OCG・マスターデュエルデッキ使いの行くGX世界〜ヲーと記憶喪失メンヘラを添えて〜 作:名無しのモンスター
「………………んっ?」
何かに導かれたのか、はたまたその感覚に気づいただけなのかは分からない。けど、気がついた時には、俺は仰向けになっていた体を起こしていた。
ふと辺りを見渡せば、何もないただの真っ黒な空間だった。光も何一つなかった。だけど、周りのものが全て裸眼で見る事ができるような感覚がある……その実感はあった。
普通なら、いつもの日常や風景とは違った光景を見て、俺は戸惑う以外の選択肢はないはずなのだが……不思議とその気にはなれなかった。
「……あ、そっか。俺は、負けてたんだったな」
俺は気づき、思い出したのだ。カミューラとの闇のデュエルに本気で挑み、予想だにしない展開によって敗北し、人形にされてしまったのだという事実を。
条件の重いチートオリカによるものとはいえ、あの時負けてしまったのは、変え難い事実だ。誰が何と言おうと、この状況になってしまえばそれが現実だ。口だけではどうにもならない。
……しかし、この状況をよく考えながら見渡してみれば。
「こんな何もない真っ黒な環境で一人ぼっちとか、寂しくなるな……ってか俺の精神が崩壊してしまわないか不安になる」
周囲はどう見方を変えようが、ただの闇である事に変わりない。果てしなく広がる黒い虚空で、何一つ目印になるものがない。こんなところで一人きりなんて、やっぱり心細く感じてしまいそうだ。ってか、今にも思えてきそう。
ふと、ティルルやラー様、十代や万丈目……仲間たちの顔が思い浮かぶ。みんな今頃何してるんだろう。俺が人形にされて泣き崩れたり、冷静さを欠けてしまったりしてないのだろうか。
俺のカードの精霊達は……みんな俺の事を信頼している感じだから、あの中の内の何体かが絶対暴走しそう。誰かがストッパーとなってくれればいいのだけど。
心配なのは……ティルルとラビュリンス、それとシャドール・ビースト辺りかな? ティルルとラビュリンスは俺への愛情がデカい感じがするし、シャドール・ビーストは俺に結構懐いている感じだったし。
あ、でもティルルは暴走しないかな。どっちかというと曇りそう。あいつが1番『どんな事をすれば翼が傷つき悲しむか』ってのを理解して自制してそうだし。……そっちの方が危なくね?
誰かメンタルケアしてやってくれマジで。俺、誰かを曇らせるつもりなんてないからな? 曇らせからの
と。そんな事を考えてから、もう一度周囲を見渡してみる。景色はやっぱり何もないただの真っ黒な空間のままだ。何かが出てきたりとか、明かりが出たとかもない。
「……どれだけ思考に至ったり、どんなに間を置いたりしても、やっぱり1人である事に変わりないか」
やっぱり、今日でこんな状況から脱する事ができるかもしれないとはいえ、1人でいるのは虚しく感じるな。ホントに心苦しくなって、精神が参っちゃいそうだ。
『辛気臭いね。そこまで寂しそうな顔をするなんて、君らしくない』
「……悪いな、ユベル。心配かけちまって。初めての環境で弱気になってたよ」
………………って、いや待て。待て待て待て。
「なんでお前までいるんだよユベル。しかも実体化してよぉ」
突如として俺の目の前に現れたのは、ペンダントの中に入っていたはずなのに何故か実体化したユベルだった。
何故彼が俺のところにいるのか。俺を孤独にさせないためにと、自ら俺の人形化に巻き込まれる事を選んだからだ。
だが、注視すべき点はそこじゃない。何故ユベルがペンダントから飛び出し、実体化しているのかって点だ。
ラー様のカードも入れたあのペンダントは、俺を転生させた龍の神様が送ってくれた神の特注品だ。ケースにカードを入れるだけで、カードの精霊としての力を抑えたり、それが見える人でも見えないようにすることができるんだ。
あのペンダントがおかげだからこそ、ラー様やユベルの存在が十代にバレずに済み、彼等を連れて外へと歩く事ができたんだ。
なのに今、それが見当たらずユベルが実体化して出てきてしまった。この場に十代達がいないとはいえ、どうしてこんな事に……
「……もしかして、あのペンダント壊れた?」
『そんな訳ないだろ。どうやらこの空間だと、ボクをしまっているペンダントはボクの心臓部の代わりになるみたいだ』
「なんだその現象……」
