その日は、何故か分からないけど、ずっとイライラが募っていた一日だった。
朝、寝坊してパンを食べ忘れたからだろうか
それとも、ヤンキーに絡まれたからだろうか
それも違うならば________________
「このまま頑張れば、もしかしたら砂祭り開催まで漕ぎ着けるかもしれません」
先輩が、こんなことを言い出したからだろうか。
.......どちらにせよ、時間は戻らない。
ずっとずっと、私を置いて無慈悲に進んでいく。
過ちを、悔いる時間すら。
第−4話
『崩れだす青春』
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「このまま資金調達を進めて、ある方法で砂漠の緑地化に成功すれば可能性はゼロじゃあない!!」
「本当!?それならきっとアビドスに人がまた集まるかな!?」
「ええ!きっと!」
私が教室に入ると、先輩2人が何やら騒がしくしていた。
いや、騒がしいのいつものことだった。
「今日も朝から無駄に元気ですね。何を話してたんですか?」
「無駄に元気は余計だ。ふっはっはっは!聞いて驚け!俺たちは新たにアビドスを復興させる計画を立案したッ!」
私を迎え入れて、先輩は意気揚々と声を上げました。
その声が、寝起きの頭に響いて少しうるさかった。
「今、俺たちの著名活動や細かい働きによりアビドスの財政は一時的とはいえ安定した。それならば、何か大きなイベントでも開催してアビドスを知ってもらうチャンスなのではないかね?」
「大きなイベント?」
こんな砂だらけの場所でイベントなんて到底できるわけがない
「昔アビドスで開催されてた砂祭りのポスターを私が見つけて、天津くんに見せたら開催可能かもって話してたの!」
「やっぱ屋台とかいっぱい出したいですね......でもそれだと人件費とかかかっちまうのか......」
「私たちだけで屋台出すのはどうかな?それなら人件費もかからないし、青春っぽいかも!」
私はユメ先輩が机に置いたプリントを手に取って、見てみた。
もうずいぶん昔のポスターなのか、所々少し破けているし、色落ちもひどい。
しかも開催場所はあの枯れ果てたオアシスだ。
この2人は何を考えている?さっき言っていた砂漠の緑地化とはなんのことだろう。
「イイゾォ!これならユメ先輩が卒業する前に開催できる!やっぱ構想を練ってる時が1番夢が広がりングなんだよなぁ」
「すごいよ天津くん!!またみんなが集まってくれれば、学校もまたいっぱい人で________________
「そんな子供じみたこと、起こるわけないでしょ」
イライラした。
甘すぎる未来予想に。
「ホシノ?」
垓先輩は
「お、起こるよ!!だって天津くんができるって_____「それが無理だって言ってるんですよ」
ユメ先輩は
「一々こんなバカみたいなことしてる暇があったら少しでも金を稼ぎましょう」
あまりに、現実が見えていない。
「そもそも、この財政状況でこんな大掛かりなイベントを起こそうものなら破産確定ですよ?わかってるんですか?ここは!ゲヘナみたいに潤ってる学校じゃないんです」
垓先輩は、急に私が怒り始めたことに驚いたのか、表情を変えるばかりで何も言い返してきませんでした。
それをいいことに、私は何回も優しい先輩に暴言を吐き続けました
「いつから書面が読めなくなったんですか?まさか、今現在砂に埋もれてるこの学校が見えてないわけじゃないんでしょう?」
早口で、わざわざ声に抑揚までつけて捲し立てる。
まるで、癇癪を起こした子供が駄々を捏ねているようでますます悔しくなった。
「ホシノちゃん!そんなに言わなくても......!」
「ならしっかりと現実を見てください。今の私たちは、こんなことをしている暇なんて一切無いんです」
私はそのまま荷物を下ろして、自分の作業を始めます。
本当に、ガキみたいにいじけて、拗ねて。
こうでもすれば先輩がかまってくれるとでも思ってたんでしょうか?
