……寧ろそれどころか、その神を呼び出すための祭壇代わりというべきだろうか。神秘的な雰囲気を引き出している。

 

「【粛声なる結界】の効果発動‼︎ 1ターンに1度、自分メインフェイズ時、同名以外の【粛声】カードか【ローガーディアン】儀式モンスターのどちらかをデッキから手札に加える事ができる。俺は【粛声なる祝福】を手札に加える」

 

 ローを中心として展開されている方の結界が青く光り、ローと共に周囲を明るく照らし始めた。そしてその上空に、白い天使の翼を大きく広げた女性の幻影が浮かび上がっていった。

 

「ここで儀式魔法【粛声なる祈り】を発動‼︎ レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の手札・フィールドの光属性モンスターを()()()()し、手札から光属性の儀式モンスターを1体儀式召喚する‼︎」

「リリース……? もしかして、生贄の事を指しているのかしら?」

「あ、おうっ」

 

 いっけね、素でリリースの方を言っちゃった。でも、『生贄』って言葉が嫌いな俺としては、自然にその言葉を使うのは抵抗があるし、別にいいよな? なっ?

 

『では、一度私の魂を神に譲りま───』

「俺は【粛声なる守護者ローガーディアン】を儀式召喚の素材とし、このモンスターを儀式召喚する‼︎」

『………………えっ?』

 

 己が生贄になる事を覚悟していたみたいだったローは、自分が儀式の素材にならなかった事に呆気に取られたような表情をしていた。ごめんロー、今回の手札だとこうしてからの方が良いと気づいたから……

 そんな中、高いがために深い暗闇となっているはずの天井に、優しい太陽のような光が、後光として差し込んできた。まるで神でも降臨してきているかのようだった。

 

「チッ、煩わしい光ね……‼︎」

 

 やはり吸血鬼は明るい光が苦手なのか、カミューラはその後光があまり目に入らないようにと、腕で顔を覆いながら悪態をついた。……本物の光だったら、あいつ灰になって消えるんじゃないかな。

 

「声なき祈りに導かれ、竜神の姫君よ、天界の力を今こそ解放せよ‼︎ 儀式召喚‼︎ 導け、【竜姫神サフィラ】‼︎」

『どうしよう……出たのはいいけどなんだか複雑ね』

 

 

【竜姫神サフィラ】

ATK:2500

DEF:2400

 

 

 こうして光から出てくるように降り立ってきたのは、人型の竜。顔と青い鱗が竜そのものとなっており、先端部分に金の装飾が施された巨大な翼からは光の鱗粉が舞い散り、暗い空間を明るくさせていた。

 なんか罰の悪そうな事を言っているきがするけど、無視だ無視‼︎ どうせくだらない事でも考えてんだろ(すっとぼけ)。

 

「おおおっ‼︎ これが翼の儀式モンスターか‼︎ 結構輝いてるな‼︎」

 

「おっと十代。何を勘違いしているのか知らんが、俺の儀式デッキのエースはこいつじゃないからな」

 

「へっ?」

 

 おいおいおいおい……いくら俺がいろんなモンスターを出してきたからって、一番最初に出した儀式モンスターをエースモンスターだと思い込んでもらわないでくれるか? エースモンスターを出す時は教えてやるからさぁ。

 

「とりあえず、準備はまだ終わってないぞ。【粛声なる祝福】の効果発動‼︎ 1ターンに1度、同名以外の自分の墓地・除外状態の【粛声】カードを1枚手札に戻す事ができる。よって先程儀式素材にした【粛声なる守護者ローガーディアン】を手札に‼︎」

 

 サフィラが両腕をゆっくりと下しながら伸ばせば、天井から鋭利な部分のよく見える人型の何かの幻影が、青白い縁の光を膜にして現れた。内部は脈すら映し出されていないため、全貌がどのようなものなのかは、ここだけだと見当がつかない。

 だからこそ……お見せしよう、彼の正体を。そして、俺のこのデッキのエースモンスターを。その前にさらに準備しないといけないけど。

 

「手札のこのカードは、自分の手札・墓地から儀式魔法カードを含む魔法(マジック)カードを2枚デッキに戻す事で特殊召喚する事ができる。墓地の【儀式の下準備】と儀式魔法【粛声なる祈り】をデッキに戻し、【粛声の竜賢聖サウラヴィス】を特殊召喚‼︎」

『ふぉっふぉっふぉっ。儂の出番、早いのう』

 

 

【粛声の竜賢聖サウラヴィス】

ATK:2600

DEF:2800

 

 

 展開されている魔法陣の1つが光り、そこから1人の人物がゆっくりと出て来た。

 その者は白髪長髭の老人。額の上部に長い藍色の角が伸びており、藍色の羽衣を着けていた。そして左手に持つ分厚い本を捲りながら、この地に降り立った事に嬉しく感じたのか微笑んだ。

 はい、ここ‼︎ ここからがエンタメ(?)なんです‼︎

 

「ここで永続魔法【粛声なる祝福】の第二の効果発動‼︎」

「その永続魔法、まだ他に効果があるというのかしら?」

「あたぼうよ。儀式モンスター以外のモンスターが表側表示で召喚・特殊召喚された場合、レベルの合計が儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように、自分の手札・フィールドのモンスターをリリースし、手札から戦士族・ドラゴン族で光属性の儀式モンスターを1体儀式召喚する事ができる‼︎」

「なっ……永続魔法での儀式召喚ですって⁉︎」

 

 何気に儀式召喚ギミック搭載の永続魔法って、このカード以外見かけない気がするんだよなぁ。速攻魔法とか(トラップ)カードでも儀式召喚できるカードならあるってのは覚えているけど。

 ……アレ? けど、儀式召喚できる永続魔法はもう1枚あって、フィールド魔法にも儀式召喚ギミックのあるカードがあったような、そうでもないような……? うーん、分からん。

 いや、それよりも目の前のデュエルだ。見せてやるよ、このデッキのエースである儀式モンスターを‼︎

 

「【粛声の祈り手ロー】は戦士族・ドラゴン族で光属性の儀式モンスター1体を儀式召喚する場合、このカード1枚で儀式召喚に必要な分のリリースとして使用できる‼︎ よってローのみをリリースして儀式召喚を執り行う‼︎」

『やっと……やっと神にその身を捧げられるのですね……ホッ。よかった……』

「1体で特定の儀式召喚の素材全ての代用……⁉︎ 一体どれだけ儀式召喚に特化しているのよそのデッキは……⁉︎」

 

 悪いな。儀式テーマはこれぐらい優遇されてないと、時代の流れに追いつけないんでね。

 そんな中、ローが再び祈りを捧げる仕草をすれば、未だ健在中の青白い幻影が彼女と重なり合うように移動し……彼女をも包み込むように、青白い光を全体に放った。

 その光を視界に受け、咄嗟に腕で目を覆ったカミューラは舌打ちしながらも、光が放たれた方向に顔を向けたままだった。どんなモンスターが出てくるのかを警戒しているようだ。

 

「声なき声に導かれし守護者よ‼︎ 世界の禁忌に触れし闇を切り裂き、絶望を討ち祓え‼︎ 儀式召喚‼︎ 降臨せよ、祈り手を護りし者‼︎ 【粛声なる守護者ローガーディアン】‼︎」

『ヴォオッ。私の名はローガーディアン。同志を護りし者』

 

 

【粛声なる守護者ローガーディアン】

ATK:2050

DEF:2500

 

 

 解き放たれた光が治れば、ローと幻影がいた位置に、天界の中世なる騎士を彷彿とさせる守護者が優雅に立っていた。

 金色の装飾を己と一体化させている身体の上に、騎士の鎧とその騎士が混ざり合ったような黄褐色の鎧が装着されており、兜の下から鋭い眼光で【ヴァンパイア】モンスター達を睨みつけた。

 そしてその背には大きな白い翼が広げられており、そこから羽や光の粒子が飛び散っていった。その光の粒子は星空や結晶のような模様となっており、神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 

「こ、これが、翼の儀式デッキの本当のエースモンスターなのか‼︎」

「な、なんて神秘的なモンスターなの……」

「しかもあのモンスター、もしかして【ローガーディアン】か?」

「何ッ⁉︎ 既に出ている儀式モンスターが強化された姿、とでも言うのか⁉︎」

「あのモンスターにも【ローガーディアン】の名前があるから、その方向性は確信がつくな」

「あ、あんなに強く見えるんだ……」

 

 おぉ。古参モンスターのリメイク版だからなのか、ローガーディアンが出た事にみんな驚き賞賛してるじゃねェか。よかったなローガーディアン、お前いきなり人気者になってるぞ。

 

『ヴォオッ。……ふむ。実際に褒められるのは、悪い気がしませんね』

 

 あ、素直に喜んだ。ってか変な声出してから急に普通に喋るなや。初対面の時もそんな感じだったんだけどさ。というかCVは松岡禎○だったのかよ。なんかイキ○トしそうだなこいつ。

 

「【粛声なる守護者ローガーディアン】と【粛声の祈り手ロー】の効果発動‼︎ まずはローガーディアンの効果‼︎ このカードが儀式召喚に成功した場合、デッキから【粛声】モンスターまたは戦士族・ドラゴン族の儀式モンスターを1体手札に加える事ができる。俺は【古聖戴サウラヴィス】を手札に‼︎」

 

 ローガーディアンが両手に持つ長剣を交差すれば、彼の元に後光が差し込んできた。すると彼の背後に、サウラヴィスを連想させる竜の幻影が浮かんできたかと思えば、そのカードが1枚のカードへと変形・収縮していき、それは1人でに動き俺の手札へと加わった。

 

「そしてローの効果‼︎ このカードが墓地に存在する状態で、自分フィールドに戦士族・ドラゴン族で光属性の儀式モンスターが特殊召喚された場合、特殊召喚できる‼︎」

 

 未だ羽と光の粒子がゆっくりと降下しているところに、人影を模した巨大な光の粒子が発生する。すると光は型抜かれたかのように放散し、残った輪郭から次々と色がついていく。

 

 

【粛声の祈り手ロー】

ATk:50

DEF:2050

 

 

 やがて色がつき終わったかと思えば、その光の輪郭は赤いローブの少女──ローとなり、ローガーディアンの隣に立てた事への喜びでなのか、静かに微笑んだ。

 

「【粛声なる守護者ローガーディアン】は、フィールドか墓地に【粛声の祈り手ロー】が存在していれば、攻撃力が2050ポイントアップする効果も持っている。フィールドにローが存在しているため、効果は適用される」

 

 ローがさらに深く祈りを捧げれば、ローガーディアンの背後に青白く輝く光が解き放たれる。星に似た光のような粒子を魅せているその輝きは、天界を想像……というよりは、宇宙に秘められし神秘の場所を連想させていた。

 その輝きに全身を包まれているローガーディアンは、出た時よりも一段と輝きを解き放っており、鎧・翼……彼の全てから神々しさを解き放っていた。

 

 

【粛声なる守護者ローガーディアン】

ATK:2050 → 4100

 

 

「攻撃力……4100ですって⁉︎」

 

 驚くのも無理もない。特定のカードを指定されたゾーンのいずれかに置くだけで、爆発的な攻撃力を得られる上に、その攻撃力は僅差ながらもオベリスクを超えているのだから。

 とはいっても、単に攻撃力を上げるだけなら他にもすごい奴はいっぱいいるけどな。

 

