アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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EX5 そうだ、仕事しよう

 

「キキキッ!漸くゲヘナに戻ったか秤アルトよ......」

 

 

「アルト先輩久しぶり〜!」

 

「お〜久しぶり〜イブキちゃんはいつ見てもかわええのぉ〜」

 

アルトはいつもの風紀委員室とは一風変わった部屋を訪れていた。

 

 

「エデン条約が締結されんとするこの現状でゲヘナに戻ったと言うことは......あの『勧誘』を受ける気になったと言うことだろう?」

 

 

「ライオンマルも久しぶりだな。良い子してたかぁ〜ほれほれ〜」

 

「にゃぁん」

 

アルトはさっきから話しかけてくる長身の女性を無視して部屋の真ん中でくつろいでいた猫を愛で始める。

 

「ただいま戻りまし......あれ?アルト先輩じゃないですか」

 

「おっ、イロハじゃん」

 

 

「キキッ......貴様の能力はそこら辺に捨て置くのは惜しい......やはり我が万魔殿(パンデモニウムソサエティ)の副議長としてそばに置いてやろう......さすればキヴォトスを手中に置くことなど造作もない......!」

 

 

「......すみませんね、うちのバカが」

 

「あいつがバカのはいつものことだ。イロハも大変だな」

 

 

部屋に入ってきた赤毛の少女と二人で正面に立つバカをディスり始める。

 

 

「まさかこの時期にゲヘナに来るとは思いませんでしたよ。どうですか最近は?」

 

「上々。イロハの方はどうだ?」

 

「私も悠々自適にサボり生活を満喫してますよ。まぁ、たまに仕事もしますが」

 

「ほんならよし。」

 

 

赤毛の少女___『棗イロハ』はアルトの側に座り、持っていた本を開く

 

「ところで秤アルトよ、さっきから話を聞いているのか?」

 

 

「うんきーてるよー」

 

 

「そうか、ならいい。次に貴様が万魔殿に入るメリットを提示しよう」

 

「うんきーてるよー」

 

 

嘘である。

アルトは目の前の人間の話なぞ一部も聞いていない。

 

 

「アルト先輩っ!イブキね、最近因数分解ができるようになったのー!」

 

「うーん天才。さすがイブキ〜」

 

「えへへ」

 

アルトは話を右から左に受け流し、嬉々としてアルトに近況を報告する女の子___『丹花イブキ』の頭を撫でる。

最後に会ったのはイブキが飛び級前だろうか。昔から天才少女だとは思っていたが、ここまで飛び級が早いとは思いもしなかった

 

 

「......本当に話を聞いているんだろうな?」

 

「うんきーてるよー」

 

「......Aの次は?」

 

「うんきーてるよー」

 

「全く聞いていないではないか!?」

 

「うるせーなこいつ」

 

『羽沼マコト』はアルトが話を聞いていないことに気がつき、大声で騒ぎ始める。

 

 

「そもそも勧誘ってなんだっけ」

 

「それすら......!?」

 

アルトはあくまでマイペースに話す。

逆に下手に出るとつけ上がるための措置である。

 

 

「ではそんな貴様のために1から説明してやろう......イロハ!」

 

「はいはい......」

 

 

イロハはちょうどよく収まったスペースで嫌々説明を始める。

 

「勧誘というのはそのままの意味ですね。先輩を万魔殿に引き込んでその力を使ってやろうって魂胆です」

 

「ほうほう、んで?」

 

 

「え!アルト先輩万魔殿に入るの?やったぁ〜!」

 

「あ〜......すまんなイブキ。学園が違うからそもそも万魔殿には入れねんだ。」

 

「そっかぁ......」

 

しゅん、とわかりやすく凹むイブキ。

アルトも断った本人ではあるが、なんだか居た堪れなくなる

 

 

「な、何ぃ!?そうなのかイロハァ!?」

 

 

「当たり前じゃないですか......」

 

「なんと言うことだ......私の完璧な計画がッ!?」

 