なんでペンダントが心臓部の代わりになるんだよ。そうはならんやろマジで。
「まぁここは実際、夢の中か精神世界のどちらかだと思うからね。そんな世界で、ボクがペンダントの中に入ったままになる必要はないだろ?」
「……それもそうか」
大体人形になってしまっている中で、どうやって意識を取り戻して十代達と話せばいいんだって話だよな。
ならここが夢の中か精神世界のどちらかであってもおかしくない。後者なら周りが真っ黒で何もないなのも納得がいく。
『翼。多分この時間は今日で終わると思うけど、今はこのボクがいるんだ。寂しくなったりしてきた時は、ボクが話し相手になってあげるよ。そのために一緒に封印されたんだから』
「ユベル……」
お前……自分の事を気にせず、身を挺して封印されてまでして、俺の事を考えてこんな事を……ちょっと感動しちゃった。
自分の身は大事にしてほしいところだけど、それは俺にも言える事──ブーメラン発言だから、言わないでおいておこう。ぶっちゃけ助かってるし。
「ありがとうな、ユベル。おかげでちょっと気持ちが軽くなったよ」
『それは何よりだ』
「ふぅ……ちょっと疲れた気がするから、俺一回寝るよ」
なんかホッと一安心してたら、夢の中か精神世界なのに眠たくなってきたわ。こういう時はここでも寝るに限る。そうに決まってる。
『そうかい? 分かったよ、ゆっくりおやすみ』
……いや、ユベル? それ聞くとデュエルリンクスでお前を使用しているプレイヤーに負けた時の記憶が……
まぁいいや、とっとと寝よう。ってなわけでおやすみー。
「う、うーん……なんかデカい音が聴こえてくるんだが……何これ? 目覚まし?」
「ユベル、お前が目覚まし時計をセットしたのか? どんな趣味した目覚ましだよ?」
『ボク目覚まし時計なんて持ってないよ? 仮に持ってたとしても、女性のASMRみたいな設定にするよ?』
「お前……記憶を失う前はヤンデレ乙女な心だったのに、女性のASMRなんて聴くのかよ」
『今のボクがどうしようが勝手だろ? それより寝ないのかい?』
「あー……なんかやっと寝れる気がしてきたわ。何だったんだろうな、あのデカい声は」
『こんな何もないところでボクら以外が音を出せるわけないじゃないか』
「それもそっか。今度こそおやすみ」
『『『『『『『『目覚めろってんだろォがァァァ‼︎ いい加減にしろォォォォォォ‼︎』』』』』』』』
うおっビックリした⁉︎ なんかドデカい声がめっちゃ鼓膜に響いてきたんだけど⁉︎
『なんで異空間で二度寝⁉︎』
『少しは空気読め‼︎』
『こんな何もないところで声が聴こえてくるなんておかしいと思うだろ‼︎』
『というかなんかいつもと違うカンジぐらいわかるだろバカ者どもォォォ‼︎』
次々とボルテージの高い怒声で怒ってきたため、俺は何だと思いながら体を起こしてみた。にしても結構うるさいな……どれだけの数の奴等が急に現れたんだ? ってか誰だよ。
と思いながらまっすぐ視線を向ければ……そこにいたのは、8つの頭を持つ巨大な
その体躯は深紫の鱗に覆われ、筋肉質の曲線が威圧的に唸っている。各頭部は鋭く長い牙を剥き出しにし、赤く燃える瞳が敵を睨みつけ、金色の角と棘が稲妻のように輝いている。
そして背後には、金色の光輪が神々しく浮かび上がっていた。複数層の円環が粒子を散らしながら放射状の光線を放っており、光輪はまるで剣の威光を象徴するかのように、蛇の中心核を照らし出していた。
「な、なんだコイツ……? ってか、蛇? しかも1つの身体の割に頭の数多すぎ……OCGのモンスターにしては見た事ないけど……」
な、何というかその……豪快さがあれど、神秘さも同時に引き立たせているって感じがするな。バチバチと稲妻を迸らせている8つの蛇の頭ってさ、なんかクッソ強者感を出しているじゃねェか。
『『『『『『『『ゴホン……』』』』』』』』
あ。気を取り直して、みたいな感じに入ろうとしてる。まぁなんか結構怒ってたから、気持ちを整える必要があるよな。……なんかすいませんでした。
『ようやく目覚めたか』
『ようこそ、我等の世界へ』
『汝、我等の力を解放する時が来たのだ』
は……? 我等の力を解放……? それは一体どういう事だよ? どういう意味? 突然意味分からんけど意味深な感じのする事を言ってくるのやめてくんない?