「言っておくが、他にも準備したいからまだ攻撃しないぜ。手札の【粛声の竜賢姫サフィラ】の効果発動‼︎ このカードを手札から捨てる事により、デッキから儀式魔法カードを1枚墓地に送る事ができる。【粛声の祈り】を墓地へ。その後、戦士族・ドラゴン族で光属性の儀式モンスターを1体、自分のデッキ・墓地から手札に加える事ができる。よってデッキの【粛声なる竜神サフィラ】を手札に」

 

 三度の後光が一瞬だけ発生し、そこから【竜姫神サフィラ】と同じ翼を持つ、金の装飾が大きく見える白い羽衣を着た長髪金髪の女性が出現する。

 そして徐々に彼女と重なるように、青い体毛を持つ人型の竜の幻影も出現し、それが光っては収縮・変形して1枚のカードとなり、俺の手札へと加わった。それと同時に、いつの間にか女性の姿は見当たらなくなった。

 

「続けて魔法(マジック)カード【儀式の準備】を発動‼︎ デッキからレベル7以下の儀式モンスターを手札に加える。2体目の【粛声なる守護者ローガーディアン】を手札に‼︎ その後、デッキ・墓地から儀式魔法を手札に加える事ができるため、墓地から【粛声の祈り】を手札に戻すぜ」

「ど、どれだけサーチを繰り返しているのよそのデッキは……⁉︎」

「悪いなカミューラ。どうやら今回は、初期手札がかなり良好だったようだ‼︎」

 

 良好すぎて、なんだか逆に怖くなってきたんだけどね。

 突如として、黒いローブを羽織っている、性別も年齢も不明な2人の人物がダンスホールに出現した。なんだこの場違いな奴らが突然出現するという出来事は。あいつら怪しまれるって絶対。

 1人が魔法の杖を持ちながらの詠唱によって発生した光の中から、もう1人が分厚い本を捲りながらの詠唱によって発生した光の中から、それぞれ1枚ずつカードを生成した。

 それらをそれぞれが俺に渡し手札に加わったのを確認した後、そのまま2人とも消えていった。

 

「な、なぁ……見たかみんな?」

「あ、あぁ……王辻 翼の手札が初期の枚数に戻ったぞ……」

「儀式デッキは手札消費が激しいはずなのだが、翼の儀式デッキはその手札を回復する事ができるのか……」

「手札事故も起こしやすいとも聞くが、そのような気配は一切見当たらないな……」

「あ、あれって本当に儀式デッキっすか……?」

 

 あぁ……うん、だよね。儀式って手札に儀式モンスターと儀式魔法、そして手札がフィールドに儀式召喚に必要な素材を揃える必要なんだよな。その分だけ消費する手札が多いし、揃わなかつたら手札事故を起こすし……

 だけどこのデッキは、その手札事故が起きにくいように構築されているんだよな。だからみんな儀式デッキを回しているのを見て、驚いたり素直に褒めたりしちゃうのも無理もないよな。

 

「儀式魔法【粛声なる祈り】を発動‼︎ 手札のレベル9の【トリアス・ヒエラルキア】を儀式の素材とし、儀式召喚を行う‼︎」

 

 俺のモンスター達の上空に、頭部に光輪がある、下部がピラミッド型の構造物となっている騎士の鎧の天使が出現した。その者が後光に照らされれば、姿形が完全に別物として変形していった。

 

「声なき祈りに導かれ、竜神の姫君よ、もう1つの姿を見せよ‼︎ 儀式召喚‼︎ 導け、【粛声なる竜神サフィラ】‼︎」

『自分が2体も並ぶって、なんだか新鮮ね』

 

 

【粛声なる竜神サフィラ】

ATK:2550

DEF:2450

 

 

 こうしてローの上空に現れたのは、体毛を中心に青い色合いを強めた、竜神姫とは異なる神秘さを持つ人型の竜。同一人物ではあるものの、声なき祈りに導かれた影響なのか、後光の輝きが異なるのは気のせいだろうか。

 

「【粛声なる竜神サフィラ】の効果発動‼︎ このカードが儀式召喚した場合、自分のフィールドか墓地に【粛声の祈り手ロー】が存在すれば、デッキからカードを2枚ドローし、その内の1枚を捨てる」

「どれだけ手札を変動させれば気が済むのよ……‼︎」

 

 サフィラが翼を大きく広げれば、羽と共に光の鱗粉が巻き上げられ、その中に2枚のカードが出てきており、俺はそれをキャッチし、1枚の手札を墓地へと送った。

 この手札と捨てたカードなら……返しのターンでもなんとかなるかもしれないな。

 

「バトルフェイズに入───」

「ま、待ちなさい‼︎ 墓地の【ヴァンパイアの幽鬼】の効果発動‼︎」

 

 ここで使って来たか、幽鬼による連携コンボ(?)。召喚する【ヴァンパイア】モンスターの効果の発動タイミングさえ間違えなければ、相手への妨害も強いもんな。

 

「このカードを除外し、ライフを500ポイント支払う事で、このタイミングで【ヴァンパイア】モンスターを召喚できる‼︎ 【ヴァンパイアの眷属】と【ヴァンパイアの使い魔】を生贄に捧げ、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】を召喚‼︎」

 

 

カミューラ

LP:3000 → 2500

 

 

 眷属と使い魔の背後に、半透明の幽鬼が、青白い霊気を体内から放出しながら姿を現した。そして2体と共に拡大していった霊気に覆われると、その霊気の中で合成されていき、やがて1つの生命となって霊気を霧散させた。

 

『さぁ、今宵は誰が私と同胞の贄となるのでしょうね……』

 

 

【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】

ATK:2500

DEF:2000

 

 

 姿を見せたのは、修道服に似せた服なのに露出度が高い、白髪で赤い瞳を持つ吸血鬼。首から胸部にかけて弱点である筈の十字の装飾をあしらい、巨大な黒い蝙蝠の翼を大きく広げて見せていた。

 そして自身の紅い唇をゆっくりとなぞりながら、その指先に魔力を込め始めた。自身の能力で、俺のモンスターを幻影として吸収するつもりだろう。

 

「2体以上を生贄にして召喚したため【冥界の宝札】の効果、続けて【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の効果発動‼︎」

 

 なるほど、いざって時のために【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の効果を優先したか。ドローは返しのターンに大事だからな。

 

「逆順処理を行うわ。まずは【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の効果‼︎ 召喚に成功したため、このカードより攻撃力の高い相手モンスター1体を、このカードの装備カードにする───」

「残念だが、その効果は発動しないぜ」

「……は?」

 

 【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】が、今度はローガーディアン達に向けて空気をなぞろうとした……その瞬間、その動作から放たれたであろう魔力の光が、俺のモンスター達の周囲を囲む結界によって弾かれた。

 

『……⁉︎ 私の能力が弾かれた⁉︎ な、何故……⁉︎』

「永続魔法【粛声なる結界】の効果さ」

「なっ……⁉︎ まさか、無効効果が⁉︎」

 

 残念、不正解だ。

 

「【粛声なる結界】は、自分フィールドに【粛声の祈り手ロー】及び光属性の儀式モンスターが存在していれば、相手モンスターは儀式モンスターしか攻撃対象に選択できない効果と、自分フィールドの光属性モンスターを相手は効果の対象にできない効果を適用できるのさ。俺のフィールドのモンスターは光属性のみで、フィールドにローと儀式モンスターが3体もいる。よって俺のモンスター達は誰も効果の対象にされなくなり、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の効果は不発になるのさ」

「た、対象を取らせない効果ですって……⁉︎ しかも儀式モンスターにしか攻撃させないなんて……なんて厄介な効果なのよ……⁉︎」

 

 まぁ結局、どちらかが欠けてたらこの強力な防衛効果は適用されないんだけどね。悪いな。

 

「そ……そんな効果、アンタ説明してなかったじゃないの……‼︎」

「お前もクロノス先生に【ヴァンパイアの幽鬼】の墓地効果を説明しなかっただろ。『返報性の法則』って言葉を知っているのか? 『因果応報』と同じ意味さ」

「ッ……‼︎」

 

 人を騙す気があるってんなら、自分自身も騙される覚悟が必要って事さ。俺もいろんな意味で何度も騙されてきたからな、その意趣返しをお前相手にやらせてもらうぜ。

 

「ッ……【冥界の宝札】でカードを2枚ドロー……【ヴァンパイアの幽鬼】と【ヴァンパイアの眷属】が自身の効果によって除外されたため、【魂吸収】の効果で合計1000ライフポイントを回復するわ……」

 

 

カミューラ

LP:2500 → → 3500

 

 

「んじゃ、改めてバトルといくか。バトルフェイズ‼︎ 俺は【粛声なる竜神サフィラ】で【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】を攻撃‼︎」

 

 【粛声なる結界】を破壊される可能性を考慮すると、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】を健在させるわけにはいかない。とっとと除去させて───

 

「ッ……リバースカードオープン‼︎ カウンター(トラップ)【攻撃の無力化】‼︎」

「……‼︎」

「これにより、アンタのバトルフェイズは終了となる‼︎ ワンターンキルを狙おうとしていたみたいだけど、残念だったわね‼︎」

『あ、危なかったですね……』

 

 【粛声なる竜神サフィラ】が両手から放った光の弾丸が、突如【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の目の前に出現した時空の空洞に、呆気なく吸い込まれていってしまった。

 しかも空洞はそのまま【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】どころかカミューラ達を守るように維持されており、俺のモンスター達は無闇に攻撃できず膠着状態となってしまった。

 しかし、カウンター(トラップ)か……これはさすがに()()()()()()()()()。どうしてK○NAMIはカウンター(トラップ)に『このカードの発動に対して互いのプレイヤーはカウンター(トラップ)しか発動できない』って書かないんだよ。ややこしすぎるわスペルスピード。

 

「けど、その残った手札は墓地に送ってもらおうか」

 

 刹那、カミューラの手元に一瞬の光が灯された。それは火花の如く弾け、カミューラが持っていた1枚のカードを弾き飛ばしてしまった。

 

「わ、私の【ヴァンパイア・スカージレット】が……⁉︎」

「【粛声なる竜神サフィラ】の効果さ。戦士族・ドラゴン族で光属性の儀式モンスターが戦闘を行う攻撃宣言時、相手の手札をランダムに1枚捨てさせる事ができる。蘇生効果を持つ奴を潰しておいて正解だったぜ」

「また説明しなかった効果を……‼︎」

「いや攻撃宣言時の効果ぐらい別に隠してもいいだろ」

 

 大体アニメでは、カードの効果を言わずにそのまま相手にも無理矢理流れに合わせたり、決まったと思ったら『発動していた』でひっくり返したりと、色々と番外戦術をやっているんだよどいつもこいつも。なら俺もそういうのをしても文句ないだろコラ。

 おっといけない、私怨でこんな事言ってしまった。デュエルに集中しないと。えっと、バトルフェイズを飛ばされて今はメインフェイズ2だから……

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド。このエンドフェイズ時、【竜姫神サフィラ】の効果発動」

「このタイミングでまた効果を……‼︎」

「このカードが儀式召喚したターンのエンドフェイズ時及び、このカードがモンスターゾーンに存在し、手札・デッキから光属性モンスターが墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、3つの効果の内1つを選択して発動できる。俺は『デッキからカードを2枚ドローし、その内の1枚を捨てる』効果を選択」

 

 【竜姫神サフィラ】が両腕を広げれば、両手にカードの形状をした光が生成される。それらが俺の手札へと加わり、俺はその内の1枚を墓地へと送った。これで手札補充もいい感じかな。

 

「これで本当にターンエンド。さ、お前のターンだぞ」

 

 

LP:4000

手札:3枚(【古聖戴サウラヴィス】×1、【粛声なる守護者ローガーディアン】×1)

