「んがァァァァァァァ!!!折角のカツ丼を台無しにしやがってぇぇぇぇぇ!!!ゆ“る“ざん“ん“!!!」
「で、ですから!あの店はカツの衣を豚肉の比率より大きく___「問答無用ッ!その言い訳を通したくばカツ丼代を払えェェェ!!!」
時刻は12時23分21秒。
ゲヘナ学園構内でアルトが食事していたところ、美食研究会会長黒舘ハルナがその飲食店を爆破。
アルトの尽力により一般生徒や市民、店には被害が無かったもののアルトが頼んだカツ丼(小盛り)が見るも無惨な姿になってしまった。
「テメーはいつもいつもそうだ!俺が飯食ってる時にいっつも爆破しやがってよォォォォォォォ!今日こそ覚悟しやがれハルナァァァァァァァ!!!」
「誤解です!!私は美食のためを思って......」
「ダァかぁらァァァァァ!!!!」
そう、アルトは確かにカツ丼のことも起こっている。
だがそれ以上にハルナを追わなければならない理由が残っている。
「フウカ置いてけェェェ!!なんでいっつも誘拐してくんだよォォォ!!」
「んむーーーーっ!!」
「ほ、ほら!ご覧になりましたか!?フウカさんも私達と美食の道を歩みたいと____
「言ってねぇよ!?」
「んむむんむん“!?(言ってないわよ!?)」
ハルナは縛られたフウカを原付に乗せてアルトとの差をどんどん広げていく。
「待て......!この......」
流石に法的速度を守らない全速力原付に勝てるわけもなく、アルトは突き放される。
「あの......美食狂いが......ぜーっ......はぁっ......」
アルトの弱点その一、意外に体力が無い。
トレーニングよりも武器の開発を優先したため、ライダーシステムを利用していな時は平均男性程の身体能力しか無かったりする。
「......使うか」
アルトは呼吸を整え、ポケットから小さなスマホのようなものを取り出す。
『changing to super bike motorcycle mode.』
『オーソライズ』
そしてそのスマホを起動させ、ゼロワンドライバーに読み込ませる。
『バイクアプリの使用を確認。お足元にご注意下さい』
軽く警告音のような音が二、三度鳴る。
『ライダモデル;バイク型。投影完了』
「良いねぇ......我ながらロマンのあるものを作ってしまった」
足元から光の柱が立ち上ったと思えば、アルトの目の前にバイクが鎮座していた。
『ライズホッパー』
アルトが製作したバイク型ライダモデル『一式』
アリウス分校からの交通の弁が全く無いため、早々に作り出した移動手段である。
因みにこのサイズを作ることができたのは鹵獲した『ケセド』が3Dプリンタの様にライダモデルを実体に移し替えると言う半裏技的なズルをしているためである。
「おし、出発!食いもんの恨みなめんじゃねぇぞ!」
アルトはバイクに跨り、エンジンを蒸す。
________________
「ふぅ......流石にここまで来ればあの秤先輩が追いついて来る事も無いでしょう......」
無事アルトから逃げ切ったハルナは安心したように原付から降りる。
たどり着いたのは海岸沿いの廃倉庫。ここならばアルトは来ないだろ言うという見解による移動
「ん......んあ......ムキュー......」
「あら......フウカさんは眠ってしまいましたか」
法定速度超えの走行に目を回しただけである。
「それなら先ほど頂いたテイクアウトの方のカツをいただきましょうか」
ハルナはさっきからずっと持っていたビニール袋を開く。
その中にはまだ湯気が立ち上るカツが入っていた。
「確かにあのお店はカツと豚肉の比率を違えていましたが......味は上々でしたからね」
そう言ってハルナは割り箸を切り、中に入っているカツを一口。
「では頂きます......はむ......ふむ......こちらはしっかりと5:5になっていますね......」
ちょうどよくサクサクした衣にジューシーな豚ロース。
美食研究会の会長の舌を唸らせるほどには上質なカツがそこにはあった。
「これほどの実力を持った店なのなら......なぜあんなことを?」
実際ハルナのカツに衣が多かったのはただただ端っこが回ってきてしまっただけなのである。
「......まぁ仕方ありませんね。アルトさんが居ては美食の探求もまともにできませんから」
過去、アルトがゲヘナで活動していた頃ハルナ達はこっぴどく叱られたことがトラウマとなっており、今回のハルナが店を爆破したのもアルトが店にいたことによる冷静さの低下も要因の一つとして存在する。
ハルナはその事実に目を逸らしつつ思考を切り上げ、再びカツに目線を落とす。
「.........この音は.........」
だが、その食欲を妨害するように遠くからバイクのようなエンジン音が聞こえる。
しかも、かなりの出力。
さらにはその音はどんどん近づいてくる
「ハルナァァァァァァァ!!!!カツ返せェェェ!!!」
「ここまでくるとしつこいが勝ちますよ......!」
ハルナは倉庫の出入り口に自身のスナイパーライフル『アイディール』を向ける。
ハルナは昔もこんな風に追い詰められて敗北を喫したことがある。
しかもそれはハルナ一人では無く、美食研究会全員での敗北。
「......っ」
頬を伝う汗が
どれだけ弾丸を撃ち込んでもそれを無駄だと言わんばかりに立ち続ける影を思い出させる。
いつ来る。
アイディールのトリガーに指を掛けていつでも撃てるよう準備する。
バイクの駆動音は以前止まらない
バギャァッ!!