「きゅ、急に何を言い出してんだよ? というか今思ったけど、誰なんだよお前ら?」
『こいつら……なるほど、ボクらと同じカードの精霊か。しかもティルルやキトカロス達と同じ雰囲気を感じる……』
あ、やっぱりカードの精霊なのね。そうでなきゃ、ユベルの存在に気づかずバカ者『ども』なんて言わないか。いやバカ扱いされたのはムカつくけどさ。
『その通りである』
『察しが良いな、そこの精霊よ』
『我等、王辻 翼……主となる汝に仕える事を誓い、参上せし者』
「えっ? 主? 俺が?」
お前らマジで言ってる? ただのカードなら使える奴だったらこちらから使う気でいるけど、カードの精霊が初対面からいきなり俺に仕えるって……もうちょっと人を見てから決めなよ?
『得意分野などは異なれど、汝のために力を貸さんとする気持ちは同じ』
『それ故に、我等の想いが汝に伝わり、
『
………………ん?
……ちょっと待って。なんかそれ聞くと、とある可能性が大きく出てくるんだけど。まさかこいつって……
『おっといけない、そういえば自己紹介がまだだったな』
『我等は【
『8つの生命で1つの生命となりし存在』
『自称・現時点での爬虫類最強の一族【
『そして汝の魂をこの世界へと送った、転生の神に導かれし者の1体』
『さらに汝が持つ【ドラゴンメイド】や【ティアラメンツ】と同類』
『つまり我等はOCGの世界から赴きしカードの精霊』
『そう……我等は汝の新たな槍の1つなり』
やっぱりかー。
あの転生の神様、まだ転生特典の効力を残してくれたのか。でもあれ、俺が自分の記憶から描いたイラストを、海馬コーポレーションの企画に提出したヤツしか実現しないんじゃなかったっけ? それで巨神鳥がラー様になったりしたけど……
もしかして、最初に届いたヤツの中に、まだカード化してないモンスター達がいたのか? 【デ○ピア】とか【スネー○アイ】とかもいなかったし……
後、俺の死後に既存テーマに新規が出て、それが後からこの世界でカード化したとか? アトミックとかファーネスとかの【
………………いや、それらの可能性があるとしても。
「俺、【
いやホント、マジで【
『我等のいるテーマを知らぬのも無理もない』
『他の者達もそのような連中ばかりである』
『我等、汝の死後の現実世界にて、後に実装された者どもばかり』
『だが時代の流れ、この世界のインフレーションに対する適合性……』
『それらを神が考慮した事により、我等は送り込まれたのだ』
あ、やっぱりそうなんだ。やっぱり向こうで後々実装されたんだな。それを俺がこの世界で初めて使う事になるのか……使い方や展開の仕方を覚えるのは大変そうだけど、時代の流れ的に結構強そうだな。
『……ねェ、翼』
「な、なんだユベル?」
突然ユベルが不服そうな表情をしながら、こちらに何か問いかけようとしてきた。急になんでそんな表情を……
『【
「いやなんで?」
『『『『『『『『いやマジでなんで⁉︎ なんでいきなり戦力外通告⁉︎』』』』』』』』
『いやそれはちょっと違う』
まさかの不採用推奨してきたという。いやなんでだよ。デッキ自体は受け取っていい感じだけど、精霊枠をクーリングオフするってどういう事だよ。おかしくね?