フィールド:

【粛声なる守護者ローガーディアン】ATK:4100

【粛声の竜賢聖サウラヴィス】ATK:2600

【粛声の竜賢姫サフィラ】ATK:2550

【竜姫神サフィラ】ATK:2500

【粛声の祈り手ロー】DEF:2050

【粛声の結界】×1

【粛声の祝福】×1

伏せカード×1

 

vs

 

カミューラ

LP:3500

手札:1枚

フィールド:

【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】ATK:2500

【シャドウ・ヴァンパイア】ATK:2000

【ヴァンパイアの領域】×1

【魂吸収】×1

【冥界の宝札】×1

伏せカード×1

 

 

 いつものアカデミアなら、目立ちすぎるのを恐れて『やりすぎた』とか言って反省するところだろう。けど、相手は闇のデュエルを実行していて、三幻魔の鍵を狙っているんだ。遠慮とかしている場合じゃない。

 それに……今後の展開で大切な場面があったとはいえ、クロノス先生を実質的に見殺しにしてしまった罪悪感があるし……彼はカミューラに馬鹿にされ、倒され、人形にされたんだ。あんなの許せるわけがないだろ。

 カミューラ……悪いが圧倒させて倒させてもらうから、覚悟しとけ。

 

「ッ……な、何故この私が、こんなガキ1人相手に、たった1ターンだけでここまで追い込まれなきゃならないのよ……‼︎」

 

「カミューラの奴、焦り始めたぞ‼︎」

「本気で怒った時の翼はあそこまで敵を追い込ませる程に強かったのか……」

「ボ、ボク……彼をブチギレさせるような事しなくてよかったと思っているよ……」

「俺もなんだな……」

 

 今回のデッキとカミューラのデッキでは相性が悪かったのと、お互いの初期手札の運の良さだで。今回は俺の運が勝ってたな。ざまぁみろカミューラ。

 

「私のターン、ドロー‼︎ ……ッ」

 

 良いカードを引けなかったのか? 苦しそうな表情にしては、悔やんでいるって感じの顔じゃなさそうだけど……

 

「リバースカードオープン‼︎ (トラップ)カード【ヴァンパイア・アウェイク】‼︎ デッキから【ヴァンパイア】モンスターを1体特殊召喚するわ‼︎」

 

 おっと、ここで【ヴァンパイア】モンスターのリクルートか。

 確か【ヴァンパイア】には、ライフを3000ポイントまで引き換えにその分だけバトル中のアンデットの攻守を強化する【ヴァンパイア・フロイライン】がいたっけ。

 もしもフロイラインを呼ばれたりしたら厄介だな。出てから発動させるタイミングまで泳がせて、無効にして返り討ちにってパターンが良好だが……

 奴の残り2枚のカードが【粛声なる結界】を破壊する手段のあるカード、または【禁じられた一滴】だと考えると、手札の方のサウラウィズを突破されて、最低でもローガーディアンを突破される可能性がある。まぁ手札に2体目がいるけど。

 ここは……一旦通して様子見するか。無闇に効果を無効にしてもどうかと思うし。

 

「……で⁉︎ この効果に対して何かないのかしら⁉︎」

「なら【粛声の竜賢聖サウラヴィス】の効果発動‼︎ 相手がカードの効果を発動した時、フィールドのこのカードを手札に戻す事で、手札・デッキから手札・デッキから戦士族・ドラゴン族で光属性の儀式モンスターを1体特殊召喚する事ができる。デッキから【古聖戴サウラヴィス】を守備力で特殊召喚‼︎」

『ふむ……では、儂の本来の姿になっておくとするかのぉ』

 

 突如として、【粛声の竜賢聖サウラヴィス】の全身が淡い光に包まれ始めた。やがて彼の姿は徐々に変化していき……竜の印象を強くしていった。

 

 

【古聖戴サウラヴィス】

ATK:2600

DEF:2800

 

 

 こうしてサウラウィズは、竜の姿へと変貌を遂げた。長い髪は鬣となり、身体には縹色の鱗が浮き出ている。そして何より全長が人間態の時よりも一回り大きくなっており、『本来の姿』らしさを際立たせていた。

 

「無効にする効果ではないのね……これにより、私は【ヴァンパイアの眷属】を守備表示で特殊召喚する‼︎」

 

 モンスターのサーチをする事に決めたのか。アウェイクで出たモンスターはエンドフェイズ時に破壊されるし、これが妥当かもな。

 

 

【ヴァンパイアの眷属】

ATK:1200

DEF:0

 

 

 身体の半分が影に覆われている白い狼が、遠吠えを上げながら駆けて来た。赤い瘴気を放ちながら、点滅するように時々半透明になっている姿を見るに、本当にこのターンの終わりにいなくなる事を示唆しているのだろう。

 

「【ヴァンパイアの眷属】の効果発動‼︎ ライフを500ポイント支払い、デッキから【ヴァンパイア】モンスターを手札に加えるわ‼︎」

 

 

カミューラ

LP:3500 → 3000

 

 

 うーむ……【決闘(デュエル)が為の宝札】や【エレメンタル・バースト】に【もけもけ大パニック!】……強いオリカまで誕生してしまったこの世界の事だから、この世界オリジナルのぶっ壊れ【ヴァンパイア】モンスターでもサーチしてきそうだけどなぁ……

 サーチされた後に出てきて、チェーン不可や効果無効の効果が出てこられたりしたら困るから、ここは無効にしておくか……やっぱりオリカの可能性が捨て難いし。ま、これは()()()()()()()()()()()()()()()

 

「リバースカードオープン‼︎ (トラップ)カード【迷い風】‼︎ 特殊召喚された相手モンスターの効果を無効にし、元々の攻撃力を半分にする‼︎」

「なっ……⁉︎ 無効にする上に攻撃力を下げるですって⁉︎」

 

 俺達がいる方向のダンスホールへの入り口から、不吉を予兆させるような風が吹いてきた。その気配に気づいた眷属が唸り声を上げ、吠えようとしたが、不可思議な力に襲われたのか、その場で脚力が抜けて地にへばりついてしまった。

 

 

【ヴァンパイアの眷属】

ATK:1200 → 600

 

 

「ッ……‼︎」

「おいどうした、お前のターンだぞ」

「う、うるさい‼︎ 墓地の【ヴァンパイアの使い魔】の効果発動‼︎」

 

 やっぱり焦ってきているな。それもそうだよな。物事が何もかも上手くいっていないんだから。主に【粛声なる結界】のせいで、だけど。

 とりあえずこいつは……彼女の手札が怪しいし、この効果も通すとするか。この怪しい状況で無闇に無効にする必要ない。一滴ならアウェイク発動の時点で使われていたし。

 

「【ヴァンパイア】の領域を墓地に送り、このカードを守備表示で特殊召喚‼︎」

 

 

【ヴァンパイアの使い魔】

ATK:500

DEF:0

 

 

 何処からか漏れ出た血の臭いのする霧が漂い始め、その臭いに釣られてなのか、これまでの集団の中で最大サイズを誇る蝙蝠が、既に出ている使い魔と並ぶ現れた。別にどちらが大きいというわけではないが。

 

「ライフを500ポイント支払い、【ヴァンパイアの使い魔】の効果発動‼︎」

 

 

カミューラ

LP:3000 → 2500

 

 

 うーむ……なんか無効効果があるのを狙って、敢えて狙っている感じがするから、ここでも使うかどうかがなぁ……

 なんか嫌な予感がするから、ここは通しておくか。危なっかしい効果を持つモンスターが出たなら、そいつの効果を無効にできればお得になるし。

 

「そいつも通すぜ」

「なら私はデッキから【ヴァンパイア・フロイライン】を手札に‼︎」

 

 あ、オリカではないのね。しかもフロイラインならどうってなるから問題無さそうだ。【粛声の竜賢姫サフィラ】の効果発動に対して使わざるを得なくなりそうだしね。

 自分に対して何もされない事を確認してか、使い魔がいつの間にか咥えていたカードを、カミューラに向けて投げ渡した。だから主人に対する渡し方。

 

「そして私は……モンスターを全て守備表示に変更し、さらにモンスターをセット‼︎ リバースカードを1枚伏せてターンエンド‼︎」

「むっ……」

 

 あの2枚のカード……1枚が下級セットモンスターなのはともかく、もう1枚は伏せただけなのか……速攻魔法か(トラップ)カードだったのか?

 しくじった……アレは多分【ヴァンパイアの支配】だな。伏せたという事はなんとなくそれが予想できるし。

 多分まずいなこれは。俺の今の手札には魔法(マジック)(トラップ)カードを破壊するカードが来てないし、捨てたカードもそういった効果を墓地から発動できるカードでもないから……

 

 

 

LP:4000

手札:3枚(【粛声の竜賢聖サウラヴィス】×1、【粛声なる守護者ローガーディアン】×1)

フィールド:

【粛声なる守護者ローガーディアン】ATK:4100

【古聖載サウラヴィス】DEF:2800

【粛声の竜賢姫サフィラ】ATK:2550

【竜姫神サフィラ】ATK:2500

【粛声の祈り手ロー】DEF:2050

【粛声の結界】×1

【粛声の祝福】×1

 

vs

 

カミューラ

LP:2500

手札:1枚(【ヴァンパイア・フロイライン】×1)

フィールド:

【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】DEF:2000

【シャドウ・ヴァンパイア】DEF:0

【ヴァンパイアの眷属】DEF:0

【ヴァンパイアの使い魔】DEF:0

セットモンスター×1

【魂吸収】×1

【冥界の宝札】×1

伏せカード×1

 

 

「……? 翼の奴、有利になっているはずなのになんで苦しそうな表情をしているんだ?」

「カミューラがドローしたカードを警戒しすぎたのか、残っていた何かしらの無効効果を使わず、敵の防御態勢を整えさせるのを許してしまったんだ。今の盤面的にも次の翼のターンでは奴を倒しきれなさそうだし、悔やむのも無理もない」

「警戒が逆に仇にならないといいのだけれど……」

 

 ヤベッ、みんなに心配かけられてしまった。これはなんとかしないと逆転負けもあり得るぞ。慎重に行きすぎないようにしないと。

 

「俺のターン、ドロー‼︎ 儀式魔法【粛声の祈り】を発動‼︎ フィールドの【竜姫神サフィラ】をリリースして儀式召喚を行う‼︎」

『えっ? 私、ただ出て効果を発動させただけ? 隣の方の私は効果発動できた上に攻撃も仕掛けれたのに?』

 

 ホントすまない【竜姫神サフィラ】、今回はお前の運を悪くしてしまって……

 拍子抜けた表情をしているサフィラに後光がかかる。それに気づくも動揺の声すら上げてもらえなかったサフィラは、そのままその光に全身が覆われていき、その光の中で徐々に姿を変えていく。

 

「声なき声に導かれし守護者よ‼︎ 世界の禁忌に触れし闇を切り裂き、絶望を討ち祓え‼︎ 儀式召喚‼︎ 降臨せよ、祈り手を護りし者‼︎ 【粛声なる守護者ローガーディアン】‼︎」

『ヴォオッ。私の名はローガーディアン。同志を護りし者。そして私と彼は兄弟である』

 

 嘘つけ、お前ら2人とも偶々並んだだけだろ。

 

 

【粛声なる守護者ローガーディアン】

ATK:2050 → 4100

DEF:2500

 

 

 冗談を言いながら後光から飛び出してきた、もう1体の守護者。古来を彷彿とさせる色合いの鎧と巨大な天使の翼が一体化しているかのような雰囲気を感じさせ、神々しさを解き放っていた。

 