「......そうだな。ホシノの言うことにも一理ある。」
先輩がそう言った時、私の心の中ではドス黒い声を上げている奴がいました。
やっぱり、私の言っていることは間違いじゃなかった
そう、声を上げ続ける心が
「でも、やっぱ夢は大きいほうがいいだろ?実際今の財政を見た上での許容圏内だ。非現実の話じゃない」
「......非現実的だなんて一言も言っていません。私が言っているのは一人一人割り当てられた仕事をするのが今できる現状だと言っているんです」
「......なぁ、ホシノ本当にどうした?体調でも_____
心配してくれた先輩が私の背を摩ろうと伸ばされた手を___________
「気安く触れないでください!!」
何を思ったのか、私は強く振り払った。
それも、結構全力で力を込めて
「ホシノちゃん!!!」
垓先輩より先に、ユメ先輩が声を上げた。
「......天津くん、大丈夫?」
「あ.........あ、そうか......大丈夫です」
不自然な角度に曲がった腕を、先輩が顔色一つ変えずにポキっと元に戻した。
「っ.........もういいです」
くしゃくしゃになるまで握りしめたポスターを手から離し、再び教室の扉の前に立つ。
「そうやって、いつまでもお二人で仲良くどうぞ」
なぜか、そんな言葉を残して私は教室をさった。
ユメ先輩が私を止めようとする声や、垓先輩の『気をつけろよ〜』といういつもの挨拶が聞こえた。
イライラする。
ユメ先輩のことは尊敬している。でも、なぜかわからないイライラがユメ先輩に向けられた。
「なんでっ......ユメ先輩ばっかり.......!」
ポケットに手を突っ込み、早歩きで校舎を出た
最近はずっと曇天の空が見えており、私の気分をさらに落とさせた。
イライラする。
どうして。
仲良く話してるだけの2人を見てると、なぜか胃がムカムカと気持ち悪くなった。
今日は早く学校に来て、先輩と一緒にあの図鑑を見ようと思った。だから、昨日の夜はたくさん図鑑を読み込んで先輩に説明できるように練習もした。
なのに、今日に限ってなんで寝坊した。
怠惰な自分に嫌気が刺す。
眉間にシワが寄り、再びイライラが募り始めた。
これが、嫉妬なのだろうか。
それなら、もっと青春漫画みたいに可愛く取り合いでもできたら楽しかったのだろうか
「......私は何を......」
なんでそんなことを考えた?
だって別に先輩に恋愛感情を抱いているわけじゃない。
だから別にユメ先輩と仲良くしてたって私にはなんの関係もないだろう。
..............その、筈だ。
「......もう、帰ろう」
ホシノは悶々とした気持ちを抱えながら帰路についた。
2人からの連絡がなかったのも、少し苛立ったのを今でも覚えている。
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「......謝るだけ。私が悪いところもあった」
教室の扉の前に立ち、自分が謝れるように口実を作る。
実際どちらが悪いと言えばホシノだが、ホシノもまだまだ子供。そうやって大人ぶらなければ謝ることもできない
「おはようございま________
教室の扉を開け、朝の挨拶を口にする前に、先に入っていた先輩が私の顔を見て安心したような、そして焦りがある表情を見せた。
「ホシノ!よかった......急いで準備しろ!出かける!」
すでに私の防弾ベストを机に広げ、先輩自身も見たことのない装備を付けていた。
私の防弾ベストと少し似ているが、それよりももっと大きい。
右脇にグロックのような拳銃がホルダーに刺さっていた。
「一体どうしたんですか......?何をそんなに焦って......」
呑気にそんな質問をする。
嫌な汗が背筋をつたい、昨日とはまた違った不快感が私の胃を襲った。
「ユメ先輩に昨日から連絡がつかないんだ!!寮舎にも帰ってない!」
先輩は今までに見ないほどに焦っていた。
ユメ先輩が、いない?
あったのは、書き置きだけだったらしい。
書かれていたのは、
『ホシノちゃん、天津くん!今までありがとう!』
その、一言だけだった
「ホシノ先輩?どうかした?」
砂狼シロコは突然息を切らして教室に入ってきた小鳥遊ホシノを心配して近寄る。
いつものゆったりとした雰囲気は無く、よく見れば涙すら流している。
「何があったの?」
「......はーっ......っ.........はっ......シロコ、ちゃん?」
肩から下げたストラップが盾の重さで腕まで下がっていた。
いつものホシノならば肩紐を外すこともなかっただろう。
「う、うへへ......なん、でもないよ。大丈夫」
上がった息をようやく押し込めて、いつも座っている席に座った。
机の上にはずいぶん色褪せた水性生物の図鑑と、大きなクジラのぬいぐるみが置かれていた。
「......ねぇ、シロコちゃん。シロコちゃんって最近先輩に会ったりしてない?」
「......なんで?」
シロコは投げかけられた質問に違和感を抱いた。
この質問を最後にされたのはもう一年ほど前のことだから。
「......いや、大丈夫。なんでもなかったや」
「......ん」
そこで会話は切り上げられた。
いつものシロコなら、『ん、隠し事なんて卑怯』と言って踏み込むところなのだが、並々ならぬ様子のホシノを見ては踏み込むところも踏み込めない。
ホシノは荷物とショットガンを下ろすと、ポケットから三つのものを取り出した。
一つは、封筒。どうやら何かの手紙のようだ。
二つ目は、何かの書類。空欄にびっしりと文字が書かれている。それも丁寧に
三つ目は、何か機械的な見た目のカードキーのようなもの。
「......バレてない。ドライバーの方も持ってくればよかった」
ホシノはそう呟く。
取り出したるは、『ゼロツープログライズキー』
契約条件は、『小鳥遊ホシノ及び故『梔子ユメ』の絶対的な安全』
交換契約書署名:秤アルト
契約の均衡は今、崩れ始めた。
全部お前のせいだよ。もっと可愛い嫉妬なら、何か変わってたかもしれないのにね。