「なんでクビにしようとしてんだよ。こいつら結構強い効果を持ってるはずだろ? そいつを追い返そうなんて……」
『だってさ。君の事を汝呼びだし、何処か昔の堅苦しい人の喋りっぽくなる事もあるし……これもう、ラーとキャラが被らない?』
………………………………
そういえばラー様、二人称は必ず『汝』で呼んでいるんだったっけ。しかも喋り方が変わっている気がするし、この【
「……あぁ、よく考えると確かに」
『『『『『『『『納得するなやぁ‼︎ フォローしてくれてたくせにィ‼︎』』』』』』』』
思わず納得していると、【
『我等を【ラーの翼神竜】と一緒にするな‼︎』
『自虐したあだ名を自分から付ける奴じゃないし‼︎』
『彼とは違って普通の喋りもできるし‼︎』
『他の精霊と一緒で難なく表立って精霊使いの前に立てるし‼︎』
『大体我等は8つで1つというめちゃ強な独自の特徴があるだろ‼︎』
『そして日本の神に関わる儀式モンスターだぞ‼︎』
『こうして見れば色々と【ラーの翼神竜】とは違う要素が結構多いぞ‼︎』
『というか‼︎ ただ喋り方が似てるってだけでクビにするのはおかしいだろうが‼︎』
うわぁ、8つの首で猛抗議してる……そっちには1体しかないのに、まるで本当に8体のモンスターがいるように見えるな……いや、八岐大蛇がモチーフだと、そう思ってしまうのも……ね?
『じゃあなんだ⁉︎ 我等がシンクロ以降の特別なモンスターだったらいいのか⁉︎』
『エクストラからチェーン組まずの召喚で出た方がいいのか⁉︎』
『アレはいいよなー‼︎ 儀式よりも召喚しやすいし‼︎』
『儀式じゃない他の【
『いやシンクロの方がレベルも合うし《ランク4で強すぎて禁止》って事にならないからいいだろ‼︎』
『なんかリンクが別の意味で不遇な感じするからリンクがいいぞ‼︎』
「いやすいません。ちょっとすいません。それ儀式を主体としている自分達のポテンシャルを否定してない? 大体この世界ではまだシンクロすら出てないから、シンクロ以降で出たら色々とヤバい事になるってマジで」
というかおかしくね? ラー様とのキャラが被っているかどうかの件を話していたはずなのに、途中から自分達が儀式以外の存在になるべきかどうかって話に変わってんのだけど。怒り心頭しすぎて頭がどうにかなりそうって感じなの今?
『じゃあなんスか⁉︎ 我等は帰った方がいいんスか⁉︎』
『守護霊ポジションの1体が拒否してるって事はそういう事ッスか⁉︎』
『というかもうなんかむしゃくしゃしてきたんで勝手に帰っていいですか⁉︎』
「いや帰らないで? せっかく来てくれたのにやめて? 俺はいてくれたら嬉しいからさ、ね?」
拗ねて帰ろうとしてるんだけど。なんか勢いでホントに精霊世界に帰りそうなんだけどこいつら。どうすんのこれ、半分ユベルのせいじゃねェか。
「おいユベル、こいつらにラー様とキャラ被ってるって言った事を謝れよ。お前のせいで俺の力になろうとしてくれているこいつらが帰りそうなんだけど」
『………………いや、あのさ……言葉だけの謝罪をしても、相手の気が晴れるとは限らないよね?』
そうはそうだけど‼︎ 本人の前でそれ言うなや‼︎ 偽り無しに気まずそうな感じになるのも逆にムカつく‼︎
『もういいし‼︎ 我等もう帰るし‼︎』
『キャラが被っている奴が出てきたどうもすいませんでした‼︎』
『後になって《来て》と言われてももう来ないからね‼︎』
『今は我等がいなくなって清々してるといいわ‼︎』
『というわけで我等もう帰る‼︎
待って⁉︎ こいつにはキツく言っておくから帰らないで‼︎ 俺はお前達の事を怒らせてないから、頼むから帰ろうとしないで───
『『なんて事言うんだお前はー‼︎』』