「ローガーディアンの効果発動‼︎ デッキから【粛声なる威光】を手札に‼︎」

 

 両手に持つ長剣を交差し、後光を振り下ろすローガーディアン。その光の中から1枚のカードがゆっくりと落ちていき、俺の手札へと加わった。

 前のターンは【粛声なる結界】を破壊される事を考慮してサウラウィズを手札に加えてたけど、既に手札とフィールドにいるならサーチは不要だし、そもそもデッキに2体しか入れていない。だからサーチ対象を妨害札にしてもいいってわけさ。

 というか、伏せカードは【ヴァンパイアの支配】じゃなかったのか? もしそうだったらこのタイミングで発動してもおかしくないはずだが……

 おっと、とりあえず自分の事に集中するか。んで、こいつらの効果も忘れずに。

 

「【粛声なる結界】の効果発動‼︎ デッキから【粛声のローガーディアン】を手札に‼︎」

 

 結界の1つが青く光り輝けば、その上空から1枚のカードが降り注いできた。それを俺はすかさずキャッチし、手札へと加えた。

 

「【粛声なる祝福】の効果発動‼︎ 先程2体目のローガーディアンの儀式素材として墓地に送っていた【竜姫神サフィラ】を手札に‼︎」

 

 今度はローガーディアンの背後に、【竜姫神サフィラ】の幻影が現れる。それは変形・凝縮していって1枚のカードとなり、1人でに俺の手札へと加わった。

 ただ、こいつがまた儀式召喚するかどうかは……状況によるけどな。『えっ?』

 

「サウラウィズとローを攻撃表示に変更し、バトルフェイズ‼︎ ローで【ヴァンパイアの眷属】を攻撃‼︎」

『わ、私が攻撃を……⁉︎ え、えいっ‼︎』

 

 ロー、自分がモンスターに攻撃するとは思っていなかったためか目を見開いていた。攻撃力たったの50だもんね、仕方ないね♂

 それでも指示されたからには……と言わんばかりに、両掌を眷属に向けたロー。するとそこから淡い光が凝縮され、弾丸として解き放たれた。その大きさ、なんとキウイと同じサイズ。

 予想よりもサイズの小さい光の弾丸に、呆気に取られる眷属。だがそれは気づかぬ内に、顔面に直撃。それは半身となる影にとっては急所となっており、影が消え始めたのと共に眷属は身体を維持できなくなり消滅していってしまった。

 何このシュールな倒し方。【ヴァンパイア】一同も困惑しているし。

 

「続いて【粛声の竜賢姫サフィラ】で【ヴァンパイアの使い魔】に攻撃‼︎」

『喰らいなさい‼︎』

 

 【ヴァンパイア】達が唖然としている間に、【粛声の竜賢姫サフィラ】が両手に光のエネルギーを溜め込み、そしてそれを解き放った。

 それに輝きでいち早く気づいた使い魔が口を大きく開き、牙をも使って噛みつき相殺しようとするが……光と闇は力の強いものしか勝てない運命(さだめ)。使い魔は呆気なく光に飲み込まれ消滅した。

 

「自身の効果で除外されたため、【魂吸収】の効果でライフポイントを回復する……‼︎」

 

 

カミューラ

LP:2500 → 3000

 

 

「次……いや、ここは連続で‼︎ ローガーディアンとサウラウィズでセットモンスターと【シャドウ・ヴァンパイア】を攻撃‼︎」

『ヴォオッ。いきますか』

『それでは、儂もこの歳ながらもはっちゃけるかのぉ』

 

 ローガーディアンの1体の双剣に淡い光が宿った途端、彼の姿が一瞬にして消え去り、横向きとなっているカードが真っ直ぐに切断して消滅させていった。

 その間に、サウラウィズが口内に溜め込んだ淡い光を奔流として放出し、盾を前に出しながら剣を振り下ろした【シャドウ・ヴァンパイア】をあっさりと押し飛ばしながら、この奔流に飲み込ませ消滅させていった。

 んで、セットモンスターはリバースして発動する効果や、墓地に送られた場合の効果は持ってないようだな。まぁあったとしても、大抵は【粛声なる結界】が邪魔するだろうけどさ……【粛声なる結界】クソ強ェなオイ。

 

「そして2体目のローガーディアンで【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】を攻撃‼︎」

『ヴォオッ。これで全滅だ』

『ッ……‼︎』

 

 もう1体のローガーディアンの双剣にも淡い光が纏わりついた。その剣を再び交差して見せつけながら、輝く眼光で【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】を睨みつけた。それに彼女も警戒し、翼を思いっきり広げるが……

 

「使うならここね……‼︎ 手札の【ヴァンパイア・フロイライン】の効果発動‼︎ 自分または相手モンスターの攻撃宣言時、このカードを手札から守備表示で特殊召喚する事ができる‼︎」

 

 

【ヴァンパイア・フロイライン】

ATK:600

DEF:2000

 

 

 【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の隣に並び立つように、1人の女性吸血鬼がゆっくりと彼女の後ろから歩きながら姿を現した。

 肩を出した網状の多い赤黒い令嬢の服を着込み、真っ黒な日傘で暗めな銀髪と吸血鬼特有とも言える灰に近い白い肌と赤い瞳までをも、日傘の中の影で隠していた。

 ここで出してきたか。けどあのモンスターにはあの強力な効果を持っているんだ、()()()()を使うのはまだこのタイミングじゃねェ。使うとすれば、奴のもう1つの効果に合わせてだ。

 

「モンスターの数が変動したからって攻撃対象は変えない‼︎ 攻撃続行‼︎ 【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】を攻撃だ‼︎」

 

 ローガーディアンが翼を大きく広げれば、再び後光が一瞬だけ降りてきた。それが守護者の力の源となったのか、淡い光を全身の膜として身に纏ったローガーディアンは飛躍し、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】を見据えた。

 

「そう簡単に倒せると思って⁉︎ 【ヴァンパイア・フロイライン】の効果発動‼︎ 自分のアンデット族モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に1度、100の倍数のライフポイントを最大3000まで支払う事で、その自分のモンスターの攻撃力・守備力をそのダメージ計算時のみ払った数値分アップさせる事ができる‼︎ ローガーディアンの攻撃力は4100。そして私の【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の守備力は2000。よってその差分となる2100ライフポイントを支払い、【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】の守備力をローガーディアンの攻撃力と同じにする‼︎」

『倒せると思ったのに残念でしたね』

 

 フロイラインがその場でカミューラと向かい合い、息を吸う仕草を見せてきた。するとカミューラの身体から赤い瘴気が漂い始め、それをフロイラインが吸い取っていく。

 そしてそれを【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】に向けて吐き出し、彼女を強化させるという演出での算段だろうな。なんとなくそう予想できる。

 

 

カミューラ

LP:3000 → 900

 

 

 これでカミューラのライフは大幅に削られた。戦闘ダメージは一切与えてないから、仮に【決闘(デュエル)が為の宝札】をデッキに入れていたとしても発動条件を満たせないし、【ヴァンパイア】カードのライフを代償にする効果も500ポイントのを1回しか使えなくなった。

 ここは……()()()()()()を使う時だな‼︎

 

「ならここがこの効果の使い時だな‼︎ ローガーディアンのもう1つの効果発動‼︎ 自分フィールドに【粛声の祈り手ロー】が存在し、相手が魔法・罠・モンスターの効果を発動した時、その発動を無効にし破壊する事ができる‼︎」

「なっ……⁉︎」

『何ですって……⁉︎』

「これでフロイラインの効果は無効となり、破壊もされるぜ‼︎ 粛声なる粛清‼︎」

『ヴォオッ。そのままのネーミングですが私は気に入ってますよ』

 

 刹那、ローガーディアンの全身が後光の如く発光する。その光は広範囲に広がっていき、やがてフロイラインをも覆い尽くす。【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】のいる位置にまで広がらなかったのが不幸中の幸いだろうか。

 太陽の近くにでもいたかのような光の尋常ではない熱によって、日傘を引火したかのように焼き尽くされてしまったフロイライン。日差しを防ぐものを失った彼女は、そのまま灰となって消滅してしまった。

 

「そっ……そんな効果があるなら、何故前の私のターンに───」

「その時のお前の手札を警戒していて、使うべきかどうか悩んでたんだよ……‼︎」

「そ、そう……」

 

 いくらなんでも警戒しすぎたってのは、我ながら自負しているよホントに。サーチ効果を先んじて潰す事も大事だけど、もしも偶然引いていたカードが妨害を貫通できたとしたら……なんて事を考えすぎたよマジで。疑心暗鬼になりすぎないようにしないと。

 

「今度こそ攻撃続行だ‼︎ いけ、ローガーディアン‼︎ 粛声なる解光‼︎」

『しまっ───』

 

 ゆっくりと収まっていく光から飛び出し、双剣を交差したまま急降下していくローガーディアン。【ヴァンプ・オブ・ヴァンパイア】が咄嗟に翼を前に折り畳み防御の態勢に入るも、呆気なく通り過ぎられながら×印の斬撃を受けてしまい、その場で灰となって消滅してしまった。

 

「わ、私のモンスターが全滅……⁉︎ お、おのれ……‼︎」

「俺はカードを3枚伏せ、ターンエンドだ‼︎」

 

 さぁ、ここからカミューラはどう来る……?

 

 

LP:4000

手札:2枚(【粛声の竜賢聖サウラヴィス】×1、【竜姫神サフィラ】×1)

フィールド:

【粛声なる守護者ローガーディアン】ATK:4100

【粛声なる守護者ローガーディアン】ATK:4100

【古聖載サウラヴィス】ATK:2600

【粛声の竜賢姫サフィラ】ATK:2550

【粛声の祈り手ロー】ATK:50

【粛声の結界】×1

【粛声の祝福】×1

伏せカード×3(【粛声なる威光】×1、【粛声のローガーディアン】×1)

 

vs

 

カミューラ

LP:900

手札:0枚

フィールド:

【魂吸収】×1

【冥界の宝札】×1

伏せカード×1

 

 

 

 

 

 

「(この私が……吸血鬼の末裔であるカミューラが、ここまで追い詰められるなんて……‼︎)」

 

 カミューラは今、焦りを見せていた。それも当然である。それも当然である。たかが1人の人間であるはずの、目の前の男──王辻 翼と彼の使うカード達によって、彼女の思い描いたプレイングが出来ず逆に圧倒されてしまっているからだ。

 

「(あの男が警戒する程なのかな感じにある程度警戒していたいたけど、まさかここまでだとは聞いてないわよ……⁉︎ 本当にあのカード(・・・・・)を作って渡すだけの力はあったって事……⁉︎)」

 

 同じセブンスターズに選ばれた者からの忠告から、暫定的に翼の事を注視していたカミューラ。だが実際、翼は完封に近い感じにまで追い込まれる程の強さを持っていた。だからこそ、見方を変えなければいけなくなったようだ。

 そして何より……

 

「(あのカード(・・・・・)を引かなければ、私が負けるこの状況……もし負けてしまったら、私の一族は……)」

 

 カミューラには、勝利に拘る理由があった。自分が勝ち続ける事で、吸血鬼一族の復興のための助力をする……セブンスターズの首魁にそう約束してもらったのだ。

 だが負けてしまえば、一族の復興は不可能と言っても過言ではない。三幻魔の鍵を賭けた闇のデュエルでは、セブンスターズ側の敗者は存在しないのと同義となるのだから。

 それを現実にする訳にはいかない……怒りと焦燥に駆られたカミューラの顔は、口が裂け目元や首筋も血管が浮かび上がり、人間とはかけ離れている程に歪と化していた。

 

