アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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だんだん『岸辺露伴は動かない』みたいなタイトルになってきた


第−6話 白洲アズサは解らない

 

血が、飛び散って

 

 

ぎゅっと抱きしめられたその腕は大きく、力強い。

 

痛い?

 

 

「いんや、だいじょぶ」

 

 

私はその日から誓った。

 

どんなに苦しくて辛い人生だろうが、この人のように諦めないと。

どんなことが有ろうとも、この人の味方で有ろうと。

 

 

私の人生を繋いでくれた、あなたの為に

 

 

________________

 

 

 

『このガキ......!もういっぺん言ってみろ!!』

 

『おい......そろそろやめねぇと本気で死んじまうぞ』

 

 

巡回警備中、アルトは『それ』を目にした。

ベアトリーチェが配属したオートマタの大人。そいつらがまた生徒をリンチしている。

 

特段珍しいことではないので、アタッシュカリバーを構えつつ止めに入ろうとする

 

が、

 

 

「.....づっ......何度で.....も言ってやる......お前達、は......私程度......縛れない......!」

 

 

なるほど......小さいのに随分根性がある奴だな。

 

『このガキッ!!おまえらみてぇなのは俺たちの言う事素直に聞いとけばいいだよ!!!』

 

そいつが足を振り上げ、白髪の子に振り下ろす瞬間を狙って剣を投擲。

 

 

『がっ!?』

 

情けない声をあげて倒れるオートマタ。

やはり弱いものは自分よりさらに弱いものを狙わなければ生きていけないと言うことか。

 

 

『ヘイロー無し......?っ!おいずらかるぞ!!』

 

 

もう1人の方は少々賢いようで、足が吹っ飛んだ方を抱えていそいそと逃げ帰って行った。

 

 

「逃げんな!!ぶち殺したらぁ!!」

 

まぁそれはそれで威嚇はするけど。

声を上げるだけ上げて地面に刺さった剣を回収する

 

「全く......大丈夫か?」

 

 

地面に倒れながらも必死に立とうとしている少女に手を伸ばす。

必要とあらば手を貸すつもりではあるが、当人がそれを拒否している。

 

 

「だい......じょうぶ......だ......」

 

 

息も絶え絶えに少女は立ち上がった。

やはり根性が凄いな。

 

「無理しなさんな。捕まり」

 

 

腕を差し出し、なんならこっちからも支えるように腕を掴む。

 

「.........助かる」

 

 

息を少しづつ整えながらアルトに体重を預ける少女。

綺麗な白い髪にアリウスには珍しい羽のある生徒

 

「............れ」

 

 

「?」

 

「とりあえず包帯とか巻いとくか。感染症になりそうだし」

 

「......良いのか?」

 

「子供が遠慮するもんじゃないよ」

 

アルトはミサキに包帯を巻く時と同様に少女の腕や足に包帯を巻いていく。

生傷は多いが、それでも跡が残るほどではない。キヴォトス人の頑丈さに感謝しつつ処置を進める

 

「まだ中学か?」

 

「ああ、先月から三年生になった」

 

根性はあるが、やはり

 

「こんなところにいたら潰れちゃうぞ?悪いことは言わない、逃げる手伝いするからトリニティにでも「行かない」

 

 

「......私は、行かない」

 

 

その目に宿る意思は、強く、輝きを放っている

俺がどうこう言って変えられるものではないだろう

 

「ここで逃げたら......私はあの言葉を肯定することになる」

 

 

「......そっか」

 

アルトには逃げることを強制することも、苦しむことを強制する権利もない。

あるのはただ目の前で苦しんでいる人間に手を差し伸べるくらいが関の山だ

 

「ありがとう。おかげで助かった」

 

「はいよ。またアイツらが来たら言いなね」

 

包帯でぐるぐるになった腕を眺めながら、少女は礼を言う

 

「今更だけど、俺は秤アルト。だいぶ厳しい場所だけどさ、君......名前なんだっけ」

 

 

「アズサだ。『白洲アズサ』」

 

「白洲がいてくれたらこんな場所でもマシになるからさ、一緒に頑張ろうな」

 

ポンポンとアズサの頭を撫で、アルトは去っていく。

 

 

「.......秤アルト」

 

 

不思議な雰囲気がした。

まるで存在自体が煙に巻かれているような、ふわふわとしている

 

 

「......?これは......」

 

 

痛みがない

不思議に思ったアズサはさっき巻かれたばかりの包帯を取る

 

 

「.........」

 

 

傷が、無くなっていた

 

 

 

________________

 

 

『ここにまでブービートラップが!?』

 

 

『ガキ1人に何手こずってる!!』

 

『おい!そっちにはクレイモアが____』

 

 

 

2番、続いて15番まで起爆完了。

移動、ライフルの残弾は十分

 

 

『クソッ!何も見えねぇ!!』

 

『発砲するな!爆発するぞ!!』

 

アルトに言われた通り小麦粉を撒けば奴らは発砲という唯一の攻撃手段を失う

 

 

アルトが来るまで残り11分

そこまで耐えるだけ

 

 

キン、と手榴弾のピンを抜き、背中合わせとなった敵が一斉に爆ぜた

 

「.......制圧完了」

 

 

ガスマスクで曇った声が戦場に響き、アズサは煙の中を駆ける。

 

『化け物の......ガキが!』

 

 

制圧し切ったと思ったが後ろからオートマタの声が聞こえる。

振り返れば敵は此方に銃を向け、今にもその引き金を引かんとしている

 

