アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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アビドス編が終盤に差しかかろうとしております。頑張るます。


第六話 小鳥遊ホシノは愚か者

 

「ホシノがいなくなった......?」

 

『“今アビドスのみんなと探してるんだけど......置き手紙もなくて......っ“』

 

電話越しでも先生の焦りの声がわかりやすく聞こえた。

 

様々な可能性が脳裏をよぎる。

カイザーが動き出した?その線は薄い。

そんな大事を起こすならもっと適切なタイミングがある。

 

「......ただただ連絡が付かない可能性は?」

 

『“多分無い。そもそも昨日ホシノが寮に帰ってくる様子がなかったみたい“」

 

 

それならば考えられる可能性は二つ。

 

 

ユメ先輩の墓参り。

だが、その線もたった今潰えた。

 

 

「......先生、どうやらただのお散歩じゃあねぇみたいだ」

 

 

アルトは......垓は持っていた手桶と柄杓を地面に置く。

 

「いなくなった時間帯は?」

 

 

『“今日の朝にわかったらしいけど、私は昨日の夕方にはいなくなったと思ってる“』

 

 

ドライバーを腰に装着し、乗ってきたライズホッパーに跨る。

 

「根拠は?」

 

『“......勘!“』

 

 

「これ以上信頼できる言葉もねぇな」

 

 

勢いよくエンジンを蒸し、いつでも走行できるように準備する。

 

 

「......先生」

 

 

『“どうしたの?“』

 

 

アクセルを捻り、発進。心地の良い風が体を抜けていく。

 

ごめんユメ。墓の手入れが遅くなる。

 

 

「......俺を頼ってくれて、ありがとう」

 

 

 

次は、ホシノと2人で来るよ。

 

 

 

 

 

 

_________________

 

 

 

「......まさか貴女から提案があるとは......人生はわからないことで溢れていますね」

 

 

「...............」

 

思ったよりも早い対面。

小鳥遊ホシノは黒服の前に立っていた。

 

その表情は虚で、暁色と蒼色の瞳はハイライトを失っている。

 

 

「天津垓に取りあって欲しい。そうでしょう?」

 

「......っ.........そうだ」

 

 

ホシノはいつもの表情作りを忘れ、昔のようなキレのある表情を取り戻す。

キレのある、というより引き攣った不自然な表情。と言った方が正しいが。

 

 

「ご足労いただいて申し訳ありませんが......生憎彼の連絡先を私は知りませんので」

 

「そんな筈ない!!」

 

 

ホシノはデスクに拳を叩きつける。

対キヴォトス人用に作られたデスクですら、大きな亀裂が生まれる。

 

 

「お前と先輩は繋がってた!!連絡先を知らない?つくならもっとマシな嘘を吐け!」

 

 

怒りを黒服に叩きつける。

 

「早く.........会わないと.........!」

 

 

最早意思があるかすらわからないその瞳を、黒服はじっと見つめていた。

 

 

「......では、こうしましょう」

 

 

黒服はデスクから一枚の書面を取り出した。

 

書面には『同意書』と大きく書かれていた。

 

「私は確かに『天津垓』の連絡先を知りません。ですが、『本当の彼』の連絡先なら、知らないこともありません」

 

妙な言葉遊びに苛立ちつつも、ホシノは書面に目を通す。

 

 

黒服の言いたいことは理解した。

 

 

「その書面に同意していただければ、彼との橋渡しぐらいならば____「これでいい?」

 

 

差し出したボールペンで書面に名を書き殴り、それを黒服に差し出す。

 

「......一応警告しておきましょう。後が怖いですのでね......その契約書は、貴方が彼の作り出した安全圏から抜け、その人生を棒に振らんとするまごうことなき『理不尽』の契約です」

 

 

「わかってる」

 

「......そもそも貴女ならば、会える機会などいくらでも_______________

 

 

「それも、自分で潰した」

 

 

ホシノが言い放った、あの一言。

 

わざわざ遠い場所からアビドスまで来て、律儀に墓に手を合わせる先輩に、ホシノはなんと言ったのだろう。

 

 

「私ではなく、シャーレの先生に取りあって貰えばいいのでは?」

 

 

確かに、ホシノはそれも考えた。

 

だが、昨日見た悪夢がホシノの手を止めた。

 

 

『お前を許さない』

 

 

先輩がそんな事言うはずがない。手紙だって、怖くて封を切れていないくせに。

 