「私が負けるなんて事、絶対に許されない……‼︎ 吸血鬼一族の復興のためにも、貴方はここで潰す‼︎ 私のターン、ドロー‼︎」

 

 人間離れの顔となったまま翼を鋭く睨みながら、カミューラは力強くデッキトップのカードをドローする。そしてそのカードを見つめ……内心にて、負の感情が抜け始めた。

 

「(……来た‼︎ これで貴方はおしまいよ‼︎) リバースカードオープン‼︎ 魔法(マジック)カード【幻魔の扉】‼︎」

「……‼︎」

 

 刹那。カミューラの背後に、石造りの門が出現した。上部に鎮座している悪魔の銅像、そして扉に彫られていた落雷の模様が、不気味さと不吉さを際立たせていた。

 

「このカードは、私のライフポイント……いいえ、私の魂を糧にする事で、デュエル中に1度だけ効果を適用できる‼︎ 相手フィールドのモンスターを全て破壊する‼︎ そして相手の墓地のモンスターを1体、私のフィールドに召喚条件を無視して特殊召喚する事ができる‼︎」

 

 

カミューラ

LP:900 → 450

 

 

 やがて扉が中央から左右に僅かに開かれ、その巨大な扉の隙間から、闇を彷彿とさせる黒と紫の混じった不気味な色の風が吹き荒れ始めた。

 そして完全に開門したその扉の向こう側は、黄ばんだ歯と赤く充血した肉によって囲まれており、まるで人間の口を思わせる程に不気味だった。

 

「【サンダー・ボルト】と相手の墓地限定での【死者蘇生】が、同時に発動されるように内蔵されたカードだって⁉︎」

「いくらライフポイントを半分にする必要があるとはいえ、それに伴った効果が滅茶苦茶じゃない‼︎」

「禁止カードと同等レベルの効果が3つもある【三戦の才】でも、名称ターン1でいずれか1つしか選べない上に発動条件つきとなっているというのに、あのカードはそんな常識さえも覆すのか⁉︎」

 

 禁止カードと制限カードの効果の同時併用を、発動タイミングさえ見極めれば、無に等しい発動条件で使用できる……カードバランスを傾けさせるそのカードに、観戦していた十代達は驚愕の声と表情を露わにしていた。

 だがただ1人……翼だけは、そのカードが出ても驚愕は一瞬だけに済ましていた。

 

「それで俺のモンスターを全滅させられると思っているようだが……忘れたのか? 俺にはローガーディアンがいるという事を‼︎ 俺はローガーディアンの効果発動‼︎ その発動を無効にして破壊する‼︎ 粛声なる粛清‼︎」

「(やっぱり使ってきた‼︎)」

 

 不気味な扉の光に対し、後光でもあるかのような輝きを全身から放つローガーディアン。すると風は一気に光に飲み込まれていき、やがて石造りの扉をも熱で溶かしていき、灰として消滅させていった。

 

「何を考えているのかは知らないが、これで逆転の芽は1つ潰させてもらったぜ、カミューラ‼︎」

 

 切り札を1つ消費・突破させた事で、翼は一時の勝利宣言をしながらカミューラを睨みつける。

 が、内心では。

 

「(儀式モンスターは墓地の【祝祷の聖歌】を除外する事で破壊を1度だけ防げるが、ローはそうじゃない。もし彼女がフィールドから離れてしまったら、【粛声なる結界】の効果が機能しなくなる……あのカードの発動を止めておいてよかったぜ。まぁ原作と違って、ライフを半分支払う必要ができたって点には驚いたけど。ってかリバースカードがそれかよ)」

 

 【幻魔の扉】の発動を許してしまわないかどうか、それを危惧していたのだ。特に【粛声の祈り手ロー】を失う事は、翼の今の強固な盤面を崩壊させるのと同義である。

 そのためなのか、彼は【粛声の祈り手ロー】を失う訳にはいかないという精神で、他のモンスターが破壊されないとしても、【幻魔の扉】を防ぎたかったようだ。

 

「───かかったわね‼︎」

 

 だが、それは逆にカミューラにとっては好都合だった。【粛声の祈り手ロー】がフィールドから離れる事が弱点だと知ったからではない。別の理由で(・・・・・)幻魔の扉(・・・・)が無効になるところを狙ったのだ(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「かかった、だと……⁉︎ まさか、奥の手を切らしてまで使いたかったカードがあったのか⁉︎」

「えぇ。それも、本来なら創られる事はなかった(・・・・・・・・・・・・・・)、さらなる奥の手……といったところよ‼︎」

 

 まるで勝利を確信したかのように不気味に笑いながら、カミューラが1枚のカードをデュエルディスクに叩きつけた途端───

 

「このカードを使うのはホント不本意だけど、貴方をここで確実に潰すため、今こそ使う時‼︎

 

 

 

 発動せよ、【幻魔が創りし異次元の結界】‼︎」

 

 

 

 どの次元──どの世界にも存在しない、禁断のカードが発動され……

 

 このダンスホールは今、赤や紫の混じった黒い闇の瘴気で創られたドーム状の空間によって包まれ、黒紫色の魔法陣が全体に広がり展開された。

 

 

 

 

 

 

【幻魔が創りし異次元の結界】、だって……⁉︎」

 

 【ヴァンパイア】に関するオリカが出てくると予想していたんだが、まさか【幻魔の扉】に関連したカードが出てくるとは予想できないじゃないか。

 何故か【幻魔の扉】に、発動条件としてライフポイントを半分支払う必要があったり、『デュエル中に使用した』ではなく『相手の墓地にあるモンスター』になったり……といったエラッタを受けた影響で、関連カードができたのか? 分からん……

 待てよ? セブンスターズのトップが幻魔の力を使って、【幻魔の扉】と繋がるようなカードを作ったのか? 鍵はこちらにあるというのに、どうやってその力を使ったんだ? 一体どうやってそのカードを……

 いや、それよりも注目すべきはあのカードの効果だ。一体どんな効果を持っているとでも……

 

「このカードは、私のライフポイントが相手よりも半分以上少なく、攻撃力及びレベルの高いモンスターが相手フィールドに存在し、私の墓地・除外状態にレベル7以上を含めた【ヴァンパイア】モンスターが5種類以上存在している場合、デュエル中に1度、手札・デッキ・墓地・除外状態の表側表示の【幻魔の扉】を裏側表示で除外し、ライフポイントを半分支払う事で発動できる‼︎ そしてこの効果の発動後、私はこのデュエル中に【幻魔の扉】の効果を発動できなくなる」

 

 

カミューラ

LP:450 → 225

 

 

 あまりにも発動条件が多すぎる上に複雑だな……しかもそのカードもライフポイントを半分支払う必要があるって、そこも【幻魔の扉】を連想させているのか? ってか【ヴァンパイア】モンスターも必要って、一体どういう事だよ……

 しかし……あそこまで発動条件が複雑となると、効果も【幻魔の扉】よりも強い可能性が……

 

「その効果により、相手は自身のフィールドのモンスターを全て墓地に送らなければならず、このデュエル中に、3種類以上の【ヴァンパイア】モンスターが効果を発動した場合、相手はさらに自身のフィールドの魔法(マジック)(トラップ)カードも全て墓地に送らなければならない‼︎ そして、このターンに私が【幻魔の扉】の発動を無効された、または効果を適用できなかった場合、このカードの効果のチェーン中に相手はカードの効果を発動できなくなる‼︎」

「………………ハァッ⁉︎」

 

 俺が自分のモンスターを墓地に送らなきゃいけない⁉︎ しかも条件が満たされれば魔法(マジック)(トラップ)カードも墓地に送らなきゃならず、さらに俺はチェーンもできないだって⁉︎ な、なんて滅茶苦茶な効果なんだ……‼︎

 そんな中、瘴気によって形成された結界の光の壁から、不気味な形状となる様々な動物の歯茎が複数見えてきて、そこから生えている鋭い牙を煌めかせながら、ゲラゲラと畏怖のある低い笑い声を上げていく。

 そしてそれらは、黒い風を蛇の身体にしているかのように伸びて飛び出し、旋回しながら俺のモンスター達を包み込み始めた。

 

『『ヴォオッ⁉︎ し、しまった───』』

『そ、そんな……ッ⁉︎ こんな事って───』

『ま、まずい……‼︎ ほどき切れ───』

『い、いかんのぉ……‼︎ このままでは───』

「ローガーディアン‼︎ ロー‼︎ サフィラ‼︎ サウラウィズ‼︎」

 

 各々が全身を瘴気の身体で覆い尽くされたかと思えば、その瘴気は霧散し……俺のモンスター達の姿は1人たりとも見えなくなってしまった。そして彼等を囲っていた結界までも……

 そして俺が伏せていたセットカードの、【粛声なる威光】も【粛声のローガーディアン】も、ましてやカウンター(トラップ)の【神の宣告】も、その異質なナニカに取り込まれ消滅させられてしまった。

 条件さえ満たせばカウンター(トラップ)の発動さえも封じるなんて、なんて恐ろしいカードなんだ……‼︎

 

「この効果は『破壊する』とかではなく『相手に強要させる』効果のため、身代わりなどの効果の適用もできない‼︎ これで厄介な布陣は更地と化したわね‼︎」

「ッ……‼︎」

 

 そもそもこれは破壊効果ではないため、【祝祷の聖歌】の効果も適用できない。これは本当にしてやられたよチクショーが……‼︎

 

「その後、相手の墓地・除外状態の中からモンスターを1体選び、正しい召喚条件による特殊召喚扱いまたはそのモンスターの効果による特殊召喚扱いで私のフィールドに特殊召喚する事ができる‼︎ 儀式召喚なら儀式召喚、融合モンスターなら融合召喚扱いになるってわけよ‼︎」

「まるで自分が正しい手順で特殊召喚したかのように思わせる蘇生・帰還って事か……‼︎」

 

 つまり……墓地から出てこようと除外状態から出てこようと、シンクロモンスターはシンクロ召喚扱い、リンクモンスターはリンク召喚扱いで出て来れて、そうなっている場合の効果も発動・適用できるというわけだ。あまりにもインチキすぎる───

 

「さらに‼︎ 効果を発動した5種類以上の【ヴァンパイア】モンスターが墓地・除外状態に存在している場合、そのカードと同じカード名が記されたモンスター1体も同じ条件で特殊召喚でき、【ヴァンパイア】モンスターの中にレベル7以上のモンスターが含まれていれば、相手の墓地・除外状態の中からそのカード名が記された魔法(マジック)(トラップ)カードのいずれか1枚、私の魔法(マジック)(トラップ)ゾーンにセットするか表側表示で置く事ができるわ‼︎ セットしたカードはそのターンに発動可能よ‼︎」

「ハァッ⁉︎ さすがに色々と効果を盛り込みすぎだろ‼︎」

 

 蘇生したモンスターとの繋がりのあるモンスターを追加で蘇生したり、それをサポートする魔法(マジック)(トラップ)までをも自分のカードとして奪ったりって……明らかにやりたい放題じゃねェか⁉︎

 そりゃあ発動条件が厳しそうではあるわけだ……しかも【ヴァンパイア】デッキ限定って感じも強いし、少しはゲームバランスを考えているというのか……?