『『『『『『『『へぶぅあぁっ⁉︎』』』』』』』』
と思っていたら、突然現れた巨大な拳と翼が、それぞれ頭4つを思いっきりぶん殴って、帰ろうとした【
「危なっ⁉︎ えっ⁉︎ な、なんだっ⁉︎」
咄嗟に後ろに下がったので巻き添えを喰らわずに済んだ俺。巨体が後ろに倒れて来たら生存本能がめっちゃ働くんだな。避けれるかどうかはともかくだけど。
ふと拳と翼が飛んできた方向を見ると、そこにいたのは……四足歩行の竜と鳳凰にも見える巨大な鳥……否、不死鳥だった。
竜は、太く安定した脚で支えられている強靭な白い体躯に、胴体に嵌め込まれている金色の渦巻き状の装飾と青い結晶を輝かせていた。牙が剥き出しの顔の頭部には鋭く曲がった黒い角が長く伸びるように生え、肩や胸に白い装甲板が重なっていた。
不死鳥は、赤と橙色の炎によって包まれたかのような体毛を持った攻撃的なフォルムを持ち、口からは青白い炎を漏らしていた。巨大な翼には嵐雲を表しているかのような巨大な黒い羽らしきものがついていた。……羽、かな? あれ。
というか、こいつら一体何処から出てきたというんだ? ってかこの世界に来たカードの精霊って1体だけじゃなかったんだ。
あ、そっか。さっき【
『ア、アルザリオン⁉︎』
『フォ、フォニクスまで⁉︎』
『な、何故突然勝手に出てきたんだ⁉︎』
『わ、我等が合図を出すまで待機すると言っていたではないか⁉︎』
『その合図を指示する役のテメェが帰ろうとしていたからだろ‼︎』
『大体、マスターの力になるためにお前自身の力を使わせると、我々よりも率先して言ったのはお前じゃないか‼︎』
『『なのに今さっきしようとした行動が、あの時言った言葉と全くの事をするとかどういう事だコラ‼︎』』
『『『『『『『『あっ』』』』』』』』
あ、そうなのか。【
……まぁ、アルザリオンとフォニクスという奴らが言ったように、さっき帰ろうとしていたんだけどね。半分ユベルのせいで。
そんな事を考えていたら、フォニクスがこちらへと来てヘラヘラとした表情でペコペコと頭を下げてきた。下っ端社員か何かかな?
『いやぁ悪いなマスター。こいつら思ったよりも精神年齢が少年寄りだからさ。ユベルの発言にも問題があるけど、あまりにも強すぎる言葉をぶつけられるとキレちまうんだよ』
おい、待てい(江戸っ子)
「それ、遠回しに【
『『『『いや、フォローみたいな言葉があるだけでもまだ許せる』』』』
『『『『けど、我等の精神年齢が童と同じだってのは……さすがにムカつく』』』』
やっぱり本当は許せないんじゃないのか? 許せるんだったら、『ムカつく』だなんて言葉を出さないかと思うのだが。喋り方の割には、本当に精神年齢が若すぎるんじゃ……?
『本当にすまないな。だが、こいつの強さはテーマ全体を通してかなり強いぞ。他の【
『『『『『『『『お前に言われたくない。なんだ手札誘発でゆ───』』』』』』』』
『おいこらやめろ‼︎ 我々【ドラゴンテイル】の効果については後でマスターに実物で見てもらうから、ネタバレするのはやめてくれ‼︎』
へぇ。アルザリオンがいるテーマは【ドラゴンテイル】って言うのか。【
……アレ? もしかして俺、最強格のテーマのデッキを新しい戦略の1つに加える事を許されてる? シンクロ以降もあってこそって可能性もあるけど……
「って事は、フォニクスのいるテーマのデッキも……?」
『いや? 俺のいるテーマの場合、強いっちゃあ強いんだけど、向こうの世界ではまだOCGで初実装されたばかりだからな。この2テーマみたいなぶっ壊れ性能があるとは思ってないぜ。寧ろこいつらの強さの方がおかしいんだよ』
あ、あぁ……そう……【
って、アレ? ちょっと待てよ?
