「ア“ルトぐーーん“!!」
「鼻水をコートにのごるな!!」
とある日の連邦生徒会長室。
そこではいつもの戯れあいが始まっていた。
「だっでひどいんですよ“ぉ〜!わだしだって頑張って“るのにクレーム対応ばっかりでぇぇぇ“」
会長は泣いていた。原因は連邦生徒会長の役目である他方の学校からのクレーム処理。
本人はしっかりと対応している上、スマートにこなしているのだが流石に限界だって訪れるだろう。
現に今限界は訪れた。
「リンやカヤは?」
「ズビッ......リンちゃん達だって忙しいんです......ぐす......私が頼ったら迷惑じゃないですか......」
少し落ち着いたようで、会長は息を整えてアルトに引っ付いている。
「はぁ......お前そう言うわからんところで律儀になるのなんなんだよ......俺の時は遠慮もクソもないのに」
「......アルト君はいいかなって」
「よしそこに直れ。そのクソ長い髪ぶった斬ってやる」
「乙女の髪を!?」
勿論冗談であるが、こうやって意味もないのに呼び出されるのはそろそろやめてほしい。
「......んで、なんで俺は呼び出されたんだ?仕事の手伝いなら帰るぞ」
「お仕事はもう終わりました......だから」
「......だから?」
一拍置いて
「......ぎゅって抱きしめてください」
「.........おう」
今さっきまでのふざけの雰囲気から変わった。
......さてはなんかやな事あったな
「......ふふっ.........あったかいです......」
「.........そりゃ何よりで」
アルトは会長を優しく抱きしめ、いつも座っている大きな椅子に体重を預ける。
「んで?どんなクレーム入ったんだ?」
背中を摩りつつ、何があったのか聞き込みを始める。
会長がこうなる時はいつもこんな感じで嫌なことがあった時だ。
「......『穀潰し』、『役立たず』、『給料どろぼう』、『クソび「わかったわかったもう大丈夫だ。な?」
再び滲んできた涙をアルトの胸元に拭う。
「......大丈夫か?」
「.........大丈夫じゃないのでもっと甘やかしてください。具体的に言えば、もっと頭とか撫でてください」
「あいよ」
アルトはその要求に対応し、会長の頭に手を持っていく。
「んー..........もっと.........たくさん撫でてください......」
「腕が足りんわ」
それでも一応さっきまで背中を摩っていた手を頭まで持っていき、両手でわしゃわしゃと撫でる。
「......えへへ......いい感じですよ」
そうしてやると嬉しそうに目を細め、頬を擦り付ける。
......猫みたいだな
「猫じゃないです。」
「なんでナチュラルに心読んで来るんだよ.......ニュータイプかおどれは」
そんな感じの会話をしつつ、アルトは椅子のリクライニングを下す。
「うぃ〜......やっぱいい椅子」
「高いですからね」
「実際どんぐらいすんの?」
リクライニング機能+暖冷機能付き。
高い高いとは聞いているが、実際買ったのは会長なので俺は知らん
「えーっと......これです」
「端末決済か......便利な時代に......ッ!?」
仰向けになっているアルトの上にうつ伏せで乗っている会長がタブレットの画面をアルトに見せる。
「.........俺の内臓傷ついてるから売れないよ?」
「売ったりしませんよ!?」
思った三倍の値段にアルト絶句。
「......すまん。俺この椅子完全に定位置だと思ってガンガン使ってた......」
「実際定位置なんですから、普通に使ってください」
「流石に値段知ったら今までみたいに使えねぇって......」
アルトが現在自由に使える金額の約五倍。
今まではクルクルと動かしたりローラーに付いてる電動ローラーでフロア内を駆け回ったりして遊んでいたが、アホみたいに高くてもう今までみたいに使えんよ。
「じゃあお駄賃代わりにもっと甘やかしてください」
「......脈絡ェ」
そう言いつつも会長のことを甘やかす。
今度はほっぺをムニムニと弄る。こうしてみるとやっぱ可愛いな。
「どうですか?こうして見れば可愛く見えてきたんじゃないですか?」
甘やかされて少し調子に乗った会長がアルトに対して少し勝負を仕掛ける。
「.......うん。可愛い」
「えぇっ?!」
その攻撃はアルトに通じない。なんならカウンターすら食らう。
「ほんとに可愛い顔だよなぁ......」
「ひゃあっ!?」
さらさらした水色の髪
ぷにぷにのほっぺた
ちょうどいい身長で頭が撫でやすい。
「うん、可愛い。今更気づいたわ」
「あっ、あの......もういいです......から......」
すでに頬を真っ赤に染めた会長がアルトの胸元にグリグリと顔を押し付ける。
「......なんでそんなことばっかり......」
「やっぱ思い出すなぁ.........」
その水色の頭髪を撫でながらしみじみとした表情で言い放つ。
「思い出す......?」
「昔飼ってたハムちゃん」
「は?」
「珍しい水色でさぁ......めちゃくちゃ可愛かったんだよ〜......あ“〜なでなでしたいぃ......」
「...............????」
会長、混乱。
「アホっぽい顔が会長そっくりだぁ」
ムニムニと頬を軽く引っ張ってみたり、再び頭を撫でてみたりする。
「......ハム.........え?」
「でもハムスターの寿命って短ぇんだ。死んじゃった時悲しかったなぁ.........」
「.........」
会長、理解。
可愛いのベクトルが全く違ったらしい。
「んでさ、バナナが好きで......ってどうした?」
ゆらり、と会長が起き上がり、すでに寝ているアルトの体を抑える。
「アルト君が、悪いんですよ」
「何......なんか息荒いって.......」
長い髪で表情が暗く分かりづらいが、爛々と目を光らせている。
「可愛いって、本気で言うまで帰しませんから」
「な、何!?なんなの!?怖いよ!」
バタバタと暴れようとするが、腕を抑えられているせいで動けない。
「ちょっ.....顔近いって!!怖いよ!リンッ“!カヤッ“!助けてッ!!」
「前も言いましたけど、このフロアは基本私たち以外誰もいませんので」
にこやかに答える会長だが、その表情の奥に笑顔は無い。
「それじゃあ、ゆっくりだらだらしましょうか.........ふふっ」
クソボケの行方は、誰も、知らない
そう。別次元だからこそアルト君が会長に襲われて、会長がそのまま妊娠してキヴォトスに残って全部上手くいくルートがあったのかもしれません。
どちらにせよ、アルト君はクソボケだけど。