 

「なんだよその効果⁉︎ あまりにも無茶苦茶じゃねェか‼︎」

「チェーンさせず全てのカードを問答無用に除去に加えて、除去した相手のモンスターやそれらのサポートカードまでをも奪う……いくらなんでも出鱈目すぎだ‼︎」

「発動条件があまりにも厳しいというのが不幸中の幸いだが、だからといってこれは……」

 

 当然、外野もこのインチキすぎるが発動条件が厳しいのが……ってな感じのカードに何も思わないわけもなく、次々と指摘を入れている。それほどまでに危険なオリカが生まれてしまったって事か……

 

「デメリットは発動条件だけじゃないわよ。私のライフポイントを半分糧にしているんですもの。カードテキストにないだけで【幻魔の扉】と同様、発動するには私の魂をも生贄にしないといけない。このデュエルに負けたら、私の魂は幻魔に捧げる供物となってしまうのよ」

「それの何処がデメリットなんだよ……‼︎ 【幻魔の扉】の場合でもそうだけど、慎重に発動タイミングを狙って使ったターンに勝てば、そんなのどうって事ないだろうが……‼︎」

 

 この世界は初期ライフが4000しかないんだぞ⁉︎ カードを使うタイミング次第でライフを削り切る事だってできるんだぞ⁉︎ 【幻魔の扉】だけでも尚更だ‼︎

 つまり、使うタイミングさえ見極めれば、そのターン中に勝つ事だって可能。デメリットなんてないようなものだ。今のこの状況もそう言える場面になっている。

 

「ただ……そうね。せっかくの闇のカードなのだから、闇のデュエルらしく使うとしましょう」

 

 顔つきを元に戻したカミューラがそう呟けば、彼女の背後から光が発生し、その光はカミューラの姿そのものへと変貌を遂げた。この後あの分身らしき奴が行動を起こし、俺の仲間達の誰かを身代わりに使うつもりだろうが……そうはいかん。

 咄嗟に俺は、隣に置いていたバッグの中から、もう1つのデュエルディスクを取り出した。そして電源をオンにすれば、カードテーブルが展開され……

 そのデュエルディスクでデュエルするわけでもないのに、フランメとなったティルル、カレイドハートとなったレイノハート、レギュラス、闘気炎斬龍、アプカローネ、そして迷宮城の白銀姫(レディ・オブ・ラビュリンス)の6体が出現した。

 

「フランメ‼︎ カレイドハート‼︎ レギュラス‼︎ 闘気炎斬龍‼︎ アプカローネ‼︎ 迷宮城の白銀姫(レディ・オブ・ラビュリンス)‼︎ 十代達を守れ‼︎」

『はい、おまかせください‼︎』

『精霊の使い方がいつもより荒いな』

『緊急事態なんですよレイノハート様。荒さは耐えてください』

『少年の友人達には指一本触れさせん‼︎』

『──────‼︎』

『………………』(周囲を見渡している)

『マスター様のご命令とあらば何とやら、ですわ‼︎』

 

「うおっ⁉︎ こ、これって、翼のカードの精霊達か⁉︎」

「な、何をしているんだこいつらは⁉︎ 奴の姿が見えないじゃないか‼︎」

「これって……私達を何かから守ろうとしているというの?」

「な、なんかこんなにも至近距離で見ると圧巻だな……」

「というかボク達まで守る対象に入ってる? 援護しようにもできないような……」

 

 俺に呼び出された精霊達は今、ほぼ全員快く俺の指示に承諾し、十代達を守るように周りを囲って陣形を取っていっていた。教師組の精霊達も何か仕掛けようとしていたのを、偶然にも妨げてしまったのは悪かったが……

 俺が今使っているデュエルディスク、実は海馬コーポレーションでのマスタールール2020でのデュエルに使われたヤツで、ずっとそのルールでできる機能をつけたまんまなんだ。今使っているのは新しくマッドラヴに作ってもらったもの。

 俺が大好きなルールでデュエルができるこの機能を、あっさりと外すのが勿体無くて、軽く駄々こねたら……って感じで、最終的にそのルールが世界中に適用されるまでは、このようにリアルファイト系の場面限定のデュエルディスクと化している。

 だがこのデュエルディスク、セットされたカードの精霊達を実体化する事ができる機能が搭載されている。だから結果的に、ダークネス戦で翔と隼人を人質に取られた十代を手助けできた。一時的なシフトチェンジも良き事だ。

 さて、今回も十代達を守れるように出来ればいいのだけど……

 

「……なるほど。デッキに入れていないモンスターを盾にし、仲間達が私の身代わりになる事を防ごうって算段ね……アンタ、頭がキレてるわね」

「盾って言うな‼︎ こいつらも俺の信頼できる仲間なんだ、蔑ろにするような発言はやめろ‼︎」

 

 普通の──カードの精霊が見えないデュエリストからしたら、モンスターを駒にでもしているかのような認識をしているかもだけど、俺は違う。見えるようになったからこそ、カードそのものと向き合う事ができたんだ。だから雑な扱いでの認識は絶対しないからな‼︎

 

「信頼できる仲間、ねェ……まぁいいわ。なら、()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()……? 何を言って───」

 

 疑問に感じた事を実際に呟こうとした途端、俺の脳裏に電流が流れ込んできたかのように、()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ───この扉の生贄となる魂は、貴方の大切なもの達から選ばせてもらうわ‼︎

 ───そして、生贄になってもらう魂はもう決めてある‼︎

 

 

 ……そうだ、思い出した。クロノス先生がカミューラとデュエルしたあの日、俺はティルルが【幻魔の扉】の生贄の餌食となる夢を見たんだった。

 あの時の悪夢と違って、【幻魔の扉】の発動は無効にした。そして今はそれの完全上位互換のカードが発動している状態だ。けど……いくら条件が違うからと言って、何もしなくてもいいわけがない……‼︎

 

「……‼︎ ティルル‼︎ 背後に気をつけ───」

「はい引っ掛かった」

 

 カミューラが不敵な笑みでも浮かべたかのように呟いた声。それが俺の耳に聞こえたかと思えば……

 

 

 

「───ガッ⁉︎」

 

 俺の頸の部分を、鋭利な何かに強く掴まれたかのような感覚が、全身目掛けて迸った。

 

 

 

「グゥウウウウウウッ……‼︎ な、なんだよこれ……‼︎」

 

 電流でも流れ込んだかのような痛みを受けながらも、俺は背後に視線を送る。そこにはカミューラの分身体が、鋭い瞳と少々歪に口角が吊り上がった口の部分を白く光らせながら、全身真っ黒な光となって、俺の頸を握りしめ首筋に爪を立てていた。

 

『ご、ご主人様⁉︎』『『『マスター(様)⁉︎』』』『王辻少年⁉︎』『『………………⁉︎』』

 

《つ、翼‼︎》

「なっ……⁉︎ そうか、その手があったのか……‼︎」

「このために匂わせをしてたのか……‼︎」

「な、なんて卑怯な……‼︎」

 

 無論、俺が手をかけられた事にみんなが動揺も叫声もしないわけがなかった。教師組の精霊達も何故俺が手をかけられたのかを察したのか、何もできなかった事を悔やみながらもカミューラを睨みつけていた。

 

『こいつ、翼を放せ──うおあっ⁉︎』

『ぬぅうっ⁉︎ ペンダントの中からでは力を存分に発揮できぬ……‼︎』

『ご主人様に触れないでくださ──きゃっ⁉︎』

『マスター様に何をするおつもりあばっ⁉︎』

 

 ラー様とユベル、こちらへと駆け寄ってきたフランメと迷宮城の白銀姫(レディ・オブ・ラビュリンス)が、カミューラの分身体を俺から引き離そうとした。

 だが近づこうとした瞬間、その分身体から発生した菱形のタイルを次々と繋げていた薄暗いバリアが、全員を弾き飛ばしてしまった。【幻魔の扉】の上位互換の闇のカードはそんな事までできるのか……‼︎

 他の精霊達も俺を助けようとしているが、周囲を徘徊する複数の異質なナニカに進路を妨げられ、足を止められる始末だった。生贄にする魂を連れていく邪魔をするなって事かよ……‼︎

 

「お前……翼に何をするつもりだ‼︎」

「デュエルに勝てないと思って殺すつもりか‼︎」

「誇り高さの欠片もないわね……‼︎」

「デュエルモンスターズが出来る前から産まれたからって、なんでもしていいと思っているのかクソが……‼︎」

「翼さんを一体どうするおつもりですの……‼︎」

 

 三沢・神楽坂・雪乃・半次・舞香が怒りの表情を露わにしながら、次々と敵意剥き出しなセリフをカミューラに向けて吐いてきた。現状的に動けない事への虚しさも混ざっている感じもするが……

 そんな彼等の罵声の言葉をもなんとも思っていないのか、カミューラは余裕のある笑みを浮かべていた。

 

「ふふふっ……さっきも言ったけど、このカードのコストは、私のライフポイントを半分支払う事に見合い、私の魂までをも必要とする。けど、せっかくですもの。私の身代わりをこの子にお願いしようと思ってね。……それにしてもアンタって、変わった存在を結構連れてるわね……どれだけいるのよ」

「う、うるせェ……‼︎ つーか何がお願いだこの野郎、俺の意見無しに身代わりにしようとしやがって……‼︎ そもそもお願いされても願い下げだよクソが……‼︎」

「闇のカードに拒否権なんてものは通用しないわよ?」

 

 正論ぶっ込んでくんな‼︎ 確かに闇のデュエルに常識なんて全く効かないけどさ‼︎ クソッ、さらにムカついてきた……‼︎ こんな奴に負けるとか、かなり最悪だ……‼︎

 

「とにかく、これで【幻魔が創りし異次元の結界】によって特殊召喚されたモンスターが全て破壊されれば、アンタは死ぬ事になる……死にたくなければ、このまま負けるかサレンダー、もしくは破壊以外の方法でモンスター達の対処すべきよ。まぁどのみち、後者はこれから使うカード達によってできないでしょうけどね‼︎」

「ッ、アァッ……‼︎」

 

 刹那。俺の全身から力が抜けてきているような感覚が襲いかかってきた。十中八九カミューラの分身体の持つ能力によるものだろう。思わず膝をつきそうになるが、頸から首を強く掴まれているためか、腕を脱力させるだけしかできずにいた。

 

「この坊やの魂を使い、まずは【粛声の祈り手ロー】をアンタの墓地から私のフィールドに守備表示で特殊召喚‼︎」

『………………』

 

 

【粛声の祈り手ロー】

ATk:50

DEF:2050

 

 

 黒い光が霧散した輝きが発生したかと思えば、カミューラのフィールドにて、ローの姿をした黒混じりの濃い紫色のナニカがそこに立っていた。仕草はローと同じようになってはいるが、色合いから完全にロー本人ではないと即決できたのが不幸中の幸いか。

 そして俺のカードの精霊を基にしたそのモンスターは、まるで人形でもあるかのような無表情のまま、虚ろな赤い瞳を持ってしてこちらを見つめていた。模造された者の欠点、というべきか。

 

「そしてこのカード名が記されたモンスター──【粛声の守護者ローガーディアン】をアンタの墓地から私のフィールドに儀式召喚扱いで特殊召喚‼︎」

 

 

【粛声なる守護者ローガーディアン】

ATK:2050

DEF:2500

 

 

 さらに今度は黒と紫の混じった後光が差し込み、そこからローガーディアンの姿をした、赤黒い鎧と濃い紫色の翼を持つナニカが降り立ってきた。

 その姿は、正しく堕天使と呼んでもいいのだろうか。否、堕天使というには、何処か守護者の名残りである神々しさをも兼ね備えており、堕天とは違った何かを彷彿とさせていた。

 

「そして同じく【粛声の祈り手ロー】が記された永続魔法【粛声なる結界】を、アンタの墓地から私の魔法(マジック)(トラップ)ゾーンに表側表示で置かせてもらうわ‼︎」

 