「そういえば俺、カミューラに闇のデュエルで人形にされたんだよな? なんで精神世界で意識を持てるようになって、お前達精霊も人形状態の俺の意識の中に入ってこられたんだ?」
『『『『『『『『えっ今更?』』』』』』』』
『『気づくのがおせーよ○セ』』
『『『『『『『『いつになったら指摘してくれるんだって思ってたぞ我等は』』』』』』』』
わっ……悪かったな気づくのが遅すぎて‼︎ けどお前らの突然の登場でそれどころじゃなかったんだよ文句あっかコラ‼︎
『あぁ………………その事に関してだがよぉ、マスター』
『ラー様が解放させてくれたまではいいが、それからこの4日間、只今も昏睡状態なのだ』
「………………………………えっ?」
今、なんて? 俺が、昏睡状態? 人形の姿から、解放されたのに? ちょっ、待っ……どういう事よ? 闇のデュエルを引き起こした者を倒せば、その者の罰ゲームを受けた奴の魂は解放されるはずじゃないの? ペガサス戦とか闇マリク戦とかでもそんな感じだったし。
『やっぱり信じられないって顔をしているな。無理もねェよ、ラー様がカミューラとやらに勝ったのに、人形の時に近い状態になっただけってのは納得いかねェよな』
『だがあの女は【幻魔の扉】以上の危険な闇のカードを使ってきたんだ。そのカードの闇の力が強かったせいで、完全には解放させてはくれなかったのだろう』
「……アレかぁ〜〜〜……」
あのカードのせいかよ……確か、【幻魔が創りし異次元の結界】って名前だっけ? 【ヴァンパイア】デッキのための、【幻魔の扉】の超強化版。条件は重いけど決まれば勝てるってレベルのヤバいヤツ。
そっかぁ……あの闇のカード【幻魔の扉】完全上位となるカードだから、闇の力も完全上位となっているのかぁ……だから人形の姿から解放されても寝たままなのかぁ……
「いや、納得してる場合じゃないじゃん⁉︎ 早く起きないとティルルとかが病むって絶対‼︎ 寝ている時間が長いとその病みのレベルも高まってくるし‼︎ 早く起きねェと‼︎」
と思っていた矢先、俺の体と思考は停止した。今すぐに目覚めないといけないというのに、何故急に止まったのか? それは……
「………………とはいっても、この気絶みたいな状況から、どうやって自力で起きればいいんだ?」
これである。無策だからどうやって起きればいいのか分からず、困ってしまった。
『だと思ったよ……この状況で考えなしで動くのは無理があるでしょ』
「わ、悪かったな考えなしで‼︎」
図星を突かれて逆ギレしてしまった……
とはいえ、ここからどう起きるのかなんて考えてないのは確かだ。気絶した状態から自力で起きる手段なんて、そんなのがあったら天地がひっくり返る程の大発見になるというのに……
『そう心配するなよ、マスター』
「へっ?」
『我々がこの状況の中、無策で精神世界に入ったと思わない事だ』
『『『『『『『『我等が汝を助けよう。この閉ざされた精神の世界から』』』』』』』』
そ、それマジで言ってるの⁉︎ 俺が闇のデュエルによる罰ゲームを受けた時の対策を、前もってしてきていたのか⁉︎ それはある意味助かるじゃねェか‼︎
……でもそれ、俺が闇のデュエルに負けた事を前提に準備しているって事だよな? 実際負けたけどさ。本当は負けたくないからさ、負ける前提で考えるのはやめてくれマジで。ムカつくから。
というか、一体どうやって俺を起こそうとするんだ?