そんな人ではないとわかっている。だけど、私がしたことは絶対に消えない。

 

私の記憶はもちろん。先輩の心にも、深く傷が入り込んだ。

 

 

「......私なんかを心配してくれる先生を、巻き込みたくない」

 

もちろん、それは後輩たちも同じだ。こんな私を先輩と慕ってくれる。

 

それに、これは私の問題だ。

 

 

「クックック......貴女らしいと言えば貴女らしく......それでいて、貴女らしくない」

 

 

 

 

契約完了

 

 

 

_________________

 

 

 

 

「この人が......天津先輩......?」

 

 

「ヘイローが......無い!?」

 

一年生2人は教室に現れた男に驚きつつ、観察する。

頭上には自分達に浮かんでいる天輪が存在していない。

 

 

「ん、先輩のヘイローはこっち」

 

 

「シロコチャンシロコチャンクビチギレルグビチギレル」

 

シロコは垓の後頭部に刺さったように存在するヘイローを2人に見せる。

そのせいで、首がものすごい角度で曲げられているが。

 

「“垓のヘイローってそこにあったんだ......“」

 

 

「自分でも気づくまで時間かかりましたよ」

 

首をコキコキと鳴らして定位置に戻し、全員に向き直る。

 

 

「ノノミとシロコは久しぶり。そっちの2人は初めましてかな」

 

いつもと変わらない笑顔を浮かべ、一年生二人組を見据える。

 

「本当に男の人なんだ......」

 

セリカは興味津々。アヤネは少し警戒の色を見せている。

 

 

「お久しぶりです、先輩!」

 

「ん、久しぶり」

 

 

シロコとノノミは垓を囲むように立つ。

 

「なんで囲むのさ」

 

「2度と逃げないように囲む。」

 

「せめて一言は欲しかったです」

 

「誠に申し訳ございませんでした」

 

 

シロコは最早、というか最初から垓に抱きつき、ノノミもおしくらまんじゅうのように体を密着させている。

 

「“仲がいいんだね“」

 

「ん、親友(共犯者)

 

「私にとっては、恩人でもありますから」

 

 

物騒な言葉が見えたかもしれないが、多分それは親友という文字が霞んで見えただけだよ。

 

「............んー.........」

 

セリカは目を細めながら垓を観察する。なんとなく、誰かに似ている気がしたからだ

 

 

「そういえば紹介がまだだったね。こっちが『黒見セリカ』こっちの子が『奥空アヤネ』、どっちも一年生だよ」

 

「よ、よろしくお願いします先輩......!」

 

「よろしく......お願いします......」

 

2人は垓に深々と頭を下げる。

 

「俺アビドスの生徒じゃないし、全然タメ口でいいよ?なんなら留年してるし」

 

2人は頭を上げ、好々爺のように笑顔を浮かべる垓の表情にホッとする。

 

 

「今回のホシノ捜索に参加させてもらう予定だけど......大丈夫か?」

 

 

「先輩と仲が良かった人なんですよね......?」

 

「裏切り者とか、聞いたけど......」

 

 

「せ、セリカちゃん!!」

 

急に踏み込むセリカをアヤネは抑え込む。

 

「あー......それについては本当だから大丈夫」

 

 

手をフリフリと振って大丈夫だということをジェスチャーでも表す。

 

「そんなはずありません!!だって先輩は.......!」

 

「謙虚なのは先輩のいいところだけど、卑屈になりがちなのはまだ治ってない」

 

 

2人の後輩にまでそれを言われちゃあおしまいだろう。

 

「“......え、えーと......と、とりあえず今はホシノのことを探そう!垓が来てくれたから、何かわかるかも!“」

 

対策委員会の教室の机には、アビドス全域の地図が広げられていた。

 

 

「あー先生、そのことなんだけどさ」

 

垓は後輩たちの包囲から抜け出し、机に出されていた地図まで移動する。

 

「この地図、いらねぇかも......」

 

 

 

「“......え“」

 

 

垓は窓から見える砂漠を見据えていた

 

その黒い瞳を、蒼色に光らせながら。




まじでさ、なんでお前他人を頼らないの!?どんだけ酷いこと言ったって君のことを滅茶苦茶大事にしてくれる頼りにできる先輩だよ?頼らない方が失礼だろ!!

ホシノさぁ……幸せにするから覚悟しとけよ
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