 そして現れたモンスター達の周囲に、赤・黒・銀色の魔法陣が次々と展開され、その色に合わせた光が妖しく反射していった。

 

「これにより、どちらかがフィールドから離れない限り、アンタのモンスターは儀式モンスターしか攻撃対象に選択できなくなり、私のフィールドの光属性モンスターをアンタは効果の対象にできなくなる‼︎ そして私のフィールドに【粛声の祈り手ロー】がいる事で、【粛声なる守護者ローガーディアン】の攻撃力は上昇する‼︎」

 

 

【粛声なる守護者ローガーディアン】

ATK:2050 → 4100

 

 

 攻撃力4100……先程までノーダメージな俺のライフを一気に削る事ができる数値だ。その上、なんでも発動無効ができる条件を満たしている。唯一のこのターンでの敗北を凌げるチャンスも、今のこいつの前では無力。

 これは……詰んだのか、確実に。……勝ちたかったのに。

 

 OCGでは、大会によっては3回勝負なのがフォーマット。マスターデュエルでは、ランクマッチで負けてもランクによっては降格になるかどうかってだけで、ランダムにマッチングした他のデュエリストと闘えるからそこまで問題じゃない。

 だが、現実での遊戯王(デュエル)は違う。3回勝負なんてルールはないし、何より今は闇のデュエルの下で行われている。負けたら死なずとも長い間眠りにつく可能性がある。

 そして何より、その対戦相手はあのカミューラだ。もしもこのデュエルで負けたら、彼女に何をされるか……原作知識込みで予想せずとも、クロノス先生とのデュエルを見たから、大抵想像がつく。

 

「……ここからどうにかして足掻こうにも、何もしてもらえず負けるのか」

 

 だけど……負けが確定しているからといって、何もかもができないってわけじゃない。

 俺はすぐさま首に掛けていた2つのペンダント──ラー様とユベルがそれぞれケースに入れられているそれらと、俺が持っている三幻魔の鍵、リアルファイト用のデュエルディスク、そして全てのデッキケースを自身の身から外し……

 

「十代‼︎ みんな‼︎ これら全部、受け取ってくれ‼︎」

 

 後ろにいる十代達に、投げ渡した。効果処理が終わったのが幸いなのか、異質なナニカが全ていなくなった今がそうするチャンスだ。

 

「えっ……うおっと⁉︎」

 

 十代達は戸惑いながらも、みんな反射的に全部キャッチしてくれた。よかった、ダンスホールの下に落とされたりとかされたら、色々と大変だからな。

 

「つ、翼……⁉︎ 一体何を……⁉︎」

『な、何をなさっているのですかご主人様⁉︎』

『汝⁉︎』

 

「……悪い。勝ちたくても、このターンを凌げれねェ。唯一の手段もローガーディアンのせいで無効にされるし、冗談無しに詰んだわ。絶対に勝つって約束してたのに、それを破るような形になってしまって、ホントごめんな」

 

 軽々しい感じながらも、それを交えての正確に謝罪をする俺。けど、この後俺がどうするのかを察したのか、それを受け入れようとしない十代と万丈目の声が聞こえてきた。

 

「な、何を言って……」

「ふっ……ふざけるな‼︎ 貴様はあんな奴に負ける程の雑魚ではないだろ‼︎ なのに何を諦めて……‼︎」

 

「冗談無しに詰んだって言ってるだろ。ちゃんと乗り切れると思ってたら、こんな事なんか言わない。でも、それを言わざるを得なくなった。分かるか? 命どうこう以前に、負けが確定しちゃったってわけだよ」

 

「ッ……‼︎」

 

 少なくとも正論を言えたからなのか、万丈目は苦い表情で言い淀んだ。悪いな万丈目。お前も俺が自分以外に負ける事がない、なんて思ってくれていたのに。

 

「けど、俺は信じているぜ。お前達の誰かがカミューラを倒してくれて、クロノス先生と一緒に人形にされるという屈辱的な呪縛から解放させてくれる事を……な」

 

「翼……‼︎」

 

 お前達だって、俺が並べられる程に強いんだ。だからカミューラ相手にだって勝てるはずだ。……こんな事言っちゃアレだけど、アニメ補正もあるだろうし。

 

「けどその代わり、お願いがあるんだ。そのデュエルディスク、俺のカードの精霊達を実体化する事ができる機能があるからさ……それで俺が解放されるまで、精霊達のメンタルケアをしてやってくれ。俺が人形にされたら、心に傷を負う奴はたくさんいるだろうしさ」

 

「………………翼」

 

「それと、今この場に出ていない精霊達にもこう言っておいてくれ。『一時的とはいえ、置いていく事になってごめんな。復活したら二度とこんな思いさせないようにする』……ってさ」

 

「……翼、君……」

 

「後、ペンダントのケースは開けないでくれるか? 特に今開けたら余計色々な感情が混ざって、頭の中がごっちゃになるだろうからさ」

 

「やめろ……‼︎ もう、何も言うな……‼︎」

 

「……だよな、ごめん」

 

 三沢や翔が何とも言えないと感じさせるかのような表情で見つめてきて、半次が泣くのを堪えている感じに怒り混じりの歯軋りした表情を見せてきた。

 これが、曇らせってヤツか……分かっている。何かを守ったりするために、自分の身を犠牲にしようとしている事は、逆に誰かの心を傷つけるんだって事ぐらいは。

 

先生(おまえ)達も、早まった事はしないでほしい。教師が焦ったりしたら、誰が生徒達を守ると?」

王辻君(マスター)……」

「……分かっては、いるさ……」

「ッウゥッ……」

 

 教師組も、自分達が先走ったりしたらいけない事を頭では理解しているものの、教師として今すべき事が出来ずにいて悔やんでいた。人形にされる奴が俺じゃなくても、自分の無力さを悔やむのだろうな……

 

「ティルル達も、ホントにごめんな。必ず助けてくれるって信じているから」

『そ、そんな……ご主人様ッ……‼︎』

『やめろ、私達はそんな言葉なんかを聞くために闘ってたんじゃないッ……‼︎』

『ッ……今は抑えましょう、カレイドハート様ッ……』

『すまない少年……あの時すぐさま気づいて、君の元へ駆けつけてやれなくてッ……‼︎』

『『………………ッ』』

『そ、そんなッ……嫌、ですわ、マスター様……‼︎』

 

 ……ハハッ。俺って精霊たらしなのか? 一体どんな事をしていたら、こんな曇らせまくりそうな反応をされるって言うんだよ。自覚できてない・身に覚えがない自分が恨めしいな、こりゃあ。

 

「(ラー様も、本当に……)」

『汝よ……何も言うでない』

 

 イラストの全く変わらないカード越しでも、声色で伝わってきた。ラー様も俺が罰ゲームを受け、しばらく再起不能になるという、命の危機と同じ事を俺が受ける事実を認めたくない……そんな想いが。

 

『やれやれ……それなりに人たらししていたって自覚があるのなら、もうちょっと自分の行動を深く振り返ってもらいたいものだね』

「(返す言葉も……って、ユベル⁉︎ おまっなんでここに⁉︎)」

 

 お前のカードが入っているペンダントも投げ渡したはずだぞ⁉︎ なのになんでそこにいるんだよ⁉︎ お前がここにいたら、お前も俺の人形化に巻き込まれて……

 

『力を封印されてる状態での避難は大変だったよ。というか、記憶喪失状態のボクが十代達のところに行ったら、もしボクの存在がバレた時に、色々とパニックになった十代への適切な対応を取れる自信がないからね。面倒ごとは今したくないよ。それに……』

「(それに?)」

『人形にされるって事は、実質孤独になるのと同じじゃないか。ボクも一緒にいてあげるよ、お守りとしてね』

「(……ユベル……)」

 

 十代の心を折るフラグのフライング回避を前提とし、俺がなるべく精神的に追い込まれないようにって考えで、どうにかしてラー様と一緒に投げ飛ばされるのを回避したのか。

 ユベル……お前時々素っ気ない態度を取っていたのに、なんやかんや俺の事を考えてはいたんだな。記憶喪失したからかもとはいえ、原作よりも丸くなったな。

 

「(俺が人形の姿から元に戻っても、いつも通りのお前でいられる事を祈っとけ。じゃないと俺達や十代が困るからな)」

『無論そのつもりだよ』

 

 とはいっても、特別な力を持つカードの精霊が、闇のデュエルでの罰ゲームで元に戻らない……なんて事にはならないと思うけどな。

 

「突然黙り込んだんだけど、伝えたい事は充分伝えたかしら?」

「……あぁ。さぁ、来いよカミューラ。最後の悪足掻きぐらいさせてもらうぜ」

 

『だ、駄目ですご主人様ッ‼︎』

 

 見るに耐えられなくなったティルルが叫んできたのが聞こえたが、どのみち勝敗の結果は変わらないんだ。マジでごめんな。

 

「これでトドメよ‼︎ いきなさい、【粛声なる守護者ローガーディアン】‼︎」

「墓地の【超電磁タートル】の効果発動‼︎ 墓地のこのカードを除外する事で、バトルフェイズを終了させる‼︎このカードは【サフィラ】モンスターの効果で墓地に送ったカードで、イカサマとかは使っていないため、正式に発動できる‼︎」

 

 胸筋部にSとNの文字を大きく見せ、口元に磁力の力を身に纏う機械仕掛けの亀が、磁力を身体全体に迸らせながら電磁波の壁を展開させる。

 本来なら、これで俺の敗北は免れるところだが……

 

「それが最後の悪足掻きってヤツね。けど無駄よ‼︎ 【粛声なる守護者ローガーディアン】の効果発動‼︎ フィールドに【粛声の祈り手ロー】が存在するため、その発動を無効にして破壊する‼︎」

 

 やはり防がれるか。これでもう俺は本当に対抗手段を失ったわけだ。

 赤黒いローガーディアンに、紅魔の月を彷彿とさせる後光が差し込まれる。その光を反映させるかの如く、ローガーディアンも続けて全身から紅い光を放つ。

 その光は電磁波の壁を飲み込んでいき、熱の力込みで磁力さえをも飲み込み消滅させてしまった。

 ……これで、今度こそ終わったか。

 

「やれ、【粛声なる守護者ローガーディアン】‼︎ 裏切りの解光‼︎」

 

 赤黒い×印の光が迫ってくる中、俺はそっと瞳を閉じ、みんなの勝利を心から望みながら受け入れようとする。

 みんな、後は頼んだぜ───

 

 

LP:4000 → 0

 

 

 

 

 

 翼の立っていた位置に降下した、巨大な×印の赤黒い光。それが地に触れた途端、彼を覆い尽くす程の爆煙が発生した。そしてその爆煙が治った時には……

 先程までそこに立っていた翼の姿は見えなくなっており、代わりにカミューラの手元に、翼に似た姿をした人形が握られていた。

 

「そ、そんな……」

「ほ、本当に負けたのか? 翼は……」

 

 目の前で起きている状況を受け入れられずにいたのか、十代達は現状が変わるがないと脳内では理解しながらも、愕然としたり言葉を失ったりとしていた。

 翼はこれまで『勝てなかった』場面が1回だけしかなく、『敗北した』場面が1度もなかったのだ。そんな彼が、相手の引き運の良さと【幻魔が創りし異次元の結界】の異常な効果によるものとはいえ、確定的に敗北してしまったのだ。『信じられない』と思い込むのも無理もない。

 

「ウフフッ……一時はどうなるかと思ったけど、やっと好みの顔の人形が手に入ったわね。よく見れば思ったよりも良い顔じゃないの」

 