『『『『『『『『我等が精神を研ぎ澄まし、汝に霊力・魔力を分け与えんとする』』』』』』』』
『そしたらマスターはこう願ってくれ。この世界から目覚めさせてくれ、と』
『そうすれば、本体にその意思が伝わってくるはずだ』
「な、なるほど……」
カードの精霊が持つ霊力と魔力を纏って、『昏睡状態から解放されて現実世界に戻りたい』って願えば良いのか。不可思議な現象には不可思議(?)な現象をぶつければいいって算段……上手くいくか分からんが、乗らんこともないぜ‼︎
「分かった。その案、乗ったぜ。何もできないよりはよっぽどマシだ」
『決まりだな』
『そうと決まれば、早速始めようぜ』
『『『『ユベルとやら、汝も祈りの準備せよ』』』』
『『『『汝もこの精神世界に解放される必要があるからな』』』』
『オッケー。ボクもここから出ないと色々と面倒だしね』
あ、そうだった。ユベルも一緒に封印された事で巻き添えにされたから、こいつの意識も失っている事になっているのか。マジかよ闇のデュエルの罰ゲームヤベェな。巻き添えみたいな感じに受けた奴にも容赦ないのかよ。
となれば、ユベルも祈って霊力や魔力を借りる必要があるな。仲間はずれは……寂しいもんな……
「それなら、お前もいこうぜユベル。お前がいないと色々と困る事があるからな」
『あぁ、もちろんそのつもりだよ』
この掛け合いの後、俺とユベルは並び立ち、瞳を閉じながら祈り始めた。目覚めて現実世界に戻りたい、と。これが上手くいくといいが……
『祈り始めたか』
『それじゃ、俺達も魔力や霊力を渡すとするか』
『『『『『『『『汝らの復活を願って……では、ゆくぞ』』』』』』』』
……ん? 一体何をし始めるというんだ───
『ひゅるりらぱっぱっ‼︎ ひゅるりらぱっぱっ‼︎』
『ウェイウェイウェイウェイウェーイ‼︎』
『『『『『『『『ファァァアアアアア!!!!!!! ファァァアアアアア!!!!!!! ファァァアアアアア!!!!!!!』』』』』』』』
………………なんか、文字にしづらいヘンテコなダンスを踊り始めたんだが。
アルザリオンは舞踊なのかブレイクダンスなのか分からないキレが中途半端な踊りだし、フォニクスは羽を大きくバタバタと羽ばたかせながら360度素早く回転してるし、【
集中しろみたいな事を言っているくせに、その集中力を削がせてくるかのような踊り(?)をしてくるとか、正気かこいつら……?
……念のため、聞いてみるか。
「な、なぁ……その踊り達って、祈りの儀式とか舞いとかで必要なものなのか……?」
『む? 気になるか?』
『ハッハッハ、何言ってんだ‼︎』
『『『『『『『『必要かどうかなど、そんなもの決まっておる』』』』』』』』
『『『『『『『『『『必要ないに決まってるだろ‼︎ こんな踊りただの暇つぶしだ‼︎』』』』』』』』』』
「ブッ飛ばすぞテメェら‼︎」
「───ハッ⁉︎」
気がついた時には、俺は何故かベッドから勢いよく体を起こしていた状態でいた。
何故勢いよく起きた事を知っているのか、普通意識が覚めるまでの行動は分からないのではないか……そう思うところだろうが、その理由はきちんとある。上半身に力を入れていたような感覚が伝わっているからだ。
これがつまりどういう事か。俺はすぐに察した。
「……ようやく目を覚ます事ができたんだな、俺は」
『そのようだね』
うおっビックリした。首元から声がしたので見下ろせば、そこには首に掛けられていたペンダント。そしてその中には【ユベル】のカードが入っていた。
「(ユベル、お前も目を覚ましたんだな)」
『あぁ。どうやら彼等の強い霊力や魔力が、精神世界から脱出するための活路を見出してくれたみたいだ』
「………………(俺達が目覚めたいって祈る必要、あったか?)」
『さぁ? まぁ結果的に目覚めたんだから、別にもうどうでもいいけどね』
おいおい、なんだよそれ……結局あいつらに何かしてもらうだけで十分じゃねェか。俺達に祈らせたのは雰囲気作りのためか? なんかムカつくんだが……
いや、まぁ……結果的に昏睡状態から解放されたんだから、これは素直に喜ぶべきだよな。ずっと目を覚さないってよりはずっとマシだし。
ふと、俺は周囲を見渡した。どうやら俺は保健室で、数日寝ていたようだ。デジタル時計に表示されている日付で、それが確定しているのだと気づかされたのだ。
カミューラとデュエルしたのが3月16日(この世界での話であって原作ではいつなのかは知らない)。で、今が3月21日。デュエルした日に人形にされて、翌日にカミューラが敗北して、解放されてから3日経った……うん、合ってるな。