「......ああ。そうだな」

 

 

 

 

 

 

Type.V

 

 

現着

 

 

 

 

 

『純白の......機体.........?ま、さか......ヘイローな“っ____

 

 

ぐしゃり

 

 

とオートマタは粉々に潰れた

その純白の蜘蛛のような兵器の質量に押しつぶされて。

 

「随分待たせた。すまん」

 

「時間よりだいぶ早い。大丈夫だ」

 

 

短く会話を切り上げ、機体____デカグラマトン第一の預言者『ケテル』に搭乗したアルトはアズサを機体に引き上げる。

 

「後は掃討戦だ。行くぞ」

 

 

機体に取り付けられたコックピットのレバーを握り、スラスターを吹かしながら戦場を滑るように移動する

 

「頼んだぞ、ケテル」

 

まるで親友に語りかけるように機体を撫でるアルト。

それに呼応するようにケテルの出力が上昇する

 

 

機体は四本の足を巧みに扱い、縦横無尽に廃ビルと廃ビルの間を駆ける

まさに変態軌道。人間が操っているとは思えないような動きで大地を踏み鳴らし、機関砲と小型ミサイルで徹底的に命を刈り取っていく。

 

 

『あ“あ“あ“あ“あ“あ“!!!』

『撤退!!早く撤退しろ!!』

『助けて……助けてくれェェェ!!!』

『こんなバケモンがいるなんて聞いてねぇぞ!!』

『あ“っ_____』

 

 

......やはり、強い。

私が知る限り誰よりも強いのがアルトだ。

 

アリウスで初めてアルトと出会った日から、アルト以上の強者を見たことはない。

 

あの日私に暴力を振るった機械の大人も

 

ベアトリーチェも

 

 

 

絶対的な差があった。

 

力の形が誰とも違う

 

 

「これで一旦終わりかな」

 

聞こえていた機関砲の発砲音が止み、アルトがハッチを開けて外に出る。

 

 

「ほれ」

 

「ありがとう」

 

アルトがアズサにレーションを渡し、2人はそれを息ぴったりに封を切り、もきゅもきゅと食べる。

 

 

「......口んなかパッサパサになるわ......」

 

戦場では水が貴重。しかも今回はただの任務ではなく遠征だ。十分な補給がアリウスで得られるわけもない。

 

 

「大丈夫か?確かまだ水があったはず......」

 

 

「いや、それはアズサが飲みな。」

 

「ダメだ。アルトは私より貴重な戦力。私はもう一つボトルがあるから大丈夫だ」

 

嘘だ。ボトルは二個もない。

 

「.........はい、ありがとさん」

 

アルトは少し訝しみつつボトルを受け取り、そのまま口をつけて飲む。

 

 

「あっ____」

 

そういえばそれは私も口をつけた筈

 

 

「ん?どした?」

 

 

「あ......いや、なんでもない」

 

なぜか顔が熱くなり、それをアルトに見られたくなくて顔を俯かせる

 

どうしてだろう、心臓がドキドキする。

不整脈だろうか。でもうるさい心音がどうしてか心地良い。

 

 

「.........アルト、ずっと心臓がドキドキしてるんだ。そんな病気に心当たりはないか?」

 

 

「風邪じゃね?」

 

 

「アルトを見るともっとひどくなるんだ。あと、アルトのことを考えてると時も」

 

 

「風邪じゃね?」

 

 

「熱っぽくもなる。」

 

「風邪じゃね?」

 

 

「でもアツコが言うにはそれは風邪じゃないらしい」

 

「ほな風邪と違うか......」

 

 

原因不明の動悸と熱。

あの日から何年も共に戦い続けた2人。

だが、その感情だけは解らずにいた

 

「辛かったら言ってな」

 

「うん......わかった......ん」

 

アズサのほっぺをムニムニと弄りつつ、左の手で頭を撫でる。

 

アズサもアズサで随分と嬉しそうな表情を浮かべている。

 

 

「......アルト」

 

 

「ん?」

 

「アルトは私のことが好きなのか?」

 

「おん」

 

「そうか」

 

 

アルトは私のことが好き......

 

 

「......そうか......うん......私もだ」

 

好きだ。

 

一緒にいると楽しい相手を『好きな人』と言うらしい。

アツコがそう言っていた。

 

 

「......ふふっ」

 

その心地良い心臓の音を聞きながら、子どもらしい笑みを浮かべる。

 

 

 

信頼は親愛へ、親愛は____

 

 

それはまだ、知らないままに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルトが撃たれた。

 

 

私を庇って撃たれた。

私を

 

 

なんで

 

 

『これでわかっただろう?ミサキも、ヒヨリも、アツコもわかってはくれなかったが』

 

 

『全ては、等しく虚しい』

 

 

________________

 

「う“わ“ぁっ!!!」

 

 

「びっ_____!くりした......」

 

 

ここは____?

 

 

___ああ、今日も共同任務で、アルトが不寝番をしてくれて

 

 

アルトから血が流れていないことを確認すると、ようやく上がった呼吸が安定する。

 

 

「.........アルト、大丈夫だ」

 

 

「......何が?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が、護る」

 

 

 

 

親愛は、罪悪へ

 

 

 

 




すんません、ちょっと東京行って来たんで投稿遅れました。

んでもって次回に続きます


次回、アリウスクソボケオオバッタ第一部最終回

『錠前サオリは償えない』
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