 そんな彼の魂が取り込まれた人形を眺めながら、カミューラは不敵な笑みを浮かべていた。【幻魔が創りし異次元の結界】を引き当てるまでに焦燥していた時とは打って変わり、まるでそういった時そのものがなかったかのように。

 自分の気に入った顔つきの男性を人形にする事ができたのか、中々にご機嫌な様子で彼を見つめるカミューラ。まるで目当ての餌を探している内に、目当て以上の獲物を偶然発見した時の高揚感でも味わったかのようだ。

 だが、ふと十代達──主に翼のカードの精霊達の負に満ちた表情を見て、何を思ったのか思考に入ったかのような表情を見せ、再び口角を上げてきた。そして……

 

「……とはいったけど、貴方達を見て気が変わったわ。趣向を変えましょうか」

 

 翼の人形を、彼等に向けてゴミを捨てるように軽く投げつけてきた。

 

『ご、ご主人様‼︎』

 

 それにいち早く気づいたティルルがすぐさま走り出し、地面に落下しそうになった翼の人形を、当たりそうな寸前にキャッチした。そして彼の身に何も問題がない事に一瞬だけ安堵するが、心苦しくなったのか悲痛な顔つきとなった。

 

「お前……一体何のつもりだ‼︎」

「貴方達、そこの坊やと結構親しみがあるらしいじゃない? ここにいないだけで他にも結構人脈があるのかって思う程に。そんな貴方達がその人形を見つめながら、どんな面白い表情を見せてくれるのか……それに興味を持ったから、特別にこちらが大事に持ち帰るなんて事はしないでおく事にした……そういう事よ」

 

 無言で泣き崩れ始めたティルルの持っている人形の元に、十代達の足が重くゆっくりと近づいていく。暗い環境ながらも影が伸びているのが分かるかのように。

 誰も口を開かない。だが、震える肩、握りしめた拳、歯を食いしばる音だけが、静寂を切り裂いた。

 人形を操る糸は見えない。それでも、彼らの視線が、まるで糸のように絡みついていく。涙を堪える者、怒りに顔を歪める者、目を逸らす者──その全てが、人形のガラス玉のような瞳に、鮮やかに映り込んでいた。

 

「彼を元に戻しておきたかったら、次の日からまた誰かが私を倒しに来てごらんなさい。特別に何度でも相手してあげるわ。全ての三幻魔の鍵をこちらが手に入れるまでは……ね。では、今日はここまで。ごきげんよう」

 

 そんな彼等を見下ろし嘲笑いながら、カミューラは上の通路を登っていき、そのままこの場をゆっくりと歩き去っていった。

 このダンスホールの出入り口から出る寸前、翼の人形と未だ声を出せずに泣きながら彼を抱きしめているティルルを見下ろしながら。

 

 

 

 

 

 

 かなりの信頼を受けていた親友を、目の前で人形にされてしまった十代達。あまりにも衝撃的な瞬間を目撃し、すぐにカミューラに挑める程の余裕など、彼等には持ち合わせる事はできなかった。

 よって、一度全員の心身の安定とコンディションを整える必要があると判断し、全員が城の外に出る事となった。

 そして、カーペットの上を渡りきったところで、ティルルはその場で再び泣き崩れてしまった。最愛の人が目の前で変わり果てた姿にされてしまった事に、そう簡単に吹っ切れるわけがない。やはり彼女にとっては耐え難いものだ。

 敢えて言葉をかけず静かに慰める精霊達に囲まれている、そんな彼女を、カイザーは思い遣っている表情で見つめながら、彼女を実体化させている翔のデュエルディスクを持っていた翔に尻目で視線を配る。

 

「翔……翼のデュエルディスクは、お前が持っているのだろう? それから彼女達のカードを取り外したりはしないのか? これ以上……彼女ティルルと呼ばれたあの子を、あぁなってしまった彼を持たせたままにしてしまうのは、彼女を苦しませ続け、その心を蝕ませる事になるはずだ」

 

 その問いかけに、翔は即座に首を横に振った。まるでカイザーの本心と同じである事を主張し、頑なに人形となった翼を離そうとしないティルルにも寄り添っているかのように。

 

「……そうしたいけど、できないよ。お兄さんも、彼女を見てそう思っているよね……?」

「……あぁ、そうだな。無知なフリして言う俺としても、やはり少しくらいは辛いと感じてしまう。あぁなる程にまで、彼女は翼の事を信頼していたのだな」

「……翼君……」

 

 2人の会話を耳した全員が改めて、翼の魂を奪われた事による喪失感に苛まれた表情を浮かべた。

 三沢と神楽坂が友を失った事による己の無力さを悔い、明日香と隼人が痛まれる想いでティルルを遠くから見つめ、万丈目と半次がやるせない怒りを抱き、雪乃と舞香が張り付けそうな程の悲痛な想いで項垂れる。

 先程まで翼が目の前で人形にされてしまった事への焦燥感に駆られ、戸惑っていた大徳寺も、言葉を出せない彼等をただ見つめるしかなかった。教師である自分が、彼等のために何をすべきなのか……それを思いつく事ができない事を悔やみながら。

 亜鈴も、間藤も、晴田も、そんな彼等に何も言葉をかけられずに目を逸らしてしまっていた。精霊としての自分達のマスターを……翼を助けるどころか、何かしてあげる事もできなかった自責感に押し潰され、かける言葉も失ってしまったようだ。

 翼は死んだわけではない。だが大切な仲間を失った事に変わりない。その現実が重い空気を作ってしまっている中……

 

「………………やっぱり、こんなの納得できねェよ」

「アニキ……?」

 

 そんな悲痛な静寂を、十代が手を強く握りしめながら怒り叫ぶ事で、打ち破った。

 

「デュエルってのは、楽しいもののはずだろ。なのに、なんでティルルが……翼を誰よりも支えてきたあいつが、翼をあんな姿にされて泣き崩れなきゃならないんだ‼︎ なんで翼を支えてきた精霊のみんなが、あんな苦しそうな顔をしなきゃならないんだ‼︎ なんで俺達が、翼にあんな悲しい事を言わせなきゃならなかったんだ‼︎ なんで……なんでクロノス先生と翼が、あんな目に遭わなきゃいけないんだよ‼︎」

 

 本来ならばティルル達も吐くべきはずの怒りを、十代は感情任せに次々と吐いていった。何故彼がここまでするのか……理由は単純。

 彼はデュエルモンスターズが好きだから。好きなコンテンツを通して、翼と誰よりも親しくなったからだ。

 デュエルモンスターズは本来、世界中の人々が繋がり合い、それによる楽しさを共有しあうためのツールと誕生したものだ。故に、この場にいる者達全員も、デュエルモンスターズの楽しさを知ったからこそ、時にすれ違いがあれど、真意を分かち合い繋がりを持つようになったのだ。

 それなのにだ。そのデュエルモンスターズを、セブンスターズは三幻魔を復活させるための『手段』として使っている。そして『手段』として使われた事で、現在クロノスと翼の魂が、それぞれカミューラの手によって人形に封じ込まれてしまったのだ。その現実に、十代は怒らざるを得なかったのだ。

 

()よ……デュエルモンスターズを通して翼を想うその気持ち、誰もが同じである」

 

 そんなぶつけようのない怒りを爆発させている彼の肩を、後ろから1人の男性が叩いてきた。

 

「しかし、かといってその怒りを持ったまま、あのカミューラとやらに敵討ちをすべきかと言えば、否だ。怒りは己を見失い、判断力を鈍らせる。そんな中でデュエルを行えば、大事な場面でヘマを起こしかねんぞ」

「そ、それは……」

 

 前を向いているままのため、声の主が誰なのかは分からない。だが、自分のための事を的確に伝えてくれているのは確かだ。否定できないこの正論に、十代は何も言い返さず握り拳を作っていた手を緩めた。

 

「だから、次のデュエルはこのヲー(・・)に任せよ。汝ら(・・)のため、そして翼のためにも、奴はヲー(・・)が倒す」

 

 迷いがなく冷静に、それ故に秘めた闘志を持ってした、誓いの言葉。その言葉に十代は不思議と抱擁感に包まれ、張り詰めていた何かが解かれた。

 何故自分が、怒りの衝動に駆られながら動こうとしていたのか。そんな事をしては周りが見えなくなり、返り討ちに遭うのがオチだ。何しろ、そんな自分の行動を、翼が望んでいるはずがない。

 十代は徐々に冷静さを取り戻していき、やがて大きく深呼吸をした。そして決意した。今は、次にカミューラと闘う仲間(・・)に、この想いを託そう……と。

 

「……あぁ、分かったよ。翼の仇は、お前が取って───」

 

 任せた、と言っているかのようなセリフを送ろうと、十代が振り向いた途端───

 

「………………ん?」

《えっ?》

 

 とある違和感に気づいたのか、自分に声を掛けてくれたその者の顔を見て、呆けた声を漏らした。そして続け様に、他の者達もその人物がいる方向を見て、疑問に浮かんだ声を呟いた。

 そして……

 

《いや、誰⁉︎》

 

 シリアスな雰囲気、誰とも面識のない1人の金髪の男性によって崩壊された瞬間である。状況としてはシリアスを維持しなければならないのに。

 全く見知らぬ金髪の男性、果たして何者なのか……容姿含め次回、明らかに。

 




しれっと出てきたオリカ紹介その4(遊戯王カードWiki風表記)

《幻魔が創りし異次元の結界 / Barrier of the Otherworldly Dimension Crafted by the Phantasm Demon》†
通常魔法
このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できない。
(1):自分のライフポイントが相手よりも半分以上少なく、
攻撃力及びレベルの高いモンスターが相手フィールドに存在し、
自分の墓地・除外状態にレベル7以上を含めた「ヴァンパイア」モンスターが5種類以上存在している場合、
手札・デッキ・墓地・除外状態の表側表示の「幻魔の扉」を裏側表示で除外し、
ライフポイントを半分支払う事で発動できる。
相手は自身のフィールドのモンスターを全て墓地に送らなければならない。
その後、相手の墓地・除外状態の中からモンスター1体を選び、
正しい召喚条件による特殊召喚扱いまたはそのモンスターの効果による特殊召喚扱いで自分フィールドに特殊召喚する事ができる(儀式モンスターは儀式召喚、融合モンスターは融合召喚などといった特殊召喚扱いとなる)。
このターンに自分が「幻魔の扉」の発動を無効された場合、またはそのカードの効果を適用できなかった場合、
このカードの効果のチェーン中に相手はカードの効果を発動できなくなる。
この効果の発動後、自分はデュエル中に「幻魔の扉」を発動できない。
さらに、自分がデュエル中に効果を発動した「ヴァンパイア」モンスターの種類によって、
自分は以下の効果を適用できる。
3種類以上:相手は自身のフィールドの魔法・罠カードを全て墓地に送らなければならない。
5種類以上:この効果で特殊召喚されたモンスターと同じカード名が記されたモンスター1体を選び、
正しい召喚条件による特殊召喚扱いまたはそのモンスターの効果による特殊召喚扱いで私のフィールドに特殊召喚する事ができる(儀式モンスターは儀式召喚、融合モンスターは融合召喚などといった特殊召喚扱いとなる)。
レベル7以上を含めた5種類以上:相手の墓地・除外状態の中から、
この効果で特殊召喚されたモンスターと同じカード名が記された魔法・罠カードのいずれか1枚を、自分の魔法・罠ゾーンにセットするか表側表示で置く事ができる。



………………自分で作っておいてなんだけど、ぶっ壊れってレベルじゃねェなやっぱ。条件を厳しくしたからってこれは……
 
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