背後で音がした。
まさか正面からの突入ではなく________________
「そりゃ仮面ライダーと言えば壁からバイク突撃だろ!」
『アタッシュアロー』
『Attache case opens to release the never missing bow and arrow.』
アルトは片手でバイクを操縦、片手にアタッシュケースのようなものを持っている。
「......さすがですわね......」
「おう褒め言葉はいいからカツ返せ。持ってんだろ」
ハルナは咄嗟にさっきまで食べていたカツの袋を見る。
「こっちは店吹っ飛ばされて腹減ってんだ。それクレメンス」
「......これは譲れませんね......フウカさんも渡せませんわ」
折角フウカさんにレシピを解析してもらう手筈を台無しにされてたまるものですか
「なら、久しぶりの一騎打ちと行こうか」
「望むところです」
『アローライズ!』
「ほれ」
一番槍を撃ったのはアルト。
アタッシュアローから放たれた矢形のエネルギーがハルナ目掛けて飛んで行く。
「遅いですよ!!」
「当てようと思ってねぇもん」
弾速がお世辞にも早いとは言えない矢をハルナは易々と避ける。
(距離を取るのは逆に悪手......なら!)
ハルナは手元にあるものをアルトに投げつける。
「んお......おお!カツくれんの?」
投げつけたのはさっきからアルトの視界に映り込んでいたカツの袋。
それが狙いのアルトがそれを取らないと言う選択肢は消去法で潰える。
「後で差し上げますわよ!」
その動きによって生まれる隙。
そこに向かってあとは弾丸を叩き込むだけ。
「距離詰めすぎな。お前昔から凸スナ多すぎるんだよ」
向けた銃口がアタッシュアローに付属している近接刃『キルブレード』によって逸らされる。
「イオリみたいに後ろに下がれる技があるならまだいいけど......今回の正解は永延視界を封じて遠距離チクチクが正解だったな」
逸らしたアイディールの銃身を握り、そのままハルナの太ももに脛を打ち付け、重心を崩させる。
所謂、『腿砕き』
「いだっ!?」
「あ、すまん威力ミスった」
「乙女の柔肌に蹴りを入れるのは私でもどうかと思います.........っ」
試合時間約34秒
勝者:秤アルト 決め手:腿砕きによる悶絶
「いたた......」
「すまんな。でもお前が悪いんやで」
「そうそう。秤先輩に喝いられられて身が引き締まったんじゃない?」
いまだに腿を摩りながら痛がっているハルナを横目にアルトは念願のカツを食している。
「ん〜......やっぱゲヘナは飯がうめぇんだよな......治安悪りぃしこんな奴もいるし」
「こんな奴扱い......」
治安が悪くなくてアリウスからもうちょい出やすくなったら毎週来るんだけどなぁ
「今回もありがとうございます先輩。」
「おう、また攫われたら今度こそこいつとっちめちゃるから言いなね」
アルトはフウカの頭を撫でながらそう言う。
ゲヘナにいた頃よく給食部の手伝いもしていたため、面識は深い。
「あ、頭......」
「......ごめんいつもの癖でやっちまった」
頭を撫でられたフウカは顔を真っ赤にし、アルトはキモがられたと勘違いして青い顔をしている。
「い、いえ.....先輩なら良いかなって......」
フウカはアルトにギリギリ聞こえるか聞こえないくらいの声で呟く。
「......俺おっさんになってきちゃったんかな......」
アルトはその声に気付かず、自身の精神年齢を数え始めたのであった。
隣にいるハルナと言うと___________
(なぜでしょう、さっきまで口の中にカツのソースの味が残っていたはずなのですが......なぜか砂糖をぶち込まれたような後味になりましたわ)
甘い空間に取り残されていたとさ。
みなさんってこの小説に行き着いたきっかけとかありますか?