「どこも完璧じゃなかっただろ。抜けてばっかだったよ」

 

 

抜けているアホを他所目にアルトは机にどさりと紙の束を置く。

 

 

「.....む?なんだこれは」

 

「風紀委員会に流してた書類ね。半分はやってあるからあと半分は頼んだぞ〜」

 

 

「な、何ィィィ!?しかもこれ......一ヶ月前のものも含まれてるではないか!?」

 

 

「ったりめーだろ。しっかりやっとけな。あ、イブキ、これ駅前のプリン交換券。ちょうど二人分あるから今から一緒に行かない?」

 

「!行く!!」

 

「準備しといで〜」

 

 

アルトは騒ぐアホを軽くいなしてイブキにプリンの交換券を渡す。

それを受け取ったイブキは嬉しそうにスッテテテーと奥の部屋に向かった。

 

どうやら外に行く準備をするようだ

 

 

「ちょ、ちょっと待て!何故イブキを外に連れ出す!?」

 

「テメーの自業自得をイブキちゃんにまで寄越すわけにはいかねぇだろ。」

 

「そんなことしなくても私がさせませんが......」

 

「だからだよ。イブキはそう言うの手伝っちゃうからな」

 

 

健気な少女のそばで仕事の押し付けとかカスみたいなことする方が悪い。

 

「半分やったげただけありがてぇと思ってもろて」

 

アルトもイブキに続いて席を立つ。

 

 

「ちょっと待てぇ!!こんな横暴許されると思っているのか!?」

 

「いや、横暴はこっちだと思うんですけど......」

 

 

マコトはアルトの肩をガッと掴む。

実際横暴を働いてるのはいつもマコトの方である

 

 

「......言っとくが」

 

 

 

「ッ!?」

 

 

マコトは掴んだ手を退ける。

 

目の前の男から発せられる圧力が急激に増えた

 

 

「俺がいない間にヒナに回したりしたら_________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次こそ覚悟しろよ?」

 

 

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

 

 

「なんでこれが解っててやっちゃうんですかね、この人は」

 

「キキッあいつはああ見えてあまちゃんだ。この程度で万魔殿を潰しにくるようなバカではあるまい」

 

そう言いつつもマコトはアルトが持ってきた書類を消化している。

流石にあそこまで詰められてふざけられるほど馬鹿ではないのはマコトも同じである。

 

 

「......奴が本気で怒った時は、あんなものではない」

 

 

「.........あの時もマコト議長が悪かったんですからね?」

 

 

マコトは珍しく真面目な表情になり、物思いに耽る。

 

「だからこそ......奴は捨て置くに値しない」

 

ニィッ、と口角を釣り上げ、不敵な笑みを浮かべる

 

 

「必ず引き込むぞ」

 

 

決心を新たに、再び書類に目を落とす。

 

 

 

「......ん?......噂をすれば影というやつか」

 

 

マコトはスマホの通知を受け取り、アルトから送られてきた動画を読み込む。

 

 

 

そこには________________

 

 

 

 

『ウェーイwwwww議長見ってるー?今お宅の可愛いイブキちゃんとプリン食っちゃいまーすwwwww二つもwwwwww』

 

 

『二つも食べていいの?』

 

 

『今日はええんやで』

 

 

『やったー!アルト先輩だいすき!』

 

『おっふwwwwwwってことでwwww』

 

 

 

 

動画は、そこで切り上げられた。

 

 

 

 

「......イブキが楽しそうで何よりですね」

 

 

 

「.........さん.........」

 

 

「へ?」

 

 

 

「ゆ“る“ざん““!!!よくもイブキをォォォォォォォ!」

 

 

 

 

 

 

 

その日以来、風紀委員会に送られてくる仕事量が以前の10分の1ほどになり、それと引き換えに秤アルトをものすごい形相で追いかける羽沼マコトの姿が見られるようになったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......ペアチケットなら、私も誘ってくださいよ......クソボケ先輩......」

 

 

 

 




マコト大好きなんすよね。あのバカさ加減が絶妙で(褒め言葉)
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