つまり俺は、実質5日間も意識を失っていたようだ。……若くても意外とあっという間に感じる事ってあるんだな。
……というか、よく考えたら怒声を上げた途端に目覚めたって
「……って、ボケーッとしてる場合じゃないな。デュエルディスクデュエルディス「「「「翼ー‼︎」」」」うおっ⁉︎」
早速目覚めた事をみんなにデュエルディスクを通して報告しようとしたら、急に誰かに抱きつかれた。しかも4人同時に。
俺に抱きついてきた奴の正体。それは、十代・翔・隼人のレッド3人組、そして神楽坂だった。
「翼、お前いつの間に目を覚ましてくれたんだよ‼︎」
「やっと……‼︎ でも突然すぎるっすよ‼︎」
「起きてくれて嬉しいんだな‼︎」
「みんな……みんな心配してたんだぜ‼︎ 本当に‼︎」
「み、みんな? ………………あっ」
ふと、俺は十代達の背後に視線を向けた。保健室の入り口にて、三沢・明日香・万丈目・カイザー・雪乃・半次・舞香の姿が……
マジか。みんな見舞いに来てくれたのか。さすがに5日間も起きなかったらみんな心配するか。
「翼……よかった、本当に目を覚ましてくれたんだな。皆で毎日君の見舞いに来た甲斐があった」
「後遺症とかも無さそうね、よかった……」
「フンッ。クロノス教論と違ってお寝坊さんだったとはな」
「さっきまでまだ目覚めないのかと苛立ってたじゃないか。俺も心配していたがな」
「数日寝てたのに、いつも通りそうね。安心したわ」
「ったく、リベンジする機会を永遠に失うかと思ったぞ……クソッ、汗が止まらない……」
「……フフッ。確かに目から出ているのが見えますわね。……翼さん、ご無事そうで何よりですわ」
ツンデレな感じの奴が約2名いたけど、やっぱりみんな俺の事を心配してくれていた。半次はツンデレきれてないのが、彼と舞香の発言ではっきりと伝わってきているけどな。
「あぁ、その……みんなごめん。起きるまで待っていてくれてありがとうな。そして、ただい───」
「おっとストップ」
十代達が離れてくれたから、これを機にお礼の言葉からの『ただいま』を言おうとしたら、三沢に手で制止された。えっ何? どうして止めるの?
「謝るな……なんて言う気はないが、そこから先は
「
一体誰に『ただいま』って言えばいいのかと首を傾げれば、入り口の外から何やら騒がしい声が聞こえてきた気がした。
『ほラ、早く来イ‼︎ 俺達ニとってモ嬉しイ場面ニ立ち会えルんだゾ‼︎』
『そうですわよ‼︎ さぁ、マスター様にお会いしますわよ‼︎』
『い、いえその……ま、まだ心の準備が……』
『まどろっこしいなー。レイノハートさん、モリンフェン、無理矢理彼女を入れさせて』
『私にその命令はどうかと思うぞ? 確かにまどろっこしいからやるが』
『モシャー』
『あっちょっ───』
ガヤガヤとした声が聞こえている中、三沢達が奥へと入っていくように入り口から離れれば、そこから誰かが無理矢理入れられるように入室してきた。その者の正体が……
「ティ……ティルル?」
『あっ………………ご、ご主人様……』
ラー様やユベルと同じくらい、俺と一緒にいる時間が長いカードの精霊・ティルルだった。
なんで実体化してるんだと思ったが、すぐに実体化用のデュエルディスクのスロットに差し込んだままだったわと理解した。
そして、すぐに気まずさを感じてしまった。何故か? 罰ゲームを受けて人形となってしまい、彼女達を残してしまった事への罪悪感に今更感じてしまったからだ。
「あ、あぁ……ティルル? そ、そのだな……」
罪悪感に耐えきれなくなったため謝ろうとしたが、ティルルが首を振ってそれを制止するように促してきた。一体何だと思っていると……
『今の私達には、このやりとりだけで充分です』
それだけ言うと、ティルルは優しさのある笑みをこちらに向け……
『おかえりなさいませ、ご主人様』
「……‼︎」
……そうだったな。無事に帰って来れたのなら、余計な言葉はいらないよな。
「……あぁ。ただいま、ティルル」
その言葉と共に、迎え入れてくれたかのように、俺達は夕日の日光に優しく照らされた。
ここで今回の小説、一旦お休みさせてください(不定期)
ちょっと元旦に投稿してみたい新作があるもので……
でも打ち切りにはしませんよ? 翼のデュエルはまだまだ続けます‼︎
連載再開するまでちょっとお待ちを‼︎
そして皆さん、良いお年を‼︎